あらすじ
油田開発を商社マンとしての最後の仕事と思い定めた壹岐は、社内の反対を押し切り、イランのサルベスタン鉱区に賭けた。政官界からの逆風をかわし見事採掘権の落札に成功するが、灼熱の大地からは一向に原油の噴き出す兆しはなかった……。シベリアと中東、二つの「不毛地帯」を彷徨する一人の日本人の戦いを、戦後史を背景に圧倒的な筆致で描ききった一大巨編、ここに完結。
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初めて『不毛地帯』を読んだとき、圧倒的な感動が胸に押し寄せ、しばし呆然としてしまいました。けして、楽しいばかりの話ではありません。戦争の話、抑留の話、友の死、そして―。
“結局、古き良き昭和の話だよねー”と言う人もいるでしょう。でも、そんな陳腐な言葉は寄せ付けないほどのドラマがここにあると、私は声を大にして言いたい!!
また、私が山崎豊子さんの作品の中で一番『不毛地帯』を好きな理由は、途中はいろいろな困難と挫折に見舞われながらも最後に「救い」があるからです。油田がねえ…。彼女ともねえ…。いかん、ここからはネタバレ!!
さてさてどんな救いなのか?は、あなたの目で確かめてください。
感情タグBEST3
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この本は読んで10年以上経つが
壱岐の男としてのカッコ良さに今でも羨望の眼差しを向けている。きっと山崎豊子さんの理想の男像だったんじゃないかなぁ
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壮大な大団円。
読みながら次はいけるのか、どうにか成功してくれ、と願っていました。
戦地は敵だらけ。
タイトルの通り、どこかしこも草一本も生えてない不毛地帯。
希望も救いもないがそれでも信念に向かって突き進む主人公の生き方に一縷の望みを感じ得ずにはいられなかった。
壱岐正の美学、生き方を少しでも学んでいきたいと思った。
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2025.02.23
角田さんの生き様は、ごく普通の弱い人間を現していてしみじみと大多数の人間と、究極のサバイバルを生き抜きつづけた主人公や社長との違いが味わい深い。
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壱岐正と里井副社長のやりとりが読んでいて面白く、最終的には大門社長との軋轢を生む形となるのも凄く惹き込まれる要因であった。最後の大門社長と一緒に退陣するシーンは今までのストーリーや情景と合間って感情移入できて感動した。部下の海部や八束、石油の兵頭と優秀な人材が大きいとも思う
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結構な長編だったし、途中62歳のこの歳で転職活動することにし、SPIの勉強をしてたため読み終わるまで結構時間が掛かってしまった。
結局SPIは技能試験はなく性格試験のみだったので助かった(?)のだが。
という事は置いておいて、今までの山崎豊子の作品の中では、全てを読んでいないけど、最高と言ってもいい感動作だった。
オーナー企業であることの要素が強いと思うが、社長の一言で物事が決まるので、役員を主に保身のため何も言わない体質が企業文化として残っている。
会社を変えるために、会社を大きく組織力で成長させるために、変わらなければならない会社を自身が犠牲になって約束された次期社長のポジションを投げ打って退職するって、自分だったらできるだろうか。
兎角色々なことに影響を受けて右や左へ考えを変えるのではなく、常に軸をブラさなければ正しいことに繋がることを教えてくれた。
結局転職希望の会社からは内定を受け取ったので、スケールは違うが、時には自分を犠牲にしてでも正しいことをしなければと思った。
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副社長となった壹岐が参謀としての自身の経験を活かし、商社での最後の仕事と決めていた油田開発を成功に収めたが、それを機に社長の大門とともに綺麗さっぱりと退く。それにしても著者の原油採掘の手順の詳細な記載はすごいの一言。あとがきには377名への取材をもとにしたとの著者の言葉があるが、だからこそ小説とはいえ真に迫る描写が可能なのであろう。
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まさかの大門社長の老いに感慨深かった。素晴らしい経営者であっても、いつかは老い、そして迷走するというところに残酷さを感じつつも、現実とはそういうものと実感させられた。
