【感想・ネタバレ】沈まぬ太陽(二) -アフリカ篇・下-のレビュー

あらすじ

パキスタン駐在を終えた恩地を待ち受けていたのは、さらなる報復人事だった。イラン、そして路線の就航もないケニアへの赴任。会社は帰国をちらつかせ、降伏を迫る一方で、露骨な差別人事により組合の分断を図っていた。共に闘った同期の友の裏切り。そして、家族との別離――。焦燥感と孤独とが、恩地をしだいに追いつめていく。そんな折、国民航空の旅客機が連続事故を起こす……。

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Posted by ブクログ

主人公はじめ物語の舞台である国民航空で働く人々の仕事っぷりが読んでいて清々しい。昭和の働き方の良し悪しは置いておいて、仕事ができる人とはこういう人であり、大企業にはこういう人がごろごろいるのか..と驚嘆した。

自分自身も正義感が無駄に強い頑固者なので、個人的に恩地さんが自分の信念を曲げず貫こうとする姿にすごく勇気づけられたし、恩地さんには報われて欲しい。
会社というか堂本の策略にまんまと嵌ってしまった行天は、素直すぎるやろ、と思った。ボタンのかけ違いで正反対の立場になってしまった2人、だけど行天は簡単に信念を曲げる要領のいい性格なので、堂本の罠がなかったとしてもいずれどこかで仲を違えていたのかもと思う。

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2025年11月26日

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エリート社員だった主人公が、思わぬ不本意な形で労働組合の委員長を引き受けることになる。元来の真面目さ、誠実な性格で、末端の社員の賃金引き上げなどの処遇改善を掴み取るが、一本気な進め方が災いし、また、たまたま首相フライトを交渉の材料に使ったということで、経営陣との対立が決定的となる。その報復人事とばかりにパキスタン、イラン、ケニアの駐在として10年間のいわば流刑に処される。この間、良い出会いもあるのだが、家族も疲弊、出世もおぼつかず、さまざまなハードシングスで発狂寸前まで追い込まれる。大企業や保身に走り自分のことしか考えない役員の嫌なところを煎じ詰め、煮詰めて、かたまりにしたような話。現代であれば、即炎上、裁判あるいは転職という選択肢もあるだろうが、当時はそういう選択肢はなかったのだろう。とはいえ、別の形で残っているだろうから、やはり大きな組織、権力者は怖いものなのである。

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2025年08月27日

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主人公の強い正義感に対し、会社や周囲がそれを抑え込もうとする姿勢から、現代の日本社会にも通じる闇を強く感じました。

物語は何十年も前の出来事を描いていますが、今もなお変わらない企業文化が根付いていることを痛感させられます。

主人公のまっすぐな信念は会社には疎まれ、結果として海外転勤が延長されるという理不尽な扱いを受けます。

その姿に胸が締め付けられる一方で、現実にも似たような構造が存在するのではないかと考えさせられました。

企業の事業の裏に潜む矛盾や不条理を描き出す描写はとてもリアルで、社会を鋭く切り取った小説であると強く感じました。

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2025年08月24日

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前半は主人公の恩地がアフリカでどのような状態で頑張っているかが書かれて、
ひたむきに業務をこなす姿に心打たれました。
後半は日本航空が抱える問題が浮き彫りになり、自分が手配したチケットが原因で問題の渦中へ。
前巻で出てきた登場人物がそれぞれの思いを胸に、問題に向き合う姿は心動かされました。

アフリカで過ごす中で、自分と同じく日本への思いを抱えながら、帰国できない孤独な思いを秘めた人の心中が語れるシーンに
解決した訳では無いが、恩智の孤独が少し和らぐのを感じました。

ハンティングの描写や、剥製を壊すシーンは、作品に吸い込まれるような描写でした。
次巻も楽しみです。

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2025年07月08日

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過酷過ぎる僻地での年月。読んでいて辛かったです。
恩地さん、お疲れ様でした!
でもきっと、まだまだ恩地さんの戦いは続くでしょう。
次巻楽しみです。

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2025年07月03日

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どこまで会社は社員をいじめ抜くことができるのか。恩地はそこまでのことをしたであろうか。ただ会社は恩地の正しさを恐れているだけではないか。果たしてこの先どのような展開になっていくのか楽しみで仕方がない。

