山崎豊子のレビュー一覧
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ネタバレ単に調べるだけなら、大ていの小説家はそれをやっているだろう。大切なことは何を調べるかであり、調べた多くの事実のなかの何を生かし、何を棄てるかであろう。この点作者の頭はよく働いている。これだけの材料があれば五つぐらいの小説は書ける。山崎はそれをやらない。この小説で主人公の多加が女の一念を貫いてその事業を成功する、のみならずその悲願を達成するために彼女の打つ手が悉く精密に計算されていることである。小銭貸しの石川きんに取り入ることから始まって、冷し飴を氷の上に並べたり、客の棄てたミカンの皮を集めて薬屋に売ったり、下足札に広告を入れることを思いついたりするこまごまとした才覚のほかに、公衆便所に忍びこん
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Posted by ブクログ
著者の小説の初、一回目の作品である。大阪商人は大阪の街、空、人とともに私の血肉となっている。私がものを書きはじめるなら、ここからの出発しかできないと思った。長い歳月(7年)をかけて、何百年と歴史の中で「のれん」と繋がって来た大坂商人像を書き続けた。ここに登場する人物たちはそのまま実在した人物ではない。周囲の人間の面白さ、いやらしさ、凄さなどいろいろ按配して創り上げ作者としての都合のよい筋のはこび構成に配役した。商人をリアルに裏附ける商いについては、身近な生活の中から見出し、ほんとうの商いが生きる商人の背景にした。二人の主人公が明治、大正、昭和の厳しい時の流れを個性的な商人として生きぬいた、お豊
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Posted by ブクログ
古い時代の道徳に乗っ取った小説。今の時代にこの小説を発表したら、各方面から叩かれるだろうなと感じた。
主人公は、若いのに金があって、しかも離婚して、独身と言う設定から、外に5人も女を作って、また、その女のほうも、彼を拒むことをしない。しかも最後には、生き残った4人の女同士が疎開先で仲良く過ごすと言う、非現実的なオチが付いている。
この小説では、その場面で終わっているが、主人公には離婚した本妻の息子1人の他に外の女に作らせた息子2人がいて、しかも外の女の息子の方が出来が良さそうなことがほのめかされている。もしこの小説の続編があるとすれば、その3人の息子たちの葛藤の話と言うことになるのだろうが、さ