山崎豊子のレビュー一覧
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二世の人と聞けば、生まれながらに母国語が2つも出来るから羨ましいと単純に英語で苦労している私は思ってしまうのだが、その両国が戦火を交えることになったとき、どれほど苦しむだろうか。
主人公の天羽賢治には弟が二人いて、次弟は日本の大学に学んでいる間召集にあい、日本兵として出征する。一方アメリカに生まれ育ってそこから出たことのない末弟は、合衆国に対する当然の義務として米軍の志願兵となる。アメリカ市民としての義務を果たしたいと願う一方、両親の母国であり自分も10年間育った日本に対し、限りない愛着を持つ賢治は、その狭間で苦しむ。どれほど個人の能力が優れていたとしても、一介の市民に大きな歴史は容赦なく牙をむく。
日本が太平洋戦争でどれほど苦しんだかという話は数多いが、敵国の中で生きていかねばならなかった彼ら日系人を扱った小説はあまりないように思う。人種差別に思想の対立が折り重なった収容所で生きていた人々への鎮魂の書として、読み継がれていくべき作品だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ荒むさぁ………。
そりゃ荒むよね、恩地さん。
希望したわけでもないのに僻地勤務を10年間。
最後には家族とも離れ離れで、隣家も見えないだだっ広い家に一人ぼっち。
丸一日、日本語をしゃべらない日もある……。
そんな生活によく耐えたなぁ。
私だったらすぐ泣き入って、八馬とかに「組合とは縁切るから日本に戻して」なんて言っちゃうな。
恩地さんには実在したモデルがいるとか。
その強い精神力はどこからくるのか。
見習いたいものです。
でもなんとか恩地さんも、日本に帰ってくることが出来そうだとわかったときは、ホントに「よかったねぇ」という感じでした。 -
Posted by ブクログ
【大学病院教授選、封建組織の機能不全/権力欲を煮詰めたパロディ】
・医療関係の知人が増えてきたので、古典として購入。1978年、2003年と夫々放映されたドラマは見ていない。山崎豊子さんの作品は不毛地帯、沈まぬ太陽などは学生時代に読んだ
・父を早くに無くし母親に女手一つで育てられた主人公は、地元名士の繋がりから産婦人科を営む財前家に婿入りし、財前五郎として、舅の期待を一身に背負い、浪速大学病院で医師として立身出世を志す
・五郎が助教授を務める第一外科の東教授の定年退職に際し行われる教授選挙での勝利を目指し奔走するが、言うことを聞かない財前を当選させたくない東教授、東都大学から遠隔コントロールを利かせたい船尾教授、次期学長選を見越して財前を推したい鵜飼、財前を介して大学病院との関係を強化したい舅や医師会、など各人の想いが入り乱れ、教授戦は混乱を極めていく
・医局、OB会、医師会等を通じて根回しを行う財前、東都大学時代の繋がりを頼る東、浪速大学系列から食い込む野坂等選挙を主導するものと、そこに巻き込まれていく財前の同期や東都大出身の教授などの人間模様が生々しく描かれる
・久々に読んだ山崎豊子さんの小説はやはり凄い。常に空気が張り詰めていて、一文一文の背景に膨大な調査や知識、想いを感じさせるずっしりとした文章、この年になって読むとまた違った印象を受けた
・公正さが担保されないブラックボックスな選挙の仕組み、送り放題の賄賂や1960年代のピンと来ない円通貨単位など、現代に読むと古典感は否めないが、当時の日本のエリートの行動原理がよく分かる
・ここまで極端ではなくとも考えさせられるものは多いし、『社内政治の科学』の様な本がベストセラーになる現代に通じるものもあるはず
・ここまで徹底して、教授選の裏にある政治活動を描き切るのはもはやパロディなのではないかと思ってしまう(書いている山崎豊子さんは辛かったか、逆に振り切って楽しんでいたか、どうだろう)
・当時/現代の大学病院の仕組みにもう少し詳しくなってから解釈したいが、教授は、人事/予算配分/注力分野/PR等各領域に権力を持つグループ会社(病院)や医局を束ねる社長の様なもの、と理解した(多分、普通にイメージする大学の教授とはまた違うはず)
・読み進める中で解釈を深めていきたい。ちなみに今のところ財前推し -
Posted by ブクログ
序盤は「船場もの」の物珍しさにほぉほぉと読んでいたけど、読み進めるほどに辟易してくる自分がいた。
商家の莫大な遺産相続争いが自分とはかけ離れすぎているからか?
山﨑豊子の社会派?作品が好きなので、読んでも読んでも一つの家のことをぐちぐちやっていて社会には何の影響もないのにな…という気になってしまったのかも。
自分の知らない世界のことをたくさん教わったことは確か。
女だと相続につけ契約につけ、男から社会から舐められるつけこまれるのは今も変わらないのかも。
車や家を買ったり引っ越したり交渉したりそういうところで女相手だと足元見てくる輩はどこにでもいるようで。
その意味では矢島家の三姉妹もそれぞれつけこまれまくってて不憫ではあるわね。 -
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ネタバレ「白い巨塔4」「5」は、以前「続・白い巨塔」の一冊でそれを読んでいた。その「続・白い巨塔」の感覚があるので、この4は物語を盛り上げていく前半部分の感覚。
里見が善、財前が悪という構図はわかりやすい。ただ、この裁判などなかったら、里見は浪速大学付属病院に残りやりたい研究を続けられたのだろうか? 財前のように口八丁手八丁でなくてよいけれど、少なくとも病院という組織の中できちんとした信頼を得ていたのだろうか?(何人かの個人からの信頼ということでなく)
正しく尤もらしいことを言っている割に信頼を得られず、会社組織の中で孤立していた人を思い出してしまった。ある分野では知識も技量もあるのに、組織を動かすことができない人。自分では組織を動かすことができないならその部分で部長の力を頼ればよいのに、「部長がダメだ」というだけで部長の力を借りようとしなかった人。
里見はそんなクレームは言わないけれど、大学病院の組織を動かすことはできていない。組織を動かすにはそうできる力が必要。それは里見の力不足ではなく、それ以上に大学病院の組織の問題なのか?