【感想・ネタバレ】運命の人(四)のレビュー

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Posted by ブクログ

最終巻。
予想だにしていなかった方向へ話が展開していく驚きを感じながらも小説としてまとまりのある作品となっていることに脱帽しました。

外務省機密漏洩事件を機に、沖縄に関心を持ち続けていた主人公が移り住んだ沖縄で目の当たりにした現実。
決してフィクションではない重みがひしひしと伝わってきました。

私は沖縄には行ったことはなく、行きたいと思う理由はリゾートとして、という気持ちが大半だったけれど
沖縄の歴史を学ぶことの大切さ、また軽々しく触れられないほどの、その歴史の持つ重く暗い意味に胸が締め付けられる思いでした。

一方で夫婦の絆の強さについても、清々しい気持ちで学ぶことが出来た作品。
ずっと読み継がれてほしいと思います。

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2022年10月17日

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ネタバレ

失意の内に弓成が向かった沖縄に舞台が移る。
そこで本土決戦の証言を聞くことになるのだが、途中で文章を区切ることもなく、内容も相まって実に重苦しく綴られていた。集団自決のため、我が子を手にかけるとか地獄だ。そして今でも沖縄は矛盾を押し付けられている。
それを伝えるべく弓成は再びペンを取る。三巻の感想で「変な理想に目覚め」と書いたが、弓成はここ沖縄で初めて確かな足場を得たのではないかと感じた。
思うに任せず運命の荒波に飲まれたが、自分に課せられた使命を受け入れ再起した、運命の人とは弓成自身のことではないか、と最後まで読んで思った。
ヌチドゥ宝=命あってこそ。生きてさえいれば。

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2022年04月17日

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温故知新という言葉通り、過去の沖縄を知っていきながら主人公は少しずつ沖縄問題と再度向かい合い、自分自身と向かい合い、妻と向かいあいながら、話が進んでいきます。

沖縄の戦争がどうだったかは本、ニュースなどでの特集から知っていることはあったが、それ以上にこの本から勉強させてもらいました。今までは裁判が中心の話であったため、次が次がと気になるため、読むスピードも早かったのですが、ここに来て沖縄の戦中、戦後のことはじっくりと読みました。一字一句逃さないようにと。過去から多くを学び、そして受け止め、悔い改めること、反省するべきところは反省し、次へつなげるのが後世に残されたものの責務だと改めて思いました。

「運命の人」というタイトル。
主人公が運命の人、主人公を取り巻く人たちが運命の人。一度振りかざした剣を鞘に戻すのではなく、振りかざした理由を死ぬまで主人公は主張していくのだろうなと思いました。

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2021年09月10日

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(一巻から四巻まで合わせたレビューです。)

大好きな山崎さんの(もしかすると最後になるかもしれない)長編小説。

沖縄返還時の機密文書漏洩事件(西山事件)をテーマに、
相変わらずの取材力&構成力で読者をぐいぐい引っ張っていきます。

この分野は完全に無知でしたが、小説を通じて、
昔の自民党の政治のやり方を目にすることができました。
主人公の機密文書を入手した手段は、
倫理的によい方法だとは言えませんが、
それ以上に、臭いものに蓋をする昔の自民党の政治家や官僚にも、
沖縄の人たちだけでなく、日本人全員が
もっと憤りを感じるべきなんでしょう。
現在も普天間基地移設問題で民主党が揺れていますが、
少しばかり当事者意識を持って
この問題を受け止めれるようになった気がします。

山崎さん、もう一冊書いて欲しいなぁ。。

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2021年06月24日

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時だけが許容するものがある。
時が過ぎても許容できないものもある。
それを伝える人がいる。

(以下抜粋)
○娘が「アメリカーがやってくるよ、早く殺して」と何度も言い募る、お母はその通りにしてやったよ、ザーッと血しぶきの雨だった、ガマ一面に飛び散った血は、おしくら饅頭のようになっていた人の上に降り注いで‥‥(P.52)
○リサーチしたい文書にすぐ辿り着けるとは限らない。何度も文書の請求を繰り返し、勘を養うことが大切だった。

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2020年01月01日

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第4巻は沖縄戦の当時の惨状から終戦を迎え、戦後の沖縄米兵少女暴行事件に際しての日米地位協定によりその対応に歯がゆい思いをする沖縄の置かれた立場が描かれる。
兼ねてより自分は世の中には知らない方が良いことが多々あると考えているが、歴史を腑に落とす為には避けずに知っておくべき事実を知り自分なりに咀嚼しなければならないのだろう。
かと言って、木を見て森を見ずとならないように。

