あらすじ
警視庁地下の取調室で重々しく響いた声は「弓成亮太、逮捕状を執行する」。強大な国家権力と「報道の自由」を訴えるジャーナリズムの全面戦争に沸騰する世論。ペンを折られ、苦悩する弓成。スキャンダル記事に心を乱し、家族を守ろうとする妻・由里子。弓成の不倫相手と注目され被告席でぐったりと目を伏せる元外務省の三木昭子と、それをじっと見つめる夫。そしてついに、運命の初公判──。戦後史の意味を問いつづける著者・渾身の巨篇、第2巻。
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Posted by ブクログ
ペンと紙を武器とする新聞記者の主人公が逮捕されペンを折られたところから2巻は始まります。
知る権利を掲げて戦うジャーナリズムと国家公務員法の守秘義務を破ったことで起訴した国家権力との熾烈な法廷での争いが描かれています。少しばかり難しい部分もありますが、昔も今も変わらない「○○の権利」について勉強にっています。何でも権利を主張すればよいとも限らない部分も見えてきます。
沖縄返還は歴史の教科書等で目にすることではあるかと思いますが、基本的に綺麗に描かれていると感じます。実際はこんなにドロドロとして、いろんな人がいろんな問題と戦って今の「沖縄県」があるのかと思うと、平和とも綺麗ともいいがたい出来事だったのではないかと思いました。
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(一巻から四巻まで合わせたレビューです。)
大好きな山崎さんの(もしかすると最後になるかもしれない)長編小説。
沖縄返還時の機密文書漏洩事件(西山事件)をテーマに、
相変わらずの取材力&構成力で読者をぐいぐい引っ張っていきます。
この分野は完全に無知でしたが、小説を通じて、
昔の自民党の政治のやり方を目にすることができました。
主人公の機密文書を入手した手段は、
倫理的によい方法だとは言えませんが、
それ以上に、臭いものに蓋をする昔の自民党の政治家や官僚にも、
沖縄の人たちだけでなく、日本人全員が
もっと憤りを感じるべきなんでしょう。
現在も普天間基地移設問題で民主党が揺れていますが、
少しばかり当事者意識を持って
この問題を受け止めれるようになった気がします。
山崎さん、もう一冊書いて欲しいなぁ。。
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沖縄返還での地権者への土地原状回復費に関する密約の外交文書漏えい事件を描いた小説。第二巻。
情報を得た記者が、情報ソースの事務官と不倫関係だったことから、争点は「知る権利」の問題からから一転して醜聞に。権力という虎の尾を踏むと怖いですね。少し違うのかもしれないですが、外務省がらみという事もあり、佐藤優氏の「国家の罠」をほうふつさせます。
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1巻に続いて内容が気になるのでスピード感を持って読みました。小説はおもしろいと読むスピードも早くなりますね。テレビドラマのシーンを思い出しながら、内容に引き込まれていきました。
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いよいよ裁判が始まる。弓成の姿が痛々しい。プライドを傷つけられ、心休まる場所もなく裁判に臨む。妻・由里子は離婚を考え始める。事務官・三木はあまり登場しないが心神喪失状態?なのか。裁判での外務省の隠ぺい体質に驚いた。史実に照らせば証人達は偽証していることになるが、事実だとすればこれほど恐ろしいものはない。弓成は「虎の尾を踏んだ」と言っていたが事実を隠す国家との闘いに負けてほしくない。終盤で由里子のいとこに当たる人物が登場。流れがどう変わっていくか3巻が楽しみ。
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「イギリスの慣例法にクリーンハンドの原則というのがある、人をせめるものは自分の手がきれいなければならない」弓成の手がきれいであったかどうか、弓成の取材方法が適切であったかどうか、一方国民の知る権利は、ニュースソースを明らかにしないという新聞記者のモラルは、女性問題、女性の人権問題。渦巻く問題はそれぞれの見方で拮抗し、身動きがとれなくなる。権力は一方的に報道を抑えこもうとし、三木が弓成を苦境に追い込んでゆく。加速感のある展開に夢中で読み進む。
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山崎が超高名な作家でありながら、「ユーザ数」が伊坂や村上に比べて異様に少ないということは、Mediamarkerを使う人は、TVドラマ化された作品か、わざわざ自分たち世代向けにオピニオンリーダ?やマスコミが宣伝してくれる小説しか読まないということか・・。
Posted by ブクログ
