【感想・ネタバレ】白い巨塔(五)のレビュー

あらすじ

開始された医事裁判の控訴審は、原告側弁護人や里見たちの献身的努力によって、予断を許さない展開に。そして、財前自身の体に不吉な病魔の影が…。厳正であるべき“白い巨塔”大学病院の赤裸々な実態と、今日ますます重要性を増している医事裁判に題材をとり、徹底した取材によって、人間の尊厳と、二人の男の対照的生き方とを劇的に描ききった、社会派小説の金字塔の最終巻。

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

凄い話やった、医療の技術水準は昔の前提だが、全く古くさい感じがせず、現代にも通ずる人間社会の生々しさが描かれており、読むのを止められない。正確にいうとオーディブルで聞いていたのだが、聞くのをやめられず家に帰る前にベンチに座って聞き続けてしまったほど。文章がしっかりしているから、オーディブルで聞いても話の骨子を逃すことが無くストレスが少ない。おそらく、プロのナレーターの技量も多分に貢献しているが、良い読書体験ができた。当時は、末期がん患者に対して通知してなかったんだよな、自分の死期を悟るのはメンタルにきつすぎるからという理由で。いまは軽い感じですべて通知する(=医者側のリスク管理の為に、隠さず伝える)ことが一般になっているようですが、なぜそうなったのだろうか。私は耐えられそうにないし、私の良心も、認知機能がはっきりしているときに死期を突き付けられるよりは、認知機能が落ちてから亡くなった方が死の不安に押しつぶされなくていいなと思う。
人間に完全に善悪の白黒はないし、良い所と悪い所、長所と短所があり、Greatになるためには長所を最大限に生かすため、欠陥も目立つようになる。
組織の論理だったり、出世争いだったり、名誉を求める心など、普遍性のある話だなと思った。私も組織人として、一歩引いて客観的に今の組織、各個人の利害関係・欲望に目を向けて分析し、自分が擦り減らないように生きていくことが肝要だなと思った。

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2026年10月21日

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山崎豊子、、人生88年の中でこのレベルの小説を何作品も執筆していることが信じられない。すごい。
山崎豊子小説は、沈まぬ太陽、大地の子に続いて3作目。江口洋介のイメージが強かったけど、主役の財前五郎を演じたのは唐沢寿明だったのね!

白い巨塔では、教授選挙、医事裁判、学術会議選挙、と、普通ならそれ単体でテーマになるであろう大きな出来事が息つく暇なく次々と展開されるため、読む手が止まらない。その長編の中で、初期に描いた登場人物の行動を、動機や伏線としてその後展開されていく仕掛けのおかげで、キャラクターの価値観や背景をすんなり理解しながら読み進めることができる。

面白いなと思ったのは、主人公が「イヤなやつ」側であること!主人公を善とした勧善懲悪物語が主流な中で、主人公を懲悪したい気持ちになる小説は貴重では。ただ、主人公も完全なる悪ではなく、「白い巨塔」がそうせしめているというのがポイントよね〜。

ラストシーンは悪として描かれてきた主人公を取り巻く「医療」に関わる人々の根源的な欲求に触れて、涙なしには読めない。終わった瞬間、心の中でスタンディングオーベーションの小説でした。

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2026年05月22日

Posted by ブクログ

本小説は筆者が入院した経緯本小説の執筆にあたったらしい。最初は3巻までで1度完結していたが、社会的反響を受けて4巻5巻の続編が作製されたことを知った。私の中では3巻までで良かったと思う。4巻以降については善人であると思い込んでいる人が社会的弱者に寄り添っている描写が多々見受けられたが、その描写に私が納得できないからである。
関口の厚かましさが本当に腹がたった
筆者が入院した経緯から教授選からここまで話を膨らませる筆者の才能に敬服する。

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2026年05月09日

Posted by ブクログ

白い巨塔の最終巻です。
沈まぬ太陽に続き、2作目にこちらを読みました。
山崎豊子作品の人生の複雑に絡み合った思惑を堪能できました。
読者にも寄り添った結末なんだろうなと、沈まぬ太陽よりは後味が良かったです。

