山崎豊子のレビュー一覧

  • 二つの祖国(三)

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    祖国とは何か、の前に、国家とは何か、個人とは何か、人間の尊厳とは何か、という問題に直面する。
    国家が国家として秩序を保っている場合、即ち国民個人に利を供する場合に祖国のために報いるという考え方はごく自然であるけれども、そうでない場合にも国民が国家の犠牲となる必然性は理解できない。
    かつては個人が何らかの拠り所欲しさから国家の形成と統制を望んだのだろうが、国民個人ではなく国家それ自体の利益や保身や意義すら画策し始めた時点で終わりが始まっている。
    しからせば太平洋戦争が終わった時点で、否始まった時から、さらに辿れば近代国家が始まった時点から人類の一部での劣化が始まっている。

    そんな深淵雄大な考え

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    2014年04月21日
  • 女の勲章(下)

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    ギラギラと仕事に打ち込む男とそれに翻弄され欲にまみれて行く女。
    欲にまみれたギラギラした世界観がたまりません。

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    2014年01月26日
  • 女の勲章(下)

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    こんな面白いの読んだことない。身近なひとみんなに読んでもらっていろいろ話したい。銀四郎を前にしたら、私ならどの生き方をたどるのか、2人の女を同じ理由で死なせた白石教授の佇まいとはとか、何より私が産まれる20年前にあふれていたこの豊かな会話力と野心の力強さは、今わたしが触れる社会ではなかなか目にしないものだとか。

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    2013年10月19日
  • 女の勲章(上)

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    野心、育ちの良さ、人間の厚みなどが会話の言い回しで伝わってくる昭和感がたまらなく面白い。3人の女を同じ手口で意のままにする銀四郎は下巻でどんな運命をたどるのか。

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    2013年10月17日
  • 仮装集団

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    ネタバレ

    働く人のために安くいい音楽を聴ける勤音という文化団体が次第に人民党に浸食されていく様子と、それに翻弄されるノンポリの敏腕プランナーの姿を描いている小説。

    私自身もかつて人民党のモデルになった政党が絡んでいる病院で働いていたことがあるので、この小説に漂う微妙な空気感さえもリアルすぎておもしろく読めました。

    読んでいて思い出しましたが、かなり昔に読んだ小林よしのりの「脱正義論」でも同様の様子が描かれています。

    人民党とその関連の思想団体がいわゆる「乗っ取り」を」する時の手口がこの2冊でよくわかります。

    印象に残った言葉
    「大衆を馬鹿にする者は、何時かは大衆に葬り去られる」
    思い出したけど、

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    2014年02月06日
  • ムッシュ・クラタ

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    先日お亡くなりになられた山崎豊子さんの作品を何か読んでみようと思い、近くの本屋さんで長すぎない本と思って探していたら、大長編以外では短編集の本書しか残っていなかったので、これにしてみました・・・。(みんな考えることは同じだ!)
    表題作の『ムッシュ・クラタ』のほか『晴着』『へんねし』『醜男』の4編を収録。どの作品も山崎豊子氏を有名にした社会の深層を鋭くえぐる長編小説ではなく、人間の性(さが)をみつめ、味わい深い余韻を残すような作品になっています。

    『ムッシュ・クラタ』はダンディであることを身上としパリを愛してやまなかった主人公の倉田氏が、いかに自らを厳しく律しそれを矜持とする生活を全うしたかを

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    2013年10月14日
  • 二つの祖国(一)

    購入済み

    戦争を知らない世代よむべし

    戦時下を知らないからこそ、読んでみるかちありです。
    当時と比較して平和な日常の大切さが身にしみました。

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    2013年07月09日
  • ぼんち

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    再読。
    船場ものの中では一番読み応えありますね。

    「ぼんぼんではあきまへん。遊びも商売も帳尻をぴしっと合わせるぼんちにならなあきまへん。」

    とにかくおもしろい。

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    2013年06月08日
  • 不毛地帯 第三巻

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    千代田自動車との提携に纏わる話。
    加速する提携談、それを妨げる動きの中で、副社長里井との確執、妻の死、ニューヨーク駐在など新局面を迎え、人間ドラマが色濃くなっていく。

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    2013年04月21日
  • 運命の人(三)

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    綿密な取材、細かな描写、読んでいくと、今そこで起こっている出来事のような文章に、読み進めていくにしたがって引きこまれていきます。
    完結に向かって、長年離れていた夫婦が再び引き寄せ合うところは、感動的であり、そしてどこか残念な気持ちにさせられました。
    真実とは何であるのか、生きかたとはどういうものか、問う物語でした。

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    2013年03月13日
  • 運命の人(三)

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    ネタバレ

    沖縄返還での地権者への土地原状回復費に関する密約の外交文書漏えい事件を描いた小説。第三巻。
    一審から最高裁までほとんど裁判で終始。その意味ではやや盛り上がりに欠けるかも。

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    2013年03月02日
  • 運命の人(二)

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    ネタバレ

    沖縄返還での地権者への土地原状回復費に関する密約の外交文書漏えい事件を描いた小説。第二巻。
    情報を得た記者が、情報ソースの事務官と不倫関係だったことから、争点は「知る権利」の問題からから一転して醜聞に。権力という虎の尾を踏むと怖いですね。少し違うのかもしれないですが、外務省がらみという事もあり、佐藤優氏の「国家の罠」をほうふつさせます。

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    2013年03月02日
  • 運命の人(二)

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    1巻に続いて内容が気になるのでスピード感を持って読みました。小説はおもしろいと読むスピードも早くなりますね。テレビドラマのシーンを思い出しながら、内容に引き込まれていきました。

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    2013年02月14日
  • ムッシュ・クラタ

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    まだ読んでないこんなに面白い山崎作品があったことが嬉しい。
    壮大な作品よりこれくらいの短編や大阪商人もの、面白いなー、うまいなーー。
    表題作のムッシュクラタはおそらく、他にあまりないタイプの作品。
    フランスかぶれ、おしゃれすぎてかっこつけすぎてまわりに疎んじられていたような主人公の、知られざる半生、と書くと非常に陳腐だなああ。
    読後感が損なわれるのでこれでストップ!

