山崎豊子のレビュー一覧
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ネタバレ前巻から続く東京裁判も個人弁論に入り、判決へと向かっていく。
そして賢治の心は、更に重苦しく重大な展開を見せるモニター、翻訳の仕事と、私生活における葛藤とストレスで次第にすり減っていく。
二つの祖国を持つという特殊性から、どちらからも疑われ、疎まれ、それでも忠誠を貫こうともがき苦しむ賢治の姿には、もはや悲壮感しか感じない。
この話自体はフィクションではあるが、天羽賢治のモデルのように、似た苦しみに苛まれて命を絶つことになってしまった人のことを忘れてはならないだろう。
また、あまり知らなかったアメリカにおける太平洋戦争中の日系人への差別行為、東京裁判について知ることができたのは大きい。
もち -
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ネタバレ戦争が終わり、戦争犯罪人たちを裁いた東京裁判が始まる。
東京裁判のモニター役を任された賢治は、その重圧と家庭や弟との不和から、次第に追い詰められていく。
今までは賢治たち二世の境遇がメインだったが、この巻からは東京裁判の描写にかなりの比重を置かれている。
漠然と「戦犯が国際法で裁かれたものだ」と記憶していたのだが、そんな簡単なものでは無いことを思い知った。
印象に残ったのは、日本側の被告を弁護するアメリカの弁護士である。
アメリカ人でありながら、日本の弁護に全力を尽くし、ともすれば祖国アメリカの正義にも臆せず疑問を呈す姿に感銘を受けた。 -
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ネタバレ2017年度後半のNHK朝ドラ『わろてんか』を観て、モデルの吉本せいさんに興味を持ち、ドラマに先立って小説化、映画化されたという、この山崎豊子さんの直木賞受賞作を読もうと思った。
恐らくは、こちらの作品の女主人公、河島多加さんの方が、現実の吉本せいさんの人物像に近いのだろうと思いながら読んだ。
実際、おおまかには事実を元に創作を加えて作られていることが、二つのストーリーを比べると実感できる。安来節の扱いなど、その違いを見ると興味深いし、なにより、吉本吉兵衛、通称が泰三という主人公の旦那さんの扱いが、大きく異なっている。いまのドラマは、いわゆる「えげつなさ」を除いて、ファンタジー的に扱っている。 -
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市川昆監督の映画ぼんちを観たあとに原作を読んでみた。映画のぼんちよりも、もっとお家はん、御りょうはんの家付き娘の恐ろしさが感じられてよかった。山崎さんは映画ぼんちをみて「主人公はあんな男性ではない」と言ったそうだけど、確かに原作のぼんちは気骨のあるボンボンだった。
大正から昭和初期にかけての大阪船場の大商家に伝わる、しきたりの数々も圧巻だった。そして、現在の浮気不倫と、当時の商家の旦那として妾をもつことの大きな違いは、女性とそういった関係になるということは、その女性の生涯の面倒を最後まで見るという腹をすえたうえでの関係だということ。それぞれに個性的な五人の女性との関係をまっとうしようとするぼん -
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矢島嘉蔵の遺言書が発表された後で妾が妊娠していることがわかる。
三人娘はそれぞれが自分の取り分を多くしたいと考え、大番頭も私服を肥やそうとする。
登場人物それぞれが、それぞれの欲を持つ。
果たして矢島家の遺産相続はどうなるのか。
老舗の後継者であれば、一般的には大きな顔で暮らしていけるものを、女系家族であるために妻や娘よりも低い立場に甘んじていなければならない男。
後継者であっても自分の裁量で行えることは殆どなく、長く勤めてきた大番頭にも軽く扱われる。
だから愛人を作っても良いとは言わないが、心安らぐ場が欲しかっただろうことは想像出来る。
遺産の相続分を多くしたいがために特に長女藤代は手段 -
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久しぶりに山崎豊子さん。
社会派で重厚な作品の多い山崎さんだが、この作品はちょっと違う角度かもしれない。
大阪の老舗矢島家は、代々跡継ぎに婿養子を迎える女系家族。
その四代目である嘉蔵が亡くなり、莫大な遺産を巡る三人の美しい娘たちと大番頭、嘉蔵の妾、娘たちを取り巻く人々の愛憎劇。
簡単に書くとこんな感じで、遺産を巡る諍いが繰り広げられる。
美しい娘や大阪の富裕な家庭という一見「細雪」みたいな華やかで美しい物語の設定ではあるけれど、繰り広げられるのは遺産を巡る争いなので、華やかではあるが美しくはない。生々しくいやらしい。
また、莫大な遺産を巡る争いではあるが、「犬神家の一族」のような血で血を