あらすじ
極東国際軍事裁判の苛烈な攻防戦も終盤を迎え、焦土の日本に判決の下る日も近い。勝者が敗者を裁く一方的な展開に、言語調整官として法廷に臨む賢治は、二つの祖国の暗い狭間で煩悶する。そして唯一の慰めであった梛子の体に、いつしか原爆の不気味な影が忍び寄る……。祖国とは何か。日系米人の背負った重い十字架を、徹底的な取材により描ききった壮大な叙事詩の幕が下りる。
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Posted by ブクログ
これは全国民に読んで欲しいと思う。特に若い人に。日本とアメリカの暗い過去に正対して欲しい。強制収容所、戦争、原爆、占領。あの時代の日本人とアメリカ二世に想いを馳せてほしいです。
Posted by ブクログ
第4巻目は東京裁判の後半部分が展開される。
天羽賢治は東京裁判の言語調整官として、日々の裁判に臨んでいた。
裁判が進むにつれて、勝者が敗者を裁く様相が明確に成っていった。
最初は公正な裁判を望んで、その一助になればと思い、臨んだ賢治であったが、
裁判が進むにつれて、その実相は裁判という体裁を整えただけの、勝者が敗者を裁く不正な内容だった。
賢治は裁判が進むにつれて、煩悶する日々が続いた。
日本に来ている賢治の妻エミーとも夫婦喧嘩が絶えなかった。
かつての同僚の椰子との付き合いにだけ、心が癒される賢治だった。
椰子は広島での被ばくが元で白血病になる。
日々衰えていく椰子を、裁判が忙しく見舞いにも行けない賢治は、ますます苦悩の日々が濃くなっていく。
椰子が重体の知らせを聞いた賢治は、すぐにでも駆け付けたかったが、裁判中に、それは許されなかった。上司になんとか許しを得て、極秘に広島に向かったが、間に合わなかった。
死ぬ直前まで、「ケーン、ケーン」と言っていたと椰子の妹の広子から聞き、その遺体を見て賢治は慟哭した。
傷心の賢治は東京に戻った。
やがて、判決の時が来た。
戦争犯罪人となり、7人が絞首刑の判決を受けた。その中の一人は文官であり、どう見ても死刑の判決はおかしいと賢治は思ったが、モニターである賢治は判決に一切の口出しはできなかった。
裁判中に審議された、アメリカの原爆投下についても文書からは削除され、何も問題にされなかった。
日々疲れていく賢治は自分のしていることは何なのかと煩悶の日々は続く。
そんな中、賢治にCICからアメリカについての忠誠の嫌疑がかかり、査問される。
自分はアメリカに懸命につくしているのに、どこまで行っても人種差別され、嫌気がさして軍隊を辞めてしまった。
一方、かつて椰子の夫であった、チャーリー宮原は、軍隊を辞め、華族と結婚し、結婚式が済むとアメリカへ行ってしまった。
賢治の弟、忠は生前の椰子の言葉によって、賢治とのわだかまりが解消していった。
忠は日本に残った。
裁判が終わり、妻のエミーと二人の子供は先にアメリカへ帰した。
チャーリーの結婚式を中座した賢治は宿舎へ戻り、軍隊の制服とピストルを返却する用意をした。
弟の忠から連絡があり向かったはずが、どういう訳か、誰もいない裁判所に着いてしまった。
裁判では、「被告を絞首刑に処す」と言わされた。
賢治は虚無感に襲われ、ピストル自殺をする。
死ぬ瞬間の賢治の脳裏には、星条旗と日章旗がはためいて、砂漠の砂塵が濛々と容赦なく吹き付け、果てしなく続く鉄条網が焼き付いた。
悲しい結末で終わってしまった。
この物語はフィクションであるが、巻末にある作者が取材した協力者の氏名と膨大な参考文献から、史実を忠実に再現した物語だ。
この物語を読んで、戦中戦後の日系人の苦悩が初めて分かった。
テレビでもNHKの特集番組か、なにかで東京裁判の様子を流していたが、そんなものかと興味が無かった。
戦犯として、極悪人に仕立てあげられた東条を含む死刑囚7人は普通の良識人であったようだ。
本物語で、その様子が理解できた。
偉大な作家のご冥福をお祈りします。
Posted by ブクログ
東京裁判がクライマックスを迎える。
通訳とはいえ、主人公は、一人の日本人に死刑を宣告をすることになる。
また、広島で奇跡的に助かったはずの恋人は、白血病を発病し、広島の病院に入院してしまう。
臨終に間に合うことができず、主人公はその後ずっと引きずることになる。
そんな主人公のお荷物でしかない妻は、子供とともにアメリカに帰る。
次第に主人公は心を病み、酒に溺れる。
そして、自死という最悪の選択をして、この物語は幕を閉じる。
主人公と、その親友のチャーリーはモデルとなる実在の人物がいるそうで、主人公はやはり現実でも自殺をするらしい。
その原因は明らかになっていないが、この小説で描かれているように、東京裁判の重圧から心を病んだことによるものと考えられる。
主人公には生き抜いて、アメリカのマスコミ業界でまた活躍して欲しいと思っていただけに、最後の展開は残念でならない。
後味は悪い物語だったが、これまでスポットが当たらなかった東京裁判の詳細について、アメリカ在住の日系二世について知ることができたので読んで良かった。
Posted by ブクログ
やるせないな...
