あらすじ
浪花大学教授・財前五郎の医療ミスを訴えた民事裁判は、原告側の敗訴に終わる。同じ大学の助教授の身で原告側に立った里見は、大学を去る。他方、裁判に勝訴した財前のもとに、学術会議出馬の誘いがもたらされる。学会人事がらみの危険な罠をかんじながらも財前は、開始された医事裁判控訴審と学術会議選挙をシーソーのように操り、両者ともに勝利することに野望をたぎらす。
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Posted by ブクログ
この本を読んで、さまざまな思いが湧いてきました。
正直に言うと、私は里見先生にあまり共感できませんでした。
一見、誠実で患者想いに見えますが、患者自身の意思を置き去りにしてまで、自分の理想とする医師像を押しつけているように感じたのです。それが、私には偽善のように映りました。
一方で、財前教授もまた、手術の腕は確かでも、人として相手を敬う気持ちが欠けており、尊大な人物に見えました。
法廷シーンや、当時の医師たちの過酷な労働環境など、医療をめぐる社会的な問題が描かれており、考えさせられることが多くありました。
登場人物の中で、私が一番好感を持てたのは大河内教授です。
彼だけが「公正さ」というものを真に持ち合わせていて、その姿がとても印象的でした。
同時に、自分の中にある「事なかれ主義」や「甘さ」にも気づかされました。
正義のために私財を投げ打つような行動は、自分にはできない。だからこそ、この物語はそんな自分を問い直させてくるようにも感じたのです。
次巻がいよいよ最後。
読むのが辛いけれど、それ以上に楽しみでたまりません。
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里見先生が医者としての本懐を腐らせなかったのは素晴らしいと感じた。
前3巻において、正直、医事紛争についてはよくわからないけれど、法律的な知見についてはある程度分かるので、はっきりしているのは、当時の医療で財前を裁くことは難しかったとは思う。のらりくらりと論う財前に対して、弁護士ともども原告が感情的に動くのは良くなかったと思った。裁判所とは、温情や民意の入り込む余地がないからだ。
今回は、財前が粘菌に這い寄られるように、足元から身動きを奪われるような内容だった。
不思議なもので、ちょっと可哀想な気もした。ただただ財前の転落を願うこの作品に。
山崎豊子さん。これはフィクションなのでしょうか?あなたの話を聞きたいです。
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ドラマも映画も未見のため、結末が見えず終始ハラハラしながら読み進めている。
山崎作品は、どの作品のラストも、スッキリ勧善懲悪にはならないので、おそらく本作もそうであろうという半ば諦めの思いを持ちつつ読み終えた。
これが現実の人間社会であるだろうことを目の前に突きつけられる残酷さと徒労感にどっぷり浸かりつつも、人間の持っている正義感や高潔さも同様によく実感できる内容。
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財前側の人間が皆ホントやな奴ばっかりです。
ケイ子さんだけは別。
特に国平弁護士と佃が本当に嫌。
逆に関口弁護士はすごく好感が持てました。
分野外のことを自分の知識にするのって難しいと思います。
佐々木さん一家の応援をしつつ最終巻に突入します。
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前巻に引き続き法廷闘争。第二審へ。中小企業のワンマン社長が癌で死亡し、そこに医療過誤があったかどうかが争われる。
市井の人と大権力との戦いは池井戸潤作品にも通じるかと。
一方で被控訴人の財前教授は学術会議会員という更なる権威獲得のため選挙に打って出る。裁判、選挙の双方をシーソーゲームとなぞらえ、そのどちらにも勝ってみせるという不敵さ。
けれど控訴した側の関口弁護士が必死に医学知識を身に付けて、財前側の手落ちを証明してくれる人を求めて日本中を駆け巡り、彼の元に強力な証人が揃ってゆく。
裁判の決着が着く最終巻へ。
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一審の判決後から学術会議選の序盤、控訴審の始まりまで。
一件すると一審に勝った財前はいまだ絶頂期にあるようだが、徐々に綻びが出てきているさまが描かれている。
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派閥を経験したことがないので、内部に対してこれだけの力量を使う事が無駄に感じてしまうのが、率直な感想です。その分外部に使えば、どれだけ世の中に貢献できるのかと考えられるのは、今が恵まれた環境で働いているからかもしれませんが。
しかし、こういったドロドロ感満載のテーマを緻密な取材をされた上で筆を取られているのか、まったくもって飽きません。
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控訴審と学術会議会員選。
