山崎豊子のレビュー一覧
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ネタバレ戦争が終わり、戦争犯罪人たちを裁いた東京裁判が始まる。
東京裁判のモニター役を任された賢治は、その重圧と家庭や弟との不和から、次第に追い詰められていく。
今までは賢治たち二世の境遇がメインだったが、この巻からは東京裁判の描写にかなりの比重を置かれている。
漠然と「戦犯が国際法で裁かれたものだ」と記憶していたのだが、そんな簡単なものでは無いことを思い知った。
印象に残ったのは、日本側の被告を弁護するアメリカの弁護士である。
アメリカ人でありながら、日本の弁護に全力を尽くし、ともすれば祖国アメリカの正義にも臆せず疑問を呈す姿に感銘を受けた。 -
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市川昆監督の映画ぼんちを観たあとに原作を読んでみた。映画のぼんちよりも、もっとお家はん、御りょうはんの家付き娘の恐ろしさが感じられてよかった。山崎さんは映画ぼんちをみて「主人公はあんな男性ではない」と言ったそうだけど、確かに原作のぼんちは気骨のあるボンボンだった。
大正から昭和初期にかけての大阪船場の大商家に伝わる、しきたりの数々も圧巻だった。そして、現在の浮気不倫と、当時の商家の旦那として妾をもつことの大きな違いは、女性とそういった関係になるということは、その女性の生涯の面倒を最後まで見るという腹をすえたうえでの関係だということ。それぞれに個性的な五人の女性との関係をまっとうしようとするぼんちは、本当に旦那甲斐性のある男だと思った。 -
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矢島嘉蔵の遺言書が発表された後で妾が妊娠していることがわかる。
三人娘はそれぞれが自分の取り分を多くしたいと考え、大番頭も私服を肥やそうとする。
登場人物それぞれが、それぞれの欲を持つ。
果たして矢島家の遺産相続はどうなるのか。
老舗の後継者であれば、一般的には大きな顔で暮らしていけるものを、女系家族であるために妻や娘よりも低い立場に甘んじていなければならない男。
後継者であっても自分の裁量で行えることは殆どなく、長く勤めてきた大番頭にも軽く扱われる。
だから愛人を作っても良いとは言わないが、心安らぐ場が欲しかっただろうことは想像出来る。
遺産の相続分を多くしたいがために特に長女藤代は手段を選ばずといったところで、大番頭も腹が読めず、登場人物の誰にも余り肩入れも出来ない。
お金持ちは大変だなあ、などと軽く思っていたら、遺産相続で揉めるのはお金持ちよりも少ない遺産を取り合うことが多いらしく、ドキリとしたり。
揉めたときに、他人よりも血の繋がった仲のほうが拗れるということは経験済みなので納得がいく。
最後は、ひとの見せないでいる屈折した気持ちは恐ろしいなと思う。
遺産相続の争いなんてお金持ちの話だから関係ない。
うちは遺産なんて無いから。
うちは子供たちは仲がいいから大丈夫。
なんて笑っているひとも多いと思う。しかし、少ない遺産で子供同士が争って、二度と修復出来ないくらいに関係が拗れてしまわないように、きちんと意思を遺しておくことが亡くなる者の家族への最後の努め、最後の愛情表現なのかもしれない。 -
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久しぶりに山崎豊子さん。
社会派で重厚な作品の多い山崎さんだが、この作品はちょっと違う角度かもしれない。
大阪の老舗矢島家は、代々跡継ぎに婿養子を迎える女系家族。
その四代目である嘉蔵が亡くなり、莫大な遺産を巡る三人の美しい娘たちと大番頭、嘉蔵の妾、娘たちを取り巻く人々の愛憎劇。
簡単に書くとこんな感じで、遺産を巡る諍いが繰り広げられる。
美しい娘や大阪の富裕な家庭という一見「細雪」みたいな華やかで美しい物語の設定ではあるけれど、繰り広げられるのは遺産を巡る争いなので、華やかではあるが美しくはない。生々しくいやらしい。
また、莫大な遺産を巡る争いではあるが、「犬神家の一族」のような血で血を洗うような惨劇も起きない。
物語の展開としては金融業界と親子の隔絶を描いた「華麗なる一族」のような、しっかりした社会派なものだ。
