山崎豊子のレビュー一覧

  • 二つの祖国(四)

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    やるせないな...
    虚無感に陥った賢治は、はっと、パズルのピースが全てハマったようにw、死へのピースを自ら埋めてしまったのだな。引き返す機会もあったが、椰子という心の支えを失った賢治には終焉へ一直線だった。
    これを読んで、第二次世界大戦や原爆などへの受けての考え方が微かに変わった気がする。▼インドのパル判事「戦争を犯罪として裁く法律が国際間に出来ない限り東京裁判の被告を戦争犯罪者とすることは出来ない」と東京裁判という名の政治を批判したように、現在は戦争犯罪を裁く国際法や国際法廷等が設置されているが、国連自体が安保常任理事国の拒否権で機能不全である。

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    2022年10月25日
  • 運命の人(四)

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    最終巻。
    予想だにしていなかった方向へ話が展開していく驚きを感じながらも小説としてまとまりのある作品となっていることに脱帽しました。

    外務省機密漏洩事件を機に、沖縄に関心を持ち続けていた主人公が移り住んだ沖縄で目の当たりにした現実。
    決してフィクションではない重みがひしひしと伝わってきました。

    私は沖縄には行ったことはなく、行きたいと思う理由はリゾートとして、という気持ちが大半だったけれど
    沖縄の歴史を学ぶことの大切さ、また軽々しく触れられないほどの、その歴史の持つ重く暗い意味に胸が締め付けられる思いでした。

    一方で夫婦の絆の強さについても、清々しい気持ちで学ぶことが出来た作品。
    ずっと

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    2022年10月17日
  • 沈まぬ太陽(五) -会長室篇・下-

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    【302冊目】会社に絶望し、人生のどん底近くにいたときに、フォロワーさんに教えていただいた本。海外の僻地をたらい回しにされ、家族と離れ離れの生活を強いられた主人公の労苦に驚愕と、共感と、そして自分も同じくらいの苦痛を感じているという気付きがあった。たぶん順風満帆のときには、まったく違う(主人公の恩地を嘲るような)感情を持ってしか読めなかっただろう。

    とはいえ、中盤以降は日航機の御巣鷹山事故と、それに続く会社の更生のための努力を中心に描かれる。御巣鷹山事故は、涙無しには読めない悲しみと怒りを感じざるを得ず、なぜこの作品が今となっても有名で、多くの人に読まれ続けているのかよく分かった。

    終盤に

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    2022年12月08日
  • 沈まぬ太陽(二) -アフリカ篇・下-

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    絶句、半官半民の一流企業でこんな悲惨な労使関係がまかり通っていたなんて、、、
    少なからず、日本の伝統的企業の根っこにはこういった文化、秩序が根付いているのかしら、と考えるとゾッとした。

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    2022年09月27日
  • 華麗なる一族(下)

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    今から50年以上も前の小説とは思えない程時代背景を気にせず、面白く読み終えた。
    評価も星5つまでだが7つにしてもいいのではないかと思う。
    社会派ってことで池井戸潤の小説っぽい逆転劇を期待してたけど、良い意味で期待は裏切られた。
    リアルで所謂都市銀行って凄い競争社会の先端にいるんだね。
    もう死んでしまったけど、第一勧銀重役だったらしい親戚は接待漬けで体を何度も壊し、出世街道から外れて結局ヤナセに常務で出向になったことを思い出したよ。
    小椋佳と同期って言ってたな。

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    2022年09月24日
  • 二つの祖国(三)

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    東京裁判は戦争犯罪を裁く場ではなく、敗戦国の指導者に責任を取らせる裁判だった。
    戦争は置かれた環境や所属によって意思とは関係なく相応の仕事を求められ巻き込まれるのだとつくづく思った。
    親ガチャが取り沙汰されているが、私は国籍ガチャもあると思う。

    ▼ヒトは区別分類することができるが、すなわち差別も生まれる。
    人種差別が無くならないように戦争も無くならないなら、
    ルールを決めた戦争を行なってもらいたいものだ。
    例えば、戦闘予定地域への民間人完全退避の徹底、
    民間人を巻き込まないプロの戦闘員による陣取り戦争。
    ルールの上で戦争して人道違反を戦勝国、敗戦国を平等に評価する体系を作っていって欲しいと願

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    2022年09月22日
  • 大地の子(四)