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2018年08月05日

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ネタバレ

面白かった。ものすごい読み応えのある小説だった。
何より、著者の圧倒的な取材量にただただ尊敬の意を感じる。

今までの3巻はこの4巻のための序章だったのではーー山崎豊子という作家は戦争への怒り悲しみを原動力に筆を取っているというから、そんな感想を持つ。
沖縄に米軍基地がある、ということは無論知っていても、それによる住民の苦悩、実際に受ける理不尽な扱いの数々を恥ずかしながら想像することがなかった。
方言札の話ーー方言を撲滅しようとしていたのに、東京の学者が「方言をなくせば文化がなくなる」と方言を残したために、アメリカのスパイと間違えられ、本土から来た兵隊に殺されてしまっていたーーなんてこと、全く知らなかった。
やるせないにもほどがあるエピソードだ。
最後は密約の存在が明らかになり、弓成氏の潔白が証明されたということだったが、一体何が悪だったのかまだ整理がつかない。
そもそも密約があることはダメなのか、特定秘密保護法はわたしたちにどういう影響を与えるのか、、この小説をきっかけに自分の考えを持ちたいと思う。

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2016年01月28日

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ネタバレ

いわゆる『外務省機密漏洩事件』、『西山事件』を題材にする本作。

・・・
これまでの三巻で、元特ダネ記者弓成の光と影、頂点と凋落が描かれました。
第四巻は、言わば弓成の回復が主題です。

最高裁への控訴が棄却され、自らが信念をもって行っていたことが法の最高法律機関からも否定される。仕事も放って、失意の中沖縄へ流れ着いた弓長。

悲惨な沖縄戦の歴史、自らがすっぱ抜いた返還の際の密約、そしていまだ絶えない米兵の強姦事件。これらの舞台となった当の場所に住まう人々の生の声を聞き、それでも優しさを失わない様子に触れる中で、弓長の心は徐々にほぐれてゆきます。

そんなさなか、沖縄出身の学者によって米国で沖縄返還時の費用補償についての密約の文章が発見され、弓長の潔白は事実上証明されたことになります。また妻の沖縄への来訪をきっかけに、長年の溝がこれから埋まろうとする兆しも見えてくるなか、物語は終焉を迎えます。

・・・
しかしどうしても感じるのは妻の悲惨さです。

30代で事件がおき、20年以上放っておかれ、自ら家と子供をまもりつつ仕事をもこなした由里子。本人には本人なりの感情・充実・ないしは紐帯があるのかもしれません。でも、誤ることすらなくこれだけの間、他人ではなく自らの家族を放置するような連れ合いに対する感情はいかばかりか、と思いを馳せずにはいられません。

本作、政治とジャーナリズム、戦争の歴史等、学ぶべきトピックが多い一方、家庭の在り方についてもまた昭和の悪しき?例も見ることが出来た作品だったと思います。

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2023年08月18日

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沖縄密約事件を通して伝えたかったのは、戦争の無惨さと沖縄の不平等な現状だと思いました。
日本人としてもっと沖縄に対する理解を深めたいと感じました。

弓成さんが絶望の淵から這い上がっていく姿にも勇気をもらいました!

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2023年08月13日

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4巻が1番面白かった。
沖縄返還のため400百万ドルを秘密裏に日本が支払ったことはやむを得ないと思う。
それを国民が知る必要が必ずしもあるとは思わない。
沖縄を平和的に返還してもらうことに意味がある。
沖縄が犠牲になっていることは全国民が知るべきだ。
沖縄の過去と現在を知ることができる本。

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2023年03月05日

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最高裁への上告を棄却され、家業も失った、失意の弓成は、死地を求めて、沖縄にたどり着く…

第二次大戦、日本で唯一、地上戦が行われた地・沖縄で、戦争体験者たちから、当時の壮絶で悲惨な話を聞くうちに、立ち直っていく、弓成。

そして、米軍海兵隊員による少女暴行事件、米軍ヘリ墜落事故…

現代の基地問題へとつながっていく…

やがて、機密文書が発見され、弓成の身の潔白も…

結局は機密情報漏洩を隠蔽するために、弓成を有罪としたのか…
国家権力がジャーナリズムを押し潰そうとしたのか…

由里子とも再会を果たし、『長い間、すまなかった』と詫びる…

『沖縄を知れば知るほど、この国の歪みが見えてくる。それにもっと多くの本土の国民が気付き、声をあげねばならないのだ』
沖縄を伝えていかなければと、ペンをとる弓成。

『運命の人』とは、弓成だったのか…
現代の沖縄が抱える問題をもっと知らしめるという運命にあったのか。






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2023年01月30日

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3巻までは国家権力とジャーナリズム対立が中心の内容ですが、最終巻では沖縄戦史から現在にまで至る苦悩が一気に書かれています。
胸を抉られる思い、また知らなければならないという思いで読みました。

