山崎豊子のレビュー一覧

  • 白い巨塔(三)

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    【感想】
    何とか教授選を勝ち切り、無事教授になった財前でしたが、その慢心ゆえに、同期である里見の助言を全て無視し、挙句の果てには患者を死に至らしめて訴訟されるという大きなミスを犯してしまう。
    ただ、この本の胸糞悪いところは、裁判に関わる医者たちの殆どが、その専門的な知識を駆使して患者やその遺族ではなく、財前や自分たちの立場を守るといった愚行に走った事でしょう。
    そして、正しいことをしているはずの里見が大学病院を追われ、罰を受けなければならない財前が何食わぬ顔で病院内でのさばり続ける・・・
    本当に読んでいて胸糞悪くなりました。

    この本を読んで分かる腐敗した世界観は、正直なところ現代ではかなり改善されているのではないかと思います。
    僕自身、仕事で大学病院などに訪問したり院内の色んな医師とお話をしますが、コンプライアンスにうるさい今日、国立病院では接待は基本NG、会社からの寄付でさえ上限金額が決められるなど、むしろ医師にとってかなりウマミがなくなってきているのが現状かなと思います。

    また、これは病院や診療科などその医局によって異なるかもしれませんが、上下関係はあるとはいってもフランクな医師も多く、総じてみると封建的な印象なんてあまりないようにも感じます。
    少なくとも、この小説のように、患者にとってここまで傲慢な医師なんていないと思います(笑)
    なんなら、「ブラックジャックによろしく」のような院内の雰囲気すら、現代の病院にはないと思います。
    (しかし、医師や医療従事者の人材不足はコロナ前からずっと課題としてありますが・・・)

    ただ、現代でも医療事故は減ったとはいえ起きており、被害者によっては泣き寝入りを強いられる事はあるようです。
    その構図は段々と良くはなっているとはいえ、根深い問題として残っているのかもしれませんね。

    こういった改革は、何も医師たちを虐げる為にやるわけではありません。医師や医療従事者の方達は、本当に尊敬に値する存在です。
    また医師や医療従事者のワークライフバランスもしっかりと確保した上で、医療事故を極力防止し、より良い医療がこれからも受けられる世の中であってほしいと願います。

    さて、「白い巨塔」も5分の3を読み終えました。
    ただ、正直今のところは胸糞展開ばかりで、読んでいてあまり面白いと感じておりません(笑)
    残り2巻、"名作"である所以をしっかりと僕に魅せて頂きたいですね!!(何様)


    【あらすじ】
    財前が手術をした噴門癌の患者は、財前が外遊中に死亡。
    死因に疑問を抱き、手術後に一度も患者を診察しなかった財前の不誠実な態度に怒った遺族は、裁判に訴える。
    そして、術前・術後に親身になって症状や死因の究明にあたってくれた第一内科助教授の里見に原告側証人になってくれるよう依頼する。
    里見は、それを受けることで学内の立場が危うくなることも省みず、証人台に立つ。


    【メモ】
    p329
    「何を根拠にしてとか、ぶこく罪とか、そんなことは知りません。けれど、財前という先生の無責任な診察で夫が思いもかけぬ死に方をしたことは事実だす。この間から大学のえらい先生たちが鑑定に出て、素人にはわからんような難しい医学のやりとりばかりをしてはりますが、なんでそんな難しいことばかりを言わんならんのです?財前という先生が、患者をちゃんと親切に間違いなく診察したからどうか、それだけを裁けばええのだす。なんでそれを裁かんのです!証拠や根拠ばかりを言うて、こんな裁き方は間違うてます!」

    「うちの人を返して、生き返らせて。子供の父親を返して!」
    振り絞るような声で叫び、財前の胸に掴み掛かった。


    p374
    「里見君、君の友情のない証言で対質にまで持ち込まれ、一時は苦境にたたされたが、これでやっと僕に誤診の事実がなかったことが明らかになったよ」
    勝ち誇るように言うと、
    「財前君、こういう勝ち方をして、法律的責任は逃れられても、医者としての良心、倫理に問うてみて、君は恥ずかしいとは思わないのか」
    里見は財前を憐れむように言った。
    「じゃあ、どういう勝ち方をしろというのかね」、ぎらりと精悍な眼を光らせ、開き直るように言った。
    「君は医者である自分に対して、もっと厳しくあるべきだ。医療は人間の祈りだとさえ言われている。神を畏れ、神に祈るような敬虔な心で、患者の命を尊重する心がなくては、医療に携わることは許されないはずだ」
    里見は静かな揺るがぬ声で言った。


    p376
    一体、何をしたというのだろうか?
    初診した患者の死の経緯について正しい証言をした者が大学を追われ、事実患者の診療に誤りを犯した者が、大学の名誉と権威を守るという美名のもと、大学のあらゆる力を結集してその誤審を否定し、法律的責任を逃れて大学に留まる。
    何という不条理であろうか。

