あらすじ
油田開発を商社マンとしての最後の仕事と思い定めた壹岐は、社内の反対を押し切り、イランのサルベスタン鉱区に賭けた。政官界からの逆風をかわし見事採掘権の落札に成功するが、灼熱の大地からは一向に原油の噴き出す兆しはなかった……。シベリアと中東、二つの「不毛地帯」を彷徨する一人の日本人の戦いを、戦後史を背景に圧倒的な筆致で描ききった一大巨編、ここに完結。
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初めて『不毛地帯』を読んだとき、圧倒的な感動が胸に押し寄せ、しばし呆然としてしまいました。けして、楽しいばかりの話ではありません。戦争の話、抑留の話、友の死、そして―。
“結局、古き良き昭和の話だよねー”と言う人もいるでしょう。でも、そんな陳腐な言葉は寄せ付けないほどのドラマがここにあると、私は声を大にして言いたい!!
また、私が山崎豊子さんの作品の中で一番『不毛地帯』を好きな理由は、途中はいろいろな困難と挫折に見舞われながらも最後に「救い」があるからです。油田がねえ…。彼女ともねえ…。いかん、ここからはネタバレ!!
さてさてどんな救いなのか?は、あなたの目で確かめてください。
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Posted by ブクログ
副社長となった壹岐が参謀としての自身の経験を活かし、商社での最後の仕事と決めていた油田開発を成功に収めたが、それを機に社長の大門とともに綺麗さっぱりと退く。それにしても著者の原油採掘の手順の詳細な記載はすごいの一言。あとがきには377名への取材をもとにしたとの著者の言葉があるが、だからこそ小説とはいえ真に迫る描写が可能なのであろう。
Posted by ブクログ
田淵幹事長…一体誰がモデルなんだ…(笑)
5巻はずっとイランのサルベスタン石油の話、千代田自動車が後味悪かった(最終的にはめでたしになるんだけど)のに対してこちらは小気味よく進んでいく。裏のえげつない部分もFXと比べたら露骨でない(と言うか露骨に見せていない?)ので読みやすい。
でもせっかく苦労して掘り当てた石油も数年後にはイラン革命で全部おじゃんになっちゃうんだよね。山崎豊子がこれ書いていた時期もギリギリイラン革命前だしなんとも複雑な感情を抱く。
最終的に大門社長の引退と同時に壹岐も会社を去り、シベリアで物語は終わる。千里とはおそらく結婚したんだろうけど、安易なハッピーエンドにせずあそこで切るのが山崎豊子といった感じ。それでも華麗なる一族や沈まぬ太陽に比べたらずっと後味はいい。
Posted by ブクログ
この小説を書くのに、著者はどれくらい取材したのだろう。 経済や石油開発の細かな情報は、正直ピンと来ない部分も多くあったが、その背後に膨大な取材、調査があったことが想像できる。いまいちわからない専門的な話があっても、全体として面白くて中盤以降は一気読みした。
登場人物のなかでは大門が一番魅力的だった。当初は豪胆な社長として壱岐を抜擢し会社を成長させるも、終盤は綿花相場にのめり込んで部下を発狂させてしまう。壱岐との関係が悪化すると、かつて自ら切り捨てた里井に本社復帰を要請するなど、なりふり構わない。壱岐が私情を排して淡々と仕事をこなすぶん、終盤に至って弱みや焦りをさらけ出す大門が魅力的に見えた。原作を読んだ上でドラマを思い返すと、改めて原田芳雄さんの演技はすごかったなぁと感じる。
Posted by ブクログ
不毛地帯最終章。
長かった主人公の商社マンとしての第二の人生が終わりを告げる。
社運をかけた中東のオイルビジネスはどうなることかとハラハラさせられたが、結果的に物凄い量のオイルが見つかり、会社に多大な利益をもたらすことになった。
主人公は社内で更に評価を上げる。
他方で、大門社長は相場で莫大な損失を出す。
年のせいで判断能力は衰えているのに、本人は現役のままでいるつもりだから、周囲の意見に全く耳を貸さない。これぞ老害。
社長の存在は会社にとって、もはや邪魔であると判断した主人公は社長に辞任を迫る。
最初は納得しなかった社長も徐々に諦め、主人公と一緒に会社を去る。
オイルビジネスが成功した、まさに絶頂の時に会社を去った社長は、世論から高く評価され、結果的に会社のため、社長のためになった。
主人公は、誰のためでもなく、常に会社の利益になることを最優先に考え、行動してきた。
そして、社長とともに会社を去った主人公は、第三の人生をシベリアに求める。
シベリアで亡くなった同志たちの遺骨を日本に持ち帰ることを今後の活動にすると決意する。
ずるずると中途半端な関係になっていた恋人とも別れることになる。
この小説のモデルとなった人物は伊藤忠の会長まで登り詰めるから、現実とは異なるけど、あくまでも事実をもとにしたフィクションということで、これはこれで面白かった。