前巻では、財前側の弁護士が証人の夫を賄賂で丸め込もうとしたところで、証人になることを躊躇していた元看護婦長が出廷する流れになり話後終わった。

今回も財前は選挙と裁判を掛け持ちして戦うことになるが、度重なる心労に、柳原医師に責任を押し付ける発言をしてしまうことで、新たな証拠を引き出すことになる。

裁判は異議と正当な理由があれば、最高で3回まで行えることを知った上でどのような結末になるのか気になって読み進めてしまいました。

財前が昏睡してしまう場面では、昏睡した財前の口から出た言葉が、どのような意味だったのか、昏睡する前の財前が、腕を認めていた里見に頼ったことや、どうすることもできないから本人には伝えなかったことなど、佐々木氏の心労を経験する。

そんな中、財前から大河内に宛てた手紙に色々な思いがあっただろう中に医学の為に財前が選んだ選択を是非読んで確かめてほしいです。

この本が書かれたのが、一度3巻までで完結していて、読者や世論が4,5巻を執筆するきっかけとなったと知って驚きました。その驚きも含め、山崎豊子の作品を楽しめました。

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2026年02月09日

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大学病院での派閥争い。財前五郎を中心に繰り広げられる駆け引きは、正直醜くもあり、しかし人間らしくもあり、最初から最後まで引き込まれっぱなしでした。
古い作品ですが、入り込んでしまえば、全然古さは気になりません。
長編を読むのはかなり大変ですが、読み終わった時の充実感は気持ちがいいですね。

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2026年01月16日

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柳原の証言
江川の電報
身震いした。鳥肌が立った。ゾワっときた。

でも、こんな終わり方はあんまりだよ。
財前教授。還ってきてくれよ。
憎まれても嫌われても、やはり君は主人公だよ。

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2025年12月07日

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ネタバレ

現代においても同様かはわからないが、大学病院の封建的な風土や選挙における金の動きに対する衝撃を受けた作品だった。
同作者の他作品と異なり、物語の初めから最後まで、読み手からの主人公の財前五郎、それを取り巻く登場人物への好感、嫌悪の気持ちが正負に揺れ動くところに新しさを感じた。
田舎の貧乏な家庭から医者になった苦労と自負、婿入りした環境と名声欲強い舅や妻から自分への要求、自分の上司に努力を反故にされるような人事、医学部長や医師会・同窓会の損得で繋がった関係、自信を裏付ける手術の才能…それらが絡まり合い生まれた財前五郎という人物に、もちろん嫌悪する部分が大きいが、環境やプレッシャーでそうならざるを得なかった面もあるのではないかという面で同情的な感情も持ってしまった。
裁判においても、財前の行動は自分が患者だったらと思うと財前五郎の態度は到底許容できるものではないと思ったが、自分もなんらかの仕事のプロとして、自分の仕事結果に対し、あれだけの尋問に耐える仕事ができるかは自信がない。

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2025年11月24日

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改めて、作家としての山崎豊子さんてよくも医者でもなく弁護士でもないのにこのような作品を書かれたことに取材や勉強をされたのと思いすごい人だと思った。
本の感想は、私個人としては、里見さんのように生きたいです。難しいですね、色々しがらみがあって!

