あらすじ
財前が手術をした噴門癌の患者は、財前が外遊中に死亡。死因に疑問を抱き、手術後に一度も患者を診察しなかった財前の不誠実な態度に怒った遺族は、裁判に訴える。そして、術前・術後に親身になって症状や死因の究明にあたってくれた第一内科助教授の里見に原告側証人になってくれるよう依頼する。里見は、それを受けることで学内の立場が危うくなることも省みず、証人台に立つ。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
話は、ドイツ、ベルリンの壁が存在する西ドイツから話が始まり、東西で分断された壁で医学も分断されていた。
時代を色濃く反映したシーンでした。
財前が不在の病院で、がん患者が息を引き取り、数時間前まで生きていたのに解剖され臓器ごとに分けられるシーンは、考えればそうなのだが、実際に物語の上で流れを追って認識すると命の重さと命が失われた後の肉体がただ存在するのを実感した。
財前は本当に名声と自分の技術を振るうことが好きなんだなと、オペラ座近くのレストランのシーンで思う
何も知らない財前が帰国して、訴えられていることを空港で知りその足で、すぐに鵜飼教授に会いに行く様は、教授選さながら、
裁判では、不安がよぎり大丈夫と自分に言い聞かせつつも、不安で仕方ない傲慢な財前が描写されています。
里見先生は、証人として発言することで、自分の立場が危うくなるとわかりながら、最後の最後まで貫く姿は、カッコ良くもあり、患者様に寄り添う生真面目なお医者様なんだなと、
どちらがいいかという話では無いが、
この2人がいるからこそ、この話は面白くなる。
東前教授や、東佐枝子は登場回数こそ少ないが、それぞれの立場からの言葉には重みがありよかった。
裁判結果は次巻と思っていたので、意外だった。
それよりも4巻が気になって仕方ない!!
Posted by ブクログ
財前教授と患者の裁判が中心。
後半あたりの癌専門の教授の言葉が印象に残った。
本件は患者と医師の信頼関係が構築されていなかったこと、また医師の倫理観の欠如によって引き起こされたものという言葉。確かにそうだなーとついうなづいてしまったほど。
手術したけど残念ながらなくなってしまうことは今でも起こりうる。それでも医者が懸命に寄り添ってくれたのかどうかによって患者やその家族の心象は異なり、死後に解剖、ましてや裁判などの行動は起こさないかと思う。
どんな職場でも信頼関係が大事。
裁判では術前に検査を行ったのか、癌の転移の可能性に気づいていたか等の医学専門的なところで論争が絶えないが結局1番大事だったのは患者に寄り添っていたかどうかに尽きると思う。
とはいえ、結果裁判は財前教授の勝利。
原告側にたち、証人となった里見は退職。。。常に自分の正しいと思う道をきた里見。診療や研究のみを丹念に行っていた里見に非情すぎる結末。悲しくなるので早く続きを読みたい。
Posted by ブクログ
読んだ本 白い巨塔 3 山崎豊子 20250606
被告に立たされた財前が、自分の立場だけを守ろうとする人たちと結託して裁判に向かう。
心正しい者は組織から弾かれ、強者に寄り添おうとしながら心弱い者は傷ついていく。
自我の強い組織内の群像劇、良心の正体を見失うような登場人物の行動原理、高村薫や横山秀夫何かのひりつくような人間ドラマの原点って、山崎豊子なんだろうな。
裁判に決着ついて終わりでもいいじゃんってところから、まだ2冊もあるんだけど、ますます先が読みたくなるのがすごい。
ドラマ観てるのにね。もう一回観ようかな。
Posted by ブクログ
前半に描かれている、ドイツの風光明媚な自然、城、街並み、レストランと財前教授の感性にはうっとりとさせられた。羨ましいほど絶頂期を迎えた男の姿が活き活きと描かれていた。
変わって、後半はドロドロの裁判戦。流石にもうダメか、と思われるところまで追い詰められ、ドキドキがとまらないまま一気に読み切ってしまいました。
読み応えのある第3巻でした。
Posted by ブクログ
すごい勢いでページが進みました。
正義よりも悪が勝ちました。
やっぱり原告のよし江さんに同情しながら読んでしまいました。
そして最後の里見先生が切ない。
とにかく早く続きが読みたいです。
Posted by ブクログ
ものすごく簡単に言うと、絶対読んだ方が良い本です。
作者がものすごく病院の事について調べ上げたんだなと分かります。また、さまざま登場人物がおり主人公とその親友の性格が真反対であり、医師としての考え方が違います!そこで病院の黒い部分が鋭く描かれています!
