あらすじ
国立大学の医学部第一外科助教授・財前五郎。華麗なるメスさばきでマスコミでも脚光を浴びる彼は、当然、次期教授に納まるものと自他ともに認めていた。しかし現教授の東は、財前の傲慢な性格を嫌悪し、他大学からの招聘を画策。産婦人科医院を営み医師会の役員でもある岳父の財力とOB会の後押しを受けた財前は、あらゆる術策をもって熾烈な教授選に勝ち抜こうとするが…。教授選挙に絡む利権をめぐり蠢く人間模様を描いた医療サスペンスの傑作!
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Posted by ブクログ
私の会社のボスが雑談で話題に上げた「白い巨塔」は思ったより、いや想像以上に人間社会の醜聞を見事に描き表している。
一巻では財前五郎助教授が国立大学病院の教授ポストを巡り政争に挑む。。。ドロドロ。。主人公を含め各者が自己の利益の為だけに頭と身体と金と人脈を使う。
東教授の退任に伴う、後継教授の選任なのだけれども、若手花形外科医として注目される財前助教授に退任後の自分の地位を脅かされかねないと、東教授は直属の部下であるはずの財前の変わりに他大学からの移入教授を画策する。
その心の内側が生々しい。
一 人事なんてものは、所詮、こんなつまらぬ些細なことで決まるものなんだ、何もこの場合だけじゃない、他の多くの場合だって、大なり小なり、こうした要素をもっている、人間が人間の能力を査定し、一人の人間の生涯をきめる人事そのものが、突き詰めてみれば必ずしも妥当ではない、残酷な、そして滑稽な人間喜劇なんだ___
山崎豊子恐るべし。
昭和40年の作品、ドラマで何度もリメイクされる理由がわかる。
財前の同期である心の澄んだ里見助教授に希望を持ちつつ二巻へすすむ。
Posted by ブクログ
面白い!
唐沢寿明主演のドラマが大好きなので原作を読んでみた。ドラマは概ね原作に忠実に描かれていたんだなー。不倫相手のケイコさんが関西弁を話すことに少し違和感はあるけど。
第一弾では次期教授戦の話がメイン。
腕のいい部下だけどプライドが高く性格が気に食わないためにどうしても次期教授にさせたくない、東教授。義父親、部下、お金、何を使ってでも教授のポストが欲しい財前。教授などの地位には全く興味なく、学問を追求することだけに目を向けている里見。自分の次のポストを狙い動く、舟尾や鵜飼。
様々な考えを持つユニークな登場人物が描く人間物語。中でも東教授は最も人間らしいなと感じる。気に入らない人に自分の後任なんて任せたくないよね。
今の会社なんかにも当てはまるのではないかな、人事は基本は人間関係。能力ももちろんだけどコミュニケーションが1番大事。白い巨塔ではこれに加え、投票者それぞれの思惑が交錯するのでさらに面白い。第二巻はいよいよ教授戦、結果は知っているけどどう描かれるのか楽しみ。
Posted by ブクログ
山崎豊子を大いに感じる一冊です。
最初は東教授、財前と里見の真っ直ぐな内心が描かれていてとても良いと思っていると
それ以降は次の教授を誰にするかで、それぞれの思惑が交差し布が織れるのではと言うくらい絡み合っているのに感服する。
大河内教授、里見の真っ直な信念には憧れる。
私はフジテレビの唐沢寿明版が第一印象だったで、実際には異なるが、それぞれの配役の役者に当てはめて読むと納得の配役だった。
全て読み終わったら何度か映像化されてる白い巨塔を見比べたい。
Posted by ブクログ
読んだ本 白い巨塔1 山崎豊子 20250526
ちょっとびっくりしたんだけど、山崎豊子の本って「沈まぬ太陽」以外読んでないんだ。ドラマとか映画でさんざん観てるから読んだ気になってたけど、自分のことながら意外。
で、もう何回も読んだような気がする白い巨塔を読み始めたんだけど、いや、本当に面白い。何も始まらない最初の数ページから面白いってどういうことなんだろう。登場人物の全てが灰汁が強くて権力闘争に明け暮れ、昭和的善人が踏みつけにされるだろうって予感のする話の進み方が、お決まりのようだけどのめりこんじゃいますね。
主人公の財前なんてピンチに陥るんだけど、全然肩入れできない。だのにどこか権力闘争の真っただ中に自己投影しちゃったりする不思議。山崎豊子の魅力ですね。
なんか、最近のお気に入り作家のルーツってみんな山崎豊子ってことに気が付きました。
Posted by ブクログ
年末ドラマがやっていて気になって初めて読む。
設定も古いけど、やっぱり名作とあって一気に引き込まれた。
今の時代財前みたいな野心を持って働ける人なんて少ないだろう。
一生懸命働いて、技術も知識も申し分ないし、何が問題なのか…
人事は水物っていうのはいつの時代も変わらないのだな
Posted by ブクログ
医療従事者として里見医師のような精神をもって患者さんに接したいと思いました、と感想をいだければ良いのかもしれない。そうも思ったが、理不尽さを感じた。
「白い巨塔」では「最初の患者さえ診なければよかった」ということではないか?