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2025年11月05日

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イッキ展開の最終巻。
あんなに憎たらしいと思ってた財前が何故か愛らしく感じられるラスト。
自分の身体も定期的にしっかりと点検しなければと思う。

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2025年08月18日

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完読!!傑作ですよ!
この作品が描かれたのは昭和中期。癌という病が一般的にまだ不治の病として恐れられており、医学もまだ未発達で現代のような緩和治療がない時代。大学病院の在り方として研究の学会発表とあらゆる症例のレポートがメインとなり、少なからずとも患者の扱いが現代とは異なり、悪い言い方をすれば研究材料だったのだろう。本書裁判における国が捉える『医師』の定義付けとしては『人の命を扱う重要な立場故に可能な限りの手段を用い治療努力をすべき』といった医療現場への警笛。そして、日進月歩である医療現場への尊重がある中での医師の立場と責任感の追求。医師である前に一人の人間であることを忘れるなかれ、といった現代医療にも近しい考えがこの頃はまだ不定着だったのだろう。人は皆考え方が違うし仕事への向き合い方も違う。求めているものも同じではない。財前と里見、正反対の二人が共通して持っていたものはお互いの仕事に対する信頼だけである。何だか寂しい気もするが、全てにおいて分かり合えることなんて絶対にないもんね。もっと上手くやれれば良かったのにね。地位や名誉に溺れないような人でありたいですね。

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2025年07月23日

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読んだ本 白い巨塔5 山崎豊子 20250518

 後書き読んだら、やっぱり4巻以降は続編だった。しかも、財前勝訴への批判の声から続けたとのこと。やっぱりな。正直、裁判の行方としては、色々あったとしてもあんな難しい手術をして誤診って言われたら堪んないだろうって思ってしまう。そこだけで言うと、3巻で終わってた方がリアルだった気がします。
 と言いつつ、夢中で読んじゃいましたね。今日だけで300ページ。財前の破滅を描いて溜飲を下げるってだけじゃこうはならないんだと思う。そもそも財前の独善も医者としてのプライド、人の命を救うってところから始まってて、それも難しければ難しいほど悦に入るってのは、悪じゃないんだよね。
 そして、権力におぼれた人たちも、その根源に医師としての生命へのリスペクトが描かれてて、決して善人になったわけではないけど、底流にあるものにほっとしました。
 次は「華麗なる一族」だな!

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2025年06月18日

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圧倒的な濃厚な壮大なストーリーでした。

財前教授を自業自得、因果応報、医者の不養生など言ったらあまりにも薄いのだが、彼自身もこの白い巨塔の中で歯車の一つとして翻弄された犠牲者のひとりなのではと考えると完全に悪と決めつけられない自分がいました。

40年以上も前の話なのに今読んでも決して色褪せないと感じるのは時代背景、社会状況以外の人間ドラマが強く息づいていたことなのだと思います。

読み終わってもしばらくはなにか心に重くおりみたいなものがずーんと感じます。

また読み返すべき名作です。

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2025年05月24日

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山崎豊子さん、ありがとう。

財前に可哀想な終わり方をさせないようにしてくれて。

主人公が最悪のヒールだったって話の先駆けじゃないかと思うくらい、大長編にわたって積み上げた財前の非道、悪行、愚昧の数々。

罪に問われなかったらセーフじゃないぞってことだ。

ざまぁみろ。

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2025年04月14日

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読み終わってしまった。裁判の個所は複雑だったけど、財前の亡くなる個所は何回も読んでしまった。わだかまりのあった里見と東が最期、手を伸ばし、最善を尽くす姿に感動する。
最期は医師として、正確な診断を遺す財前。教授選、学術選、何か諦めていたら若くして死すこともなく残念。
本当に良い小説だった

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2025年04月05日

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裁判と学術会議の選挙の両方を渡り歩いていた財前だが、選挙は鵜飼教授の政治もあり見事当選を果たす。一方裁判の方は、元病棟看護婦長の亀山や佐々木の受け持ち医の柳原らの証言により敗訴となる。その後財前は体調を崩し気づいた時には進行胃癌となり病に伏す。

総じてとても面白かった。医療小説であり政治小説でもある。当時の大学病院で行われていたあらゆる駆け引きが描かれており、手に汗握る展開だった。改めて感じたのは医者と患者の関係の大切さで、財前が訴訟されたのも術後診察もせずしっかりと説明をしていなかったからで、仮にそれをしていたら肺転移に気づかなかったとしても遺族は納得していただろう。現代だったらありえないが当時の医療現場ではそれが当たり前だったのだろう。最後食道癌の権威として教授まで上り詰めた財前が自身の体調の変化に気づかず裁判、選挙に没頭し進行を許してしまったのが彼の人生への皮肉だ。

