あらすじ
開始された医事裁判の控訴審は、原告側弁護人や里見たちの献身的努力によって、予断を許さない展開に。そして、財前自身の体に不吉な病魔の影が…。厳正であるべき“白い巨塔”大学病院の赤裸々な実態と、今日ますます重要性を増している医事裁判に題材をとり、徹底した取材によって、人間の尊厳と、二人の男の対照的生き方とを劇的に描ききった、社会派小説の金字塔の最終巻。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
柳原の証言
江川の電報
身震いした。鳥肌が立った。ゾワっときた。
でも、こんな終わり方はあんまりだよ。
財前教授。還ってきてくれよ。
憎まれても嫌われても、やはり君は主人公だよ。
Posted by ブクログ
現代においても同様かはわからないが、大学病院の封建的な風土や選挙における金の動きに対する衝撃を受けた作品だった。
同作者の他作品と異なり、物語の初めから最後まで、読み手からの主人公の財前五郎、それを取り巻く登場人物への好感、嫌悪の気持ちが正負に揺れ動くところに新しさを感じた。
田舎の貧乏な家庭から医者になった苦労と自負、婿入りした環境と名声欲強い舅や妻から自分への要求、自分の上司に努力を反故にされるような人事、医学部長や医師会・同窓会の損得で繋がった関係、自信を裏付ける手術の才能…それらが絡まり合い生まれた財前五郎という人物に、もちろん嫌悪する部分が大きいが、環境やプレッシャーでそうならざるを得なかった面もあるのではないかという面で同情的な感情も持ってしまった。
裁判においても、財前の行動は自分が患者だったらと思うと財前五郎の態度は到底許容できるものではないと思ったが、自分もなんらかの仕事のプロとして、自分の仕事結果に対し、あれだけの尋問に耐える仕事ができるかは自信がない。
Posted by ブクログ
改めて、作家としての山崎豊子さんてよくも医者でもなく弁護士でもないのにこのような作品を書かれたことに取材や勉強をされたのと思いすごい人だと思った。
本の感想は、私個人としては、里見さんのように生きたいです。難しいですね、色々しがらみがあって!
Posted by ブクログ
イッキ展開の最終巻。
あんなに憎たらしいと思ってた財前が何故か愛らしく感じられるラスト。
自分の身体も定期的にしっかりと点検しなければと思う。
Posted by ブクログ
完読!!傑作ですよ!
この作品が描かれたのは昭和中期。癌という病が一般的にまだ不治の病として恐れられており、医学もまだ未発達で現代のような緩和治療がない時代。大学病院の在り方として研究の学会発表とあらゆる症例のレポートがメインとなり、少なからずとも患者の扱いが現代とは異なり、悪い言い方をすれば研究材料だったのだろう。本書裁判における国が捉える『医師』の定義付けとしては『人の命を扱う重要な立場故に可能な限りの手段を用い治療努力をすべき』といった医療現場への警笛。そして、日進月歩である医療現場への尊重がある中での医師の立場と責任感の追求。医師である前に一人の人間であることを忘れるなかれ、といった現代医療にも近しい考えがこの頃はまだ不定着だったのだろう。人は皆考え方が違うし仕事への向き合い方も違う。求めているものも同じではない。財前と里見、正反対の二人が共通して持っていたものはお互いの仕事に対する信頼だけである。何だか寂しい気もするが、全てにおいて分かり合えることなんて絶対にないもんね。もっと上手くやれれば良かったのにね。地位や名誉に溺れないような人でありたいですね。
Posted by ブクログ
読んだ本 白い巨塔5 山崎豊子 20250518
後書き読んだら、やっぱり4巻以降は続編だった。しかも、財前勝訴への批判の声から続けたとのこと。やっぱりな。正直、裁判の行方としては、色々あったとしてもあんな難しい手術をして誤診って言われたら堪んないだろうって思ってしまう。そこだけで言うと、3巻で終わってた方がリアルだった気がします。
と言いつつ、夢中で読んじゃいましたね。今日だけで300ページ。財前の破滅を描いて溜飲を下げるってだけじゃこうはならないんだと思う。そもそも財前の独善も医者としてのプライド、人の命を救うってところから始まってて、それも難しければ難しいほど悦に入るってのは、悪じゃないんだよね。
そして、権力におぼれた人たちも、その根源に医師としての生命へのリスペクトが描かれてて、決して善人になったわけではないけど、底流にあるものにほっとしました。
次は「華麗なる一族」だな!