虚無感に陥った賢治は、はっと、パズルのピースが全てハマったようにw、死へのピースを自ら埋めてしまったのだな。引き返す機会もあったが、椰子という心の支えを失った賢治には終焉へ一直線だった。
これを読んで、第二次世界大戦や原爆などへの受けての考え方が微かに変わった気がする。▼インドのパル判事「戦争を犯罪として裁く法律が国際間に出来ない限り東京裁判の被告を戦争犯罪者とすることは出来ない」と東京裁判という名の政治を批判したように、現在は戦争犯罪を裁く国際法や国際法廷等が設置されているが、国連自体が安保常任理事国の拒否権で機能不全である。
Posted by ブクログ
全巻を読んでみて
在米2世でアメリカ国籍を持ちながら日本の精神を学んできた主人公が太平洋戦争という時代に差別や偏見と家族との関係に葛藤しながら開戦〜日本への国際軍事裁判までを綴った小説。
戦争とはなにか・国とはなにか・家族の在り方とはなにか・法とはなにか・幸せとはなにか等の本当に答えのない問題を問いかけていて、こんなに考えさせられる小説はないし、日本人として戦争について考えるなら必ず読んだほうがいい本だと思う。
Posted by ブクログ
正義とは、忠誠心とは、国籍とは、、、
不幸な結末、最後は報われて欲しかったと思うが、そんな単純に整理ができない作品。
日本人の精神ならではの意味を持つ、肚 。
翻訳モニターとしての苦悩が凄く伝わる描写でした。
そして、山崎豊子さんの作品は葛藤や苦悩の心情を分かりやすく解説してくれるのが、作者さんの魅力の一つだと思います。
Posted by ブクログ
さまざまな視点から見た東京裁判。
この裁判での答弁は日本企業(経営者と従業員)に置き換えられる、と感じた。責任を取らない経営者と必死に働き憤死する従業員。
ただ東条氏の裁判におけるロジカルかつ至極真っ当な答弁とその潔さは、これまで自分が思い込んでいた人物像と随分異なった。
いずれにしても「二つの祖国」は、自分にとって生涯忘れられない一冊になる事は間違いない。
Posted by ブクログ
太平洋戦争における日系2世の苦悩を描いた作品。物語として素晴らしいだけではなく、戦争に関する知識の少ない私にとっては、知らなかった観点が多く、この本に出会えて本当に良かったと思う。
戦争がなぜ起こってしまったのか、考えさせられる。当時の指導者達が自衛の為の戦争だったと言うのであれば、今も話題となる憲法9条の改定も悲劇を繰り返さぬよう、慎重に進める必要がある。
また、戦時下における日本の罪を悼むと共に、原爆投下の罪についても米国は目を背けてはならないと感じた。
Posted by ブクログ
長かった…。3月末にドラマが放送され、原作がすごく気になりちょこちょこ読み進めてました。
読んですごくよかった。長いけどおすすめ。特に若い人へ。
・
日米開戦と同時に、12万人の日系人が強制収容所へ入れられたのは事実。
この小説に出てくる主人公やそれを取り巻く人々はフィクションだけども、
著者の相当に膨大な取材、調査による事実を織り交ぜた歴史小説です。
・
日系二世の主人公は、アメリカ人として生きるべきなのか、日本人として生きるべきなのか、痛烈な問いを突きつけられます。
米国籍を持つ主人公は、収容所に入れられながらも語学兵としてアメリカ人の立場で戦い、最後は東京裁判で言語調整官として法廷に臨み、常に日本とアメリカの狭間でもがき苦しみます。
ただこの小説はこれだけではない。
第二次世界大戦の全てが網羅されており、
戦争中に日本が犯した罪。
パールハーバーの真実。
太平洋戦争のあまりにも壮絶すぎる実態。
捕虜に対する、国際的な常識と当時の日本の常識の違い。(実際ハーグ条約で非人道的な扱いは禁じられていた)
東京裁判でのかなり詳細な成り行き。
天皇制について、戦勝国が下した決断。
戦犯たちが負った運命。
何が日本を戦争に駆り立てたのか。