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2025年04月26日

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十年のときを経て恩地が日本に帰国することになったところが、普通に感動してしまった。会社の不当人事について都労委の審問会で、十年間を語るシーンは、すごく印象に残った。一巻を読んだときは、家族を犠牲にしてまで、会社と闘う恩地に、あまり共感できなかったが、ここまで来て初志が貫徹されると爽快感がある。

れにしても、国民航空管理職の性根の腐った感じが、読んでいて気分が悪くなるくらいに生々しい嫌さを醸し出している。立て続けに起こった旅客機の事故を経ても、現場の労働者たちの労働環境の改善に動かないどころか、彼ら第一労働組合の訴えを不当として、中央労働委員会に再審査を決める八馬と中谷のセリフのところ(p467〜468)とか、一周回ってすごいと思う。
こうした上層部の感覚というのは、おそらく知らないだけで今でも色々なところで起こっているのだろうと思う。折しも、フジテレビの接待問題が起こっているときに読んだが、きっと氷山の一角なのだと思うと、気分が暗くなる。

一巻のときから思っていたが、何よりも、山崎豊子の取材のとてつもなさに驚く。六〇〜七〇年代の海外駐在員たちの実情が、よく分かる。
テヘランの現地の学校で文房具を全て盗まれてしまい、学校に行きたくないと言い出す恩地の二人の子ども。日本人学校もまだなく、妻が自分で子どもに勉強を教えるところや、帰国後の子どもたちの様子など、当時の海外赴任のイメージの空気感が伝わってくる。他にも、恩地がナイロビで出会う他社の日本人駐在員たちの様子や、現地の日本人コミュニティの雰囲気も、こういう感じなのかと勉強になった。

細かい描写が、恩地の飛ばされた僻地の生活感を伝えてくる。ストーリーの主軸には、日本航空という会社の内情と、恩地の闘いがあるわけだが、それだけでなく、今から50〜60年前の海外で働く日本人の実情が見えるのも面白かった。
すでに、墜落に誤着陸という連続事故が起きている。いよいよ御巣鷹山編だが、会社の体質が生む不穏な感じが、ひしひしと伝わってくる二巻だった。

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2025年03月13日

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2001年(発出1999年) 484ページ

2巻を読み終わって感じたことは、モデルである日本航空の御巣鷹山墜落事故、そして、日本航空経営破綻をニュースで見聞きしていた過去の経験から、ナショナル・フラッグ・キャリアにはこの先も暗雲が待ち構えているのだと教えてあげたくなるような気持ちです。この小説が書かれた頃は倒産はしていないけど、さもありなんと思わせるような中身の濃い2巻でした。3巻の御巣鷹山編は心して読もうと思いました。
私事ですが、風邪をひいて小説を読むのも辛かったのですが、この2巻目は途中をAudible で聞きました。Audible といっても聴き流しでは内容が入ってこないのである程度の集中力が必要です。この小説は、Audible でも自然に集中して聴くことができました。それほどのおもしろさです。ナレーターも素晴らしかった! 沈まぬ太陽3の配信はこれからなので、先に文庫本を読み終わることになりそうですが、これも楽しみです。

カラチからさらにテヘラン、ナイロビへと、まさに報復と思われる恩地の僻地赴任が続く。テヘラン赴任後、恩地の母の訃報の知らせが届く。慟哭の中、日本に帰国する恩地。その足で社長の桧山のもとを訪れ、テヘラン就航後は日本へ帰すとの約束を取り付けるも、その約束も反故となりその後のナイロビ赴任の辞令。妻とこどもとも離れ離れの生活。ナイロビでは週末ハンターとして、自然の中で唯一の趣味のハンティングに打ち込み、心の均衡をはかっていた。一方、国民航空の旅客機が連続事故を起こす……

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2024年11月17日

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やっと帰国が叶い、ホッとする結末。とにかく一気に読ませる筆致。母なるアフリカの大地に守られた主人公だったのであろう。

