山崎豊子のレビュー一覧
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戦争が終わり多くの兵士が祖国へ戻った。シベリアの収容所に囚われた者たちは帰国の望みを胸に極寒の地で耐え続けた。主人公・壹岐正もその一人だった。旧日本軍の中佐として戦い敗戦と抑留の苦しみを味わった彼は十三年の歳月を経てようやく帰国することとなった。
祖国は旧軍人への風当たりは強く戦争の記憶を背負う者たちの居場所はなかった。そんな中壹岐は大商社に身を投じることにする。そこでは戦闘機納入、弱小自動車会社への投資買収、石油開発をめぐり、企業間、同僚間で熾烈な駆け引き、戦いが繰り広げられる。親友の自殺、妻の事故死という悲劇にも耐え精一杯の任務、役割に信念を持ち務める。ワンマン経営のトップにも翻弄され -
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佐々木庸平で起こった医療過誤の第一審は財前側の勝利となる。その後鵜飼教授の思惑もあり財前は学術会議選挙へと出馬することとり、佐々木側が控訴したこともあり選挙と裁判の両方を渡り歩くこととなる。
裁判は財前有利かと思われていたが、最後の最後で看護婦長の亀山が佐々木側の証人として出ることとなるから次の巻ではどんでん返しが起こるのだろう。
財前有利の証言をしなかった里見助教授は浪速大学を追いやられるも新しい職場の癌センターで研究を続けており、相変わらず患者思いだが患者がお金ないからって自分のお金を出すのはどうなのだろうか。それやったら他の人に対してはどうするのか、あくまで医師として診断治療を行うべきか -
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財前が手術した患者がドイツの学会に参加している間に術後死亡し遺族側が医療過誤だと裁判を起こす。患者の肺転移を見逃し、なおかつ十分な術後治療を行わなかったと遺族が憤慨しているがまあ気持ちはわからなくもないがどこか財前にも同情してしまう。当時の技術じゃ癌転移か結核跡かは調べてもわからなかっただろうし、手術は上手くやってるしね。財前がしっかりと患者側とコミュニケーションとっていれば訴訟までならなかっただろうに。封建制度が色濃く残っていた昔の医学部で教授に楯突いたら左遷させられるのはしんどい。里見助教授はもっと上手く世渡りすればと少し思わなくもないがこれが本来あるべき医師の姿か。
財前がドイツに行きユ -
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2001年(発出1999年) 512ページ
読んでいて本当に胸糞悪くなるような人物が次々と登場する第4巻です。性根の腐った人間がこれでもかというくらい出てきます。バブル時代の象徴のように、巨額な金が右から左へと動きます。もちろん、小説としての脚色もあるとは思いますが、金の亡者ばかりで反吐が出そうになる。不正ばかりのそのやり方は、腐敗という言葉がまさにピッタリ当てはまります。とにかく読んでいてムカムカします。今の政治家もまったく同じです。国民航空は、上層部が私腹を肥やし、末端の社員は蔑ろ。政治家や官公庁役人は、自分たちが甘い汁を吸うためには、国民の生活をまったく顧みない。
そんな中で新たに国 -
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第二次対戦下での日系二世に対する隔離政策、日本の降伏の動きを知りながら原爆投下したアメリカ、広島に医療団を送り込みながらも人体に対する原爆の影響を調査するのみで医療行為を一切しなかったアメリカ、戦争犯罪を裁く国際法理論が無いにも拘わらず日本の戦争責任者を厳しく断罪したアメリカ。
大東亜共栄圏という身勝手な国策を掲げ、東南アジアの民族に数々の残虐な行為をした日本、特攻隊や生きて虜囚の辱しめを受けずと人命を蔑ろにした日本その日本に民主主義を持ち込み、その後の日本の発展を導いた平等と自由の国アメリカに対する日本人が長年持ち続けていた憧れの感情が如何に滑稽なことであると今更ながらに感じました。
戦時中