何も知らなかった自分を恥ずかしく思うけど、教科書だけでは知り得ない事実の数々。
難しく読みにくい部分もあるけど、
元号が変わって皇室のニュースも多い今、知っておかなければいけないことの多さに打ちのめされました。
・
戦争は、誰にとっても良い結果をもたらさない。
強い国、弱い国、シナリオ作り、世論のコントロール…すべて国民の手の届かないような場所で、戦争への道が切り開かれていく。
弱い立場の国民は、本当に、国のやること、周りの国からの思惑、見極めなければいけないなと思った。
Posted by ブクログ
東京裁判は判決を迎える。
賢治の愛した梛子にも不幸な運命が待ち受ける。
3巻から引き続き東京裁判に翻弄されました。
判決の重さ、その判決を通訳として言い渡すことになった賢治の苦悩。
梛子との別れ、家族との不和、そして東京裁判、それらが賢治を壊していく。
日系二世としてアメリカに忠誠を尽くすも、日本人としても心を強く持ってしまった賢治には、余りにも酷な運命でした。
衝撃のラスト、賢治の選んだ最後が悲しい。
まだ幼いアーサーが心配です。
Posted by ブクログ
東京裁判の過程とケーンの苦悩が重なりあって読みごたえあり。
現在の日米関係はなんだかんだ言っても親密だが、それに至るまでの犠牲は計り知れない。
Posted by ブクログ
父なる国日本と母なる国アメリカ。
二つの祖国の架け橋となるべく、愚直なまでに誠実な天羽賢治。
信念を貫いた東京裁判が、神聖な裁きの衣から、勝者の裁きの鎧を見せた後、賢治の心は墜ちていった…。
ヒロイン梛子の最期の問いかけが重い。
ライバルのチャーリー、弟の忠と勇の対比で賢治の苦悩が良く分かります。
東京裁判については城山三郎著「落日燃ゆ」もお薦めです。
Posted by ブクログ
山崎豊子さんの作品は悲劇的なものが多いなぁ・・・・・。 「白い巨塔」しかり、「華麗なる一族」しかり、そしてこの「二つの祖国」しかり・・・・・。 なまじこれらの作品の主人公たちが途中までは強靭な精神力の持ち主として描かれているだけに、最後が・・・・。
個人的にはこの作品に於いて、賢治と梛子さんの恋愛エピソードは不要なものに感じました。 もちろんあの時代にアメリカの日系人迫害を逃れたアメリカ国籍を有する日系2世の人が広島で被爆したというエピソードと彼女が最期に漏らす「私はアメリカの敵だったのでしょうか?」という問いかけはとても重要だと感じるし、この物語の中で別の形でなら出てきて然るべき話だとは思うけれど、本妻エミーとの不仲とか友人の元ワイフとの恋愛模様っていうのはどうなのかなぁ・・・・。
なまじそこに恋愛関係を持ち込んだことにより賢治の絶望感の深刻さがちょっと別物になってしまったような印象を受けるんですよね。 初読の20余年前にはこの「悲劇性」にただただ感情的に埋没しちゃっていて、気が付かなかったことなんですけど・・・・・。 本来この小説は「国家と個人」というテーマを真摯に扱う物語になるべきだったところ、そのいとも厄介なテーマをやんわりとオブラートに包んで終わらせちゃったような気がして仕方ない・・・・・。
実際、この物語が執筆された時代(≒ KiKi が若かりし時代)には、KiKi をはじめとする多くの若者があの戦争を過去のものとして忘れ去り、同時に過去の「国粋主義」への反省(?)からか、個人主義にどんどんはまっていって、挙句、KiKi のように「愛国心が薄い」という自覚のある世代をじゃんじゃん生んでいた時期だったわけで、そうであるだけにそこに何となく読者に媚びているような、敢えて軟派を気取っているような不自然さに近いもの・・・・を感じてしまいました。
もっともあの若かりし頃にはこのエピソードがなかったら、あまりにも重すぎるテーマに軽佻浮薄に日々を過ごしていた KiKi は放り出してしまっていたかもしれないのも又事実(苦笑)で、そうであればあの「東京裁判」を知らなければならないという義務感のようなもの・・・・・を感じることさえなく、この歳まで生きてきてしまったかもしれないんですけど・・・・・ ^^;
