山崎豊子のレビュー一覧
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国立浪速大学医学部の第一外科助教授・財前五郎。
彼は食道噴門癌(エソファーグス・クレプス)の手術(オペ)を得意とし、マスコミでも脚光を浴びていた。
(胃の噴門部に癌が広がっている場合、その部分を切除したあと食道に繋がねばならず、財前がこの難しい食道・胃吻合手術に特に長けているという説明が、ドラマに比べて詳しかった(p.42))。
東教授の定年退官が翌春に迫る中、財前が「魔術のようなメス、食道外科の若き権威者」などと世間で喧伝されていることが面白くない東は、他大学からの教授移入を画策する。
財前が医学部長の鵜飼、医師会長の岩田、舅で産婦人科医である又一らを味方に付け、票田の獲得を目論むのに対し -
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沈まぬ太陽を読んで。
生きること、働くこと、誠実でいること。
何にも背かず、自分の正義を貫いた人が、なぜ周りの人よりも苦労をしなければならないのか。なぜ日陰に隠されてしまうのか。
山崎豊子さんの本で、初めて手にした「沈まぬ太陽」は、自分に「生きることの難しさ」と、「耐え難い仕打ちに耐えることの意義」を教えてくれました。
自分に非のないつもりで生きていても、邪魔者と思われる。その誠実さが邪魔、優しさが邪魔、正義感が邪魔なのだ、と。社会に蔓延る無念の陰性感情は、輝かしく、引力の強い人に向けられる。それを跳ね除ける強さを、主人公はどのように湧き出していたのだろう。
自分の人生を、人並みに -
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東京裁判がクライマックスを迎える。
通訳とはいえ、主人公は、一人の日本人に死刑を宣告をすることになる。
また、広島で奇跡的に助かったはずの恋人は、白血病を発病し、広島の病院に入院してしまう。
臨終に間に合うことができず、主人公はその後ずっと引きずることになる。
そんな主人公のお荷物でしかない妻は、子供とともにアメリカに帰る。
次第に主人公は心を病み、酒に溺れる。
そして、自死という最悪の選択をして、この物語は幕を閉じる。
主人公と、その親友のチャーリーはモデルとなる実在の人物がいるそうで、主人公はやはり現実でも自殺をするらしい。
その原因は明らかになっていないが、この小説で描かれているよ -
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いつも通り通勤の往復の電車の中で眠くなっても眼を擦り我慢して読み続けたが、日本に居てのほほんと今を生活している自分にはには想像も出来ない内容の大作で、よくこんな小説が書けたものだと感心する。
戦争、文化大革命は出自が日本人であるがために壮絶な経験を経てきたが、だからこそなのだろう、不利を克服し持ち前の熱心な取り組みで優秀な社会人に成長する。
幼少からの体験や生活は中国そのもので、痰の様に吐き捨てたい経験も中国なんだろう。
だから主人公はあんな事があっても中国から逃げない。
あんな事も自分も中国の一部だからなんだな。
月並みだけど本当に今のこの時代である事に感謝する。
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3巻は、終戦からGHQの進駐、そして東京裁判を中心に物語が進行する。
主人公のかつての同僚で、密かに想いを寄せていた女性は原爆投下時、広島にいたが奇跡的に助かり、主人公と再開する。
そして、主人公は、東京裁判にモニター(通訳が合っているかどうかダブルチェックをする人)として立ち会う。
東京裁判では、勝者が敗者を一方的に裁くという一貫した進行に主人公は違和感を覚える。
日本は侵略戦争をしかけたと一方的に非難され、他方でアメリカの原爆投下については裁判上の記録から削除される。
そして、戦前戦時中は、あれだけ日本政府、軍部を称賛していた日本のマスコミは、掌を返したように日本批判、反日の報道を始 -
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2巻は主人公が暗号解読官として戦場に出向く話。
末弟もアメリカ兵に志願するが、ヨーロッパで戦死する。
そして、主人公は、日本在住の日本で徴兵されたもう一人の弟とフィリピンの戦場で再開する。
血を分けた兄と弟が敵味方に分かれて戦場で出会うという最悪の場面が現実となってしまった。
主人公の誤射により弟は足を負傷するが、結果的にそのおかげで命拾いする。が、2人の間に埋められない溝が残る。
本巻の最後は、広島の原爆投下で幕を閉じる。
広島に日系二世が多数在住していたという話は驚き。彼らは祖国アメリカに最悪の形で殺されたようなものである。
1巻から一貫して違和感を覚えるのは、主人公の妻が身勝手な -
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山崎豊子作品の戦争シリーズ第二弾。
太平洋戦争におけるアメリカ在住の日系二世が主人公。
1巻では、真珠湾攻撃から始まった戦争において、アメリカ在住の全ての日本人が収容所に入れられるところから始まる。
ハワイでは日系人は少数派ではなかったため、それほど冷遇されなかったらしいが、本土では酷い扱いを受けたのは歴史的事実らしい。
そして、日系人の中でも、アメリカのために忠誠を尽くそうとする者と、あくまでも日本民族としての誇りを捨てずに生きていこうとする者(アメリカ政府と対立して兵役にもつかない)とが対立する。
主人公は、どちらにも属せず、あくまで日本人として誇りを捨てずに生きることがアメリカのために -
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大地の子(一〜四) 山崎豊子著を読んで
大地の子は、中国残留孤児:陸一心(ルーイーシン)の波乱極まる半生。戦後の日中合同ビジネスである宝華製鉄所。二つの切り口で中国の現状を巧みに表現した1987年から1991年にかけての長編小説である。
この作品を執筆するにあたって、著者のたゆまぬ努力が背景にあった。中国への取材の申し込みは困難を極めた。諦めかけていた時、当時の総書記との会見が実現した。我が国の欠点、暗い影を正直に書いて下さい。それが真の日中友好である。と背中を押してもらった。国家機関、労働教養管理所、労働改造所の取材。戦争孤児と養父母の家への訪問。農村でのホームステイ。三年間に及ぶ -
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最後の1ページまで捨てなかった想いは「救い」だった。
それは希望だったかも知れない。
「正義は最後には必ず勝つ」の想いだ。
何度胸糞悪い思いをしつつも、国見会長や恩地、旧労組、ご遺族係や御巣鷹山事故支援班など会社に僅かに残る良心が報われることを信じ、願い、読み勧めた。
その結果はもちろん伏せるが、これがただのフィクションではない、という事実には驚愕しかない。
事実を基にした小説だけに、事故後の経緯など、情報は出来るだけ遮断して読んでいたが、ようやく事実と向き合えることを今はただ喜ぶとする。
最後に、
全5巻、全く飽きずに楽しませていただいた山崎豊子先生、ありがとうございました。