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    ずっと気になりつつも読めていなかったが、期待を裏切らない壮大ななストーリー。首相のバックアップも得て取材をし、いいところも悪いところも包み隠しなく、この時代に書かれているのがすごい。

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    2022年09月17日
  • 沈まぬ太陽(五) -会長室篇・下-

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    御巣鷹山の慰霊登山のニュースを見て、再度読みたいと思い、実家に置いてあった本を持って帰ってきた。

    主人公の熱い生き方が心を打つ。比較してみる私や現代人のぬるさを感じる。

    著者山崎豊子さんの社会の問題をよく調査し、小説にしてくれるのはありがたい。航空会社の問題点、政府の問題点がわかりやすく頭に入る。それに伴い、個々が会社・政府と戦っても限界がある難しさも感じる。

    私も御巣鷹山に慰霊登山に行ってみたいと思う、久しぶりに級友を誘ってみよう。

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    2022年09月14日
  • 不毛地帯 第一巻

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    ネタバレ

     瀬島龍三氏の生き様については、「人間的魅力の研究」「幾山河」などで読んでいます。山崎豊子さんの「不毛地帯」、大作・力作だと思います。第1巻が638頁(2009.3発行)、第5巻まであります。気合を入れて読んでます。第1巻、濃密でした。壹岐正(瀬島龍三がモデル)の生き様。大本営参謀、関東軍参謀、シベリア抑留、ソ連の非道さ、引揚、家族との生活、商社に就職・・・。読んでて、ロシアのウクライナ侵攻と重なってきました。ロシアは人口の五分の一が囚人(国内外、非合法)、囚人で国家建設。帝政ロシアからの伝統とか。う~む

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    2022年09月13日
  • 大地の子(四)

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    大地の子

    同僚から読んでみたらと、勧められて重い足取りで読み始める。

    スルスルと読み、いつのまにか終わっていた。

    文化大革命をここまで克明に書けるものなのか。

    日本人が。

    知らずに今までいた自分が、情けなくなる。

    作者の作品への熱さがこの傑作を作ったのだろう。

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    2022年08月30日
  • 沈まぬ太陽(五) -会長室篇・下-

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    結末はさらっとしてしまった感もあるが、日航の腐敗はひどいものがあったのは間違いないことがわかる。
    政治の恐ろしさ、腐敗しきった組織を建て直すことの難しさを改めて感じることができる作品。

    御巣鷹山に眠る皆様、そして著者の山崎豊子さんに改めて哀悼の意を表したいと思います。

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    2022年08月24日
  • 二つの祖国(一)

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    やっぱり戦争のテーマは考えるところが多い。父 乙七と意見の違う賢治。賢治はなぜ、日本語教官になる選択肢しかなかったのに、自分の意志で米軍に協力すると父に伝えたのか。自分が置かれた立場への決意であろうが、父は受け入れ難い。本当のことを話しても決して分かり合えないと知っていたからかもしれない。この後、この父と子は分かり合う未来があるのだろうか。

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    2022年08月12日
  • 大地の子(四)

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    ネタバレ

    中国の現代史を知りたくなり、見つけた大地の子。戦争残留孤児である松本勝男こと陸一心の人生を軸に、悲惨たる戦争の代償や凄惨な文革の歴史などの社会描写、産みの親と育ての親との絆、それゆえの葛藤などの心理描写が読む人のこころをうつ。不毛地帯、沈まぬ太陽と山崎豊子作品を2冊読んだことがあるが、この作品は圧巻。もちろん小説、フィクションではあるが、現実に起こった歴史を題材としており、著者自身の戦争孤児に対する責任を蔑ろにする日本国に対する怒りが垣間見える。
    勝男の妹あつこの悲惨な生涯と、勝男があつこの死を看取るシーンには大号泣。序盤のソ連軍からの逃亡中で起こる凄惨極まりない過酷な状況(ソ連軍に見つからな

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    2022年07月05日
  • 暖簾

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    2代に渡る大阪商人を描き、ビジネスのあらゆる場面を凝縮したような作品。
    小説ではあるけれど、ビジネス書としても読めます。

    下積み時代、毎日の単調なただのランプの煤掃除から、
    ランプが綺麗になれば昆布(商品)を美味しそうに照らすと語り、
    旦那様に魅入られ、丁稚から格上げされるというシーンがあります。