「正義」、「祖国愛」、「国益」という耳触りだけはいいものの、実際にそれが何を表しているのか、人によっても解釈が異なるし、その守り方も立場が異なれば違ってくるものが、「すわ、一大事」ともなれば大手を振るって個人を抑圧する・・・・・。 なまじバランス感覚を大切にしようと努力する個人がそこにいると、その環境下でもがけばもがくほど、その圧迫感は真綿で首を絞めるかのように、個人を支えている大切な何かを絞め殺していく・・・・・。
賢治は「大和魂(民族の文化)を体現した良きアメリカ国民たろう」としていたわけだけど、平時であればそれは1つの生き様として称賛されたかもしれないことが、戦時という特殊状況の中では命取りになってしまった好例なんだろうと思うんですよね。 逆にそういう「民族」とか「文化」とか「生まれ育った環境」といったものに無頓着であれば、彼ほど悩みを抱えることもなく、絶望することもなかっただろうに・・・・・と思わずにはいられません。
彼の絶望は彼が辿ってきた苦難の人生(収容所送り、収容所における「踏絵」的な思想テスト、下の弟のヨーロッパ戦線での戦死、上の弟と戦場で相まみえ誤射、その弟との間のわだかまりに満ちた日々、妻のレイプ事件、梛子の被爆による白血病発症と死亡、軍歴、東京裁判での判決翻訳)を経てもなお、疑われ問われるアメリカ合衆国への忠誠という一事に尽きると感じます。 常にギリギリの妥協点でアメリカ国民であろうとし続けた人生の全てが否定されたと感じられた瞬間、しかも自分がギリギリの線で選んできた祖国アメリカが為した「東京裁判における偽善」の罪深さに、彼を支えていた何かがプツリと切れたのだろう・・・・と。
ただ、今回の読書で KiKi が感じたことはもう1つあって、賢治はある意味であまりにも純粋(? 頑な?)に「話せばわかる」という幻想に近いものを抱き続けてしまった人だったのではないかなぁ・・・・と。 以前、梨木香歩さんの「春になったら苺を摘みに」の Review でも書いたことだけど、あの本の中に書かれていた
「信念を持ち、それによって生み出される推進力と、自分の信念に絶えず冷静に疑問を突きつけることによる負荷。 相反するベクトルを、互いの力を損なわないような形で一人の人間の中に内在させることは可能なのだろうか。 その人間の内部を引き裂くことなく。 豊かな調和を保つことは。」
の「互いの力を損なわないような形で1人の人間の中に内在させること」を目指した賢治は結局は「その人間の内部を引き裂かれ」てしまった人だったのではないのかなぁ・・・・・と。 実際、彼のまわりには彼の立ち位置を理解・・・・とまではいかないまでも納得・受容してくれていたアメリカ人が全くいなかったわけではないし、そういう意味ではアメリカで教育を受け、アメリカ国籍を保ちながら広島で原爆後遺症に苦しむ人々と寄り添う梛子の妹広子のように、たった一つの教会が見せてくれた誠意だけで生きる力を得ることができた人もいるわけで・・・・・。
いずれにしろ私たち日本人は今の日本で暮らしている限りにおいては賢治と同じような苦悩とは無縁の生活を送ることができます。 そしてこの日本国の大きな経済力というお守りを引っ提げて、海外では比較的安全に観光なりビジネスなりをすることもできています。 これって決して当たり前のことではないということ、例えば現在のアメリカや西欧社会(実は日本も含め)でも人種差別は決して過去のものではないことを忘れてはいけないと感じました。
(全文はブログにて)
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第二次世界大戦時の日系二世の話。両親がアメリカに移り住み、主人公はアメリカ籍を持つ。一方、幼少期は日本で過ごしたため、日本人の心も併せ持つ。日本、アメリカのどちらからも裏切り者と疎まれ、二つの祖国の間で揺れ動きながら、それでも誠実に生きていこうとする主人公の姿が描かれている。
