山崎豊子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
山崎豊子の一番最初の新聞連載小説だったという「女の勲章」。
新聞連載ものだけあって短いスパンでヤマが設定されており、
一気に読まずにはいられない内容でした。
しかし・・・衝撃のラストに愕然。
いつこの「男性マネージャー」が痛い目をみて主人公が女性の
幸せを掴むのかが気になって気になって、
一気に朝まで読みふけってしまったのに、
最後がこれじゃ、あまりにも悲しすぎる・・・・。
解説によると、山崎豊子は「究極の現実主義」なのだそう。
結局現実はオンナを弄びながらビジネスのダシに使って、
上手く立ち回る者の勝ちなのか???
・・・悲しすぎる(涙)
でも、ビジネスの世界を知るという意味では、勉強になる部分も多い
内容でした。 -
Posted by ブクログ
舞台となる昭和30年代は自分の両親が生まれた年代。写真は白黒だしテレビも一般家庭に普及はしておらず、洗濯もまだ洗濯板だったと聞く。片や自宅に風呂がなく銭湯通い、片や薪で湯を湧かしていたらしい。現代から見ると随分遠くに感じるが、本作は人間の内面にスポットが当てられており、時代を感じる背景描写はあっても内容に古臭さは感じられない。何度も映像化されている所以なのだろうなと思った。
しかし主要な登場人物の誰にも全幅の感情移入は出来なかった。それぞれに良いところと悪いところがあったように思う。
主人公の財前五郎は傲慢で自尊心が強く、上にへつらい下には厳しく、過失を隠蔽しようとしたり、いけ好かない悪人のように描かれるが、しかしながら母思いであったり、アウシュビッツや黒部ダムを見学して畏怖したりとごく普通の人間性も併せ持っている。決して褒められた人間ではないが、カリスマ性やお調子者といった側面もあり、憎らしいだけの人物でなない。裁判は主人公の不遜と怠慢が招いたことであり、亡くなった患者も家族も不憫ではあるが、かと言って遺族の感情的な様子に全面的に寄り添うことは出来なかった。会社が倒産した、生活が苦しい、全部財前五郎のせいだと言うが本当だろうか。患者がひとりで回していたという中小企業のリスクを存分に把握していながら普段から何のリスクヘッジも取っていなかったのは自分達の過失だろうし、亡くなった患者に顔向け出来ないというような思い込みで店の維持に拘ったり、財政が苦しいのに弁護人の厚意に甘えて控訴したり、取り立てに薄情だと泣き縋る姿は理解し難かった。また弁護人の争点についても結果論ではと思うところが多い。理想論を振りかざして様々な課題や背景を抱えた現実の事情を無視して殴りかかっているように感じられたし、医学的見地という観点からは財前側の言い分の方にも理があると思ったので、作中でもそのように反論されていたり、判決でも棄却されたのは現実的で良かった。振り返って見ると主人公はやはり医者としては本当に優秀でしかないのだが、真摯な性格だったなら遺族に訴えられて拗れることも無かったのでないのかなと思う。一体どうしてこんなに増長してしまうことになったのかと考えると封建的な医療の世界にもひとつ原因はあるように思える。主人公の末期に義父、学長、前任教授は何を感じただろう。
主人公との対比で描かれた里見は真摯で実直な姿から好感度も高いが、裏を返せば融通の利かなさに危うさも感じた。患者に肩入れし過ぎたり、家族を顧みなかったり、清濁併せ呑むことを知らないと言うのは時に周囲を無自覚に傷つけてしまうなと痛ましく思った。紆余曲折ありながらも本人にとってはより良い環境に身を置けたのは見守るこちらとしても幸いだった。
色んなあくどい人物達も出てきたが、個人的に一番不快だったのは東教授の娘だった。訴訟に熱心だったが被害者がかわいそうというより里見への下心を行動原理として動いていたようにしか見えない。元婦長の都合や心情を無視してしつこく絡み、時に父の権威を持ち出しながら説得し、そうしながら里見と比較して父をなじったり、一体どういう立場で何様のつもりなのかとその振る舞いには終始苛立ちを覚えた。
本書は本来3巻までで一度は完結しており。4〜5巻は反響を経た上で描かれたということで確かにやや蛇足に感じたが、それでもあの結末は印象的だった。財前五郎は人としては本当に問題の多い人物だったが医学に身を置く者としては間違いなく一流だったのだと感じられた。それだけに憎まれながらもその才が惜しまれるという強い余韻の残る読後感になっていたと思う。