    有料の講習会に出席させても「何も身になることはありませんでした」とレポートを出す若手社員に読ませてやりたい!と思わず本を握る手に力が入りました(笑)

    話は変わりますが、昔の大阪を舞台にしたドラマとかで、
    「いとはん!」と小僧さんかなんかが呼ぶシーンがありますが、
    これまでずっと「イトさん」とい

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    2022年06月14日
  • 二つの祖国(四)

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    全巻を読んでみて
    在米2世でアメリカ国籍を持ちながら日本の精神を学んできた主人公が太平洋戦争という時代に差別や偏見と家族との関係に葛藤しながら開戦〜日本への国際軍事裁判までを綴った小説。
    戦争とはなにか・国とはなにか・家族の在り方とはなにか・法とはなにか・幸せとはなにか等の本当に答えのない問題を問いかけていて、こんなに考えさせられる小説はないし、日本人として戦争について考えるなら必ず読んだほうがいい本だと思う。

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    2022年06月06日
  • 二つの祖国(四)

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    正義とは、忠誠心とは、国籍とは、、、

    不幸な結末、最後は報われて欲しかったと思うが、そんな単純に整理ができない作品。

    日本人の精神ならではの意味を持つ、肚 。
    翻訳モニターとしての苦悩が凄く伝わる描写でした。

    そして、山崎豊子さんの作品は葛藤や苦悩の心情を分かりやすく解説してくれるのが、作者さんの魅力の一つだと思います。

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    2022年05月13日
  • 暖簾

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    山崎豊子氏の処女作。

    大阪商人を主題にした小説はほかにもいくつか読んでいるが、一番ベースになるような基本のストーリーに接した気がする。

    がむしゃらな商人根性が、暖簾に裏打ちされた恥じない商いとしっかり通じているところが、純粋でまっすぐで読んでいて快適だった。

    生きる力を裾分けしてもらえるようなパワフルは作品だった。

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    2022年05月13日
  • 大地の子(四)

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    ネタバレ

    中国側のミスが発端となり、一台1億円もする精密機械を日本に送り返して検査し直しすることになってしまい、中国相手のビジネスの難しさをこれでもかというくらい思い知らされた。
    日本滞在中に長幸の策略にまんまとひっかかってしまい、僻地の工場に左遷させられた時はまた振り出しに戻ったとがっかりしたが、丹青の活躍により返り咲いてからは多少のトラブルはありつつも、ついに呪縛から解けた感じがあり、トントン拍子で進んでいった。
    全巻通して製鉄技術、政治の動き、地理状況など驚くほど細かな描写が多く圧倒される場面もあったが、その取材があってこそこれだけずっしりと重厚感のある作品を書けたのだと思うと本当に恐れ入る。

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    2022年05月06日
  • 大地の子(三)

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    ネタバレ

    宝華製鉄所の建設に精を出す中で、ついに妹の消息をつかみ三十数年振りの再会を果たしたものの、養母にトンヤンシーとして馬車馬のようにこき使わらてきたために体がボロボロになっており、陸一心の様々な図らいも虚しく、息を引きとった時には無情さを痛感した。実父との運命の再会を果たしたものの、またも日本人という出自により一波乱巻き起こす要因になってしまうことに、むずがゆさを感じた。
    宝華製鉄所の建設で仕事をともにするうちに、丹青の陸一心に対する差別的感情が薄れてきて徐々に慕うようになっていく様は、ストーリー的には予測できたが、3巻におけるヒロイン的な役割を果たしていて、ロマンス要素として物語をより充実させて

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    2022年05月06日
  • 大地の子(一)

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    ネタバレ

    序盤では、文化大革命によりインテリに対する激しい弾圧が行われる中、出自が日本人であるというだけで濡れ衣を着せられ、吊るし上げられ、労働改造所に強制送還させられるという、陸一心の身に起こったあまりに理不尽で不条理な出来事に頭がついていかなかった。
    ただ、日本軍に見捨てられ中国で戦争孤児として生き抜いてきた陸一心の子供時代を読み進めていくにつれ、戦争や革命という凶暴な力により、人の運命はこうも容易く歪められてしまうものなのだという厳しく冷酷な現実をようやく受け止められるようになってから、陸一心の身の上に同情し、一刻も早く労働改造所から脱することができることを願うばかりだった。
    暗闇の中を出口がある

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    2022年05月06日