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2025年02月08日

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医事裁判というテーマの5巻に及ぶ大作を読み切って、今更ながら著者山崎豊子さんの取材力に感服する。医療と裁判という2つの専門領域を描かれている。一方で、名声と医学者としての誇りを併せ持つ財前という男を憎くもあり、神々しいとも思った。これほどのスケールと高潔な社会派小説はそうそう巡り会えないと思う。

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2025年01月21日

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ドラマを観てからいつか読みたいと思っていました、ようやくです。現代でも閉鎖的、封建的で難解であろう医学界、医療裁判をこの時代にここまで取材し、描いた著者には脱帽。
社会派小説の名作だと思います。

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2024年07月27日

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最後泣けた
呆気なかった
財前が権力へなびきながらも、時折不安になったりするところが細かく描かれていて、里見派か決め難かったな

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2024年03月25日

Posted by ブクログ

今も何度もテレビで再放送されており、以前買ってあった原作を読みたくなり手にとった。
やっと5巻まで全て読み終えた。
財前が主人公だが、里見のどんな困難があっても
自分の信念を曲げない生き方が好きです。
特に4巻からは夢中になって読みました。
なお4巻5巻は読者の声によりできた続編だそうです。
題名の白い巨塔とは患者の死の経緯について正しい証言をしたものが大学病院を追われ、患者の診察に誤りを犯したものが、大学病院の名誉と権威を守るという美名のもとに、大学のあらゆる力を結集して誤診を否定し、大学にとどまる不条理とのこと。3巻より。

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2024年03月12日

Posted by ブクログ

五巻に及ぶ長い小説が遂に完結。
胸が締め付けられる。なんとも言えない辛い気持ち。
気づいたのですが、財前教授に感情移入し過ぎて、もっと活躍して欲しい。もっともっと困難に打ち勝って自信に満ちた物語を見せて欲しい。そう願いながらこの小説を読んでいたようです。
最期まで誇り高い態度で人生を駆け抜けた財前五郎に本当に感動した。
ありがとうございました。

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2024年02月21日

Posted by ブクログ

判決を言い渡されるあたりはドキドキしながら読みました。
最後100頁ほどはあんなに憎かった財前が可哀想になりました。
そして何よりケイ子さんのいい女っぷりが素敵でした。
泣けました。
読み終わりもよく、久しぶりに面白い長編が読めました。

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2025年10月31日

Posted by ブクログ

舞台となる昭和30年代は自分の両親が生まれた年代。写真は白黒だしテレビも一般家庭に普及はしておらず、洗濯もまだ洗濯板だったと聞く。片や自宅に風呂がなく銭湯通い、片や薪で湯を湧かしていたらしい。現代から見ると随分遠くに感じるが、本作は人間の内面にスポットが当てられており、時代を感じる背景描写はあっても内容に古臭さは感じられない。何度も映像化されている所以なのだろうなと思った。