主人公の壮絶な人生。とても重たい。でも日本人として、是非知っておくべき話だと思う。お薦めしたい。
Posted by ブクログ
時代に翻弄された賢治や椰子。翻弄と言う言葉では表せないほど悲惨な人生だ。
東條英機はA級戦犯で悪人の印象しかなかったが、やはり彼も時代に翻弄されたひとりだったのか・・・
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東京裁判のくだり、歴史の苦手な私は早く終わってくれと思いながら読んだ。歴史の勉強をしたいのでは無いのです。物語を読みたい、つまり登場人物に共感したいのだ。作者の登場人物は他の作品の誰かを簡単に想像できる。天羽→里美、ナギコ→はなもりけいこなど。しかしやはり平易な文章、時代に翻弄される主人公たち全体を通しては面白く背景ももっと学びたいと思う内容。
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大地の子ですら壮絶な半生を通して行き着いた結論があったから予想していなかった胸糞悪い終わり方に思わず声が出た。正直、賢治の心情(山崎豊子さんの東京裁判への解釈)に100%共感できるわけではないし、自分の祖国がアメリカと日本と2つあってその間で苦しむ気持ちが想像しがたい部分もあって入り込めないところもあったが、フィクションとはいえ当時を追体験するようなリアリティで面白かった。
山崎さんが書く本の圧倒的な取材量に基づく重厚さは今もこれから出てくる小説にももうないんじゃないかと思う。景気の影響とか本がもっと読まれていて権威を持っていた時代だったとかいう要因もあるのかな。
Posted by ブクログ
東京裁判を中心に描かれている。山崎豊子
の緻密な取材に基づき、読者に分かりやすく
描かれている。
天羽賢治の苦悩はこの東京裁判の不条理さ
そして愛する椰子の死と言う二重の苦しみ
に苛まれる。
アメリカの正義を信じて真摯に裁判のモニター
をした賢治には、最初から判決有りきの裁判に
批判をしたとして、アメリカに疑われ
天羽賢治が日系二世として日本とアメリカの間
で人生を翻弄され真摯な思いで日系二世の誇り
を持って生きていたにも関わらず、最後はアメリカ
への忠誠を疑われ苦悩の末自害すると言う結末は
戦争の悲劇をより深く読み手に訴えかける。
Posted by ブクログ
とても勉強になる本でした。
日系二世の差別、語学兵の苦しみなどこの本で初めて知りました。
昔、「不毛地帯」はドラマで観ましたが小説でも読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
東京裁判の途中は飽きちゃいそうになった。歴史の教科書読んでるみたいな気持ち。でも一般教養としては読んで面白かったかも。
最後がびっくりやった。あっさり、まじか!って感じ
Posted by ブクログ
4巻は、主人公の期待にそぐわない東京裁判の粗雑・偏向・歪曲された審理と、想い人椰子の白血病による死亡、そして、なぜか主人公のピストル自殺で終わる。
主人公のモデルは二世の伊丹明とハリー福原のミックス。ライバルのチャーリー田宮のモデルはいないようだが、彼女の戦争小説らしく嫌味で出世嗜好の男はよくでてくる。チャーリー田宮がもっとイヤな男として書かれ、さらに、悲劇で終わればもっとスッキリしたんだけどね
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前巻から続く東京裁判も個人弁論に入り、判決へと向かっていく。
そして賢治の心は、更に重苦しく重大な展開を見せるモニター、翻訳の仕事と、私生活における葛藤とストレスで次第にすり減っていく。