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    2013年02月05日
  • 不毛地帯 第四巻

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    千代田自動車とアメリカ・フォーク社との資本提携は、フォークからのたった1枚のビジネス・レターで交渉の打ち切りが決定された。
    そこにはライバルである東京商事・鮫島の暗躍があった。

    新規合弁会社の設立を強引に押し進めようとする里井副社長と、あくまでも千代田の利益を損なわないよう交渉を行う壹岐。
    商社のことが何もわからない僕が読んでも、2人の力量の差は歴然としていると思った。
    里井副社長には心臓病の不安があるため、この時点で専務である壹岐が実質的に近畿商事のナンバー・2になった。

    そして、壹岐は資源に乏しい日本の将来を見据え、石油確保の手段を模索しはじめた。
    イランのサルベスタン鉱区に入札するこ

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    2013年01月03日
  • 不毛地帯 第三巻

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    近畿商事を重工業化路線へ転向したい壹岐と、繊維部門の地位を保持したい里井副社長。
    2人の溝はますます深まるばかり。

    そんな中、近畿商事の取引先である千代田自動車に提携の話が持ち上がった。
    相手はアメリカビッグ・スリーの1つであるフォーク(フォード?)。
    アメリカの自動車が上陸すれば日本のメーカーは1たまりもなく食いつぶされてしまう可能性があり、交渉は容易に進まない。
    当時(1970年代)、自動車産業の資本自由化について自動車メーカー、商社、ならびに通産省がいかに頭を悩ませていたかというのがよくわかった。

    この巻では、壹岐の妻・佳子が交通事故のため亡くなってしまう。
    しかもそれは、壹岐が秋津

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    2013年01月03日
  • 二つの祖国(四)

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    父なる国日本と母なる国アメリカ。
    二つの祖国の架け橋となるべく、愚直なまでに誠実な天羽賢治。
    信念を貫いた東京裁判が、神聖な裁きの衣から、勝者の裁きの鎧を見せた後、賢治の心は墜ちていった…。
    ヒロイン梛子の最期の問いかけが重い。
    ライバルのチャーリー、弟の忠と勇の対比で賢治の苦悩が良く分かります。
    東京裁判については城山三郎著「落日燃ゆ」もお薦めです。

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    2012年10月06日
  • 二つの祖国(四)

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    ネタバレ

    山崎豊子さんの作品は悲劇的なものが多いなぁ・・・・・。  「白い巨塔」しかり、「華麗なる一族」しかり、そしてこの「二つの祖国」しかり・・・・・。  なまじこれらの作品の主人公たちが途中までは強靭な精神力の持ち主として描かれているだけに、最後が・・・・。  

    個人的にはこの作品に於いて、賢治と梛子さんの恋愛エピソードは不要なものに感じました。  もちろんあの時代にアメリカの日系人迫害を逃れたアメリカ国籍を有する日系2世の人が広島で被爆したというエピソードと彼女が最期に漏らす「私はアメリカの敵だったのでしょうか?」という問いかけはとても重要だと感じるし、この物語の中で別の形でなら出てきて然るべき

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    2012年06月18日
  • 二つの祖国(三)

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    ネタバレ

    20年以上前、この本を初めて読んだ時の衝撃はこの「東京裁判」のシーンでした。  戦後教育の中でこの東京裁判に関しては学校でほとんど学んだことがなく、端的に言ってしまえば「大戦後、アメリカの占領下の日本で戦犯を裁く『東京裁判』が行われ、A級戦犯とされた28名のうち7名が絞首刑に処せられた」ということぐらいしか知らなかった KiKi にとって、この物語で描かれた東京裁判のシーンは初めてその裁判がどんなものだったのかを考えるきっかけとなったものでした。

    そして当時の KiKi は戦勝国が敗戦国を裁くということに潜むある種の「不公平感」を強く感じ、同時に「原発投下を人類がどう評価すべきか?という極め

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    2012年06月17日
  • 二つの祖国(二)

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    ネタバレ

    この巻でもっとも心に残るのは、やはり天羽家三兄弟のあまりにも酷過ぎる運命ではないでしょうか??  日系2世というまさに本書のタイトルどおり、「二つの祖国」を持つ三兄弟が、たまたま太平洋戦争突入時に何歳でどんな教育を受けどこにいたのか?という偶然性も手伝って、1人は米軍兵士として、もう1人は帝国陸軍兵士として、そして長兄として常に二つの祖国を強く意識し続けた最後の1人が米軍の語学将校として戦争に巻き込まれていく・・・・・。  その非情さには言葉もありません。

    家族だからと言って誰もが同じ哲学、同じ思想というわけにはいかないのは、どんな時代であれ、そしてどんな境遇であれ、必ずしも珍しいことではな

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    2012年06月16日