山崎豊子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
上巻より続きます。
冷酷でやり手、切れ長眼の年下男、銀四郎(う~ん、何度書いてもワルそうな名前だ・・・)の冷淡な拡大計画はとどまるところを知らず、船場出身のいとはんデザイナー式子の地位をさらに高め、前例のない仕事を次々と成功裏におさめ、いよいよ、パリへ舞台を移そうとしていた。もはや日本のファッション界を代表するスターデザイナーとなった式子先生。しかし少しづつ、虚栄で飾られた勲章が重く影を落とし始めるのでした・・・
下巻も相変わらず、銀四郎の快進撃が続きます。あまりにやり手なので、腹立つー!と思いながら読むのですが、まあ、あそこまで徹底して商売として割り切れたらもうご立派としかいいようがありません。
物語のラストはなんとも残念なもので、やるせなくなってしまいますが、「やっと銀四郎から逃れられた・・・」という安堵感もないこともない。でも、
やっぱり残念。
ところで、この物語は大阪に実在する服飾専門学校の学園創始者であるデザイナーがモデルになっていると言われています。登場するエピソードも事実と酷似したものが多く、発表当時は著者との間で冷戦があったもよう・・・(そりゃそうでしょうねえ)
今もNGワードなのかしら。と思って学校のホームページを見てみると、この作品のことが紹介されていて、えっ、もういいの?と拍子抜け。
そして、そのニュースに添えられた三人の写真。並ぶのはディオール氏と先生、そして「銀四郎」らしき人物も・・・
物語を通して全体的にドロドロ渦巻く世界ですが、和装から洋装への過渡期に道をつけた逞しい女性たちの仕事ぶりや、のんびりした船場のいとはんがここぞと言うとき(理不尽で攻めてくる先輩デザイナーとの対決や、ファッションショーでの堂々とした挨拶など)には毅然とした態度でバーンとやってのけるあたり、すかっとする場面も多い作品です。
女性が男性にない領域の魅力と才能をもとに仕事をして輝いていた時代だったんたなあ・・・と思うと、なんとなく、自分の仕事ももっと攻めてみようかな(という性質の仕事でもないが)、なんて勇気をもらったりしました。
しかし、小説として眠らせておくのは惜しい。昔、ドラマ化もされたようですが、今やれば、ぜったい盛り上がると思うわ・・・。
沢口靖子と及川ミッチーあたりでいかがでしょう。 -
Posted by ブクログ
船場のいとはん、こいさんものが何故か好きなわたくし。
この作品は新聞の書評ではない欄で「船場のいとはんもの」として紹介されていたので知りました。
知ってしまったら早く読みたい。某お急ぎ便も待ちきれなかったので、本屋さんの店頭お取り置きネットサービスで在庫確保し、取りに行きました。
(このサービス、すごく便利だけど、カウンターで本のタイトルを告げるのがちょい恥ずかしいっす)
この作品は、なみいる巨編をお書きの山崎先生においては上下巻と、規模としてそう大規模ではない作品に該当すると思われます。
しかし、これが新聞連載の小説だったと知り、驚きました。
こんなに悶々とする展開、毎日小出しにされるのをリアルタイムで読んでいたのでなくてよかった・・・!と胸をなで下ろしました。
昭和30年代の洋裁学校ブームが物語の背景。自分の母親も洋裁学校を出ており、当時どんなに華やかで勢いがあったのかを聞かされたことがあります。今ではそのほとんどが洋裁学校としての姿を消してしまったけれど、そんな当時の事を知りたくて読みたかったということもありました。
阪神間の洋裁学校を起点に、大阪、東京そしてパリへ・・・と華やかな成功の階段を登る、若く美しい船場のいとはんデザイナーと、その蔭で経営の実権を握る商魂たくましい年下のやり手男性。先生に仕えながらも、いつか自分が・・・と眼光鋭く隙を伺いみる助手たち。ビジネスチャンスを見込み渦巻く服飾界の欲望と野望、女のプライド。
など、これでもか~というぐらいに絡み合い、気の休まる暇がない。
唯一、船場からついてきてくれたヒロイン式子のお手伝いさんだけが心の平安でした。(式子さんもきっと同じ気持ちだっただろう・・・)
上巻の前半あたりは、まだ業界の掟もわからぬ駆け出しの式子が先輩にやっかまれ妬まれ小意地悪をうけつつも、軽やかに跳ね返し、小さな成功をおさめて行く段階が爽やかで心地よいのですが、その後、あれよあれよと言う間に虚飾の渦に巻き込まれていくのです。
船場の商家のいとはんとして生まれた式子のプライドを上手にくすぐり次の一手をもちかける銀四郎(ってまた、このワルそうな名前ったら!)。
当の本人式子さんも、このまま行くと危険だということもうっすら理解はしてはいるものの、しかし変なところで鷹揚なお嬢さん性質と、持って生まれたいとはんのプライドによって自分で呼び込んだ運命でもあるのがまた・・・。
読んでいて、「もういい加減にいち抜けた、したらええのに」と思いつつ、「でもそれはもう無理やわなあ」と、ある程度予想のできる結末に向かって進むしかなく、砂をかむような思いでお伴することになるのでした。
どこまでもまつりあげられ、まさにジェットコースター、いや、フリーフォール並みにおそろしい。
そんな気の抜けない展開におけるちょっとした楽しみは、随所に当時の関西での暮らしや文化が垣間見られるところでした。特に心斎橋や阪神間において、実際の店名や地名が数多く登場するので、当時はそこ、そんなに盛り上がってたのねぇ・・・と現在の姿を思い起こしながら読むのも関西人ならまた楽しいかも。
当時の人にとって、夏の六甲山ホテルへ避暑に出かけることや、心斎橋をぶらぶらする(いわゆる心ブラ!)は、なんとも憧れのことだったんだなあ・・・そう思うと、今は閑散としている六甲ケーブルが夏は満員だったなんて、信じられません。
それから、三人の弟子がそれぞれ個性の異なるタイプで、それぞれやっかいに絡んでくるのでおもしろい、いや、おそろしい。
いちばん、やらかしてくれてくれるのはいったい誰なのか・・・
なんて展開も楽しみにしつつ、下巻へ続きます。