金と権力により物を言わせない権力論争へと流れていき、裁判に至っては口裏合わせと事実の歪曲を推し進める財前サイド。細やかな部分ではあるが、ドラマとは少し設定が変わっていて、こちらが原作なのは承知の中でも『フムフム』しながら読めるのは楽しい。
さあ、最終局面だ。どんな終わりを迎えるのか。
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読んだ本 白い巨塔4 山崎豊子 20250613
なんだろう、一回3巻までで完結して、続編として再開したってことなんだろうか。どうにも既視感のあるストーリー。教授選→学術会議選、医療過誤裁判→再審ってな置き換えで進んでいくんだけど。登場人物もほとんど変わらず、少しマンネリ感がありますかね。とはいえ、これまで読んできたお話の結末がどうなるかの興味は全然薄れることがない展開で、善と悪じゃないけど、それこそ傲慢と善良みたいな対比がより際立っている。
ドラマで観たはずなんだけど、なんかすっかり忘れてるみたいです。
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他の巻より量的に分厚い気がして読み応え十分だった。
欲にまみれて選挙に進みながらも心の何処かに裁判の後ろめたさを感じる描写が上手い。
時代設定が古くても(大学病院の病棟婦長まで務めた人が結婚して引退して、掘っ立て小屋みたいな所で生活する?)本当に普遍な名作。次の最終巻が待ち遠しい。
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この作家、前から思ってましたが、男性キャラの描き方が上手い。
ここに出てくる数多の「おっさん」の、それこそ目に見えるようなくどいまでの濃さ、里見含めた全員が脂分満載ではないか(笑)。
それに比べると女性の描き方が可愛いんですよね。当方の記憶では、他の作品も基本男性中心の設定が多くて、女性中心の作品では権力を巡る怨念があんまり感じられなかった気がする(気のせいかもしれませんが)。
ともかくこの最終巻に進みましょう。
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佐々木庸平で起こった医療過誤の第一審は財前側の勝利となる。その後鵜飼教授の思惑もあり財前は学術会議選挙へと出馬することとり、佐々木側が控訴したこともあり選挙と裁判の両方を渡り歩くこととなる。
裁判は財前有利かと思われていたが、最後の最後で看護婦長の亀山が佐々木側の証人として出ることとなるから次の巻ではどんでん返しが起こるのだろう。
財前有利の証言をしなかった里見助教授は浪速大学を追いやられるも新しい職場の癌センターで研究を続けており、相変わらず患者思いだが患者がお金ないからって自分のお金を出すのはどうなのだろうか。それやったら他の人に対してはどうするのか、あくまで医師として診断治療を行うべきかなと。
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浪速大学の教授選挙戦の次は4巻でら学術会議選挙が医事裁判のもう一つの舞台となる。選挙戦の攻防はやや辟易するが裁判の方は控訴審になり、かなり白熱していて読み応えがある。正義と野望、もちろん正義に勝ってほしいが名誉、金などに執着する欲にまみれた人間の恐ろしさには身震いする。
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これまで、選挙、裁判とひとつの時間の中にひとつしかテーマを置いてこなかった。しかし、ここからはこのふたつのテーマを同時に展開にしていく。
それまでもなかなか重く複雑だったが、これまでの内容でそのふたつのテーマの事前理解が進んでいた事と、それでもなお丁寧で飛ばさない物語展開のお陰で混乱なく読み進められた。
医局に限らない権力社会の嫌な面も増してきており、それを象徴するような主人公への読者の嫌悪も上手く醸成できていると感じた。
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1巻から3巻まで息をつかせないスケールで物語が進んでいましたが、この4巻ではちょっと息切れなのかな?裁判の準備と里見医師と癌患者のストーリーと佐々木商店の下り坂の描写がメインで、面白みという面ではやや小ぶりに感じた。また、財前教授もやや疲れ気味で、それまでの昼夜の大活躍振りは見られません。ちょっと残念。
でも、そう感じるのは、逆に考えると財前教授のキャラクターを好きになっているということだと。やはり、すごい小説。
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傲慢と過信に加速がかかった財前教授。
それと対比させられるようなヨシエ一家の転落が寂しし、無情。
時代的にしょうがないのだけど、
東さえこって何してるのかしら。
仕事もせず家事手伝いで、凛としてるようにかからてるけと婦長の家に綺麗なかっこで訪れて、
教授の娘だからといって年上に対する態度ではない気が、、、
父上はすごいかもしれないけど、娘とは切り離してと思ってしまった。