他の医者のように学会前に数日休んでおれば、または忙しいからと断りさえすれば全て良かったのだ、という気がしてならない。もちろん、引き受けたことこそが「財前らしさ」であり物語の中核をなすのであり、術後の対応に過失のあることは二審判決のとおりと考える。
それはそれとして、現代の医療現場では「引き受けたほうが損をする」構造がある。救急要請にしても、受けた医療機関や医師の給料は1円も増えないどころか、過重労働になったり、万が一対応が不十分だった場合に責任を問われたりする。一方で、最初から断ってしまえば何のリスクも負わなくて済む。
「白い巨塔」の財前のケースと似ていて、「能力がある人」「責任感がある人」ほど負担が増え、しかも何かあれば責められるという理不尽な構造があると感じる。逆に、最初からリスクを避ける選択をした人は、批判されることもなく無傷でいられる。
結局「やる人が損をする社会」になってしまって、誰もリスクを取らなくなっており、医療は成り立たなくなりつつある。だからこそ、本来はそういう不公平を是正する仕組みが必要だが、現実にはなかなか難しい。
「リスクを取るものは死ぬ」ということが50年前に予言され、そういう者が死に絶えたのが今の日本の医療現場ということのような気がする。
Posted by ブクログ
山崎豊子さんの筆致は正に当時の男性作家のもののよう。
良い意味で大迫力、悪く言えば、まあ…男性目線そのもの。当時の世相からすれば当たり前のことかも知れませんが…。
私はこの気迫のこもった書き振りの大ファンです。
のめり込みますよね。
Posted by ブクログ
かなり以前にテレビドラマでやっていたので、なんとなく手を出さずにいた本。
己の欲望によくもまぁこんなにも正直になれるものだと半ば呆れてしまうくらい濃いキャラクターが続々と出てきます。
改めて顔をしかめるとともに、著者のリアリティへのこだわりに心底感心してしまいます。
いや、すごい小説です。
Posted by ブクログ
国立浪速大学医学部の第一外科助教授・財前五郎。
彼は食道噴門癌(エソファーグス・クレプス)の手術(オペ)を得意とし、マスコミでも脚光を浴びていた。
(胃の噴門部に癌が広がっている場合、その部分を切除したあと食道に繋がねばならず、財前がこの難しい食道・胃吻合手術に特に長けているという説明が、ドラマに比べて詳しかった(p.42))。
東教授の定年退官が翌春に迫る中、財前が「魔術のようなメス、食道外科の若き権威者」などと世間で喧伝されていることが面白くない東は、他大学からの教授移入を画策する。
財前が医学部長の鵜飼、医師会長の岩田、舅で産婦人科医である又一らを味方に付け、票田の獲得を目論むのに対し、東は東都大学の船尾教授に頼み、心臓外科の若き権威者である菊川昇教授を後任者にと考える。
「万一、私が君を推そうにも推せないような突発的な支障が起ったら、どうするかね」
「万一、そんな時には、泣き寝入りしないような方策を考えますでしょう」(p.321)
2人の対立は医局員たちの目にも明らかなものとなり、佃は医局内工作に奔走することになる。
一方、財前と同期で第一内科の助教授である里見脩二は、「綿密な検査」(p.108)にこだわる学究派で、財前とは異なるタイプの芯の強さを持っていた。
「自分の良心を失ってまで教授になりたいとは思わない」(p.336)
真っ向から対立する「人生観の違い」(p.170)がある財前と里見であるが、鵜飼教授が胃癌と診断した患者の膵臓癌を里見が発見し、そのオペを財前が執刀して互いの力倆を称え合うシーン(三章)など、2人の描き方の対比が本当に面白い。
教授選の行方のみならず、自身の退官後の天下り先と娘の佐枝子の結婚相手にも悩む東、教授夫人会「くれない会」で爪はじきにされたことに焦る東の妻・政子、教授選で財前に恩を売り学長選への足固めとしたい鵜飼、さまざまな人物の権謀術数うずまく様が、あまりに見事に描かれていて息つく暇もないほど面白い。
39歳の若さ(連載開始時)でこれだけの小説を書き上げた山崎豊子さんの知識量、取材力、文章構成力にただただ驚嘆させられる。
手術の締めとなる縫合のシーン、「ぷつんと大きな音をたてて糸を切った。生と死の別れ目を告げる音であった」(p.62)
胃潰瘍(ニッシェ)の患者(クランケ)のエックス線フィルムを見、オペの術式について言い争いをするシーン「フィルムが白黒の微妙な明暗を映し出し、それを見る東と財前の心の中の微妙な明暗をまざまざと映し出しているようであった」(p.235)
のような深みのある、真実を突いた表現もとても好きだ。
Posted by ブクログ
他の本と並行しながらですが、2ヶ月弱もかかって読みました!もう全ての語彙力を圧倒的という言葉に置き換えたい所存でございます。去年五話連続でやってたドラマのキャストでイメージして読んだので、財前は岡田くん。里見は松山ケンイチ。ケイ子は沢尻エリカ。東佐枝子は飯豊まりえちゃん。などなどが頭の中で物語を展開してくれました!
