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十年におよぶ海外左遷に耐え、本社へ復帰をはたしたものの、恩地への報復の手がゆるむことはなかった。逆境の日々のなか、ついに「その日」はおとずれる。航空史上最大のジャンボ機墜落事故、犠牲者は520名――。凄絶な遺体の検視、事故原因の究明、非情な補償交渉。救援隊として現地に赴き、遺族係を命ぜられた恩地は、想像を絶する悲劇に直面し、苦悩する。慟哭を刻む第三巻!
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Posted by ブクログ
こんな作品を書くなんて、山崎豊子さんは本当にものすごい人だな。 毎年、8月にニュースで、御巣鷹山に登る遺族の方のことが、取り上げられるけど、過去に他の小説で日航機事故を題材にしたまのを読んだこともあるけれど、改めて、大事件だったんだなと、今この歳になって読んだからなのか、感じる。 一気に、520名の...続きを読む人が亡くなったこと、現場の混乱、警察、自衛隊(特に空挺団)の奮闘など、当時の情景が、ありありと思い起こさせられた。※小説だから、現実全てを描ききれることはないのかもしれないけれど。 主人公恩地の、労使交渉と、会社の利益追求?の方針と、ハインリッヒの法則を仄めかすような、アフリカ編の際の、世界各地での日航機の事故やトラブルが、不気味に描かれて、その中の一例は、対外的な説明や対応だけが美談のように持ち上げられて、根本的な原因追求と改善が、後回しにされているような状況が描かれていて。 一読者かつ、事故発生当時まだ生まれてもいない分際で、早計なことは言えないけれど、いくつもの分岐点があったんじゃないかと思う。 その後に世の中で起きている出来事も、似たような構造で起きていることが、あったのではと思う。ということは、これからも、また、何かしら同じような構造のことが起きるのかも、とも。 日本にとっても、世界にとっても、忘れちゃ行けない出来事だったんだと、改めて、認識した。 御巣鷹山編がクライマックスでも、おかしくないくらい、インパクトのある一冊だったけど、この後、会長室編の上下2巻に続いていくということで、引き続き、沈まぬ太陽を読んでいきたい。
何百人もの犠牲者を出した史上最悪の飛行機事故。 生々しい事故現場や犠牲者の方々の描写、遺族の方々の悲しみ...心抉られました。飛行機に乗るのが怖くなりました。 恩地さんの誠実さには心打たれ、苦労が続いて大変な人生で気の毒にも思いました。次巻に進みます。
10年近くに渡りアフリカ等にたらい回しにされている恩地。精神的にも限界を迎えつつある。一方日本では、35周年の記念パーティーを開催している中で、ジャンボ機が墜落したとの一報が。史上最悪の航空機事故を起こした会社として、被害者、マスコミ、政府から叩かれる。恩地は被害者窓口対応を命ぜられ、謝罪と慰霊の日...続きを読む々を送るが、会社上層部は変わらず保身と蓄財に走っている。今では考えられないと言いたいところだが、本当はどうなのかと思うと暗澹とする。山崎豊子の小説はだいたいこんな感じなんだよなあ。
『沈まぬ太陽』全5巻の中の3巻。だがこの1巻だけでも、読んだーという感じ。御巣鷹山篇である。作中では国民航空となっているが、記載されているのは、あの日航ジャンボ機墜落事故の全貌である。
小説内では、1巻から20年も経っているのかと言う衝撃もさることながら 前作とは打って変わって、事故の悲惨さに焦点を置いている 墜落事故後、家族が生きていると信じてる人、亡骸をなんとしても弔いたい遺族 問題になっていたコストカット、利益重視が積み重なり 防げたかもしれない災害(墜落事故) 悲しみ...続きを読むを抱える遺族の世話役として遺族と向き合う主人公恩地の直向きさは言わずもがな 甲子園を見るために1人で飛行機に乗った健ちゃんの話は辛すぎる… スチュワーデスさんが居たとしても、家族のいない状態で30min墜落まで体験したと思うと胸が痛い 二度と同じ事故を起こしてはいけないという思いで、アメリカに向かった川北さん 保障をもらっても家族は戻らないと言って八十八ケ所の巡礼に向かった坂口さん
日航機墜落事故の悲惨さを初めて知った。 被害者、そして被害者の遺族の描写に時々涙が出そうになってしまった
今まで日本航空123便墜落事故について、航空史上最大の飛行機事故というのもピンとこず、多くの方が亡くなる痛ましい事故があったという認識だった。しかし、本作品を読んで、過酷な現場の様子や残された遺族の気持ちを知り自身の無知と残酷さを恥じた。 事故は起きただけでは終わらない。事故はその後を生きる人達に...続きを読むも襲いかかる強大なモノだというのを、本作品を読んで強く感じた。 ーー亡くなった方々のご冥福をお祈りします。