弓成亮太の逮捕の場面から始まる第二巻、新聞社の政治記者としてのプライドもなにもなく犯罪者扱いに屈辱を覚える事情聴取は緊迫感があった。
この小説で登場する弓成亮太の「情を通じた女性」である三木昭子は捉えようのない女性のように描かれている。山崎豊子の取材力によるリアルな女性事務官なのか、小説の中の想像なのか、と訝しみながら読んだ。
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不倫関係ではない、という描かれかたをされていた弓成と三木が不倫関係にあったことがまず衝撃的だった。
実話と知らずに読んでいたので、今の国民民主との玉木氏のことが頭に浮かんだり、山崎さんはなんでそんなことを思いついたのだろうか、と思ったりしたが、実際不倫をしていて、「ひそかに情を通じ、これを利用して」という文言も実際に使用された文言だった。
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いわゆる『外務省漏洩事件』、『西山事件』を題材にする本作。
・・・
第一巻では、特ダネ記者としてぶいぶい言わせる弓成が、外交官や政治家に食い込み、情報を取ってくる様子をビビッドに描写しています。
第二巻では、外務省からの情報漏洩につき、三木に続き弓成も逮捕され、彼らへの取り調べや尋問、弁護士とのやり取り、会社の弓成へのサポート、そして起訴・裁判の様子が描かれます。
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もっとも印象的なのはやはり弓成と通じていた三木の独白でしょうか。
弓成と肉体関係を結び、そのことを病身の夫にバラすとゆすらされた末の情報漏洩とする三木の独白。これは第一巻での三木と弓成との仲睦まじさとは正反対のトーンです。真実は分かりませんが、本作では三木は魔性の女として描かれていることになります。
・・・
また、弓成家、特に奥様の心痛もまた印象的なところです。
今でいうところサレ女、そしてマスコミを通じての世間の関心は事をしでかした夫よりも家を守る妻に集中します。家柄はどうだとか、子どもたちはどうだとか。その呻吟する様子は実に痛ましいばかりです。
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そして最後の外務省の秘密主義。
検察の尋問にしらを切りとおす外務官僚のに対して、飽くまで批判的に筆者は描いています。
・・・
第二巻も、歴史の振り返りとしてのみならず、議論のネタも多いものでありました。
公務員の守秘義務について、また家庭の維持とワークライフバランス(女性の過程でのありかた)等、一言でいえば昭和、ですが、それ以外にも考えるべきイシューがあるなあと感じました。
歴史、政治、外交、ジャーナリズム、ワークライフバランス等に関心のかる方にはお勧めできる作品であると思います。
Posted by ブクログ
第一巻では新聞記者が沖縄返還に関する外交上の機密情報を漏洩した罪で逮捕され、この第二巻では、この裁判が行われる。
どうやって機密情報を入手したかがミソ。
やっぱり、この主人公は好きになれない。
感情移入できないです。
けど、実際にあった事件を、ここまでドラマチックに書く山崎豊子は流石。
三巻、四巻、まだ入手してないんだよなぁ。
ってか、もう発売されたんだろうか?
買って来なきゃ。
Posted by ブクログ
国家公務員法違反で逮捕された、弓成亮太と三木昭子。
国家権力と『知る権利』を全面に推し出すジャーナリズムとの対決。
そして、弓成と三木昭子とのスキャンダルが明らかになる…
世論は一転し、弓成は窮地に…
弓成の妻・由里子はスキャンダル記事に惑わされる…
弓成と昭子の関係が明らかになる…
が、若干の違和感が残る…
昭子が嘘をついているのか…
検察が操作しているのか…
初公判が始まる。
弓成は巨大な国家権力に葬りさられようとしているのか…
Posted by ブクログ
2巻では、いよいよ裁判へ。
政府の徹底した秘密主義ととぼけっぷりは、現代と変わらない印象です。
一方で、主人公・弓成の家庭の状況にも触れており、
特に妻の心理描写についてはさすが同じ女性、リアルで共感できる内容でした。
1巻では読者にも伏せられていた事実が明らかになったり、2巻の最後に初登場の人物が現れたりと作者の凄さに感嘆します。
ますます続きが楽しみです。
Posted by ブクログ
あまりにも悪役が悪いと異論が差し挟みづらくなる。冷静な意見を言おうとすると、「そんなのは敵を利する行為だ」と。知る権利キャンペーンが張られるなか、その雰囲気に違和感を覚える記者、そこで語られるクリーンハンドの原則、その後出てくるのが両被告の密通だった。
今ロシアがウクライナに攻め込んでいる。力に物を言わせ、一方的に現状を変更しようとする行為は到底許されるものではないが、徹底抗戦一辺倒で異論が許されない感じに何となく違和感があって、身につまされた。
