山崎豊子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
里見先生が医者としての本懐を腐らせなかったのは素晴らしいと感じた。
前3巻において、正直、医事紛争についてはよくわからないけれど、法律的な知見についてはある程度分かるので、はっきりしているのは、当時の医療で財前を裁くことは難しかったとは思う。のらりくらりと論う財前に対して、弁護士ともども原告が感情的に動くのは良くなかったと思った。裁判所とは、温情や民意の入り込む余地がないからだ。
今回は、財前が粘菌に這い寄られるように、足元から身動きを奪われるような内容だった。
不思議なもので、ちょっと可哀想な気もした。ただただ財前の転落を願うこの作品に。
山崎豊子さん。これはフィクションなのでしょうか?あなたの話を聞きたいです。 -
Posted by ブクログ
1985年の日航機墜落事故を中心に、日本航空がモデルになっている小説であるということだけは知っていた。どこまでをフィクションとして、どこまで事実として読んでいいのか分からないけれども、読めば読むほどに、大事故が起こりそうな会社の体質に、腹が立ってくる。
平成生まれの人間から見ると、職場の人間関係や実際の仕事の中に、まだ、戦前の名残りが大きく残っていることのリアリティが、印象的だった。共産党員に対する警戒心や「アカ」というレッテル。治安維持法で捕まり転向した転向者。学生運動をしていた経歴。第二次大戦時に戦闘機の整備をしていた整備士や、パイロット。元華族出身であることのステータス。今の人間からすると、もはやあまりぴんと来ない様々なお互いの人間の見方が新鮮だった。
そういった意味では、労働組合の委員長として、労働者たちの待遇改善のために会社の経営陣と戦い、僻地への報復人事を受ける恩地の姿も、新鮮に映るものだった。今でも、春闘など組合による団体交渉のニュースなどは、目にすることがあるが、小説ということを差し引いても、その切実性と熱量に、現代との差を感じる。まだまだ問題があるとはいえ、こういった運動をしてきた歴史のうえに、今の労働環境があるのだなと思う。
だからこそ、家族の生活と自身の健康を犠牲にしてまで、組合の委員長として働き、不当な僻地への長期赴任に耐える恩地の姿は、かっこよくもありつつ、共感はしづらい。終身雇用の時代の、一つの会社の中で生きていく時代の人間の感覚が垣間見える。
今のところ、読んでいて気持ちのいい小説じゃない。ただ何か、読まされる凄みがある。 -
Posted by ブクログ
裁判と学術会議の選挙の両方を渡り歩いていた財前だが、選挙は鵜飼教授の政治もあり見事当選を果たす。一方裁判の方は、元病棟看護婦長の亀山や佐々木の受け持ち医の柳原らの証言により敗訴となる。その後財前は体調を崩し気づいた時には進行胃癌となり病に伏す。
総じてとても面白かった。医療小説であり政治小説でもある。当時の大学病院で行われていたあらゆる駆け引きが描かれており、手に汗握る展開だった。改めて感じたのは医者と患者の関係の大切さで、財前が訴訟されたのも術後診察もせずしっかりと説明をしていなかったからで、仮にそれをしていたら肺転移に気づかなかったとしても遺族は納得していただろう。現代だったらありえないが当時の医療現場ではそれが当たり前だったのだろう。最後食道癌の権威として教授まで上り詰めた財前が自身の体調の変化に気づかず裁判、選挙に没頭し進行を許してしまったのが彼の人生への皮肉だ。 -
Posted by ブクログ
商社マンにとって、パーティは社交は名目、情報収集がメイン。不可抗力等万一も考慮して契約するのが商社マンのイロハのイ。
商社は数字が人を殺すのだと実感したという文章、ぎくりとくるものがある。
絶対ランクAからB、当社もそんな基準があるんだろうか、、。商社の海外支店は、ニッポン交通公社とか呼ばれてるんだろうか、、。
動線とTODO、気を使うとは、動線を把握し、そこで立ち止まるポイントを少なくし、スムーズにする 言葉遣い。
次期戦闘機、僕に見当違いな詰問する前に、防衛庁が取り組むべきと返すが、選挙がらみ資金がらみで国防の重要事項が決まる実態。今の日本はどうか?
大本営参謀の思考法、どんな複雑な事象も問題点を5点以内に要約し、その裏付けをとれば結論出る。結論ファースト、問題点 裏付け。
組織の秩序、一つの負けに拘れば本質を失う
イスラエルアラブ戦争とそれで一儲けを狙う利権者たち。商社間の情報戦争、相手を陥れる戦略、足の引っ張り合い。全て、競合を出し抜いて一儲けするため。ブローカー、よくわからん交易会社、その他種々。
インドネシア華僑の話も興味深い。シンガポールや他の東南アジアに散らばる、ユダヤ的ポジション。彼らのビジネスセンスは見習う必要がある。彼らにとってビジネスは、イエスorノーの世界。加えて、ビジネスとプライベートは全く別物である点も印象深い。
社内体制についても、常務に上がったことに対して不満をいう主人公と早めに常務に上げて、揉まれることを望む社長。組織を強くなるのは、どういう条件が揃った時か?ここも勉強になる。結局、戦略があり、戦術があり、それを実行する人がいる。軍との違いは、自己意識を持った集団である点、会社を達観して見れそう。 -
Posted by ブクログ
2001年(発出1999年) 512ページ
1985年の日本航空123便の墜落事故。当時中学生だった自分にも、忘れられない出来事として記憶に留められています。
凄惨な墜落事故現場の描写、損傷した遺体の描写など、ルポルタージュを読んでいるようでした。現場の過酷な状況下で、遺体の検案や整復を行った医師や看護師には頭が下がる思いです。
そして、愛する家族を失った遺族の、深い悲しみや激しい怒りが伝わってきます。
ダッチロールしながら急降下する飛行機の中で、愛する家族へ向け書いた遺書。当時、多くの人の涙を誘いました。
実名で登場する美谷島さんと健ちゃん。涙が出ます。
中東に単身赴任中に、妻と子ども3人を一度に失った男性。
夫を失い、さらに家業も倒産に追い込まれた妻。
身元不明の部分遺体の中から体の一片なりとも探そうとする家族の執念と愛情。
家族を失い、自分の人生は終わったと、お遍路の旅に出る男性。
日航機墜落事故には陰謀論の噂があります。作中ではわずか数行の部分でした。陰謀論を初めて知ったのは、フライトレコーダーの開示を求めた訴訟がきっかけでした。請求は棄却されています。そして、相模湾に沈んだ機体の一部を引き上げないことなど、確かに素人目にも腑に落ちないことがあります。森永卓郎さんの著書でも触れられています。複雑な思いにとらわれていました。
しかし、陰謀論はともかく、物語は人間ドラマでした。事故は人災によるものと結論づけています。国民航空の安全を蔑ろにする社内体制が招いたことに他ならないでしょう。飛行機は安全な乗り物で、私が昔聞いた話では、毎日搭乗しても事故に遭う確率は二千何年だかに一回(今調べると438年に一回とか666年に一回とか)と言われていました。そして、安全な空の旅で楽しいはずだったフライトが恐怖に変わった瞬間。乗客の恐怖がどれほどだったかと思うけれど想像もつきません。残された遺族の悲嘆。それでも、2度とこのような悲劇を起こさせてはならないと、遺族会を立ち上げ、前に歩き出した家族の心の強さは尊敬に値します。
来年で事故後40年。改めて、亡くなった方々のご冥福をお祈りします。