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2021年10月30日

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 国家権力vsジャーナリズム、完結編。
 本巻は、今までの法廷闘争が中心の話ではなく、日本復帰後の沖縄の現状に焦点を当てた内容になっている。個人的には全巻通して最も注目すべき内容に思える。ひめゆり学徒隊や鉄血勤皇隊の視点から描く沖縄地上戦の様相(方言矯正・集団自決など)、戦後の基地問題、米兵による少女暴行事件、沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落などなど、戦後沖縄が今なお抱える問題の数々。そうした事象から見えてくる沖縄の現実、沖縄県人の思いなどが描かれており、非常に重たい内容ではあるが、しっかりと目を向けなければいけない部分である。

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2021年04月01日

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返還後も続く沖縄の戦後。そして、運命の人とは、最後まで心がつながっていた、それを信じて長い刻を待っていた。その描写が、よかった。

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2021年01月09日

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西山事件の表層のスキャンダラスな事柄に終わらず、沖縄戦・沖縄の少女暴行事件・米軍ヘリ墜落事件まで沖縄の問題を深く描いている。未だに沖縄の米軍基地問題は解決していないことに虚しさを覚える。山崎豊子作品には珍しく救われるラスト。

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2020年11月05日

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その後の話も、読んでみたかった。
夫婦がどうなったのかも、気になってしまう。
沖縄に旅行に行く前に、読んでおきたかったな。

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2020年10月09日

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読み応えのある本でした。
国家機密をスクープした政治部記者。
実話とは知らず。
4巻は戦争の話が苦手な私にとって沖縄の現実を知るとてもいい機会になったと思う。
ドラマもあったなら見れば良かった。

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2019年06月30日

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実際に起きた西山事件を元に、30年に渡って描かれた大河小説。第3・4巻は沖縄での米軍基地問題を主として取り上げているが、この問題の根深さをあらためて感じる。これは本土にいては十分に理解できない点だろう。

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2018年12月07日

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読み応えのある小説だった。
主題は国家とジャーナリズム、沖縄問題と骨太なテーマであり、主人公弓成と妻由里子、秘書の三木などをめぐる人間模様もまた濃厚で面白かった。タイトルの運命の人というのは一体どういう意味なんだろうか。

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2017年06月04日

Posted by ブクログ

一~三巻までとは少し異なる展開。
裁判を終えた弓成が実家に戻り、さらにその後ボロボロになって沖縄へ。
そこからは沖縄の歴史と、米軍との関係の話へ。
別の本を読んでいるようでしたが、これはこれで本当に内容の濃い話でした。
当時のことを語る当事者にしか分からない心情や実際にあった事を知り、とても心が痛いです。
本土の人にはあまり知られていない戦時中戦後の沖縄の事実。
今も基地問題は続いていますが、考えさせられる一冊でした。

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2016年03月26日

Posted by ブクログ

小説であるが、「沈まぬ太陽」の様に実際にあった事件が元になっている社会派エンターテイメント小説である。
この沖縄返還の日米交渉密約に関して全くの無知だったため中盤の裁判内容は淡々としていて面白みに欠けると思ったが、
平行してその密約について少し調べたことで興味が増し様々な事(特に密約・新聞の在り方・米軍基地)をもっと深く知りたくなった。
「沈まぬ太陽」であったようなある一つの組織を叩くものではなく、問題提起の意味合いが深い気がする。
またこの密約事件や沖縄返還等に関して知識を増やしてから読むと違った捉え方が出来るだろう。
毎回山崎豊子には私の知らなかった重要事件を小説を通して知らしめてくれる。

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2015年12月02日

Posted by ブクログ

4巻は星四つ。
たしかに左翼的ではあるけれども苦笑

沖縄返還の密約をスクープした、あの西山事件をモデルに書かれた本作。
3巻までは国家権力の凄まじさを描く。
4巻は逆に国家権力なんてアメリカ様の前では。。。といったような沖縄の不条理さを描く。まさに正反対。
沖縄については考えなければいけない。

それにしても、電信文を国会答弁で振りかざしたのが、横路だとは。。。北海道一区なので、道民としては呆然とするばかりである。

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2015年11月15日

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沖縄に移住した弓成は、沖縄の人々から
第二次世界大戦中の沖縄の惨状を聞き、彼らが終戦後も米国による支配により苦難を強いられ続ける姿を見て徐々に物書きとしての使命を思い出していく。
重たいが明るさを感じたエンディングでした。