最終的には主人公が救われる形に昇華されたことで気持ちも落ち着いた。
名作
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かなりの長編であるが非常に読み応えがあり面白かった。巻末にシベリアから始まる白い不毛地帯と石油開発で終わる赤い不毛地帯と表現されているが、主人公の壱岐のように不毛でありながらダイナミックな人生を生き抜く様に心を打たれた。第三の人生に幸多からんことを願うと共に今日の日本を築き上げてきた先人達に感謝したい。
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『不毛地帯』第5巻。
近畿商事・副社長となった壱岐正。
商社マン最後の仕事として、イランでの油田採掘に奔走する。
先手を打つも、政界、競合からの巻き返しにより、独立系石油メーカー・オリオンオイルとの共同で入札に挑むことに…
なんとか、採掘権を得たものの、第4井まで石油の出る兆しはなく、窮地に…
一方、社長・大門は綿花相場で莫大な焦付きを抱えていた…
壱岐の見事な商社マンとしての生き様だった。
異例の昇進に対する周りからの嫉妬にも臆せずに自分を貫き通した、壱岐の強さ。
『国家のために』を判断基準とし、最初は大本営参謀として、第2の人生では、近畿商事の企業参謀として、常に戦いの中に身を晒してきた。
自らの人生も、家族との生活も犠牲にして…
最後まで、壱岐の心の内は誰もわからなかったのではないだろうか…
口下手なところも災いして…
大門に社長辞任を迫り、自らも副社長を辞任、近畿商事を退職。見事な自らの身の処し方であった。
第3の人生で、ようやく安らぎの時を迎えられるのか…
千里との人生が始まるのだろうか…
長かった…が、面白かった。
山崎豊子作品でNo.1だった。
まだ『華麗なる一族』は読んでいないが…
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田淵幹事長…一体誰がモデルなんだ…(笑)
5巻はずっとイランのサルベスタン石油の話、千代田自動車が後味悪かった(最終的にはめでたしになるんだけど)のに対してこちらは小気味よく進んでいく。裏のえげつない部分もFXと比べたら露骨でない(と言うか露骨に見せていない?)ので読みやすい。
でもせっかく苦労して掘り当てた石油も数年後にはイラン革命で全部おじゃんになっちゃうんだよね。山崎豊子がこれ書いていた時期もギリギリイラン革命前だしなんとも複雑な感情を抱く。
最終的に大門社長の引退と同時に壹岐も会社を去り、シベリアで物語は終わる。千里とはおそらく結婚したんだろうけど、安易なハッピーエンドにせずあそこで切るのが山崎豊子といった感じ。それでも華麗なる一族や沈まぬ太陽に比べたらずっと後味はいい。
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前半は戦争のためシベリアでソ連に酷使される悲惨な内容。後半はシベリアから無事帰還し、第二の人生として、商社マンとして、組織や国益を考えながらビジネスの世界に身を置く話。
前半は、読むのも辛く、ただただこんな残酷なことが本当にあったのかといたたまれなくなる。
後半は、主人公の実直な人柄が眩しく、大義の為に、こんなに身を削らなくてはならないのかと驚いてしまう。当然かもしれないが、人の上に立つポジションの人は責任と覚悟と志が必要なんだなと、感じ入った。
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この小説を書くのに、著者はどれくらい取材したのだろう。 経済や石油開発の細かな情報は、正直ピンと来ない部分も多くあったが、その背後に膨大な取材、調査があったことが想像できる。いまいちわからない専門的な話があっても、全体として面白くて中盤以降は一気読みした。
登場人物のなかでは大門が一番魅力的だった。当初は豪胆な社長として壱岐を抜擢し会社を成長させるも、終盤は綿花相場にのめり込んで部下を発狂させてしまう。壱岐との関係が悪化すると、かつて自ら切り捨てた里井に本社復帰を要請するなど、なりふり構わない。壱岐が私情を排して淡々と仕事をこなすぶん、終盤に至って弱みや焦りをさらけ出す大門が魅力的に見えた。原作を読んだ上でドラマを思い返すと、改めて原田芳雄さんの演技はすごかったなぁと感じる。
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5巻まで一気読み。読み始めたら止まらない面白さ。
あらゆる場面に於ける細かい描写から、著者が取材や文献を通して徹底した研究を行ったことが容易に読み取れ、各描写の詳細さに著者の小説に対する情熱的な姿勢が溢れてる気がする。