Posted by ブクログ
圧倒的な濃厚な壮大なストーリーでした。
財前教授を自業自得、因果応報、医者の不養生など言ったらあまりにも薄いのだが、彼自身もこの白い巨塔の中で歯車の一つとして翻弄された犠牲者のひとりなのではと考えると完全に悪と決めつけられない自分がいました。
40年以上も前の話なのに今読んでも決して色褪せないと感じるのは時代背景、社会状況以外の人間ドラマが強く息づいていたことなのだと思います。
読み終わってもしばらくはなにか心に重くおりみたいなものがずーんと感じます。
また読み返すべき名作です。
Posted by ブクログ
山崎豊子さん、ありがとう。
財前に可哀想な終わり方をさせないようにしてくれて。
主人公が最悪のヒールだったって話の先駆けじゃないかと思うくらい、大長編にわたって積み上げた財前の非道、悪行、愚昧の数々。
罪に問われなかったらセーフじゃないぞってことだ。
ざまぁみろ。
Posted by ブクログ
読み終わってしまった。裁判の個所は複雑だったけど、財前の亡くなる個所は何回も読んでしまった。わだかまりのあった里見と東が最期、手を伸ばし、最善を尽くす姿に感動する。
最期は医師として、正確な診断を遺す財前。教授選、学術選、何か諦めていたら若くして死すこともなく残念。
本当に良い小説だった
Posted by ブクログ
裁判と学術会議の選挙の両方を渡り歩いていた財前だが、選挙は鵜飼教授の政治もあり見事当選を果たす。一方裁判の方は、元病棟看護婦長の亀山や佐々木の受け持ち医の柳原らの証言により敗訴となる。その後財前は体調を崩し気づいた時には進行胃癌となり病に伏す。
総じてとても面白かった。医療小説であり政治小説でもある。当時の大学病院で行われていたあらゆる駆け引きが描かれており、手に汗握る展開だった。改めて感じたのは医者と患者の関係の大切さで、財前が訴訟されたのも術後診察もせずしっかりと説明をしていなかったからで、仮にそれをしていたら肺転移に気づかなかったとしても遺族は納得していただろう。現代だったらありえないが当時の医療現場ではそれが当たり前だったのだろう。最後食道癌の権威として教授まで上り詰めた財前が自身の体調の変化に気づかず裁判、選挙に没頭し進行を許してしまったのが彼の人生への皮肉だ。
Posted by ブクログ
医事裁判というテーマの5巻に及ぶ大作を読み切って、今更ながら著者山崎豊子さんの取材力に感服する。医療と裁判という2つの専門領域を描かれている。一方で、名声と医学者としての誇りを併せ持つ財前という男を憎くもあり、神々しいとも思った。これほどのスケールと高潔な社会派小説はそうそう巡り会えないと思う。
Posted by ブクログ
ドラマを観てからいつか読みたいと思っていました、ようやくです。現代でも閉鎖的、封建的で難解であろう医学界、医療裁判をこの時代にここまで取材し、描いた著者には脱帽。
社会派小説の名作だと思います。
Posted by ブクログ
今も何度もテレビで再放送されており、以前買ってあった原作を読みたくなり手にとった。
やっと5巻まで全て読み終えた。
財前が主人公だが、里見のどんな困難があっても
自分の信念を曲げない生き方が好きです。
特に4巻からは夢中になって読みました。
なお4巻5巻は読者の声によりできた続編だそうです。
題名の白い巨塔とは患者の死の経緯について正しい証言をしたものが大学病院を追われ、患者の診察に誤りを犯したものが、大学病院の名誉と権威を守るという美名のもとに、大学のあらゆる力を結集して誤診を否定し、大学にとどまる不条理とのこと。3巻より。
Posted by ブクログ
五巻に及ぶ長い小説が遂に完結。