まさに作者が病院の闇に鋭いメスを入れていました!
読んだ後、すごく続きが気になる作品でした。
第4巻と第5巻は当時ものすごく社会的反響が大きかったので作者が続きを書こうということで書かれた作品だそうです!
Posted by ブクログ
財前のドイツ外遊、そして帰国後は一気に法廷闘争へ。展開が早い。
財前側ひいては大学病院側に不利になっても「無名でも患者の生命を大切にする医者」でありたいとの信念で真実の証言を行う里見。自らの助教授職の椅子が危うくなると医学部長から示唆されても、里見は信念を曲げなかった。こういうところはやはり格好いい。
一方の、名声のためなら患者の命を軽く扱っているように思える財前、この巻でも悪を貫く。嘘、はったり、脅迫等々、清々しいほどの悪さ。
裁判の結果は色々考えさせられた。先が気になって一気に読んでしまった。第四巻へ。
Posted by ブクログ
話のメインは一審。
権謀術数を巡らせる時の財前は冷酷非情そのものだが、時おり出てくる母親への想いには、冷酷とは対極の人間味を感じさせる。
そのギャップが面白い。
Posted by ブクログ
あっという間に読めた。
それぞれの人物像が魅力的。ドイツのユダヤ人の虐殺には心を痛めながら1人の患者を見殺しにする対比も財前という人間の像が分かる。
名作ってこういうのだなと、山崎豊子さんにハマりそう。
Posted by ブクログ
舞台は院内政治から変わって誤診裁判。
最終的には財前の勝利に終わった裁判だったが終始緊迫感があってとても面白かった。
初めのドイツ研修からは似つかない展開と、裁判と親しみのない話題でも読者を楽しませる山崎さんの技量が伺えた。
Posted by ブクログ
財前が手術した患者がドイツの学会に参加している間に術後死亡し遺族側が医療過誤だと裁判を起こす。患者の肺転移を見逃し、なおかつ十分な術後治療を行わなかったと遺族が憤慨しているがまあ気持ちはわからなくもないがどこか財前にも同情してしまう。当時の技術じゃ癌転移か結核跡かは調べてもわからなかっただろうし、手術は上手くやってるしね。財前がしっかりと患者側とコミュニケーションとっていれば訴訟までならなかっただろうに。封建制度が色濃く残っていた昔の医学部で教授に楯突いたら左遷させられるのはしんどい。里見助教授はもっと上手く世渡りすればと少し思わなくもないがこれが本来あるべき医師の姿か。
財前がドイツに行きユダヤ人の収容所跡を見学した際に色々考えさせられているのを見ると全ての良心を捨ててしまってるわけではないと少し期待してる。
Posted by ブクログ
財前五郎が国際会議出席のため、渡航している間に噴門ガンの患者が死亡する。遺族は財前の渡航前の不誠実な対応を誤診として訴える。肺への転移を疑い再三検査を主張した内科医の里見助教授は真実を語り大学を去り、大学の名誉を守るという美名のもとに誤診を否定した財前教授が大学に残る、不条理な結末に愕然とする。
Posted by ブクログ
白い巨塔の世界は現在も脈々と受け継がれている
昨今の宝塚歌劇の劇団員の自死とその後の劇団の対応など、まさに内実はこの世界そのものではないのか??