なんかモヤモヤ
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財前がかつての患者と同じような手術をするのだが、その時の感情の動きが印象的。まるで呪い。
物語も佳境に入ってきた。
裁判の決着がこの物語の結末なのかなぁ。
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権力を最大限に使って部下を思うままに動かしているように見える財前の中に、真実に対する恐怖や、孤独に耐える苦悩も垣間見える。
成果を求められ、比べられる世界で、患者の命に誠実に向き合い続けることは簡単なことではない。
周囲からの評価、権力や財力を抜きにして、自分が何をしたいのかを見つめることの大切さを感じた。
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裁判の第二審と学術会議選が並行して進む。
一見自信満々の財前が佐々木に似た患者の前でたじろぐ姿は妙におかしい。
第二審が必ずしも第1審どおり進まない様相を呈する中で、かつての病棟婦長の証言が大きな意味を持ちそう。裁判の行方は予想がつかない。
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話の展開がいよいよクライマックスへと向かっていきます。
この徐々に状況が変わっていく様を、登場人物それぞれの心境を背景に映し出されていくのがたまらなく面白いです。
最終巻も今読み始めていますが、あっという間に読み終えそうです。
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裁判に巻き込まれていく人たちの戸惑いや苦悩が興味深い。
柳原も、亀山君子も、それぞれに抱えたものがあるから、迷い苦しむ。
権力と欲に飲み込まれてしまう弱者の姿が、痛々しい。
佐枝子の想いも、なんだかひやひやする。
加奈子爆弾がさく裂するのも、つい期待してしまう。
それぞれ2度目の裁判と選挙の話は、パワーアップしているものの、繰り返し感は否めず、ちょっと飽きを感じる。
結末を知っているから、身を入れて読めないだけだろうか。
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5巻連作の第4巻。
大阪を舞台にした作品で山崎豊子さん独特の味のある関西弁の言い回しが読みやすく、大作もサクサク読んでしまう。
財前の裁判の結果は、次巻の結末が楽しみです。
Posted by ブクログ
浪速大学医学部第1外科教授・財前を医療ミスで訴えた裁判は、被告側の勝訴に終わった。
医師として、財前に不利となる証言をした里見は浪速大学を追われることとなる。
原告側は控訴することを決める。
同時に、学術会議選挙に出馬することとなった財前。
裁判で再度勝ち、選挙にも勝てるのか…
そこまでしなくても…
里見の医師として、正義を貫く姿勢には頭が下がるが…
すべての患者にそこまでできるのか⁇と思ってしまう…
自分はいいとして、自分の家族のことは考えないのだろうか…三知代や好彦のことを。
佐枝子もなぜそこまでするのか…
確かに財前の診療には問題があったかもしれない。
財前だけの誤診とはいいきれないだろう。
里見にもやれることはあったはずだ。
亡くなった佐々木庸平の遺族のやりきれない気持ちもわからなくないでもない。
ただ、佐々木商店が倒産しかかっていることは別問題だろう。
感情論に訴えるのには、何か違和感が残る…
財前が窮地に追い込まれていく…
加奈子は何者なのか…
柳原も証言を覆すのか…
4巻以降は、すこしくどさを感じる…
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1-3巻が元の"白い巨塔"、4-5巻が"続・白い巨塔"。
大学病院内での教授の座をめぐる権力争いとその渦中で起こる医療ミスをめぐる裁判を描く。教授選挙の決着と医療ミス第一審判決までが本編、学術会議会員選挙と控訴審判決までが続編。
昭和の金と力の時代を描き切った作品。その意味では本編完結までが純粋な作品。
本編の医療ミス裁判の現実社会での反響が大きく、作成された続編では、裁判と主人公の身に起こる異変が並行して進む。結末は裁判と天命により主人公の人生にけりがつけられる一方、単なる悪役ではない誇り高き医療者の一面を示して終わる。
Posted by ブクログ
里見は、地方に飛ばすと鵜飼教授にとって逆風になるから助かった。
助教授の次は教授、教授の次は学術会議員。
トップになるまで野望は続き、大変な労力をかける。ここまでした、費用対効果はあるのか。金が余っているから、費用を度外しに、名誉や地位を求めるのか。
Posted by ブクログ
1審を終え2審にいたるまでの話を描いている。
3話が大味な分、幾らか物足りない気がしないでもなかった内容だったが、こららが5話でまた上手くまとめられると思うとより楽しく読めた。中でも、繊細な人間の心の動きを鋭く描写している点がより楽しめたところだ。
財前五郎というキャラクターから学べることは非常に多く、その物怖じしない度胸と強さは見習い、身に付けたいと思った。