Posted by ブクログ
戦後の沖縄密約を通して国家権力とジャーナリズムの戦いを描く全4巻中の第2巻。
本巻は、記者逮捕から公判までを描く。冒頭にもある通り、事実を取材し小説的に構築したものなので、裁判の展開などは専門用語も多くやや難解。だが、臨場感に溢れ、証人などの表情がありありと伺うことができる。
沖縄返還というと、歴史の教科書では割と美化されているように感じるが、裏でこのような密約があったことは伏せられている。本書を読むと、すっきりせず、結局何のための返還だったのかなと思ってしまう。日米両政府の体裁のためか?とも思えてしまう。政府のいいように利用されたのではないかとさえ、思えてしまう。それだけに歴史を知る上では興味深い一冊。
Posted by ブクログ
少し登場人物が多くなって、内容も難しくなってきたけれども。
知らなかった事は自分で調べたりと、歴史にも興味がわいて楽しい。
続きも、楽しんで読めそう。
ドラマの方も、見たかったな。
Posted by ブクログ
縒れた糸は張りを戻すこと無く、絡み縺れ落ちていく。
(以下抜粋)
○「事情は承りました。事件について詳しいことは解りませんが、学校にはいろいろな事情を持つ児童がおり、そういうお子さんを守るのも、私ども教師の務めです、ご推察するに今、一番、大変なのはお母さんだと思います、確か四年生のお兄ちゃんもいますね、二人のためにも、ここはお母さんが気丈にしていて下さい」(P.109)
Posted by ブクログ
国家権力の闇を暴こうとする弓成亮太が、スキャンダルという脇の甘さを突かれ苦悶する。
『クリーンハンドの原則』という言葉が出てくるが、今の国会の野党の追及の光景と妙に重なってしまう。
Posted by ブクログ
逮捕からの裁判。
とにかくハラハラして一気読みでした。
明かされていく事実と弓成記者の現状。
騒ぎ立てるマスコミ。そして彼の妻の苦悩。
重苦しく辛いのに次々読んでしまいました。
沖縄返還密約、弓成記者と事務官の関係、報道(知る権利)vs国家権力。
様々な要素が絡み合って法廷描写が濃い。
三巻が楽しみです。
Posted by ブクログ
権力に楯突くとこんなにも辛い仕打ちが待っているのか、逮捕された人はこんなにも酷い仕打ちを受けるのか、と恐怖します。
まるで体験したかのような緻密な描写です。その描写がかなりの部分において真実なんでしょうね。作者の執念の取材に脱帽です。
Posted by ブクログ
問題の文書は、国益に影響を与える「国家の機密」なのか、国民の「知る権利」に基づき公表されるべきものなのか。
国民の税金の使い道にも繋がるものだから無論知る権利がありそうだが、全てを知らせる必要があるのか。
文書を入手した経路が記者と国家公務員の不倫関係からだったことが波紋を呼ぶ。
弓成氏はそそのかし罪に問われるのか。
裁判の内容はやはりわたしには難解であるが、「密かに情を通じー」という起訴状の文言は検察の上手な策やなあと思う。
2巻では何と言っても由美子さんの苦悩が読んでて辛い。
氏の思いやりのなさは言語道断だが、こういうマスコミの格好のネタになった家族は、心ない文字の暴力にさぞかし苦しめられるのだろう。
Posted by ブクログ
逮捕され、屈辱とも思われる方法で貶められていく。
権力に逆らうということはこういうことなのか。
今の時代には起こりえないのではと思いつつ、実は様々なところでこのようなことが残っているのかもしれないと怖くなりました。
本来ならば自分がペンを取っていたはずの事件を目の当たりにしても、それが叶わない辛さ。
ものすごく伝わってきました。
裁判シーンは手に汗握るものです。
のらりくらりと話を受け流そうとする官僚側が追い込まれるのは痛快感があります。
いよいよ中盤。
後半への盛り上がりを期待して、3巻へ突入します。
Posted by ブクログ
公判開始。
主人公「弓成=西山」が外務省女性事務官「三木」と男女の関係にあったことから、公判の争点が検察側と弁護側でずれていく経由を描写。くどい説明をせずに登場人物の台詞で状況を進めていく著者の筆力はさすが。
政府は自らの施政に都合の悪いことは虚偽の説明をしてでも隠したい。しかしそのことを新聞記者が公務員から知り得た場合、それは犯罪なのか。入手方法によって扱いは変わるのか。
2013年末に特定秘密保護法案が成立し、同法の施行を待つ現在だからこそ考えさせられた。
Posted by ブクログ
沖縄返還に伴なう密約を暴く取材行為を、己の保身、名誉欲のため、男女関係の問題に矮小化し、すり替えようとする時の総理=権力のあざとさ。
弁護団と、検察側との丁々発止、佳境に入り、ますます目が離せない第2巻。
当時から世論を沸かせたこの問題に、渾身を込めて本書を著した著者なら、今問題にされている、特定秘密保護法にどう対応するだろうか。
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4巻にこそ,山崎豊子の想いが詰まっているのですね.