    しかし、これが現代の白い巨塔なんだ。
    外見は学究的で進歩的に見えながら、その厚い強固な壁の内側は、封建的な人間関係と特殊な組織によって築かれ、里見一人がどう真実を訴えようとも、微動だにしない非情な世界が生きている。

    0
    2021年01月30日
  • 不毛地帯 第五巻

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    壱岐正。
    彼の様に時には不器用ながらも実直に生きる現代人がどれほどにいるだろう。
    自らが仕事や人生をこれ程に真剣に生きているのかと自問する。
    命を燃やして何かに没頭する様な人生にしたい。

    0
    2020年12月05日
  • 不毛地帯 第三巻

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    家族や身体を壊してまでプライドのために商社マンとして働くことに一体どれほどの意味があるのか?幸せに過ごしてごとの人生ではないのだろうか。後悔のない人生であればそれはそれで良いのかもしれないが。

    0
    2020年11月10日
  • 運命の人(四)

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    ネタバレ

    宝島を読んでもう少し沖縄の事を知りたいと思い、以前途中で挫折したこの小説を再読。
    でも奥さんがあまりにもかわいそうなのと、主人公と不倫相手に対してイライラしてしまったのとで、今回も読むのが辛かった。
    クリーンハンド:人を責めるものは自分の手がきれいでなければならない。まさにこの言葉通り。
    国の行った事は責められるべき事だとは思うけど、結局それを暴く側の人間がクリーンでないと、何を言っても響かなくなってしまう。残念な話。
    4巻で主人公が沖縄に実際に行って、沖縄の現状を描いているけれど、4巻の内容をもう少し詳しく描いて欲しかったな。

    0
    2020年10月03日
  • ムッシュ・クラタ

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    大好きな山崎豊子さんの中、短編集です。
    大阪の商人の生活や男女の艶かしい話を書くのが上手。社会派な小説家のイメージが強いけど、長編の有名な作品たちだけでなく、短編や中編も違った路線で面白いので読んでみてほしい。

    0
    2020年04月10日
  • 花のれん

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    最近、豊子先生が読みたくて。
    同じ女としてこんだけ仕事に力入れてみたい気持ちも分からなくもないが、何か寂しさが付き纏う。
    この時代にこんだけの商いの才があるのはすごいことだけどさ。

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    2020年02月26日
  • 華麗なる一族(中)

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    この作家は万俵大介のように冷徹な人だな。話は面白いのだけど、好きになれそうな人物が出て来ない。鉄平や三雲は比較的好人物に描かれているけど、山崎節に感化されると何だか青臭いように見えてしまうから不思議だ。

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    2020年02月20日
  • 暖簾

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    ★3.5でしょうか、再読。
    粗っぽいですが、これが処女作と言われれば驚くほかなし。その後の多分国民作家の一人と言ってよいでしょう、これ位でないとそのレベルに達しないということでしょう。
    それにしてもこの大阪偏愛はこの地域に隣接した場所にかつて住んでいた人間からすると、率直に言って哀しすぎる。
    かつてどうだったのか正直良く分かりませんが、現在は田舎なんですよね、大阪は。それが価値を貶めるものではござらんが、田舎であることには変わらんのであしからず。

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    2020年02月01日
  • 女の勲章(下)

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    少し中途半端な終わり方で消化不良気味。
    男に翻弄され続けてきた式子がかわいそうだ。
    銀四郎、白石教授の二人のキャラクターが憎らしくて仕方なかった。
    こう思ってしまうことが、山崎豊子の術中にハマっているのかもしれない。

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    2020年01月26日
  • 二つの祖国(四)

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    ぅおー、感想消えた...。
    簡潔に書き直し。
    終わり方、怖っ!
    自殺って...。
    戦争なんて悲惨なことの後で、また扱っていることの重さの後で、なかなかハッピーな終わりはできないとは思うけれども。
    読後、怖いのは少し辛いゎー。
    エスプリ以上に、主人公の神経質・繊細っぷりが全面に出てきちゃった感じはありました。

    この本で私か一番良かったと思ったのは、その着眼点かな。ただ戦争物を扱うというのではなく、視点が[二世]だったのは、あまり考えたことがなかったから、なんかいい刺激だった。

    でも、戦争の裁判記録は、別にそれ自体はあまり小説じゃないし、読んで面白い物でもないし、読むのちょっとしんどかったゎー。

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    2020年01月15日
  • 大地の子(三)