二つの祖国を持つという特殊性から、どちらからも疑われ、疎まれ、それでも忠誠を貫こうともがき苦しむ賢治の姿には、もはや悲壮感しか感じない。
この話自体はフィクションではあるが、天羽賢治のモデルのように、似た苦しみに苛まれて命を絶つことになってしまった人のことを忘れてはならないだろう。
また、あまり知らなかったアメリカにおける太平洋戦争中の日系人への差別行為、東京裁判について知ることができたのは大きい。
もちろん、この本だけで理解したつもりになってはいけない分野。
太平洋戦争についての話題は、右翼だ左翼だとレッテル貼りの応酬になっている印象なので敬遠してきたのだが、日本人として少しぐらいは知っておくべきだと感じた。
Posted by ブクログ
仕方ないとはいえ、東京裁判の引用のくだりは冗長だと思う。
また、山崎豊子の作品に共通することだが、あまりにも主人公が生真面目すぎ不器用で、少し現実離れしているかなとも思う。
まあ主人公の中に葛藤があるから作品が面白くなるので、凡人のようにその場の雰囲気に流されるままならば作品にはならないのだろう。
Posted by ブクログ
アメリカと日本という二つの祖国の間で揺れ動く日系人の物語。実話を元にして、作者の丹念な取材の成果がその筆致により十分に現れている重厚な作品。色んな考え、選択をする日系人が描かれており、同じ収容されている日系人の間にも考え方の対立がある。生き方や選択にきっと正解なんてなかっただろうし、当事者ではない人間があれこれいうべきものでもない。ただ、これは山崎作品全般に言えることだけれども、真実とフィクションを渾然一体に著すのはどうか。僕は、法律家なので、終盤の東京裁判の場面で、例えば横田喜三郎をモデルにしたと思われる横井という法学者なんかが描かれているのには違和感があり、興ざめした。きっともう山崎作品は読まないだろう。
Posted by ブクログ
日系人として二つの祖国を持ち、戦勝国・敗戦国の両方の立場から苦しみ、最終的には救われなかった賢二。
辛い結末に気が重くなる。
死刑執行日を天皇誕生日にするとは鬼畜の所業。まさに戦勝国は何でもありなんだろう。
Posted by ブクログ
軍事裁判、椰子との関係の結末は。
裁判後賢治は身の振り方をどうするか…
重い結末はだったがこの物語らしい納得いく内容でした。山崎豊子さんの作品はどれも印象深い。
Posted by ブクログ
東京裁判の判決が下ろうとしていた。
東京裁判にモニターとして携わる賢治は、連合国側が敗戦国・日本を裁く一方的なやり方に疑問を覚える。
椰子には原爆による暗い影が…
原爆の恐ろしさを感じる。
勝者が敗者を裁く。
勝者が正しいのか…
広島、長崎への原爆投下は正しいことなのか…
戦争は二度と起こしてはならない。
核を使うなんてことはあってはならない。
『私は米国の敵だったのだろうか』
アメリカに忠誠をつくした日系二世にもかかわらず、戦争が終わってもまだ差別され、少しでも日本への心情があると反米と言われる…
狭間で苦しむ賢治…
賢治には二つの祖国を持つ身として、戦って欲しかった。
日系アメリカ人の不遇と公正を世に問い続けて欲しかった。
Posted by ブクログ
ぅおー、感想消えた...。
簡潔に書き直し。
終わり方、怖っ!
自殺って...。
戦争なんて悲惨なことの後で、また扱っていることの重さの後で、なかなかハッピーな終わりはできないとは思うけれども。
読後、怖いのは少し辛いゎー。
エスプリ以上に、主人公の神経質・繊細っぷりが全面に出てきちゃった感じはありました。
この本で私か一番良かったと思ったのは、その着眼点かな。ただ戦争物を扱うというのではなく、視点が[二世]だったのは、あまり考えたことがなかったから、なんかいい刺激だった。
でも、戦争の裁判記録は、別にそれ自体はあまり小説じゃないし、読んで面白い物でもないし、読むのちょっとしんどかったゎー。