人間の闇をこれでもかと残酷に読者に突きつける山崎ワールドに圧巻
Posted by ブクログ
1度掴めた栄誉を守れるのか。
教授という世界から見てもまだ広がっている権力社会。誰が誰にどうやって口説いていくのか、本来医療があるべき姿とは遠くに置かれているこの社会のドロドロ感がおもしろかった。私の会社にも言えそうだなーと感ずる。
Posted by ブクログ
財前が手術をした佐々木庸平が、財前の欧州出張中に死亡。死因に疑問を持った遺族から訴えられる。
そして、財前の対応に疑問を持った第1内科・里見は、自身にとって、不利益になることを顧みず、原告側証人として、証人台に立つ。
判決は…
確かに財前の医者としての対応はひどいものであった。
ただ財前の誤診が佐々木庸平を死に至らしめた、という医学的根拠はないだろう。
遺族の財前への怒り、庸平を失った悲しみはわかるが、勝てる裁判であったとは思えない…
控訴するというが…
里見も医師として、正しいことをしたと言うが、その前にできることはなかったのだろうか…
『学会の報告の作成で…』
正しいことをしたために、自らは研究者としての道を閉ざされてしまった…
大学病院を頂点とする封建的な医学界。
里見のしたことは正しいのかもしれない。が、医学界で研究者として生きていくには正しいことをしたとは言えないのだろう。
里見の長年続けてきた研究が死んでしまったのだから。
Posted by ブクログ
財前が時折見せる人間らしい感情と欲にまみれた姿が絶妙なバランスで描かれている。
社会人を20年もやっていると、財前側の気持ちも分かる。理想と現実のせめぎあい、何を正とするか。難しいね。答えは死ぬときに分かるのだろうか。
Posted by ブクログ
面白いなぁー
時代は少し前だけど今でも十分に理解しやすく読みやすい。
社会の仕組みはあんまり変わってないってことかな、、、
里見先生がカッコいい
Posted by ブクログ
財前の無責任な診療態度に対し、患者家族が起訴。小説の中心は医療過誤を問う裁判となる。
大学病院の名誉や権威を守るという美名のもとに事実は覆い隠され、権力と真実の戦いは難航する。
「患者の生命に対して厳粛な良心と畏れを持ち、不純な誤りはいささかも許してはならない」
正義が勝つのは簡単なことではない。
法は残酷な側面も持つのだと感じる巻だった。
Posted by ブクログ
財前のドイツ訪問のおける成果と佐々木庸平の病状の悪化が並行して記される。そして佐々木庸平がなくなり、遺族が裁判を起こしたところに財前が帰国。
財前の態度は医師としての倫理に悖るが、里見のような態度が取ることは難しい。
それにしても、教授選といい、裁判と言い、財前は能力があるとはいえ、自分のためになりふり構わない。潔いとも言える。
Posted by ブクログ
いよいよ財前の立ち位置が怪しくなっていく。
国立病院という場がいかに政治的で、私利私欲に満ちた医師ばかりが集まる場所かということがまざまざとわかる。
小説だから架空の話だけど、事実、組織が大きければ大きいほどこのような体質を持つようになるんだと思う。
ここからいよいよクライマックスの序章が始まるので、今後が楽しみです。
Posted by ブクログ
裁判の経緯で、各人物の人柄がうまく描かれていておもしろかった。
まあ、そうなるわな。
といった感じの巻だった。
大河内教授がかっこよく描かれているが、彼が封建的な大学で生き残れたのは、ラッキーだったということになってしまわないか?と思ってしまうような、ドロドロ加減。
Posted by ブクログ
教授となり国際学会に旅立った財前。
外遊中に担当患者が死亡し、遺族に訴えられることに。
本巻の内容は患者と財前の法廷対決。
法廷シーンは1,2巻のあからさまな対決とは異なりやや物足りなく感じた。
Posted by ブクログ
1-3巻が元の"白い巨塔"、4-5巻が"続・白い巨塔"。
大学病院内での教授の座をめぐる権力争いとその渦中で起こる医療ミスをめぐる裁判を描く。教授選挙の決着と医療ミス第一審判決までが本編、学術会議会員選挙と控訴審判決までが続編。
昭和の金と力の時代を描き切った作品。その意味では本編完結までが純粋な作品。
本編の医療ミス裁判の現実社会での反響が大きく、作成された続編では、裁判と主人公の身に起こる異変が並行して進む。結末は裁判と天命により主人公の人生にけりがつけられる一方、単なる悪役ではない誇り高き医療者の一面を示して終わる。
Posted by ブクログ
法律が、明確な因果関係がなければ罰せないのはその通りだと思う。疑わしきは罰せず。
財前教授の判決が出た巻。
最後の、一体、何をしたというのだろうか、初診した患者の死の経緯について正しい証言をした者が大学を追われ、事実、患者の診療に誤りを犯した者が、大学に留まる。なんという不条理であろうか、という里見の言葉にただただ胸が詰まる。
正しいことをして報われないのが、この世の中だと示す言葉。