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2024年10月20日

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ネタバレ

一巻読破からすぐに二巻開始。パキスタンからイラン、ケニアへ赴任させられ、約十年に及んだ僻地勤務が恩地の心情の変化とともに描かれている。
あと少しで日本に帰ることができる、と思い続け目の前の仕事に励むものの、本社から裏切られ続け、最後のケニアでは精神的に限界を迎える恩地。子供がいる身として、10年間子どもと日本で安心して暮らせなかった恩地の身になれば、これほど辛いことはないだろう。
会社に人生を踏み躙られたのだ。会社とは従業員を幸せにすることに存在意義があり、一部の経営陣のためにあるものではない。そんな経営陣に靡かず戦い続けた恩地の信念の強さに感服した。ただその信念を曲げなかった故に家族を巻き込み続けたことは、現代では受け入れられないかもしれない。この時代の妻の度量の広さにも驚く。
また、本社経営陣には見放されても、そのレッテルに左右されずに人を見て評価してくれる人(島津や南)もいるんだとこの作品を読んで思った。辛いことや厳しい時があってもコツコツ努力すれば誰かが見てくれている、と思えば何事も頑張れる。

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2024年10月17日

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ネタバレ

 恩地が去ってからの本社には、会社の御用組合である第二労働組合ができる。
 第二労働組合は第一労働組合から人員を引き抜いた為、第一組合へ残る組合員はわずかな人員となった。
 恩地が後を託した第一組合の委員長の沢泉からの郵便メールで、現在の第一組合の実情を知らされる。
 かつての労働組合の幹部は劣悪な環境の売却資材倉庫や資料管理室へ追いやられた。第二組合に移籍しない、第一組合員は、第二組合の人間の監視のもと、支店に日がな一日椅子に座らせられて、無為に過ごすことを強制されていた。
 話を聞かされた恩地は憤り、本社への不当人事に対抗する憤りを募らせた。

 パキスタンからイラン、そしてケニアへと、僻地をたらい回しにされた恩地は次第に心が荒んでいく。
 恩地は週末のみのサラリーハンターとして、アフリカの地で、獣を狩る日々に、なんとか心のバランスを保っていた。
 そんななか、沢泉からの連絡で、僅か五ヶ月の間に三度もの事故を起こす国民航空の現状を知らされる。
 128人の乗客の命を失う連続事故を起こしたにもかかわらず、本社の運行管理者は横滑りの人事交代のみで、その無責任体制は続いていた。
 事故をきっかけに国会で、衆議院交通安全対策委員会が開かれた。
 これにより、国民航空の労働規約違反が白日のもとにさらされ、恩地はようやく日本への帰還ができることと成った。

 恩地を、しぶしぶ日本へ戻すことに同意した労務部長の八馬忠次、副社長の堂本信介は、帰ってくる恩地に対する処遇を巡らした。

 日本へ帰れることに成った恩地の荒んだ心は晴れ、家族のもとへ帰れるという希望を持った。

 沢泉委員長が国会で、不当人事の状況を説明し、恩地への報復人事を証言する場面は、読んでいて心がスッとした。
 三度もの連続航空機事故を起こしながら、変わらない本社役員の体質に憤りを感じつつ、あの稀に見る、御巣鷹山への航空機墜落事故の大惨事へと繋がっていく。
次巻へとつづく。

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2024年03月17日

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主人公が3箇所目の僻地勤務に携わる過程で、生活にも慣れ、狩猟という趣味を見つけ、それなりの妥協を見出しはしたが、会社に対する怒りや孤独が徐々に精神を蝕んでいたという部分が衝撃的だった。
10年間の僻地勤務がようやく終わった。

会社の利益追求するあまりに社員を大事にしない姿勢が、立て続けに飛行機事故を起こしてしまった。起こるべくして起きた墜落事故。それでも企業は保身に走るもんなんだなぁ。巨大企業の恐るべき裏面を見た。

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2023年11月13日

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10年にもわたる僻地をたらい回しにされた報復人事を、同じく日本で不条理な配置転換された仲間と共に、巨大組織と戦うさまに惹きつけられる。人事というどこの会社にもある普通に行われることが1人の人間とその家族を追い詰めていく。
正義と矜持のために組織と戦うか。地位と家族の幸せのために組織に取り入り社畜と化すか。小説としては非常に面白く読み応えがあるが、現実に組織社会で働く自分に引き寄せれば、極論の二者択一ではなくその中間に多種多様な選択肢が転がっており、常にその最適解を探し求めているのが現実なのだろう。