人間の命の尊厳さと地位や権力への欲望の共存する「白い巨塔」。この白い巨塔に敗北したのは里見や地方へ飛ばされた医局員ではなく財前だった。本当に圧巻。実際医学会がここまでのものかは分かはないけど、少なからずこういう風潮はあると思う。
全ての登場人物がこの物語を考えさせるのに必要な人物で、こういう人間がいたらどうだろうと思うキーパーソーンが本当に全て揃ってるなぁと。里見先生がなんだかんだ財前を尊敬してるところがめちゃくちゃ良くないですか??
個人的に1番好きなのはケイ子。最後の方でこの人花森って名字だったんだとかしょうもないこと思ったのはさておき、結局財前のことを一番理解してたのがこの人。自分の語彙力でこのケイ子の凄さを文字で表現できない笑。とにかく聡明で物事の本質を見抜いていた感じがしてカッコ良かった。
あとは里見と東佐枝子の関係。佐枝子があの両親に染まらず純粋で真っ直ぐな里見に惚れるのがいい。でも友人によってできた壁をお互いが意識して、最後は佐枝子の方から会わないと決意するところが切ないけど意志の強さを感じてとても良かった。普通あんな両親に育てられたら、無理してでも地位を築きたいと思うけどなー。意志が本当に強い証拠だと思った。ここもあっぱれ。
またこの小説、里見が財前と正反対で焦点当てられがちだけど、関口弁護士もなかなか逸材というか憧れるべき人だと思った。患者の泣き寝入りを防ぐために、医学に素人な弱い立場にもかかわらず佐々木家族のために、むちゃくちゃ勉強して国平弁護士に立ち向かうところとか。里見が医者としてのあるべき姿を見せつけたなら、関口は弁護士としてのって感じがした。というか、財前側に立たずに証言した方々皆すごいよ。柳原くんもよくがんばったよ。運が悪かったねー。
この小説では医学という人を救うための学問においても人間のいろいろな欲望が絡まり合って、プロとしてのあるべき姿を見失ってしまう設定だけど、医学界以外にももちろん通ずるものがあると思いました。やはり人間。技術があっても人情がなければダメ。逆も然り。本当の意味で敬われる存在になるためには両方兼ね備えないとなと!医学の基礎知識に加えて、医療裁判の難しさ、人間のあり方など多くを学べた最高の小説でした!
里見先生目指します!
Posted by ブクログ
さあ、ようやく読み始めたこちら。積読から引っ張り出してきましたよ。
TVドラマ(唐沢の財前の方)で初めて観てからかなりの年月が経っているかと思いますが、私の中の最高傑作です。私のヒューマン系好きの起源がこの作品です!
小説にすると全5冊ですかね。中々の長編です。でもTVドラマに無い細部を知れるので、ワクワクが止まらないです。よーし!楽しもう!