ところで、この作品は「にょけいかぞく」と読むし、わたしも女系と書いてにょけいと読んできたのだが、どうやら違うようだ。天皇陛下の退位(退位もおかしいとは思うが)に関してや後継問題などの報道の際、大抵のニュースで女系天皇(じょけいてんのう)と言っている。
女系って、じょけいって読むんだ、知らなかった、とかなり衝撃を受けた。
わたしが使うiPadでも、にょけいでは変換出来ない。
知らなかった。
いつからそうなったの。
昔からなの。
わたしと山崎豊子さんが間違っていたの。
と、思ったわけだ。
そんなこんなで下巻へ。 -
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長編作家、山崎豊子氏による短編集。長編はずっしりと重いテーマの作品が多いが、短編はどんな小説になるか、興味深かった。収録されている5編はどれも昭和33年ごろに書かれ、文藝春秋などに掲載されたもの。
短編はすべて大阪が舞台となっている。関西出身でないと書けないであろうという、かなりディープな大阪弁で語られている。『船場狂い』では、船場という戦前栄えた商家が並ぶ地域の慣わしなど、面白かった。また、『遺留品』には、二十年後に彼女が手掛けることになる大作『沈まぬ太陽』を予想させる箇所があり、驚いた。読後、ほのぼのと感じる人もいるだろうが、私は強烈に胸が痛んだ。
どの作品も、読み始めると先が気になって本を置けなくなる。 -
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いつの年も夏休みは終戦記念日と重なり、たまにはこうしてその時期に合わせ戦争や国防ということについて考えるものだと、山崎豊子さんの未完の遺作となったこの本を手に取る。
1989年を舞台にしているが、主人公が大学を出たのは1980年ということで、私とはほぼ同年代という設定になる。
私の高校の同級生でパイロットを目指して防大を受験した者もいたが、頭脳明晰に加え体力頑健でなければ通らない難関であったと記憶する。
そこを出て潜水艦乗りのエリートとなった花巻朔太郎二尉の今と過去を追いながら、1988年実際に起こった「なだしお事件」を思わす衝撃的な民間船との衝突事故とその海難審判を中心に描かれる。
尊敬する上官・先輩や同僚との強い絆がある一方、事件に絡めば海千山千の弁護士やいけ好かない同輩が跋扈し、秘めやかなロマンスも塗した物語は、王道とも言える展開を見せる
国民には理解され辛い自衛隊の存在意義、事故が起こればここぞとばかりに叩くマスコミ、事故に対する自責の念も含め揺れ動く主人公の心。
戦没者追悼式での安倍首相の言葉に違和感を抱き、憲法9条を貴重な条文と思いながら、最近の尖閣諸島を巡る中国の行動にも何も出来ない現状を見ると、作者が“執筆にあたって”と記した文章に深く首肯する。
曰く『戦争は絶対に反対ですが、だからと言って、守るだけの力も持ってはいけない、という考え方には同調できません。いろいろ勉強していくうちに、「戦争をしないための軍隊」、という存在を追究してみたくなりました尖閣列島の話にせよ、すぐにこうだ、と一刀両断に出来る問題ではありません。自衛隊は反対だ、とかイエスかノーかで単純にわりきれなくなった時代です。そこを読者の皆さんと一緒に考えていきたいのです。今はその意義を再び考え直すタイミングなのかもしれません』
真珠湾攻撃時に米軍の捕虜第1号となった花巻の父の物語が詳らかになり、紛争の火種となりかねない東シナ海を先の戦争の犠牲者が今もって眠っている鎮魂の海として静かに守ることが出来るかを模索する筈だった第2部以降を読めないことを、とても残念に思う。 -
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あらららー。
鉄平やばいねー。窮地に陥ったねぇー。
でも、何か自業自得な気もしないでもないけど。。。
どこの銀行からどれだけ融資してもらうかも分からないのに、高炉建設始めちゃったり、大口の取り引きがキャンセルになるようなマズイ事態をも考慮せず、あまりの情熱に突っ走り、資金調達も出来ず、銀行が建設一時中止した方が良いと言っても聞かず、突貫工事に踏み切っちゃう。
ちょーっと勝手すぎな感じがするのは私だけ?
こーんなどん底にはまりこんでしまって、下巻では巻き返せるのかなぁ。
私としては、阪神銀行が他の銀行に乗っ取られ大介が落ちぶれ、鉄平に頑張ってもらいたい。
二子にも幸せになってもらいたいし、相子が万俵家から追い出したいし、鉄平の出生の真実も知りたーい。
下巻が楽しみだ!