山崎豊子のレビュー一覧
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浪速大学第一外科の教授選の行方は最後まで絡れにもつれ、内部候補である主人公の財前がポストを手にした。←ネタバレっぽいけど裏表紙に書かれている内容なのでご容赦頂く。
良心がどこにあるのか、目の前の患者を結果として犠牲にしてまでも『権威』を求める財前の姿は大学病院の組織体質が産み出したモンスターだ。
肺に影があり呼吸困難で苦しむ患者を、自信たっぷりに誤診し国際学会へ旅立った財前の今後やいかに。
この失態も他者になすりつけるのか。里見助教授が責任とらされたらやるせないなぁ。。
サイドストーリーだが、私が思う理想のお医者さん、里見助教授と財前の前任教授だった東の娘との関係がどうなっていくのかが -
Posted by ブクログ
山崎豊子作品の好きなところは、「綿密な取材に基づいた、リアルな社会の描写」だと思っています。
『不毛地帯』や『大地の子』『沈まぬ太陽』など、実際に起こった事件を題材にして、フィクションとは思えないほどリアルに作り上げられた登場人物の活躍と、お互いの「正義」のために血で血を洗うような激しい戦いを繰り広げる様に、読む手が止まらなくなるくらい作品世界へ引き込まれます。
本作もそのような山崎作品の世界に浸ろうと思っていたのですが、いまいち世界観に入り込むことができませんでした。都市銀行を中心とした財閥と政治家の汚職を軸に描いた作品なのかなと思いきや、金に物を言わせる「上流階級」と勘違いした登場人物た -
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大門社長が70歳をすぎて、老醜を晒すようになり、油田開発の成功を花道に引退させるにあたり、壹岐も退社することになる。中小企業でも同じであるが、かつて凄く頑張っていた経営者が70を過ぎてその地位に固執する姿はあまり見たくないものである。
第五巻まで読み終わって、軍国教育を受けて戦争を戦って悲惨な目に遭った軍人が、戦後の日本において経済競争を戦う姿はどこにでも多くあったのだと思う。そして彼らの大変な努力が、日本の経済復興を支えたのは事実だ。しかしそんな彼らの世代さえ晩年はなかなか後進に道を譲らず、次の世代がうまく育たなかったことが今日の日本の低迷を招いているのだと思う。彼らの基準からすると戦後生 -
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この著者の本は、なんといってもリアリティが半端なくて、事実よりも実態を明らかにしてくれる。第1巻は戦争の現実を描いているが、「大地の子」で描いた被害者の立場ではなく、現実に戦争を遂行させられた者を描いている。戦争で最も悲惨な被害を受けた者は、満州で見捨てられた孤児もそうなのだが、シベリアに抑留された兵士も悲惨であった。それほど苦労して11年ぶりに帰国したのに、ソ連で洗脳された人のように扱われて差別を受けるというのが現実だったのであろう。それにしても、戦中も戦後も、大勢に迎合する人の陰で、不合理な差別を受けるという社会は変わっていないのだと。オーディブルで聴き始めたのだが、面白い。
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ネタバレ単に調べるだけなら、大ていの小説家はそれをやっているだろう。大切なことは何を調べるかであり、調べた多くの事実のなかの何を生かし、何を棄てるかであろう。この点作者の頭はよく働いている。これだけの材料があれば五つぐらいの小説は書ける。山崎はそれをやらない。この小説で主人公の多加が女の一念を貫いてその事業を成功する、のみならずその悲願を達成するために彼女の打つ手が悉く精密に計算されていることである。小銭貸しの石川きんに取り入ることから始まって、冷し飴を氷の上に並べたり、客の棄てたミカンの皮を集めて薬屋に売ったり、下足札に広告を入れることを思いついたりするこまごまとした才覚のほかに、公衆便所に忍びこん
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著者の小説の初、一回目の作品である。大阪商人は大阪の街、空、人とともに私の血肉となっている。私がものを書きはじめるなら、ここからの出発しかできないと思った。長い歳月(7年)をかけて、何百年と歴史の中で「のれん」と繋がって来た大坂商人像を書き続けた。ここに登場する人物たちはそのまま実在した人物ではない。周囲の人間の面白さ、いやらしさ、凄さなどいろいろ按配して創り上げ作者としての都合のよい筋のはこび構成に配役した。商人をリアルに裏附ける商いについては、身近な生活の中から見出し、ほんとうの商いが生きる商人の背景にした。二人の主人公が明治、大正、昭和の厳しい時の流れを個性的な商人として生きぬいた、お豊