山崎豊子のレビュー一覧
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小説内では、1巻から20年も経っているのかと言う衝撃もさることながら
前作とは打って変わって、事故の悲惨さに焦点を置いている
墜落事故後、家族が生きていると信じてる人、亡骸をなんとしても弔いたい遺族
問題になっていたコストカット、利益重視が積み重なり
防げたかもしれない災害(墜落事故)
悲しみを抱える遺族の世話役として遺族と向き合う主人公恩地の直向きさは言わずもがな
甲子園を見るために1人で飛行機に乗った健ちゃんの話は辛すぎる…
スチュワーデスさんが居たとしても、家族のいない状態で30min墜落まで体験したと思うと胸が痛い
二度と同じ事故を起こしてはいけないという思いで、アメリカに向かった川北さん
保障をもらっても家族は戻らないと言って八十八ケ所の巡礼に向かった坂口さん
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Posted by ブクログ
ついに読み終わったという感が否めない。内容が重厚で、読めば読むほどに楽しいものでないだけに、ずいぶんと読み終えるのに時間がかかってしまった。そのため、序盤の方とかは、かなり記憶から薄れ、語れるほどに覚えていない。
まさに、こうして重大な事故の記憶は、過去の話になっていってしまうのだろう。
国見の「更迭」から、恩地のナイロビへの赴任。事故の真実、会社の腐敗の是正に尽力した二人の主人公の結末は、まったく希望を見せず、いかに正義を突き通すことが絶望的であるかを物語っているように見える。
物語の中でたびたび利根川総理らが、「国見には政治ができない」ということを言うが、正しいことをするためには、正しいだけではダメなのだという教訓は、得ていいものなのかどうか、躊躇われる。本質的な問題にとっては、極めてどうでもいいはずのことだが、なぜ国見は、総理からもらった「王道」の額を外さなかったのか。なぜ恩地を会長室に迎え入れたのか。なぜ共産党に挨拶に行ったのか。たったそれだけのことで、もし国見のしようとしたことが、些細でも成就したのであれば、国見は「政治」をすればよかったのではないかとも思えてくる。
引用を引いてこれるほど、記憶に残せるほど読めていないので、雑な引用になるが、最後の一段落を引いておきたい。
何一つ遮るもののないサバンナの地平線へ黄金の矢を放つアフリカの大きな夕陽は、荘厳な光に満ちている。それは不毛の日々に在った人間の心を慈しみ、明日を約束する、沈まぬ太陽であった。(p409)
もはや、恩地のような人々の乾いた心を慈しんでくれるのは、広大なサバンナを「沈まぬ太陽」だけなのである。それは、希望の光であるように見えて、もはや明日を約束してくれる人は、いないのだという絶望でもある。
御巣鷹山事故から四十年。この小説が書かれてから、二十六年が経った。民間を知らない身としては、現代の企業や公務員の世界が、もはやこうはならないよう、一職員の仕事の「本懐」を全うしようとすることしかできないのである。 -
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(ネタバレあり)怒涛の一気読み。沖縄返還に係る日米交渉と米側への補償金の支払いにかんする密約を暴いた記者。政府から機密漏洩教唆で訴えられるが国民の知る権利を掲げて真っ向から対立する。その記者に機密文書を漏洩した女性事務官との不倫関係なども取り沙汰され、泥沼の裁判となる。国家機密といえば正当性あるが、中身は米側に忖度し日本国民の税金から不当に支払われる迂回資金であり、国民を欺く裏金。国家(というか、そのときの権力者)が記者を潰しにかかる様子は、権力の恐ろしさを物語っている。元ネタは実際に起こった「西山事件」。小説を通じて、権力や官僚の腐敗や事勿れ主義、不都合な事実を握りつぶそうとする傲慢さや忖度の卑怯さなどが描かれている。一方で、知る権利や個人の権利を主張しながらも、新聞の売れ行きを気にしながら、日和見に走る新聞社の姿もあり、どちらも情けない限り。第4巻では沖縄の問題に深く切り込んでおり、自分自身の認識も改まる。この時期に読むべき一冊。山崎豊子さんの小説は、華麗なる一族以来久し振りだが、まるで「中の人」が書いているかのようで、その場に居合わせるかのような臨場感あふれる表現はさすが。
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完読!!傑作ですよ!