胸が締め付けられる。なんとも言えない辛い気持ち。
気づいたのですが、財前教授に感情移入し過ぎて、もっと活躍して欲しい。もっともっと困難に打ち勝って自信に満ちた物語を見せて欲しい。そう願いながらこの小説を読んでいたようです。
最期まで誇り高い態度で人生を駆け抜けた財前五郎に本当に感動した。
ありがとうございました。
Posted by ブクログ
控訴審となった財前の誤診をめぐる裁判。
原告側弁護人・関口や、里見の努力によって、財前は窮地に…
控訴審に、学術会議選挙に、追われる財前に病魔の影が…
結局、財前がちゃんと診察していれば…ということなんだろうが。
本当にそうなんだろうか。
財前だからこそ、初期噴門癌を見つけて、手術することができたはずでないか。
佐々木庸平に死をもたらしたものは、財前だけによるものではないはずだ。
医者としてあるべき姿は、里見なのかもしれない。
が、財前のように教授がひとりひとりの患者にまで細かい目配りができるだろうか…
里見のようにすべての患者に同じように寄り添うことができるだろうか…
控訴審で原告側勝訴となるが、財前の言う様に、医師が訴えらることを恐れ、医学の進歩を阻むことになるかもしれない。
財前には最後まで戦って欲しかった気がする。
もう一度這い上がる財前を見たかった…
癌が不治の病と言われ、情報が少なかった昭和40年代に、50年以上たった今、読んでも違和感を感じない作品を書いた山崎豊子の取材力の凄まじさを感じる。
4巻、5巻は『続 白い巨塔』だったのか…
3巻までの社会的反響が大きすぎたことを受けての、続編だったのか。
Posted by ブクログ
圧倒的。その一言に尽きる。
各人の心理と謀略を事細かに表現されてある。
財前の手術に東教授が執刀し、開腹した場面で得た感情はどんな言葉を使っても表現できない。
Posted by ブクログ
通勤途中の電車内で読んでいたので、眠い日や飲み会があったりして遅々と進まなかったけど、この巻は勢いよく、外出時は早めに家を出て現地で読んだりしていた。
今読んでも全然面白かった。
タイトルが白い巨塔とあったので、大学病院の医療関係者の権力争いの様なものが中心だと思ったが、加えて医事紛争裁判がその割合を大きく占めていた。
裁判は互いの主張も理解出来るので良い悪いでは簡単に片付けられないけど、原告は進める過程で嘘偽りなく事実を事実として証言し、被告は名誉や権力を得るために事実を捻じ曲げる証言をするが、自分だったらどうだろう。
この様な選択は多くはないけど何度かあった。
普段の生活でも思いもしていない事を言い忖度する事もあった。
子供の頃に両親からいつも言われてた「人に迷惑を掛けてはならん」を思い出す。
今は定年を迎えたので全てが昔の話だ。
Posted by ブクログ
判決を言い渡されるあたりはドキドキしながら読みました。
最後100頁ほどはあんなに憎かった財前が可哀想になりました。
そして何よりケイ子さんのいい女っぷりが素敵でした。
泣けました。
読み終わりもよく、久しぶりに面白い長編が読めました。
Posted by ブクログ
ある意味どんでん返しのない堂々たる展開なので、結末およびそこへの助走がそれまでと比べて少々こじんまりした感じがしなくもなく。
それでも日本の大衆小説を代表する一作という評価は間違いないかと。
しかしやっぱり三船敏郎を想起してしまうなぁ、財前には。何ででしょ?
Posted by ブクログ
財前が病気になるところは、ドラマの印象が強くて、本の方の筋は忘れていた。
それもあって、なんだか新鮮な気持ちで読めた。
本人に癌であることを隠して延命治療をしたとして、どういうメリットがある?
