山崎豊子のレビュー一覧
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【感想】
入社10ヶ月で次長になり、戦闘機の受注抗争に身を粉にし、7年後には業務本部の常務へと異例の昇進を遂げる主人公・壱岐。
1巻では浦島太郎のような商社マン1年生だったのが懐かしく思えるくらいの成長っぷりですね。
部下の兵頭、海部、東京商事の鮫島など、1巻から出てきた魅力的な登場人物も活躍し、ますます面白くなってきました。
戦闘機の受注を巡って友人を失い、また最愛の妻をも亡くした壱岐に、これからどのような運命が待ち受けるのか、楽しみ!
【あらすじ】
商社マンとして生き抜くことを宿命と感じるようになった壹岐は、防衛庁の次期戦闘機選定に伴う商社、メーカーの熾烈な受注合戦に巻き込まれる。
国 -
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御巣鷹山航空機事故を受けて、後任人事として全く業種の異なる会社に会長職を要請した。世間の風当たりが強い会社の会長職に就くというのは、爆弾飛び交う戦場に突如派遣されるようなもので、受けた人間の覚悟も相当なものに感じる。抜本的な社内改革のために政府主導で依頼されたものではあるが、当然旧体制化で甘い汁を吸ってきた輩からはきつい反発があり、事故から1年経っても改革は進まない。
自分の身を案じること(地位など)に一番の人間、そのためには他者のことなどお構いなしという風潮は今の世の中でも変わることなく、特に組織の中でいい地位にいる人たちに多く存在し続けているように思う。それを変えようとすると異端とも捉え -
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【感想】
戦後11年間のシベリア拘留を経て、近畿商事という総合商社に入社した元日本陸軍中佐の物語。
シベリア拘留のエピソードが生々しくて、読んでいてかなり衝撃を受けました。
戦後、異国であんな風に虐げられ苦しんだ人がたくさんいたんですね。。
「終戦」とは名ばかりで、戦争が終わっても、戦争中かもしくはそれ以上の苦しみを味わっている人がいる。
安易な一言ですけど、、、やっぱり平和が1番ですね。
あと、先物取引関係が難しすぎてまったく理解できず…
ただ商社の多忙さやバイタリティーの描写は見ているだけでわくわくしたなぁ。
商社マンのエリートっぷりは本当にカッコイイ!!
600ページ強のボリューム -
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ネタバレ連載小説ですよね。たくさん出てきた登場人物は活かされず触れられなくなることもしばしば。主人公は鉄平だなぁ。壮絶だな。でも裏表紙のあらすじのネタバレは許しません。何を考えていらっしゃるのでしょう。妹には絶対にあらすじを読まないよう厳命して手渡ました。笑
大介はたぶん悪役だけど、憎み切れないのだ。というか一番悪いのは万俵敬介では? その他登場人物たちについていろいろ書いてしまうと、
⚫︎銀平は作中でもっと逆襲すると思ったわ。
⚫︎真樹子とうまくいって欲しかったな。
⚫︎相子とそんなにあっさり別れられるものか。
⚫︎二子はアメリカでやっていけるのかしら。
⚫︎三子は自分で結婚相手を見つけられるのか -
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山崎豊子氏の直木賞受賞作品。裏表紙を見たら、昭和33年発行となっていて驚いた。著者は大阪人であり、この作品は大阪出身の人にしか書けないと思う。山崎氏の他の大作とちがい、1冊で完結の読みやすい本である。
大正時代に、呉服屋に嫁入りした多加が、商売がうまくいかず、遊び人の夫に悩まされ、一人になった後落語の寄席を開いて奮闘する話。行動力がある多加のバイタリティに感心する。歴史小説ではないが、どうやら小説のモデルとなる女性がいたようだ。大阪のお笑い、今でいうと吉本興業のような、特有の文化が発達していく過程が楽しめる。読んでいると、主人公の女性を応援したくなってくる。今も昔も、女性がビジネスで成功するに -
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まず時代が時代だからというのもあって、ほとんどどの登場人物にも完全には共感も感情移入もできなかった。男性の苦しさ、しんどさもわかるけれども、女性にはそもそも選択肢すら無かった時代。家庭に入って男と子ども(ともしかしたら親とか義理の親とか)の世話をするという「幸せ」という名の唯一の選択肢しか与えられていなかった時代。でもそれはきっと裏返すと、男性にも、その人の能力や得意不得意に関係なく外で働くという(より広い意味では唯一の)選択肢しか与えられていなかったということでもあるんだろうとも思うが。
いくら母親が亡くなったからと言って何故娘が父親の出張の荷造りをせねばならないのか、私には本当に理解ができ -
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物語の中核、都市銀行としては小さな阪神銀行が、自分より上位の大同銀行を呑み込む策動が動き出す辺りから物語は俄然面白くなる。
阪神銀行頭取の万俵大介が権謀術数で家族を不幸に巻き込みながらも己の欲望を満たして行く様に嫌悪感を抱きながらもストーリーに引き込まれて行く。
「自らの欲望を遂げるためには、冷然と金の力で自分に都合のよい正義を作り変えることの出来る男」
万俵大介を表す的確な言葉だろう。
物語のいたるところに出てくる馴染みある土地。
神戸を舞台にしたストーリー展開も嬉しい。
阪神銀行があるのは元町栄町通であるし、南京町、北野坂、六甲山など地名もさることながらドンクやオリエンタルホテルなど固有 -
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朝ドラ、小説
2017年下半期に放送された連続テレビ小説「わろてんか」は、吉本興業創立者の吉本せいがモデルでした。
かなりのやり手な女性だったそうですが、朝ドラでは見事なふんわりヒロインになっていました。朝ドラのアレンジ力は大したものだと思いました。
しかし、朝ドラよりも60年近く前に吉本せいがモデルとなった小説が出版されていました。
『花のれん』(山崎豊子/新潮文庫)です。実は、「わろてんか」放送中に本書を購入してたのですがずーっと積読で、この2日間ほどで一気に読みました。
明治〜昭和初期の大阪
吉本せいは1889(明治22)年生まれ、没年は1950(昭和25)年なので『花のれん』の作中