この作品が描かれたのは昭和中期。癌という病が一般的にまだ不治の病として恐れられており、医学もまだ未発達で現代のような緩和治療がない時代。大学病院の在り方として研究の学会発表とあらゆる症例のレポートがメインとなり、少なからずとも患者の扱いが現代とは異なり、悪い言い方をすれば研究材料だったのだろう。本書裁判における国が捉える『医師』の定義付けとしては『人の命を扱う重要な立場故に可能な限りの手段を用い治療努力をすべき』といった医療現場への警笛。そして、日進月歩である医療現場への尊重がある中での医師の立場と責任感の追求。医師である前に一人の人間であることを忘れるなかれ、といった現代医療にも近しい考えがこの頃はまだ不定着だったのだろう。人は皆考え方が違うし仕事への向き合い方も違う。求めているものも同じではない。財前と里見、正反対の二人が共通して持っていたものはお互いの仕事に対する信頼だけである。何だか寂しい気もするが、全てにおいて分かり合えることなんて絶対にないもんね。もっと上手くやれれば良かったのにね。地位や名誉に溺れないような人でありたいですね。 -
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前半は主人公の恩地がアフリカでどのような状態で頑張っているかが書かれて、
ひたむきに業務をこなす姿に心打たれました。
後半は日本航空が抱える問題が浮き彫りになり、自分が手配したチケットが原因で問題の渦中へ。
前巻で出てきた登場人物がそれぞれの思いを胸に、問題に向き合う姿は心動かされました。
アフリカで過ごす中で、自分と同じく日本への思いを抱えながら、帰国できない孤独な思いを秘めた人の心中が語れるシーンに
解決した訳では無いが、恩智の孤独が少し和らぐのを感じました。
ハンティングの描写や、剥製を壊すシーンは、作品に吸い込まれるような描写でした。
次巻も楽しみです。 -
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読んだ本 白い巨塔5 山崎豊子 20250518
後書き読んだら、やっぱり4巻以降は続編だった。しかも、財前勝訴への批判の声から続けたとのこと。やっぱりな。正直、裁判の行方としては、色々あったとしてもあんな難しい手術をして誤診って言われたら堪んないだろうって思ってしまう。そこだけで言うと、3巻で終わってた方がリアルだった気がします。
と言いつつ、夢中で読んじゃいましたね。今日だけで300ページ。財前の破滅を描いて溜飲を下げるってだけじゃこうはならないんだと思う。そもそも財前の独善も医者としてのプライド、人の命を救うってところから始まってて、それも難しければ難しいほど悦に入るってのは、悪じゃないんだよね。
そして、権力におぼれた人たちも、その根源に医師としての生命へのリスペクトが描かれてて、決して善人になったわけではないけど、底流にあるものにほっとしました。
次は「華麗なる一族」だな! -
Posted by ブクログ
自分の知らない時代の航空業界にまつわる話
史実を元にした小説ということでおすすめしていただきました。
とても読みやすく、主人公の真っ直ぐさ故に茨の道を進むことが最初からわかっている分、救われてほしいと思いながらも、救われるわけではなく、本書の書き出しのアフリカに左遷された途中まで記載された本
この一冊で、アフリカの匂い、大企業での労働組合が向き合う問題、ストライキ、海外左遷、カラチの過酷さ、戦争による空港閉鎖、胃が痛くなるような体験が記されていますが、読み進めたくなります。
戦争を経験した人たちのセリフに、私と世代が違うからこその尊さを感じました。
なぜアフリカに至ったのかはまだ書かれていないため次を読むのが楽しみです。
旧友の行天とは、志同じくして目指す場所が違うと分かれてしまったのも今後どうなるか楽しみです。
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Posted by ブクログ
国見正之会長がカッコ良すぎる。こういう上司の下で働きたい。
三顧の礼と云われ、国見は応えようがなかった。あくまで就任に反対した、上杉社長の顔が思い浮かび、なお躊躇った。だが、同期の中で、戦場へ出ず、生き残った者としての負い目がある。もはや、辞退は許されない。
「二度目の召集を受けたと考え、お引き受け致します」
国見は、万感の思いに押されるように、決意した。(p50)
国見は、内閣総理大臣の利根川総理からの要請として、その陰の参謀である龍崎一清から、未曾有の大事故を引き起こした国民航空会長になるよう懇請される。元々、国見が会長を務めていた関西紡績は、「国家社会への奉仕」を社是にしており、彼自身「労使運命共同体論」を説いて、関西紡績の労使関係を改善した実績があった。そんな国見を、「使命感を持ってい」て、「経営再建に実績があり、特に労務に明るい」人材で、「六十五歳以下で、実際に自分で仕事が出来る人物」と見て、龍崎は、国民航空再建のトップとして選んだ。
はじめは固辞した国見だったが、それを引き受ける決意をした理由は、「お国のためにという一言に背けず(p51)」だった。
「お国のため」、「国家社会への奉仕」といった言葉は、令和に生きる日本の人々にどう響くだろうか。おそらく、かつて大本営参謀として戦争に加わり、戦後十一年間のシベリア抑留を受けた龍崎や、学徒出陣で召集されたものの、教官要員として国内に残されたために、戦地で散った同期の中で生き残った国見たちへの響き方は、今の自分たちには、想像し難いものがあるように思う。国見の姿を見ていると、「お国のために」という志が、単なるナショナリズムや右翼のようなものではないことがよくわかる。
おそらく、国見のような人間は、これからの時代に二度と現れないであろう管理職のあり方だと思う。こうしたトップのあり様は、ある意味、昭和の時代から受け継ぐべきものだったんじゃないかとすら思わせる、物語の説得力を感じる。
小説のラストは、御巣鷹山事故から一周忌を迎えたところで終わる。しかし、なおも日本航空の組織体質が変わる兆しはまだ見えない。
読めば読むほどに、この時代の会社に勤めたいとは思わないが、現代人が何かを学ぶべき昭和の遺産に溢れた物語だと思う。何よりも、読めば読むほどに、御巣鷹山の事故が、すでに過去の出来事になりつつあることを、ものすごく感じる。ここに描かれているほどの解像度ですら、この事故のことを、現代のほとんどの人は知らないように思う。
何というか、小説だから書けることの一つの答えを、ものすごく突きつけられる小説のような気がする。