自分の人生を賭して成功させたいと思う仕事に出会いたいなと思う小説でした。
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再読完了。
舞台が総合商社であるだけに、スケールの大きさを感じる。サルベスタン鉱区で油を掘り当てた時の描写は感動的である。
物語上、どうしても主人公の壹岐の周囲にいる人物は、いわば“敵役”である。しかし、それぞれの人物の視点で見ていくと、彼らもまた正義のために戦っているのである。鮫島氏は言うに及ばず、里井副社長は、社長の椅子を狙い自分を脅かす壹岐を追い落とそうと画策したものの(結局それが自身の首を絞めることとなってしまったのだが)、それは会社を盛り上げるためであり、壹岐とはベクトルが違うに過ぎない。
スケールの中にも人間というものを見事に表現した傑作だと思う。
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壱岐副社長の男っぷりに泣かされるサラリーマンは多いのでは。大企業から中小零細まで老害はびこる企業が多い日本社会。サラリーマンのカタルシス小説です。
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シベリア時代にも、文章を読んでいるだけでまるでそこにいるような錯覚を起こさせるくらいに精密な描写と、それを可能にさせる取材力に圧倒されたが、商社時代になっても、それは全く衰えていない、どころかさらに加速している。戦闘機や車、石油など、その時代を反映する様々な事件を題材に、主人公の壱岐は葛藤し、成果をだし、また苦悶する。出版から年月が経っていても、古さを感じさせず、壱岐の生き抜く人生に学ぶところは多い。
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最終巻が一番おもしろかった。先が全然読めなかった。
それでいて、この巻が一番、読む前の期待に近いものが描かれていた。
でもやっぱり取材は大変だったんだな、とあとがきを読んで思った。こんな大舞台の小説、どうやって取材して書いたんだろうとずっと思っていたけど。
取材先は女の旅は不可能な国ばかりだった、みたいなことを書かれておられたが、そういう意味ではハンデ背負っての取材だったんだなぁ。
簡単にジェンダーでくくるのは物事を単純化するようでよろしくないけど、でも、この作品を大正生まれの女性が書いた、というのはやっぱり私には偉業としか思えないな。女なんて何も知らなくていいんだ、と言われて脇においやられていた時代によくまあ、ゴッドファーザー的苦渋に満ちた男の世界をこんなにもリアルに描き出したものだと思う。
でも、主人公に対して容赦ないところ(最後の仕事だけは悔いがないように清く仕事したい、という希望を簡単に打ち砕くあたり)、女性ならではの容赦のなさも感じるような。
男性作家はもうちょっと主人公に甘い気がするなぁ。
しかし、秋津千里は最後まで違和感ありまくりのキャラだった。なんでこの人は関西弁じゃないのかしらん。
あんな喋り方の京女はいませんよ。
っていうか、考えてみたら、大門と秋津千里のやかましい系のおじさんしか関西弁しゃべってない。
ガサツ系、KY系なおっさんにしか関西弁をしゃべらせてはいけない、みたいな謎ルールがこの時代の文壇にあったんだろうか。
この本に限らず、関西が舞台なのに、なぜかヒロインは標準語を貫く、みたいな昔の小説、わりとあるような気がします。
ちなみに、壹岐は最後まで彼氏としては最悪の男で、アンチ秋津千里な私もさすがに彼女に深く同情した。
山崎さんてば自分のキャラに厳し過ぎじゃね?と思った。
Posted by ブクログ
不毛地帯最終章。
長かった主人公の商社マンとしての第二の人生が終わりを告げる。
社運をかけた中東のオイルビジネスはどうなることかとハラハラさせられたが、結果的に物凄い量のオイルが見つかり、会社に多大な利益をもたらすことになった。
主人公は社内で更に評価を上げる。
他方で、大門社長は相場で莫大な損失を出す。
年のせいで判断能力は衰えているのに、本人は現役のままでいるつもりだから、周囲の意見に全く耳を貸さない。これぞ老害。
社長の存在は会社にとって、もはや邪魔であると判断した主人公は社長に辞任を迫る。
最初は納得しなかった社長も徐々に諦め、主人公と一緒に会社を去る。
オイルビジネスが成功した、まさに絶頂の時に会社を去った社長は、世論から高く評価され、結果的に会社のため、社長のためになった。
主人公は、誰のためでもなく、常に会社の利益になることを最優先に考え、行動してきた。