しかし主要な登場人物の誰にも全幅の感情移入は出来なかった。それぞれに良いところと悪いところがあったように思う。
主人公の財前五郎は傲慢で自尊心が強く、上にへつらい下には厳しく、過失を隠蔽しようとしたり、いけ好かない悪人のように描かれるが、しかしながら母思いであったり、アウシュビッツや黒部ダムを見学して畏怖したりとごく普通の人間性も併せ持っている。決して褒められた人間ではないが、カリスマ性やお調子者といった側面もあり、憎らしいだけの人物でなない。裁判は主人公の不遜と怠慢が招いたことであり、亡くなった患者も家族も不憫ではあるが、かと言って遺族の感情的な様子に全面的に寄り添うことは出来なかった。会社が倒産した、生活が苦しい、全部財前五郎のせいだと言うが本当だろうか。患者がひとりで回していたという中小企業のリスクを存分に把握していながら普段から何のリスクヘッジも取っていなかったのは自分達の過失だろうし、亡くなった患者に顔向け出来ないというような思い込みで店の維持に拘ったり、財政が苦しいのに弁護人の厚意に甘えて控訴したり、取り立てに薄情だと泣き縋る姿は理解し難かった。また弁護人の争点についても結果論ではと思うところが多い。理想論を振りかざして様々な課題や背景を抱えた現実の事情を無視して殴りかかっているように感じられたし、医学的見地という観点からは財前側の言い分の方にも理があると思ったので、作中でもそのように反論されていたり、判決でも棄却されたのは現実的で良かった。振り返って見ると主人公はやはり医者としては本当に優秀でしかないのだが、真摯な性格だったなら遺族に訴えられて拗れることも無かったのでないのかなと思う。一体どうしてこんなに増長してしまうことになったのかと考えると封建的な医療の世界にもひとつ原因はあるように思える。主人公の末期に義父、学長、前任教授は何を感じただろう。
主人公との対比で描かれた里見は真摯で実直な姿から好感度も高いが、裏を返せば融通の利かなさに危うさも感じた。患者に肩入れし過ぎたり、家族を顧みなかったり、清濁併せ呑むことを知らないと言うのは時に周囲を無自覚に傷つけてしまうなと痛ましく思った。紆余曲折ありながらも本人にとってはより良い環境に身を置けたのは見守るこちらとしても幸いだった。
色んなあくどい人物達も出てきたが、個人的に一番不快だったのは東教授の娘だった。訴訟に熱心だったが被害者がかわいそうというより里見への下心を行動原理として動いていたようにしか見えない。元婦長の都合や心情を無視してしつこく絡み、時に父の権威を持ち出しながら説得し、そうしながら里見と比較して父をなじったり、一体どういう立場で何様のつもりなのかとその振る舞いには終始苛立ちを覚えた。

本書は本来3巻までで一度は完結しており。4〜5巻は反響を経た上で描かれたということで確かにやや蛇足に感じたが、それでもあの結末は印象的だった。財前五郎は人としては本当に問題の多い人物だったが医学に身を置く者としては間違いなく一流だったのだと感じられた。それだけに憎まれながらもその才が惜しまれるという強い余韻の残る読後感になっていたと思う。

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2026年11月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「白い巨塔4」「5」は、以前「続・白い巨塔」の一冊でそれを読んでいた。その「続・白い巨塔」の感覚があるので、この5は後半部分の感覚。4から話は盛り上がった。泥臭い選挙の話より、緊張感のある裁判のやり取りの方に引かれる。
財前の残した自分の解剖に関する意見書は、財前に医学者としてきちんとした考えがあったことを示す。財前は策略だけで出世したのではなく、苦学して技量・知識も身に付けた医師の側面が確実にあった。
財前と里見は、方向性が相容れなくても、お互いに相手を好敵手と思っている。この裁判がなかったら、財前の死がなかったら、この先どうなっていったのだろう?そんなことを思ってしまった。
ちなみにナイトクラブ・リドの加奈子は、選挙戦相手側のハニートラップでは?と読んだが、そんなことはなかった。読み違い。

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2026年05月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

全編通しての感想。

こんな面白い小説が1965-1969年に完成していたなんて!

里見が財前のことを「可哀想な奴」と表現していたけど、本当にその通りだと思う。
財前は周囲の期待に応えようと必死だったんだ。
最初はお母さんの期待や助けになりたいという思いが、だんだん周りの金と権力に溺れたタヌキ親父たちにいいように使われて…。
途中、「はやく失脚しろ」などと思ってしまったけど、財前はただ必死だっただけなんだと思うとやるせなくなった。
大河内教授への封書は、最期に財前自身が本当に願ったことだったのかな。そうと思いたい。

里見は、善人・ヒーローに見えるけど危うい人だと思った。
行いを否定するものではないけど、山田うめ個人に肩入れしすぎでは?と。
現実問題全ての患者にあそこまで支援出来ないのだから、それに責任を感じると心が壊れてしまいそう。

最後に気になったのはケイ子。
奥さんより愛されてると自負してる節があるけど、多分葬式には出られないし、マンションとか生活費とかどうなるんだ?
ケイ子なら逞しく生きて行くのかなあ。

こんな面白い小説を今まで知らないで生きてたなんて、読んで本当に良かった!

