山崎豊子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ついに航空史上最悪のジャンボ機墜落事故が起こり、生存者の救助、墜落機の回収と事故原因の調査がはじまる。乗客乗務員、計524人のうち、生存者は4名、250名の死者が出た。被害者遺族への補償交渉、国民航空による説明、事故機を製造したボーイング社の対応。遺族をはじめとする、現場で亡くなった人々と向き合った人間と、そうでない人々との間の温度差に、40年経った今でも、読むと怒りを覚える。
この期に及んで、まだ体面を保つため、補償交渉に少しでも早く移ろうとする動きや、遺族間が団結することを避けようと、露骨に横の繋がりを切ろうとしてくる会社の動きは、今の感覚としては信じがたい。会社の心理は、今の社会ではど -
Posted by ブクログ
十年のときを経て恩地が日本に帰国することになったところが、普通に感動してしまった。会社の不当人事について都労委の審問会で、十年間を語るシーンは、すごく印象に残った。一巻を読んだときは、家族を犠牲にしてまで、会社と闘う恩地に、あまり共感できなかったが、ここまで来て初志が貫徹されると爽快感がある。
それにしても、国民航空管理職の性根の腐った感じが、読んでいて気分が悪くなるくらいに生々しい嫌さを醸し出している。立て続けに起こった旅客機の事故を経ても、現場の労働者たちの労働環境の改善に動かないどころか、彼ら第一労働組合の訴えを不当として、中央労働委員会に再審査を決める八馬と中谷のセリフのところ(p4 -
Posted by ブクログ
里見先生が医者としての本懐を腐らせなかったのは素晴らしいと感じた。
前3巻において、正直、医事紛争についてはよくわからないけれど、法律的な知見についてはある程度分かるので、はっきりしているのは、当時の医療で財前を裁くことは難しかったとは思う。のらりくらりと論う財前に対して、弁護士ともども原告が感情的に動くのは良くなかったと思った。裁判所とは、温情や民意の入り込む余地がないからだ。
今回は、財前が粘菌に這い寄られるように、足元から身動きを奪われるような内容だった。
不思議なもので、ちょっと可哀想な気もした。ただただ財前の転落を願うこの作品に。
山崎豊子さん。これはフィクションなのでしょうか -
Posted by ブクログ
1985年の日航機墜落事故を中心に、日本航空がモデルになっている小説であるということだけは知っていた。どこまでをフィクションとして、どこまで事実として読んでいいのか分からないけれども、読めば読むほどに、大事故が起こりそうな会社の体質に、腹が立ってくる。
平成生まれの人間から見ると、職場の人間関係や実際の仕事の中に、まだ、戦前の名残りが大きく残っていることのリアリティが、印象的だった。共産党員に対する警戒心や「アカ」というレッテル。治安維持法で捕まり転向した転向者。学生運動をしていた経歴。第二次大戦時に戦闘機の整備をしていた整備士や、パイロット。元華族出身であることのステータス。今の人間からす