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2023年10月07日

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この時代にアフリカに行く日本人が何人いたことか。ケニアの美しさも、本からしっかりと伝わってきました。また、そんな場所で恩地さんが、気丈に振る舞いながらも、精神的に追い込まれて行く様子も分かります。
1人の人間をここまで追い詰める会社組織にぞっとしつつ、恩地さんを信じて支える家族や、組合の仲間に感動と覚えます。

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2023年09月30日

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続きであり、時系列が順番なので読みやすかった。
それもあって、恩地さんが置かれている状況の不遇さがより感じられた。組合のことや会社の仕組みについては、難しいのでもっと勉強したいと思うが、家族の温かさ重要さが感じられた。最後の証言の場面では涙が出そうになった

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2023年01月23日

Posted by ブクログ

絶句、半官半民の一流企業でこんな悲惨な労使関係がまかり通っていたなんて、、、
少なからず、日本の伝統的企業の根っこにはこういった文化、秩序が根付いているのかしら、と考えるとゾッとした。

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2022年09月27日

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ネタバレ

左遷に次ぐ左遷で恩地元の精神が疲弊する描写が事細かに描かれている。家族を犠牲にしてまで会社と戦うべきなのかということと、自らより厳しい境遇で戦っている組合員の間で揺れ動くものの、どうしようもない感情に苛まれ、剥製を撃ってしまうところなども思わず感情移入してしまった。巻末では日本に帰ることが叶ったが、日本で満足な待遇が得られるとは思えず、恩地元の奮起を期待しながら3巻に進みたいと思う。

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2022年04月30日

Posted by ブクログ

読書本のオススメ本に載ってて、読んだ。
当時の時代感や不条理に引き込まれて、一気に読んだ。
総理帰国便の直前に社初のスト決行はスケールがでかすぎすると感じたけど、実話は、皇室の帰国便で更に、スケールが大きいのかなと感じた。

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2025年11月20日

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 一巻に続いてオーディブルで聴いたのだが、より惹き込まれてしまった。左遷状態からの脱却にこれほど時間がかかるのかという不条理に憤る。まあ、左遷している側の利益があるのだから、組織の非情の論理は時間が経てば経つほど貫徹されてしまうのだ。この著者の真骨頂は、こういう不条理を告発することなのだ。この著者の著作の欠点は一度読み出してしまうと最後まで読みたくなってしまうことなのだ。忙しい人は手を出さないでください。

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2025年09月14日

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人を想い筋を通す。それ故に心が弱る。僻地盥回しの不当な人事などで時折り人の醜さを感じるが、それでも筋は曲げず人を想い続ける恩地元という素晴らしい人間性に惹きつけられた。

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2023年06月21日

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この物語の主人公は極めて優秀、かつ強い信念と正義感の持ち主である。しかし、この正義は全てにとっての正義とは限らない。反対の立場(ここでは経営側)の者も、自分達にとっての正義で対峙している。本巻ではそのせめぎ合いが面白い。

とはいえ、経営側の正義もまた、全てにとっての正義とは限らない。本巻の後半は、それを明確に描写している。

また、度重なる事故とそれらへの対応は、間違いなくその後の御巣鷹山への伏線として書かれている。

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2022年02月11日

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本当に読みごたえのある素晴らしい作品や。どんどん面白くなってくるな・・・恩地が報われてほんまに良かった!信念を貫き通す男にはやっぱええ仲間がおるな・・・
しかし、次からどんな展開になるのか不安すぎて楽しみ❗

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2022年01月12日

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ちょっと自業自得だよなと思いながらも、物事をよくしようとする恩地のパワーはすごいなあと思った。それと同時に今では考えられないような労働条件があったことを痛感した。
そう考えると、この時代に生まれてきた自分はラッキーなのかな。それとも未来はもっとホワイトな会社で溢れているのだろうか。
この時代に戦ってくれた全ての労働者に感謝

