山崎豊子のレビュー一覧
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やるせないな...
虚無感に陥った賢治は、はっと、パズルのピースが全てハマったようにw、死へのピースを自ら埋めてしまったのだな。引き返す機会もあったが、椰子という心の支えを失った賢治には終焉へ一直線だった。
これを読んで、第二次世界大戦や原爆などへの受けての考え方が微かに変わった気がする。▼インドのパル判事「戦争を犯罪として裁く法律が国際間に出来ない限り東京裁判の被告を戦争犯罪者とすることは出来ない」と東京裁判という名の政治を批判したように、現在は戦争犯罪を裁く国際法や国際法廷等が設置されているが、国連自体が安保常任理事国の拒否権で機能不全である。
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最終巻。
予想だにしていなかった方向へ話が展開していく驚きを感じながらも小説としてまとまりのある作品となっていることに脱帽しました。
外務省機密漏洩事件を機に、沖縄に関心を持ち続けていた主人公が移り住んだ沖縄で目の当たりにした現実。
決してフィクションではない重みがひしひしと伝わってきました。
私は沖縄には行ったことはなく、行きたいと思う理由はリゾートとして、という気持ちが大半だったけれど
沖縄の歴史を学ぶことの大切さ、また軽々しく触れられないほどの、その歴史の持つ重く暗い意味に胸が締め付けられる思いでした。
一方で夫婦の絆の強さについても、清々しい気持ちで学ぶことが出来た作品。
ずっと -
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【302冊目】会社に絶望し、人生のどん底近くにいたときに、フォロワーさんに教えていただいた本。海外の僻地をたらい回しにされ、家族と離れ離れの生活を強いられた主人公の労苦に驚愕と、共感と、そして自分も同じくらいの苦痛を感じているという気付きがあった。たぶん順風満帆のときには、まったく違う(主人公の恩地を嘲るような)感情を持ってしか読めなかっただろう。
とはいえ、中盤以降は日航機の御巣鷹山事故と、それに続く会社の更生のための努力を中心に描かれる。御巣鷹山事故は、涙無しには読めない悲しみと怒りを感じざるを得ず、なぜこの作品が今となっても有名で、多くの人に読まれ続けているのかよく分かった。
終盤に -
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東京裁判は戦争犯罪を裁く場ではなく、敗戦国の指導者に責任を取らせる裁判だった。
戦争は置かれた環境や所属によって意思とは関係なく相応の仕事を求められ巻き込まれるのだとつくづく思った。
親ガチャが取り沙汰されているが、私は国籍ガチャもあると思う。
▼ヒトは区別分類することができるが、すなわち差別も生まれる。
人種差別が無くならないように戦争も無くならないなら、
ルールを決めた戦争を行なってもらいたいものだ。
例えば、戦闘予定地域への民間人完全退避の徹底、
民間人を巻き込まないプロの戦闘員による陣取り戦争。
ルールの上で戦争して人道違反を戦勝国、敗戦国を平等に評価する体系を作っていって欲しいと願 -
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ネタバレ中国の現代史を知りたくなり、見つけた大地の子。戦争残留孤児である松本勝男こと陸一心の人生を軸に、悲惨たる戦争の代償や凄惨な文革の歴史などの社会描写、産みの親と育ての親との絆、それゆえの葛藤などの心理描写が読む人のこころをうつ。不毛地帯、沈まぬ太陽と山崎豊子作品を2冊読んだことがあるが、この作品は圧巻。もちろん小説、フィクションではあるが、現実に起こった歴史を題材としており、著者自身の戦争孤児に対する責任を蔑ろにする日本国に対する怒りが垣間見える。
勝男の妹あつこの悲惨な生涯と、勝男があつこの死を看取るシーンには大号泣。序盤のソ連軍からの逃亡中で起こる凄惨極まりない過酷な状況(ソ連軍に見つからな -
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2代に渡る大阪商人を描き、ビジネスのあらゆる場面を凝縮したような作品。
小説ではあるけれど、ビジネス書としても読めます。
下積み時代、毎日の単調なただのランプの煤掃除から、
ランプが綺麗になれば昆布(商品)を美味しそうに照らすと語り、
旦那様に魅入られ、丁稚から格上げされるというシーンがあります。
有料の講習会に出席させても「何も身になることはありませんでした」とレポートを出す若手社員に読ませてやりたい!と思わず本を握る手に力が入りました(笑)
話は変わりますが、昔の大阪を舞台にしたドラマとかで、
「いとはん!」と小僧さんかなんかが呼ぶシーンがありますが、
これまでずっと「イトさん」とい -
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ネタバレ中国側のミスが発端となり、一台1億円もする精密機械を日本に送り返して検査し直しすることになってしまい、中国相手のビジネスの難しさをこれでもかというくらい思い知らされた。
日本滞在中に長幸の策略にまんまとひっかかってしまい、僻地の工場に左遷させられた時はまた振り出しに戻ったとがっかりしたが、丹青の活躍により返り咲いてからは多少のトラブルはありつつも、ついに呪縛から解けた感じがあり、トントン拍子で進んでいった。
全巻通して製鉄技術、政治の動き、地理状況など驚くほど細かな描写が多く圧倒される場面もあったが、その取材があってこそこれだけずっしりと重厚感のある作品を書けたのだと思うと本当に恐れ入る。 -
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ネタバレ宝華製鉄所の建設に精を出す中で、ついに妹の消息をつかみ三十数年振りの再会を果たしたものの、養母にトンヤンシーとして馬車馬のようにこき使わらてきたために体がボロボロになっており、陸一心の様々な図らいも虚しく、息を引きとった時には無情さを痛感した。実父との運命の再会を果たしたものの、またも日本人という出自により一波乱巻き起こす要因になってしまうことに、むずがゆさを感じた。
宝華製鉄所の建設で仕事をともにするうちに、丹青の陸一心に対する差別的感情が薄れてきて徐々に慕うようになっていく様は、ストーリー的には予測できたが、3巻におけるヒロイン的な役割を果たしていて、ロマンス要素として物語をより充実させて -
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ネタバレ序盤では、文化大革命によりインテリに対する激しい弾圧が行われる中、出自が日本人であるというだけで濡れ衣を着せられ、吊るし上げられ、労働改造所に強制送還させられるという、陸一心の身に起こったあまりに理不尽で不条理な出来事に頭がついていかなかった。
ただ、日本軍に見捨てられ中国で戦争孤児として生き抜いてきた陸一心の子供時代を読み進めていくにつれ、戦争や革命という凶暴な力により、人の運命はこうも容易く歪められてしまうものなのだという厳しく冷酷な現実をようやく受け止められるようになってから、陸一心の身の上に同情し、一刻も早く労働改造所から脱することができることを願うばかりだった。
暗闇の中を出口がある