そして、社長とともに会社を去った主人公は、第三の人生をシベリアに求める。
シベリアで亡くなった同志たちの遺骨を日本に持ち帰ることを今後の活動にすると決意する。
ずるずると中途半端な関係になっていた恋人とも別れることになる。
この小説のモデルとなった人物は伊藤忠の会長まで登り詰めるから、現実とは異なるけど、あくまでも事実をもとにしたフィクションということで、これはこれで面白かった。
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終わりは意外と潔い(呆気ない)。組織の腹黒さというか、総合商社の熾烈な出世争い等のリアルな人間模様を描き切っている所が、この本が名著である故と思料。生馬の目を抜く───。
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まず時代が時代だからというのもあって、ほとんどどの登場人物にも完全には共感も感情移入もできなかった。男性の苦しさ、しんどさもわかるけれども、女性にはそもそも選択肢すら無かった時代。家庭に入って男と子ども(ともしかしたら親とか義理の親とか)の世話をするという「幸せ」という名の唯一の選択肢しか与えられていなかった時代。でもそれはきっと裏返すと、男性にも、その人の能力や得意不得意に関係なく外で働くという(より広い意味では唯一の)選択肢しか与えられていなかったということでもあるんだろうとも思うが。
いくら母親が亡くなったからと言って何故娘が父親の出張の荷造りをせねばならないのか、私には本当に理解ができない時代だとあの部分でめちゃくちゃ感じた。(だいたいあそこまで丸投げでどうやって旅先で困らずに生活できるのか。荷造りなんて自分でしておかないと後々自分が困るものなのでは?逆にそういう特殊能力持ってたならすごいよね昔の男の人。って思うレベル。)
ただ、「昔はこれが当たり前だった」ということを知るためにという意味はすごくあるとは思った。
・・・と、これだけぶうたら言いながらも面白く最後まで読めたのはやっぱり物語の緻密さゆえだったと思う。考えられないほどの取材と、それに基づく考えられないほどよく練られた構成。すごかった。面白かった。
Posted by ブクログ
1~5巻までまとめて。
山崎豊子氏の綿密な描写により、躍動感溢れる内容となっています。読む側の専門知識が足り無くて何言ってるのか分からない所も多々有りましたが。
商社での最後のシーンに引き際の美学を感じた。自分もあのように生きれるだろうか...
スーパーマンのような主人公壱岐正ですが、男としては最低ですな。ビジネスマンとしては立派だけど下半身に人格がないキャラというのが山崎氏の企業トップの男性に対するイメージだったのでしょうか?
Posted by ブクログ
大門社長が70歳をすぎて、老醜を晒すようになり、油田開発の成功を花道に引退させるにあたり、壹岐も退社することになる。中小企業でも同じであるが、かつて凄く頑張っていた経営者が70を過ぎてその地位に固執する姿はあまり見たくないものである。
第五巻まで読み終わって、軍国教育を受けて戦争を戦って悲惨な目に遭った軍人が、戦後の日本において経済競争を戦う姿はどこにでも多くあったのだと思う。そして彼らの大変な努力が、日本の経済復興を支えたのは事実だ。しかしそんな彼らの世代さえ晩年はなかなか後進に道を譲らず、次の世代がうまく育たなかったことが今日の日本の低迷を招いているのだと思う。彼らの基準からすると戦後生まれで飽食の世代を頼りなく思った側面もあったであろうが、ポストに固執する人も多かったと思う。そんな人間が運営するのだからどんな企業もどんな名家もきっと衰退するようにできているのだ。高いところまで上り詰めれば詰めるほど、衰退の坂道の傾斜は深くなるのだと思いました。
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熱意が油を吹き上がらせ、恩人であるはずの社長に退陣を迫る最終巻。
シベリアの墓詣でを照らすオーロラは歓迎しているのかそれとも。
圧巻の計約3000頁。
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5巻連作の最終巻。流石の山崎豊子さん作品読み応えがあった。唯一物足りなく感じたのは、壹岐がキレイな人すぎて親近感は持てなかった点。
個人的には他の山崎作品である沈まぬ太陽の方が主人公の辛さ悩み抜く姿に引き込まれて好きだった。
他のシリーズも読みます。
Posted by ブクログ
壱岐正。
彼の様に時には不器用ながらも実直に生きる現代人がどれほどにいるだろう。
自らが仕事や人生をこれ程に真剣に生きているのかと自問する。
命を燃やして何かに没頭する様な人生にしたい。