ついに航空史上最悪のジャンボ機墜落事故が起こり、生存者の救助、墜落機の回収と事故原因の調査がはじまる。乗客乗務員、計524人のうち、生存者は4名、250名の死者が出た。被害者遺族への補償交渉、国民航空による説明、事故機を製造したボーイング社の対応。遺族をはじめとする、現場で亡くなった人々と向き合った...続きを読む人間と、そうでない人々との間の温度差に、40年経った今でも、読むと怒りを覚える。 この期に及んで、まだ体面を保つため、補償交渉に少しでも早く移ろうとする動きや、遺族間が団結することを避けようと、露骨に横の繋がりを切ろうとしてくる会社の動きは、今の感覚としては信じがたい。会社の心理は、今の社会ではどうなっているのか知りたいことでもある。 そういった中、9歳の息子を事故で亡くした美谷島邦子さんが、被害者遺族の会「おすたか会」を発足しようと決心して、実際に発足までに至る様子が、一番印象的だった。 遺族同士の連携が妨害される中、遺族の一人一人に連絡を取り、入会書を作り、会報の準備をし、情報交換会を開いていく。他の遺族たちも「おすたか会」の存在を新聞の端の小さな記事が見つけて、連絡をとってきたりする。ネットのなかった時代、一度、別れてしまった人たちがつながることへのエネルギーはどんなものだったのだろうかということは、想像を広げるしかないが、途方もないことだったのだろうと思いながら読んだ。 そして、最後は、そういった遺族の会に参加することもなく、補償交渉をすることもなく、四国八十八ヶ所の霊場へ遍路の旅に出る坂口清一郎の姿で終わる。 先日、日本航空の「安全啓発センター」に行ってきた。「安全啓発センター」は、今なお航空史上最悪のジャンボ機墜落事故「JAL123便墜落事故」の記憶を風化させないために、社員研修用に作られた施設であるが、予約制で一般公開もされている。係の案内では、JALの安全研修の基本理念として、「三現主義」を大切にしていると説明していた。「三現主義」とは、「現地(事故現場)」、「現物(残存機体、遺品など)」、「現人(事故に関わった人)」を大切にするという理念で、その原因究明や遺族への対応として、この三つを忘れないようにすることだという。 事故機の一部や遺品、揺れる機内で書かれた遺書、遺族の方が調査終了後も山に登り集めた破片。記憶に焼きつくようなものがたくさんあった。 センターには、資料室も併設されていて、被害者遺族の会「おすたか会」の会報や、遺族がその後に書いた絵本や小説といった作品、事故資料も読めるようになっている。 資料室を見ているとき、『沈まぬ太陽』を探していたが、見つけられなかった。見落としがあって、もしかしたら置いてあったのかもしれない。 『沈まぬ太陽』の冒頭には、こう書いてある。 「この作品は、多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基づき、小説的に再構築したものである。但し御巣鷹山事故に関しては、一部のご遺族と関係者を実名にさせて戴いたことを明記します。」(p8) この作品は、JALの言う「三現主義」にどのように適う、あるいは適わないものなのだろうか。山崎豊子は、徹頭徹尾「小説的に再構築したもの」である立場を貫いている。 最後の坂口清一郎の姿は、おそらく、現場にも、現物にも残らず、現人としても、もう出てくるものではないのだろうと思う。なぜなら、坂口は、息子夫婦と孫三人、妻も亡くし、社会とのつながりを自ら絶って、遍路の旅に出た。どんな補償をもってしても、どんな裁判をもってしても、償うことができないものがあることを知るのは、「恩地」の他に誰もいない。それは、まさしく小説でしか描けないものだと思う。 現場も、現物も、現人も伝えていない「小説」という形でしか描けなかったものが、何であったのかを思いながら、最後まで読み切りたいと思った。
委員長だった彼が、御巣鷹山の日航機墜落を受けて、ご遺族に寄り添う。一方で、本社は自己保身に走り続ける話。
2001年(発出1999年) 512ページ 1985年の日本航空123便の墜落事故。当時中学生だった自分にも、忘れられない出来事として記憶に留められています。 凄惨な墜落事故現場の描写、損傷した遺体の描写など、ルポルタージュを読んでいるようでした。現場の過酷な状況下で、遺体の検案や整復を行った医師...続きを読むや看護師には頭が下がる思いです。 そして、愛する家族を失った遺族の、深い悲しみや激しい怒りが伝わってきます。 ダッチロールしながら急降下する飛行機の中で、愛する家族へ向け書いた遺書。当時、多くの人の涙を誘いました。 実名で登場する美谷島さんと健ちゃん。涙が出ます。 中東に単身赴任中に、妻と子ども3人を一度に失った男性。 夫を失い、さらに家業も倒産に追い込まれた妻。 身元不明の部分遺体の中から体の一片なりとも探そうとする家族の執念と愛情。 家族を失い、自分の人生は終わったと、お遍路の旅に出る男性。 日航機墜落事故には陰謀論の噂があります。作中ではわずか数行の部分でした。陰謀論を初めて知ったのは、フライトレコーダーの開示を求めた訴訟がきっかけでした。請求は棄却されています。そして、相模湾に沈んだ機体の一部を引き上げないことなど、確かに素人目にも腑に落ちないことがあります。森永卓郎さんの著書でも触れられています。複雑な思いにとらわれていました。 しかし、陰謀論はともかく、物語は人間ドラマでした。事故は人災によるものと結論づけています。国民航空の安全を蔑ろにする社内体制が招いたことに他ならないでしょう。飛行機は安全な乗り物で、私が昔聞いた話では、毎日搭乗しても事故に遭う確率は二千何年だかに一回(今調べると438年に一回とか666年に一回とか)と言われていました。そして、安全な空の旅で楽しいはずだったフライトが恐怖に変わった瞬間。乗客の恐怖がどれほどだったかと思うけれど想像もつきません。残された遺族の悲嘆。それでも、2度とこのような悲劇を起こさせてはならないと、遺族会を立ち上げ、前に歩き出した家族の心の強さは尊敬に値します。 来年で事故後40年。改めて、亡くなった方々のご冥福をお祈りします。
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沈まぬ太陽
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山崎豊子
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