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2026年01月30日

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ある意味どんでん返しのない堂々たる展開なので、結末およびそこへの助走がそれまでと比べて少々こじんまりした感じがしなくもなく。
それでも日本の大衆小説を代表する一作という評価は間違いないかと。
しかしやっぱり三船敏郎を想起してしまうなぁ、財前には。何ででしょ?

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2025年02月17日

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財前が病気になるところは、ドラマの印象が強くて、本の方の筋は忘れていた。
それもあって、なんだか新鮮な気持ちで読めた。

本人に癌であることを隠して延命治療をしたとして、どういうメリットがある?
死に対する準備も何もできないではないか。
ちゃんと伝えられて、その事実を苦しみながらも受け止めたのちにしか、自分の人生や死に対する整理ができないではないか。
昔の、病気を本人に隠すというおかしな思いやりは、やはりまちがっていると感じた。

最後はややきれいにし過ぎな感がある。

加奈子爆弾がさく裂しなかったことについては、実に残念だった。



2004.3.8
ドラマと並行して読んだので、多少入り乱れてしまっているが、面白い話だ。ともかくドロドロしている。人間の弱さも強さも描かれている。リアルだ。裁判や談合の場面が多く、読むのに手間取ったが、人間の欲には際限がないのだなぁと財前に対して思った。なかなか里見のようにはなれないのかもしれない。大人になってしがらみが増えると、物事は単純ではなくなるのだ。自分が正しいことをしても、それは必ずしも良い事態を招くとは限らない。里見は人間としては立派だが、夫としては不合格だと思う。

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2025年04月05日

Posted by ブクログ

実際には、40年ほど前の新潮文庫、白い巨塔(上・下)、続白い巨塔を本棚から取り出して再読。

映画やドラマで何度も公開されて好評だった名作だが、原作は大阪の国立浪速大学医学部を舞台にした医事紛争裁判を深く抉った社会派小説。
大学医学部の医局内での派閥争いや医学界におけるドロドロとした内情などの中で翻弄される患者の運命。
医療技術の進歩により、原作当時(昭和37年前後)の医療知識や治療法とは隔世の感があるのは否めないが、癌というものに対して初見時には深い感情を抱かなかったが、癌というものを身近に感じる年齢になった今、ちりょおうや手術、解剖の場面などは身につまされる思い。

主人公の財前五郎をはじめ、同僚で裁判では対立する里見助教授、鵜飼医学部長、病理の大河内教授、担当医の柳原、弁護士の関口、死亡した患者の佐々木とその妻で告訴人の佐々木よし江など、他にも登場するすべての人間の感情が生き生きと描かれており、素晴らしいヒューマンドラマでもある。
数ある山崎豊子作品の中でも代表される名作。

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2023年09月29日

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医事裁判、控訴審の判決後、財前教授が病に倒れるのだが・・・周囲の彼に対する対応を読みながら目頭が熱くなった。社会派小説金字塔

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2025年11月02日

Posted by ブクログ

二審の逆転敗訴の直後、末期癌で倒れる財前。自分の病状を冷静に分析し、それを死後自分を解剖する
医者宛に手紙として残し、身をもって医学の進歩に貢献しようとした所だけは男前だと思った。

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2026年10月05日

Posted by ブクログ

最後は怒涛の展開だった。
学術会議選挙に勝ち、医療裁判や学内の政治に多忙な日日を送る財前に遂に病魔が…
最後は本作らしい結末だった。

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2024年02月15日

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