正しいことをしたければ偉くなれという踊る大捜査線の言葉然り。
Posted by ブクログ
【感想】
何とか教授選を勝ち切り、無事教授になった財前でしたが、その慢心ゆえに、同期である里見の助言を全て無視し、挙句の果てには患者を死に至らしめて訴訟されるという大きなミスを犯してしまう。
ただ、この本の胸糞悪いところは、裁判に関わる医者たちの殆どが、その専門的な知識を駆使して患者やその遺族ではなく、財前や自分たちの立場を守るといった愚行に走った事でしょう。
そして、正しいことをしているはずの里見が大学病院を追われ、罰を受けなければならない財前が何食わぬ顔で病院内でのさばり続ける・・・
本当に読んでいて胸糞悪くなりました。
この本を読んで分かる腐敗した世界観は、正直なところ現代ではかなり改善されているのではないかと思います。
僕自身、仕事で大学病院などに訪問したり院内の色んな医師とお話をしますが、コンプライアンスにうるさい今日、国立病院では接待は基本NG、会社からの寄付でさえ上限金額が決められるなど、むしろ医師にとってかなりウマミがなくなってきているのが現状かなと思います。
また、これは病院や診療科などその医局によって異なるかもしれませんが、上下関係はあるとはいってもフランクな医師も多く、総じてみると封建的な印象なんてあまりないようにも感じます。
少なくとも、この小説のように、患者にとってここまで傲慢な医師なんていないと思います(笑)
なんなら、「ブラックジャックによろしく」のような院内の雰囲気すら、現代の病院にはないと思います。
(しかし、医師や医療従事者の人材不足はコロナ前からずっと課題としてありますが・・・)
ただ、現代でも医療事故は減ったとはいえ起きており、被害者によっては泣き寝入りを強いられる事はあるようです。
その構図は段々と良くはなっているとはいえ、根深い問題として残っているのかもしれませんね。
こういった改革は、何も医師たちを虐げる為にやるわけではありません。医師や医療従事者の方達は、本当に尊敬に値する存在です。
また医師や医療従事者のワークライフバランスもしっかりと確保した上で、医療事故を極力防止し、より良い医療がこれからも受けられる世の中であってほしいと願います。
さて、「白い巨塔」も5分の3を読み終えました。
ただ、正直今のところは胸糞展開ばかりで、読んでいてあまり面白いと感じておりません(笑)
残り2巻、"名作"である所以をしっかりと僕に魅せて頂きたいですね!!(何様)
【あらすじ】
財前が手術をした噴門癌の患者は、財前が外遊中に死亡。
死因に疑問を抱き、手術後に一度も患者を診察しなかった財前の不誠実な態度に怒った遺族は、裁判に訴える。
そして、術前・術後に親身になって症状や死因の究明にあたってくれた第一内科助教授の里見に原告側証人になってくれるよう依頼する。
里見は、それを受けることで学内の立場が危うくなることも省みず、証人台に立つ。
【メモ】
p329
「何を根拠にしてとか、ぶこく罪とか、そんなことは知りません。けれど、財前という先生の無責任な診察で夫が思いもかけぬ死に方をしたことは事実だす。この間から大学のえらい先生たちが鑑定に出て、素人にはわからんような難しい医学のやりとりばかりをしてはりますが、なんでそんな難しいことばかりを言わんならんのです?財前という先生が、患者をちゃんと親切に間違いなく診察したからどうか、それだけを裁けばええのだす。なんでそれを裁かんのです!証拠や根拠ばかりを言うて、こんな裁き方は間違うてます!」
「うちの人を返して、生き返らせて。子供の父親を返して!」
振り絞るような声で叫び、財前の胸に掴み掛かった。
p374
「里見君、君の友情のない証言で対質にまで持ち込まれ、一時は苦境にたたされたが、これでやっと僕に誤診の事実がなかったことが明らかになったよ」
勝ち誇るように言うと、
「財前君、こういう勝ち方をして、法律的責任は逃れられても、医者としての良心、倫理に問うてみて、君は恥ずかしいとは思わないのか」
里見は財前を憐れむように言った。
「じゃあ、どういう勝ち方をしろというのかね」、ぎらりと精悍な眼を光らせ、開き直るように言った。
「君は医者である自分に対して、もっと厳しくあるべきだ。医療は人間の祈りだとさえ言われている。神を畏れ、神に祈るような敬虔な心で、患者の命を尊重する心がなくては、医療に携わることは許されないはずだ」
里見は静かな揺るがぬ声で言った。
p376
一体、何をしたというのだろうか?
初診した患者の死の経緯について正しい証言をした者が大学を追われ、事実患者の診療に誤りを犯した者が、大学の名誉と権威を守るという美名のもと、大学のあらゆる力を結集してその誤審を否定し、法律的責任を逃れて大学に留まる。
何という不条理であろうか。
しかし、これが現代の白い巨塔なんだ。
外見は学究的で進歩的に見えながら、その厚い強固な壁の内側は、封建的な人間関係と特殊な組織によって築かれ、里見一人がどう真実を訴えようとも、微動だにしない非情な世界が生きている。