山崎豊子のレビュー一覧
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史上最悪の航空機事故を起こした会社を復活させるべく、関西の紡績会社から社長が送り込まれる。総理や総理の参謀が三顧の礼で迎えた「会長」だが、社長、副社長は古い体質のままで、一向に改善が進まない。関連会社の会長に君臨し、会社の予算を湯水の如く使う者、官僚との癒着に精を出し平社員を奴隷のように使うもの、組合の統合を防ごうと暗躍する労務担当役員など。その中で恩地は被害者に向き合い、労働者の立場で行動するが、金をつかまされたマスコミにも叩かれ、追い込まれる。政治家と結びついた裏金づくりがひょんなことから東京地検に伝わり、役員に捜査の手が伸びるが、恩地はアフリカへの転勤を命ぜられる。事実に近いこと、近いか
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エリート社員だった主人公が、思わぬ不本意な形で労働組合の委員長を引き受けることになる。元来の真面目さ、誠実な性格で、末端の社員の賃金引き上げなどの処遇改善を掴み取るが、一本気な進め方が災いし、また、たまたま首相フライトを交渉の材料に使ったということで、経営陣との対立が決定的となる。その報復人事とばかりにパキスタン、イラン、ケニアの駐在として10年間のいわば流刑に処される。この間、良い出会いもあるのだが、家族も疲弊、出世もおぼつかず、さまざまなハードシングスで発狂寸前まで追い込まれる。大企業や保身に走り自分のことしか考えない役員の嫌なところを煎じ詰め、煮詰めて、かたまりにしたような話。現代であれ
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第1巻は壮絶な物語の幕開けでした。
主人公が直面するのは、10年に及ぶ海外転勤という過酷な運命です。
現代の価値観から見れば非人道的とされるような人事異動ですが、彼はその不条理に抗い、不屈の信念を持って挑み続けます。
その姿は私の想像をはるかに超えるものであり、強い感銘を受けました。
さらに、主人公には家族がありながら、アフリカで長期滞在を強いられるという厳しさも描かれており、読んでいて胸が締め付けられる思いがしました。
なぜ周囲が止めることもなく彼を送り出したのかと疑問に思いましたが、それは当時の時代背景や価値観に深く根付いているのだと感じました。
この章は単なる導入ではなく、壮絶な試練の序 -
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大地の子といえばすぐに上川隆也を思い浮かべるくらい印象深いドラマだった。
この作品を舞台化すると知り、そういえば小説は読んだことがなかったと思い、今回audible で聞いた。
audible の朗読は声も速さもちょうど良く聞きやすかった。
時節柄、映画も戦争関係作品を目にする機会が多い。
こういう時代があったのだと刻んでおかなければならない。
中国残留孤児のニュースは子供の頃、よく目にしていた。
記憶の片隅にあったその言葉を小説で思い出す。
日本軍の大陸での行い、残された子供達がたどったその後。
小説だけでも辛すぎる。
山崎豊子さんの凄さが身に沁みる。
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小説内では、1巻から20年も経っているのかと言う衝撃もさることながら
前作とは打って変わって、事故の悲惨さに焦点を置いている
墜落事故後、家族が生きていると信じてる人、亡骸をなんとしても弔いたい遺族
問題になっていたコストカット、利益重視が積み重なり
防げたかもしれない災害(墜落事故)
悲しみを抱える遺族の世話役として遺族と向き合う主人公恩地の直向きさは言わずもがな
甲子園を見るために1人で飛行機に乗った健ちゃんの話は辛すぎる…
スチュワーデスさんが居たとしても、家族のいない状態で30min墜落まで体験したと思うと胸が痛い
二度と同じ事故を起こしてはいけないという思いで、アメリカに向 -
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ついに読み終わったという感が否めない。内容が重厚で、読めば読むほどに楽しいものでないだけに、ずいぶんと読み終えるのに時間がかかってしまった。そのため、序盤の方とかは、かなり記憶から薄れ、語れるほどに覚えていない。
まさに、こうして重大な事故の記憶は、過去の話になっていってしまうのだろう。
国見の「更迭」から、恩地のナイロビへの赴任。事故の真実、会社の腐敗の是正に尽力した二人の主人公の結末は、まったく希望を見せず、いかに正義を突き通すことが絶望的であるかを物語っているように見える。
物語の中でたびたび利根川総理らが、「国見には政治ができない」ということを言うが、正しいことをするためには、正しい -
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(ネタバレあり)怒涛の一気読み。沖縄返還に係る日米交渉と米側への補償金の支払いにかんする密約を暴いた記者。政府から機密漏洩教唆で訴えられるが国民の知る権利を掲げて真っ向から対立する。その記者に機密文書を漏洩した女性事務官との不倫関係なども取り沙汰され、泥沼の裁判となる。国家機密といえば正当性あるが、中身は米側に忖度し日本国民の税金から不当に支払われる迂回資金であり、国民を欺く裏金。国家(というか、そのときの権力者)が記者を潰しにかかる様子は、権力の恐ろしさを物語っている。元ネタは実際に起こった「西山事件」。小説を通じて、権力や官僚の腐敗や事勿れ主義、不都合な事実を握りつぶそうとする傲慢さや忖度
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完読!!傑作ですよ!
この作品が描かれたのは昭和中期。癌という病が一般的にまだ不治の病として恐れられており、医学もまだ未発達で現代のような緩和治療がない時代。大学病院の在り方として研究の学会発表とあらゆる症例のレポートがメインとなり、少なからずとも患者の扱いが現代とは異なり、悪い言い方をすれば研究材料だったのだろう。本書裁判における国が捉える『医師』の定義付けとしては『人の命を扱う重要な立場故に可能な限りの手段を用い治療努力をすべき』といった医療現場への警笛。そして、日進月歩である医療現場への尊重がある中での医師の立場と責任感の追求。医師である前に一人の人間であることを忘れるなかれ、といった現