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2023年07月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

4巻はガラリと話が変わって沖縄の現状についてのお話。戦前・戦後の沖縄について知るには良い本だと思いました。・・・が、小説としては面白く無かったです^^;。

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2021年03月27日

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ネタバレ

宝島を読んでもう少し沖縄の事を知りたいと思い、以前途中で挫折したこの小説を再読。
でも奥さんがあまりにもかわいそうなのと、主人公と不倫相手に対してイライラしてしまったのとで、今回も読むのが辛かった。
クリーンハンド:人を責めるものは自分の手がきれいでなければならない。まさにこの言葉通り。
国の行った事は責められるべき事だとは思うけど、結局それを暴く側の人間がクリーンでないと、何を言っても響かなくなってしまう。残念な話。
4巻で主人公が沖縄に実際に行って、沖縄の現状を描いているけれど、4巻の内容をもう少し詳しく描いて欲しかったな。

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2020年10月03日

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さすが山崎豊子の作品という感じ。最後まで一気に読ませてくれた。ただ4巻の沖縄の部分は小説としては少し間延びしてしまった感じで残念。もちろん史実としては非常に重要で知っておく必要がある事柄。政府はこういうことをする可能性があるということを理解して生きていく必要がある。

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2018年10月09日

Posted by ブクログ

 2012年1月、本木雅弘主演でドラマ化されている。語りたいことが多すぎるためなのか、なんだか最終巻を読み終えてもまだ主題がぼやけていて内容が上手く伝わってこない。原因は弓成が『不毛地帯』の壹岐正ほど立派じゃなく、『白い巨塔』の財前教授のように反省もなし…かといって『華麗なる一族』の万表鉄平のように死して決着を着けるわけでもない。巨悪と戦うには小物過ぎる。人格者とはいまわなまでも不倫で記事を手に入れるってだけで、その後いくらカッコつけても取り返しようがない。この小説の失敗はそこにある。

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2016年06月11日

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最終巻は、沖縄返還に関する政府のアメリカとの密約を巡り、その国家権力に翻弄される主人公である新聞記者の話から打って変わって、沖縄の抱える悪しき歴史と今なお続く問題を描いている。これが作者が本当に書きたかったものなのかもしれないけど、主人公のモデルである西山氏は沖縄には行っておらず、完全にフィクションのようですね。ここまでは実際にあった事をフォーマットにしているだけに、戦争時の悲惨さを経験者が語るシーンをはじめ、やや強引なイメージを受けてしまう。西山氏は作品発表時は大幅な創作に反発していたようですが、沖縄問題に関して作品の展開どおり執筆を再開したとのこと。モデル本人に影響を与えるなんて、凄い作品ですね。
強引なイメージで読み味は良くはないですけど。
作者の膨大な取材と、それをまとめ上げる筆力には脱帽です。

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2015年12月23日

Posted by ブクログ

外務省の機密文書漏洩問題に絡む男女の不倫というスキャンダラスな面に視線が集まりがちであるが、原作を読み進めて行くにつれ、本書の主題は実は「沖縄」。

著書は太平洋戦争で日本で唯一の地上戦が行われた沖縄戦の事を多くの人に知ってもらいたいという一心から、この小説の構想が出来上がったんだなと感じる。

鼻極まる沖縄戦では15万人もの生命が奪われた。取材を重ねれば重ねる程、沖縄は本土の犠牲になり続けていることを思い知らされる。

後書きにて、著者は「早期の文庫本化を出版社に依頼した」と語っている。戦時中、徹底した皇民化教育を施し、10代の若者を「本土の日本人以上の日本人たれ!」と鼓舞し続け挙句に見捨てる。この悪行の首謀者は紛れもなく日本人。この自虐行為が、今日まで連綿と続いている。

今尚日米間に横たわる米軍基地問題。在日米軍基地の75%が沖縄に集中しており、市民は四六時中危険に曝されていると言っても過言ではない。基地問題の解決がまったく進まない状況は、本土に於いて終戦10年後には「もはや戦後ではない」という宣言し驚異な経済復興を遂げたものの、沖縄に於いては例外であることを著者は最も問いたかったんではないか。

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2022年01月30日

Posted by ブクログ

「沈まぬ太陽」と同じく、現実社会の事件の叙述に筆が走りすぎて小説としてはイビツな印象だが、沖縄問題が日本にとって大きな意味をもっている時勢であるから、多くの人に読まれてほしい作品だ。

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2018年10月14日

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