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    政治に翻弄される製鉄所建設。技術者としてはたまらんな
    そして妹とようやく再会できる一心
    しかし、日本の国としての戦後処理は酷い

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    2020年01月12日
  • 運命の人(一)

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    山崎豊子さんならではの、どこまでが事実でどこまでがフィクションなのか分からなくなる。

    しかし女はやはり弱いのか。

    いやそんなことはない。彼の妻は強かった、立派だった。
    郵政省疑惑で冤罪となった女性も本当に立派だった。


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    2020年01月11日
  • 花のれん

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    1909年、船場の呉服屋に嫁いだ多加は、家業に無関心の頼りない夫に振り回される。
    義父が亡くなった後はたがが外れたように遊び歩くようになり、苦労する。
    夫は芸事が好きで、多加はそれを仕事にしてはどうかと勧め、思いきって呉服屋を畳み、寄席を始める。
    最初はやる気になっていたが、本来のだらしなさが復活し、また働かなくなる始末。
    その後、夫は思いがけないことで死亡し、多加を最後まで苦しめる。
    しかし、一人息子を抱える多加は大阪商人として、更に人生を費やして行く。
    周りに何を言われようが、商売のためなら何でもやった。
    昔から、やはり女性は強い。
    だけど、その苦労は生半可なものでなく、時には挫けそうになる多加の気持ちを思うと泣けてくる場面も。

    2019.12.30

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    2019年12月31日
  • 大地の子(二)

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    ようやく収容所から解放される主人公。製鉄所建設チームに加わり、本来の力を発揮していくが、日本との関わりが彼を新しい運命に導いていく。まさに起承転結の「承」と云える。第3巻でまた大きく運命が翻弄されそう

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    2019年12月29日
  • 華麗なる一族(中)

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    最後ページが残り少ないのに、鉄平に課せられる試練がえぐすぎる。最後にこの追い込みか!と思った。
    相子さんの宰相ぶりが際立っていた。策略家め、こんな人は嫌いだ。
    零子の影が薄い。何もできないまま終わるのだろうか?次巻が楽しみ。

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    2019年06月04日
  • 花のれん

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    山崎豊子

    お笑い界の超モンスターマネジメント会社である吉本興業の創業者がモデルになってます。同じく吉本興業の創業者がモデルになった朝ドラ「わろてんか」の原作、、、にはなってないのかな?

    でもまぁ、同じような歴史をたどってますので主人公の多加の喋りは全て葵わかなが頭に浮かびます(笑
    何も知らない船場のこいさんが頼んない旦那に嫁いだためにすんげぇやり手になって寄席を大きくしていったってお話。
    春団治やエンタツ・アチャコが実名で登場してる、、、
    こんな船場言葉いまどき誰も喋らないけど、やっぱり大阪人にとっては心地いい(って字面眺めてるだけやけど)

    とこれは多加のお話で実際の吉本の創業者は船場のこいさんではなく、船場に嫁いできたってことかな?旦那さんも働き者やったし、、ここら辺は史実とは違う。

    山崎豊子自身が船場のこいさんだったので初期のお話は大阪が舞台になってるのが多いですよね。

    やわらかい船場言葉でどぎつい商売をするってところがきっとポイントなんでしょう。

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    2019年06月04日
  • 二つの祖国(三)

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    ついに始まった東京裁判。
    言語モニターとして、裁判に参加する賢治。
    父の見舞いでアメリカに一時戻った賢治は、リトルトウキョーの裏庭に埋めた日本刀を掘り返したことで、日本人としての血が騒ぎ出す。

    東京裁判をまとめた巻、読む進めるのに苦労しました。
    賢治と梛子のシーンが出てくるとホッとします。(笑)
    梛子とエミーを比べたら、やっぱり梛子よね、と思いますが、エミーはホントに性格的に損をしてるなと…。
    彼女に起こった不幸も本人が招いたことでもあり、結果賢治との仲も上手くいかなくなるなんて。
    エミーの出方次第で修復するチャンスはあったはずなのにと思います。

    いよいよ最終巻。
    ドラマで結末は知ってはいるものの、やはり先が気になります。
    このまま次巻に進みます。

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    2019年04月14日
  • 暖簾

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    身近な地名が溢れ、それぞれの場所の昔の姿を想像しながら読めました。池田勇人の放言は実話?所得倍増計画の裏には、こういう思想もあったのだろうなぁと。

    途中からどんどん引き込まれましたが、終わり方が個人的にはイマイチ・・・えっ?終わり!?とびっくりしました。

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    2019年03月05日
  • 沈まