【感想・ネタバレ】沈まぬ太陽(二) -アフリカ篇・下-のレビュー

あらすじ

パキスタン駐在を終えた恩地を待ち受けていたのは、さらなる報復人事だった。イラン、そして路線の就航もないケニアへの赴任。会社は帰国をちらつかせ、降伏を迫る一方で、露骨な差別人事により組合の分断を図っていた。共に闘った同期の友の裏切り。そして、家族との別離――。焦燥感と孤独とが、恩地をしだいに追いつめていく。そんな折、国民航空の旅客機が連続事故を起こす……。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

このページにはネタバレを含むレビューが表示されています

Posted by ブクログ

ネタバレ

一巻読破からすぐに二巻開始。パキスタンからイラン、ケニアへ赴任させられ、約十年に及んだ僻地勤務が恩地の心情の変化とともに描かれている。
あと少しで日本に帰ることができる、と思い続け目の前の仕事に励むものの、本社から裏切られ続け、最後のケニアでは精神的に限界を迎える恩地。子供がいる身として、10年間子どもと日本で安心して暮らせなかった恩地の身になれば、これほど辛いことはないだろう。
会社に人生を踏み躙られたのだ。会社とは従業員を幸せにすることに存在意義があり、一部の経営陣のためにあるものではない。そんな経営陣に靡かず戦い続けた恩地の信念の強さに感服した。ただその信念を曲げなかった故に家族を巻き込み続けたことは、現代では受け入れられないかもしれない。この時代の妻の度量の広さにも驚く。
また、本社経営陣には見放されても、そのレッテルに左右されずに人を見て評価してくれる人(島津や南)もいるんだとこの作品を読んで思った。辛いことや厳しい時があってもコツコツ努力すれば誰かが見てくれている、と思えば何事も頑張れる。

0
2024年10月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 恩地が去ってからの本社には、会社の御用組合である第二労働組合ができる。
 第二労働組合は第一労働組合から人員を引き抜いた為、第一組合へ残る組合員はわずかな人員となった。
 恩地が後を託した第一組合の委員長の沢泉からの郵便メールで、現在の第一組合の実情を知らされる。
 かつての労働組合の幹部は劣悪な環境の売却資材倉庫や資料管理室へ追いやられた。第二組合に移籍しない、第一組合員は、第二組合の人間の監視のもと、支店に日がな一日椅子に座らせられて、無為に過ごすことを強制されていた。
 話を聞かされた恩地は憤り、本社への不当人事に対抗する憤りを募らせた。

 パキスタンからイラン、そしてケニアへと、僻地をたらい回しにされた恩地は次第に心が荒んでいく。
 恩地は週末のみのサラリーハンターとして、アフリカの地で、獣を狩る日々に、なんとか心のバランスを保っていた。
 そんななか、沢泉からの連絡で、僅か五ヶ月の間に三度もの事故を起こす国民航空の現状を知らされる。
 128人の乗客の命を失う連続事故を起こしたにもかかわらず、本社の運行管理者は横滑りの人事交代のみで、その無責任体制は続いていた。
 事故をきっかけに国会で、衆議院交通安全対策委員会が開かれた。
 これにより、国民航空の労働規約違反が白日のもとにさらされ、恩地はようやく日本への帰還ができることと成った。

 恩地を、しぶしぶ日本へ戻すことに同意した労務部長の八馬忠次、副社長の堂本信介は、帰ってくる恩地に対する処遇を巡らした。

 日本へ帰れることに成った恩地の荒んだ心は晴れ、家族のもとへ帰れるという希望を持った。

 沢泉委員長が国会で、不当人事の状況を説明し、恩地への報復人事を証言する場面は、読んでいて心がスッとした。
 三度もの連続航空機事故を起こしながら、変わらない本社役員の体質に憤りを感じつつ、あの稀に見る、御巣鷹山への航空機墜落事故の大惨事へと繋がっていく。
次巻へとつづく。

0
2024年03月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

左遷に次ぐ左遷で恩地元の精神が疲弊する描写が事細かに描かれている。家族を犠牲にしてまで会社と戦うべきなのかということと、自らより厳しい境遇で戦っている組合員の間で揺れ動くものの、どうしようもない感情に苛まれ、剥製を撃ってしまうところなども思わず感情移入してしまった。巻末では日本に帰ることが叶ったが、日本で満足な待遇が得られるとは思えず、恩地元の奮起を期待しながら3巻に進みたいと思う。

0
2022年04月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

荒むさぁ………。
そりゃ荒むよね、恩地さん。
希望したわけでもないのに僻地勤務を10年間。
最後には家族とも離れ離れで、隣家も見えないだだっ広い家に一人ぼっち。
丸一日、日本語をしゃべらない日もある……。
そんな生活によく耐えたなぁ。
私だったらすぐ泣き入って、八馬とかに「組合とは縁切るから日本に戻して」なんて言っちゃうな。
恩地さんには実在したモデルがいるとか。
その強い精神力はどこからくるのか。
見習いたいものです。
でもなんとか恩地さんも、日本に帰ってくることが出来そうだとわかったときは、ホントに「よかったねぇ」という感じでした。

0
2023年09月20日

「小説」ランキング