Posted by ブクログ
2015年07月25日
山崎豊子のデビュー作であり、出世作。
日清戦争後、淡路から裸一貫で大阪の昆布商に丁稚奉公し、苦節10数年、暖簾分けして自らの店を持ち、繁盛させていく主人公の姿が第一部で描かれ、第二部では、主人公の次男が戦災ですべて失った老舗の暖簾を再興していく物語。
どんなに困難なことがあっても、決して暖簾に傷...続きを読むをつけるような真似だけはしないという船場商人の心意気が十二分に読者を惹きつける。また経済史的背景もしっかりと描かれていて面白い。
主人公の店(浪花屋)の塩昆布にねこいらずが混入していたとの嫌疑をかけられ、警察に拘留された主人公に家族・使用人が「適当なこと言って出してもらいましょ」と勧められたのに対し、主人公がこう啖呵を切る。
「阿呆、わいが詐欺や横領したん違うぜ、……わいが按配云うて出ても、暖簾が傷ついたらそんでしまいやないか、……」(74ページ)
結局、主人公の推察が当たって無事に放免となるのだが、このあたり、ユーモアもあって良い。中身はネタバレになるので書きませんが。