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2021年12月23日

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1.著者;山崎豊子さんは、小説家です。大阪の老舗昆布店に生まれ、毎日新聞に勤務後、小説を書き始めました。毎日での上司は作家の井上靖氏で、薫陶を受けました。19歳の時に、学徒動員で友人らの死に直面し、「個人を押しつぶす巨大な権力や不条理は許せない」と言っています。社会派小説の巨匠と言われ、権力や組織の裏側に迫るテーマに加え、人間ドラマを織り交ぜた小説は、今でも幅広い世代から支持されています。氏の綿密な取材と膨大な資料に基づく執筆姿勢はあまりにも有名です。「花のれん」で直木賞を受賞後、作家業に専念し、菊池寛賞や毎日文化賞を受賞しています。
2.本書;3編(アフリカ篇2冊、御巣鷹山編1冊、会長室編2冊)の内のアフリカ篇 下です。主人公の恩地は、航空会社の労働組合委員長として、会社と対峙した結果、カラチからアフリカまでの左遷(報復)人事という非道な仕打ちを受けます。家族との別離、孤独を支えたアフリカ、理不尽な“現代の流刑”に耐える恩地と家族を描いています。この小説のモデルは日本航空です。氏が多数の関係者にインタビューした緻密な小説で、“事実に基き再構築”したと言っています。一方、日本航空経営陣は、この小説に強い不快感を示し、雑誌連載中は日本航空内での当該雑誌の扱いを中止したそうです。
3.私の個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、感想と共に記述);
(1)『第7章 テヘラン』より、「(恩地)組合の委員長として、二期二年職場の不平等を正し、空の安全を守る組合員の為に、公正な賃金を要求しただけではないか。それを会社は“左翼分子” “アカ”のレッテルを貼って、僻地を盥回しにし、今また遠く海を隔てた、アフリカの大地へ押し流そうとしている。まさに流刑に等しい。明らかに会社に楯突く者への見せしめの人事に他ならない」
●感想⇒労働組合は、組合員の生活安定の為に、労働条件向上の要求をします。経営者は株主や社員等への責任を果たす為に、会社を永続的存続させる施策を推進しなければなりません。その監視役の一つが労働組合です。労使には会社と社員の持続的成長の為に、真摯な協議と判断が求められます。恩地は労組委員長として、当然の行動をしただけなのに、海外の僻地に盥回しにされるという非道な仕打ちを受けます。そして、「ここまで追い詰める会社に対し、怒りを通り越して、人間の汚さへの絶望を感
じた」と言います。経営者の中には常識人もいるでしょう。しかし、この会社の経営体質は腐りきっていると思います。労使関係が良好でない会社に未来はありません。真摯に勤める社員を思うと、怒りというよりも情けなさが込みあげるばかりです。
(2)『第8章ナイロビ』より、「(恩地)命がけでやる仕事の場を与えられた人間が、心底、羨ましかった。人間にとって、やり甲斐のある仕事を与えられないことほど、辛いものはない」
●感想⇒やり甲斐ある仕事に携われば、幸せに決まっています。では、やり甲斐ある仕事とは何か?やり甲斐は仕事人の考え方によって、決まってくると思います。職業に良し悪しはありません。どんな仕事でも社会にとって必要性があります。会社は“開発・製造・経理・保安・・・等”貴賤上下なく必要です。全員が協力して、社会貢献しているのです。これこそが仕事のやり甲斐の源なのです。
(3)『第8章ナイロビ』より、「人命を預かる航空会社の、安全に対する使命感が欠如し、パイロットが不足していることを承知しながら、利益優先の路線拡張を推し進めるその無節操な経営姿勢を、一挙に露呈したのが、ボンベイの誤着陸事故であったのだ。・・・会社側の意を汲んだメンバーだけがホテルに缶詰になって、事故原因の作文を強いられた。組織の中で節を全うする事は難しい。いつかは追い詰められ、最後まで筋を通すためには、自己を犠牲にしなければならない」
●感想⇒モノづくりには、“S(安全)Q(品質)C(コスト)D(納期)”が重要であると教えられました。安全が第一に確保されない企業に存在価値はないのです。それでも、軽微な災害隠しは日常茶飯事でしょう。私は、「事実の前には謙虚になれ、隠し事は露見すると多大な損失を被る」と教えられました。この小説の会社は、利益優先の為に、隠蔽工作する体質です。それでは、信用という金銭では買えない財産を失います。顧客は早晩、このような企業を見限るでしょう。
4.まとめ;主人公の恩地は労働組合の委員長に担ぎ上げられたばかりに、会社から不遇の報復人事を受けます。一方、同志だった副委員長は会社に寝返り出世街道を進みます。言葉がありません。この会社の姿勢は、法的に擁護されている労働組合を潰そうと行動しているのです。これは経営者というよりも体質の問題です。昨今、企業では内部通報制度や風土改革などの体質改革を実施していると聞きます。表面的な対策よりも心の通った施策の推進が望まれます。経営者は、『言うは易く行うは難し』を肝に銘じなければなりません。今にも、山崎さんのペンの怒りが聞こえてくる気がします。( 以 上 )