この切替方はいいなぁと思いました.
そもそも,史実的な面で山崎豊子を読むのが好きなので
1-3巻でその部分をしっかり味わい,+で完全に巻を変えて
4巻目で小説的な側面から沖縄問題を訴える.
一つの作品でいい振り分けができていると思います.
山崎作品にしては短くて簡潔だし.
ドラマのほうあまり調子よくないみたいだけど,
ディテールの再現性高くて僕はけっこう好きです.
ただよほど読んでる人か,直前に読んだ人でないとわかんないですよね.
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新聞記者弓長が公文書漏洩問題で告発されてしまう。逮捕、起訴され離婚の危機にも立たされてしまう第二巻。全4巻の作品だが山崎豊子さん作品にしては1冊のボリュームが少なめで読みやすい。
Posted by ブクログ
沖縄返還のさいにアメリカと結ばれた密約の内容とは、1971年当時、ベトナム戦争で火の車だったアメリカに対して本来アメリカが負担するべき沖縄の原状回復費用6億8500ドルを日本が肩代わりするというもの。これがいわゆる今もアメリカに支払われ続けている「おもいやり予算」のはじまりだとされる。この、まったく対等ではないとおもわれる密約を敏腕新聞記者、弓成亮太が外務省の女性事務官、三木昭子から入手する。ニュースソースを守るためそれをはっきりと記事にできない彼は、正義感から野党議員に機密文書を渡して国会で追及させようとするのだけれど、そこから逆にニュースソースが割れてしまい、弓成記者と三木昭子は逮捕される。ここまでが第一巻。
第二巻は、警察での尋問と裁判。「知る権利」の問題が、男女のスキャンダル問題へとすりかえられていく。司法がいまひとつ独立した力を発揮しなかったり外務省官僚があざとい証言をしていったり、やきもきさせて第三巻へ続く。ちょっとむずかしくて時間かかってます。
ただ、国民に対して「アメリカに強気に臨んで沖縄を返還させる」と、たとえポーズでも世論を気にしてアピールするだけ今よりましなんじゃないかと、錯覚してしまいそうになるほど沖縄の現状は厳しいとわたしには思える。当時の日本政府がしっかりと「ほんとうの返還」を要求しなかったからなんだけれど。
Posted by ブクログ
国家権力と新聞記者との間にある確執が、裁判で争われる。
国は自分達が国民に隠しだてしている事項をひた隠しにし、スクープした記者の記事入手方法に議論を向ける。
2013.6.2
Posted by ブクログ
逮捕,起訴,証人尋問と裁判がクローズアップ。『白い巨塔』もそうだったけど山崎豊子の小説って法廷シーンがよくあるな。『不毛地帯』でも東京裁判の場面があったっけ。
ドラマとの違い。
・由里子の兄が登場。大手電気メーカーの技術者。
・ぎばちゃんがやってた大野木弁護士は,奥さんも弁護士で同期。由里子が離婚訴訟する場合に「私が不適格なら家内に担当させましょう」と言ってる。
・弓成が取り調べで受けた屈辱,ドラマより生々しい。現場検証(引き当り)で腰縄をつけられたまま,密会をしたホテルの部屋で,機密文書の受け渡しの様子を細かく言わされる場面。「機密文書を見せてほしいと哀願したのは、あの布団の中でか、それともこっちの座敷机の方なのかね」と聞かれて「弓成は舌を噛み切れるものならそうしたい恥辱に、肩を震わせ、無言で視線を逸らせた。」(p.199)だって。 ドラマに使えそうなシーンだけど,なかったよね,確か。
・法廷シーンは外務官僚の証人尋問が詳しい。内容が複雑なのでドラマでは切り詰められたんだろうな。裁判長は,官僚の証言拒否を想定して,法廷と外務省大臣官房の間にホットラインを敷いていた。証言承諾の可否と電話で問い合わせて,OKが出るも,「具体的に思い出せません」「書かれていること以上に理解は及びません」で逃げられちゃうんだけど。
『密約』読んだときに勘違いしてたけど,大野木弁護士は伊達判決の人じゃなかった。弓成の弁護団の団長が伊能弁護士という人で,こっちだった。「裁判官当時、砂川事件で米軍基地違憲の判決を下した憲法学者でもある伊能は、法曹界の重鎮と畏敬されているが、性格はフランクだった。」P.136-137