山崎豊子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
再読完了。
舞台が総合商社であるだけに、スケールの大きさを感じる。サルベスタン鉱区で油を掘り当てた時の描写は感動的である。
物語上、どうしても主人公の壹岐の周囲にいる人物は、いわば“敵役”である。しかし、それぞれの人物の視点で見ていくと、彼らもまた正義のために戦っているのである。鮫島氏は言うに及ばず、里井副社長は、社長の椅子を狙い自分を脅かす壹岐を追い落とそうと画策したものの(結局それが自身の首を絞めることとなってしまったのだが)、それは会社を盛り上げるためであり、壹岐とはベクトルが違うに過ぎない。
スケールの中にも人間というものを見事に表現した傑作だと思う。 -
Posted by ブクログ
絶筆だから読みたいと思いつつも、未完だからと躊躇する気持ちもあり、これまで横目で見ながら手に取らなかった作品。
加齢によって体力は低下し、その反面自分の立ち位置と存在意義を確認したいという欲求にも駆られ、自分のやりたいこと、やるべきこと、そして出来ることの線引きがぼやけ、なんとも心許ない毎日を過ごしてきた中で、またこの本と対面した。
爽やかで正義感が強く、いかにもヒーロー然としていながらも、迷いや弱さを抱えて時には間違うことも、誰かを傷つけることもある、著者が描く人物像に触れたくなり、とうとう頁をめくることにした。
著者の構想の半分にも満たない作品からは、迷いの中でどう進んでいくかのヒン -
ネタバレ 購入済み
物語が完結しなかったのが残念
読み手を惹きつける話の展開で、最後まであっという間に読みました。第一部で絶筆になってしまったのが残念です。この後、主人公を含めた登場人物がどのように生きていくのか、とても気になるところでした。一方で、自衛隊の存在意義をあらためて考えてみる機会になりましたし、自衛隊について、国防について知らない事が実はたくさんあるということに気がつき、不安にもなりますが、自分の知らないところで、平和の維持のために頑張っている人がいるということを、時々感じることも必要だということを感じさせる本でした。
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Posted by ブクログ
(上下巻合わせてのレビューです。)
久しぶりの山崎豊子。やっぱりテッパンです。
姉妹3人の遺産相続にからみ、その周囲も巻き込んだドロドロ劇に
読み手である自分もあっという間に飲み込まれていきます。
山崎豊子のやり口が分かっているだけに、何となく先の展開が読めてしまいますが、
それでも面白い小説であることには変わりありません。
眠い目をこすって、あっという間に読んでしまいました。
残念なのは、著者がもう亡くなってしまっていて、
こんなにも素晴らしい小説にも作品数が限られているということ。
もっともっとたくさんの小説を生み出して欲しかった。。
全ての作品を読み切るのがあまりにもったいないので -
Posted by ブクログ
山崎豊子さん、最後の未完作品。
二つの点で興味惹かれる小説である。
* 高齢と病身である山崎さんの渾身の力はいかなるものなのか
* 作者テーマである「戦争と平和」を描くとしても、自衛隊から掘り起こすとは
上記は当時(2013年)文芸関係で話題になった。
氏の秘書野上孝子さんも解説で
「まさか先生、自衛隊を書くのではないでしょうねと、飛び上がった」
と書いていらっしゃる。
「先生には『不毛地帯』『二つの祖国』『大地の子』という戦争三部作がある。
その作者がどういう視点で自衛隊を書くのだろう。」
山崎氏全作品読破のわたし、文庫になるのを満を持ししていたので、さっそく。
さすがで -
Posted by ブクログ
長かった…。3月末にドラマが放送され、原作がすごく気になりちょこちょこ読み進めてました。
読んですごくよかった。長いけどおすすめ。特に若い人へ。
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日米開戦と同時に、12万人の日系人が強制収容所へ入れられたのは事実。
この小説に出てくる主人公やそれを取り巻く人々はフィクションだけども、
著者の相当に膨大な取材、調査による事実を織り交ぜた歴史小説です。
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日系二世の主人公は、アメリカ人として生きるべきなのか、日本人として生きるべきなのか、痛烈な問いを突きつけられます。
米国籍を持つ主人公は、収容所に入れられながらも語学兵としてアメリカ人の立場で戦い、最後は東京裁判で言語調整官として法廷に臨み