死に対する準備も何もできないではないか。
ちゃんと伝えられて、その事実を苦しみながらも受け止めたのちにしか、自分の人生や死に対する整理ができないではないか。
昔の、病気を本人に隠すというおかしな思いやりは、やはりまちがっていると感じた。
最後はややきれいにし過ぎな感がある。
加奈子爆弾がさく裂しなかったことについては、実に残念だった。
2004.3.8
ドラマと並行して読んだので、多少入り乱れてしまっているが、面白い話だ。ともかくドロドロしている。人間の弱さも強さも描かれている。リアルだ。裁判や談合の場面が多く、読むのに手間取ったが、人間の欲には際限がないのだなぁと財前に対して思った。なかなか里見のようにはなれないのかもしれない。大人になってしがらみが増えると、物事は単純ではなくなるのだ。自分が正しいことをしても、それは必ずしも良い事態を招くとは限らない。里見は人間としては立派だが、夫としては不合格だと思う。
Posted by ブクログ
実際には、40年ほど前の新潮文庫、白い巨塔(上・下)、続白い巨塔を本棚から取り出して再読。
映画やドラマで何度も公開されて好評だった名作だが、原作は大阪の国立浪速大学医学部を舞台にした医事紛争裁判を深く抉った社会派小説。
大学医学部の医局内での派閥争いや医学界におけるドロドロとした内情などの中で翻弄される患者の運命。
医療技術の進歩により、原作当時(昭和37年前後)の医療知識や治療法とは隔世の感があるのは否めないが、癌というものに対して初見時には深い感情を抱かなかったが、癌というものを身近に感じる年齢になった今、ちりょおうや手術、解剖の場面などは身につまされる思い。
主人公の財前五郎をはじめ、同僚で裁判では対立する里見助教授、鵜飼医学部長、病理の大河内教授、担当医の柳原、弁護士の関口、死亡した患者の佐々木とその妻で告訴人の佐々木よし江など、他にも登場するすべての人間の感情が生き生きと描かれており、素晴らしいヒューマンドラマでもある。
数ある山崎豊子作品の中でも代表される名作。
Posted by ブクログ
シリーズ全体を通して思ったことは、特に4巻以降は裁判の話が多くて正直なところ冗長に感じてしまった。その疲れによって読み進めるペースが落ちたのは事実。しかし、解説によれば当初は3巻までの想定で作られたもので、読者からの批判を勘案して4.5巻を追加したようだ。確かに分量としては3巻までがちょうど良いと感じたし、それ以降の展開が5巻まで想定して作ったにしては何か違和感があると感じた。著者の言う植林小説ということになるだろう。そこから昭和40年代の小説に対する一般人の熱量を感じ取ることができたし、小説といえども作ったら終わりではなく、常にフィードバックを受けて変化する生き物のようなものと思える。そのスタンスをとっている著者は直向きであると思う。
Posted by ブクログ
一気読み。
財前の孤独が際立った最終章。
権力にら執着して、結局残ったものは何なのだろうか。
遺書が少しだけ救いというか、
医者としての尊厳みたいなものを感じられた。
根っこの部分は癌の究明だったろうにどこからこうなつてしまったのか。
作者のものすごいエネルギーを感じた。
Posted by ブクログ
圧倒的な筆力。
4、5巻が続編であったと解説にあったが、以前読んだときには見落としていた。続編なしにはここまでの満足感はないように思う。
財前の手術シーンの見事な表現、絶望的な状況が頭の中に映像として浮かび上がる。さすがとしか言いようがない。
Posted by ブクログ
1-3巻が元の"白い巨塔"、4-5巻が"続・白い巨塔"。
大学病院内での教授の座をめぐる権力争いとその渦中で起こる医療ミスをめぐる裁判を描く。教授選挙の決着と医療ミス第一審判決までが本編、学術会議会員選挙と控訴審判決までが続編。
昭和の金と力の時代を描き切った作品。その意味では本編完結までが純粋な作品。
本編の医療ミス裁判の現実社会での反響が大きく、作成された続編では、裁判と主人公の身に起こる異変が並行して進む。結末は裁判と天命により主人公の人生にけりがつけられる一方、単なる悪役ではない誇り高き医療者の一面を示して終わる。
Posted by ブクログ
選挙の勝利。
裁判の敗北。
柳原にも、里見にも正義はある。
それが実った結果と言えるが、大学教授という多忙な中で、どこまで診察しなくてはいけないのか、ものすごく重たい投げかけだと思う。
僕はエンジニアなので、開発中はバグがよく出る。たくさんバグが出た時、納期が短ければ顧客と交渉してできる範囲で行う。
だが、医者はそれができない。治るか死ぬまで、全力でみることを求められる職業。
そして、患者が来るときはすでに何らかの症状が出ている負け戦であることが多い。
とても過酷な仕事だと思う。