Posted by ブクログ
とんでもない世界。
人間の私利私欲とは底知れないものだなと感じました。
山崎豊子の医療に関する深い情報収集や大学病院の教授選挙をめぐるリアルさがありありと伝わってくるようです。
それにしても医師ってほんとに体力おばけですよ。
体力があるから医師ができるのかもですが。
次巻も楽しみです。
こんなに長編を読んだのは初めて
正直教養の為に読んだみたいなとこある。教授選では応援してたちょっとダークな財前、第一審では利己的で嫌いになった。最後癌で苦しむ第二審ではやっぱり好きになって最後解剖されるとこは泣けた。文章難しすぎたけど今後の教養の為にも読んでよかったと思う。
Posted by ブクログ
浪速大学医学部第一外科教授の椅子を狙う財前五郎、現教授で今後も影響を持ちたい東教授らの対決が生々しい。医療小説というより政治小説みたいだな。書かれたのが少し古いせいか途中で出てくる内容も古めかしい。胃潰瘍で手術なんてよっぽどだし、CTとかもなかったのかな。そう考えると今の医療はだいぶ進歩してるな。
Posted by ブクログ
6章終わりの方でこの期に及んで移入教授について相談もされてないなんてあんた東さんにナメられてんのとちゃう?って方向で鵜飼を煽る岩田うまいな〜
そんで東くんとか眼中にないねとか言っちゃう鵜飼
いやー内心では相手のこと蔑んでたりいやらしいわ〜でも小説だから他人事として面白い
Posted by ブクログ
再読。
ドラマもみたことがあるし、筋は覚えていて、新鮮味はないが、人間関係と欲の複雑な絡まり具合が面白い。
見栄と欲の塊。
私には、登場する医者たちの多くが、権力を食らおうとするずるい獣のように見える。
こわいなあ。
Posted by ブクログ
家族からの勧めで読み始めました。
内容をほとんど知らず、なんとなく医療の話かと思っていたら、教授選!なんて煩わしい世界なんだとうんざりしましたが、その反面、皆が画策している様子は確かに面白い…とりあえず1巻だけ、と思いましたが早く続きが読みたいです。
Posted by ブクログ
国立浪速大学医学部第1外科助教授・財前五郎。
食道癌の専門家として、マスコミからも脚光を浴び、次期第1外科教授として、自他ともに認めていた…
現教授・東は財前を嫌い、自身の出身大学・東都大出身者を自身の後継者として、推薦するのだった。
何としても、教授選に勝ち抜こうとする財前は、義父・財前又一の財力により、OBのバックアップ、医局のバックアップを得ることに成功し、あらゆる手を使っていく…
財前の何としても教授になろうとする権利欲。
貧しく、苦労をしてきたからこそだろう。
実力もあるのだから、何の問題もないと思うのだが…
東もそこまでしなくてもと思う。
東からすると、退官後もそれなりに影響力を残したいのだろうが…
老兵は去り行くのみ。
やはりおもしろい。
ドラマで観ているだけに、唐沢寿明、江口洋介、石坂浩二、伊武雅刀…の顔が浮かぶ…
結末はわかっているのだが。
Posted by ブクログ
全巻感想。
長かったけど面白かった。とにかく財前っていう欲も実力も人以上にあるキャラクターが面白い、嫌な奴だけどラストは痺れた。
医学的知識が殆どない状態からスタートしたとあとがきで書いてあったけど、そこからここまでの話を作った事に驚く。
Posted by ブクログ
再読。
時代の流れを感じさせない筆力。
「文化アパート」があったり、携帯電話の描写がないことから昭和であることは分かるけれど、古い時代の物語という印象はない。
1巻は教授選前半まで。
唐沢・江口ドラマからももう20年くらい経つかな。観たいけれど今のところDVD購入しか方法がない。
※唐沢・江口ドラマは2003年、15年前でした。
Posted by ブクログ
この作品は、主人公の財前は悪役として、財前を告発した患者さん家族の味方となった里見は正義として描かれているが、実際には、財前はむしろ被害者であって、本当の悪人は里見なのではないか。
物語の序盤、財前は、手術した患者さんの肺転移を見逃す。まわりはそれに気がつきつつ、誰もそれを財前に進言できないままに状態は悪化する。里見もまた、財前に「これは肺転移だ」と進言したはずだけれど、結局生検は行われることなく、患者さんは亡くなってしまう。
患者さんの経過において、もちろん責任者は主治医であった財前だけれど、患者さんは結局亡くなってしまったとはいえ、訴訟を回避できた可能性は無数にあった。肺転移した胃癌に対して、昭和40年代の医療でできることはほとんど無かっただろうから。
ところが『正義の人』である里見があの場所にいたことが、そうした可能性を閉ざしてしまった。