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2022年04月16日

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ナイロビ支店編ですね。これが実際にあったのが信じられない。未就航のナイロビにワンマンオフィスを構えて就航のための地盤作りは1000歩譲っても(将来がある可能性が少しでもあるにしても、1人はありえないが)、途中から就航は無くなったけどチケット売りしとけはないだろ。。。サラリーマンは逆らえないもんなあこの時代は。日本語を全く喋らない日が何日も続くのはきつい。。よく4年半も耐えたな。。おれなら会社を辞めて即帰国します。テヘランの時点で。それでも日本で耐えてる旧労組のみんなのために耐えたのはすごい。だけど、家族があそこまで苦しんでるのに意地になったのは、んー正直自分は共感できません。できないけど、やり切った人はすごい。

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2021年09月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

荒むさぁ………。
そりゃ荒むよね、恩地さん。
希望したわけでもないのに僻地勤務を10年間。
最後には家族とも離れ離れで、隣家も見えないだだっ広い家に一人ぼっち。
丸一日、日本語をしゃべらない日もある……。
そんな生活によく耐えたなぁ。
私だったらすぐ泣き入って、八馬とかに「組合とは縁切るから日本に戻して」なんて言っちゃうな。
恩地さんには実在したモデルがいるとか。
その強い精神力はどこからくるのか。
見習いたいものです。
でもなんとか恩地さんも、日本に帰ってくることが出来そうだとわかったときは、ホントに「よかったねぇ」という感じでした。

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2023年09月20日

Posted by ブクログ

カラチ、テヘラン、そしてナイロビ。
未就航の土地でのワンマンオフィスというありえない処遇に、ささくれ立っていく恩地がしんどいです。
これが事実を基に描かれているというのだから、凄まじい。

中盤で描かれる立て続けの飛行機事故も本当にあむたことで、人の命を預かる航空会社がこんな有り様だったなんて、恐ろしすぎます。

次巻からはようやく日本帰国!
でも御巣鷹山編ということで、読む前から緊張を感じてしまう。

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2025年09月18日

Posted by ブクログ

シリーズ第二弾。カラチ、テヘラン、ナイロビ勤務と懲罰的人事を受ける恩地。アフリカではハンティングで気を紛らす。ライオンや象まで狩り、剥製を飾る恩地。離れ離れになり、子供らの心は荒む。妻・りつ子さんが可哀想。ラストはアフリカの大地に沈む夕日。

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2025年08月11日

Posted by ブクログ

信じられないくらい不条理だったけど、
1人の社員のために組合員がこれだけ動いたり、
大企業の一社員が社長にアポなしで会いに行くのよ信じられなかった。


組合員離れが進んでいると新聞で読んだのだけど、
「個」が強くなっていく社会で
組合にかわるつながるものってなんなんだろ。

本に書いてあるような組合の考え方っておそらく現代では受け入れられないところもあるだろうし、、、、
資本主義とか、稼げる稼げって悪いのもではないと思うんだけど、難しいな。
頑張ったら評価されたいし、
均等分配と平等、努力が報われないって違うよなーなんて考えたり。

わからん!

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2023年01月26日

Posted by ブクログ

幾度と無く会社に裏切られながらも、ある時ある時、恩地に寄り添ってくれる上司や仲間が登場した時の安堵感は大きい。でもそんな人達に限って早く恩地から離れてしまう。

家族との離れる時間の長さの影響は計り知れない。
それでも乗り越えて行く恩地を応援しながら読み進めて行くばかりだった。

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2022年01月11日

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