「対等な関係」にある誰かが「正義の人」であったとき、その組織で致命的な失敗が起きる確率は飛躍的に高まってしまう。
ぶっちゃけ、「白い巨塔」の里見という人は、一緒に働くにはけっこう厳しい。
何か問題を発見すると、里見は「これは問題だ。君はこうするべきだ」といったやりかたで問題を指摘する。プレゼンテーションのありかたとして、これは微妙に挑発的で、「売り言葉に買い言葉」的な状況に陥りやすい。
里見の助言は、それを受け入れる側に「ただ負ける」のではなく「大きく負ける」ことを強要する。兵隊の位が異なっているのなら、特に相手が明らかな上役ならば、こうした言い回しは全く問題にならないけれど、対等な関係という、組織においてバランスを保つのが難しい状況において、「大きく負ける」ことを素直に呑むのは難しい。
同じ状況に置いて、里見が常にヘラヘラとした、いっそ財前に「ちゃん」付けで呼びかけるような態度の人物であったら、白い巨塔のような問題は発生しなかった。
財前に見逃しがあって、里見がそれを見つけたとして、「財前、お願いだからこの検査をやってくれないか?」とか言って、財前の肩にでも手をかけながら頭下げていれば、必要な検査が提出されて、問題はそのまま収拾したのではないかと思う。
火が嫌いな人と、火を消すのが好きな人とがいて、同じ「消す」ことを目指しても、問題に対する態度はずいぶん異なる。
火が嫌いな人は真っ先に火を消すけれど、火を消すのが好きな人は、結果的に火を大きくする方向に舵を切ることが多い。
火消しを公言する人は、火が大きくなるまで待ってしまったり、案外放火が好きでもあって、こういう人と一緒にやるのはリスクが高い。
この手のタイプは、公務員、それも学校教員に多い気がする。
大ざっぱに「クズ」と「正義」がいるとして、患者さんの状態悪化を見逃した財前は人間のクズであったのかもしれないけれど、里見も同じようなタイプのクズなら、白い巨塔の物語は成立しない。
「クズ」と「正義」には使いどころがある。対等な関係を作らざるを得ない場所に「クズ」と「正義」を配置すると、たいていろくでもないことになる。対等に組んだ「クズ」同士はうまくいく。同じことを「正義」でやると殺しあいになる。
「正義の人」は、上司と部下しかいない、対等が存在しないところに置いて、上下を「クズ」で挟むと馬車馬のように働いて、組織全体の生産性が向上する。
白い巨塔の物語というのは、財前の失敗ではなく人事の失敗であって、同僚に恵まれなかった財前の物語であったのだと思う。
#読書記録 #白い巨塔 #正義の人 #公務員 #組織内人事
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唐沢版ドラマを少し見ていたので、読んでみました。
山崎豊子さんの丁寧な取材に裏打ちされたしっかりとした世界観は圧巻です。自分が生まれるより遥かに大昔の時代設定なのに、すいすい受け入れてすいすい読めるのは、山崎豊子さんの手腕でしょうか。
個人的には里見先生の清廉さは怖いです。笑
続きの教授戦の行方が楽しみです。
Posted by ブクログ
山崎豊子ファンのくせに「白い巨塔」読んでないのは恥ずかしくなり手に取った。財前五郎って傍若無人で出世欲まみれの助教授だと思っていたがなかなかの苦労人なのである。財前五郎を可愛憎い人物に思えて、2巻、3巻と読み進めるのが楽しみ。
Posted by ブクログ
ドラマ化もされている山崎豊子さんの代表作。
敏腕外科医の助教授財前が教授選に向けて陰謀と名誉欲を全開に挑んでいく。
第1巻は財前vs東教授メインの内容。
全5巻の本作。今後の展開が楽しみ。
Posted by ブクログ
人が多くて頭がこんがらがってしまった、、、
人を救うという病院であんなパワーゲームが繰り広げられてるなんて、知りたくないと思いつつ
先輩に勧められて2巻へすすむ!
純粋に助けたいとか、そんなお医者さんばかりではないのかねー。
Posted by ブクログ
1-3巻が元の"白い巨塔"、4-5巻が"続・白い巨塔"。
大学病院内での教授の座をめぐる権力争いとその渦中で起こる医療ミスをめぐる裁判を描く。教授選挙の決着と医療ミス第一審判決までが本編、学術会議会員選挙と控訴審判決までが続編。
昭和の金と力の時代を描き切った作品。その意味では本編完結までが純粋な作品。
本編の医療ミス裁判の現実社会での反響が大きく、作成された続編では、裁判と主人公の身に起こる異変が並行して進む。結末は裁判と天命により主人公の人生にけりがつけられる一方、単なる悪役ではない誇り高き医療者の一面を示して終わる。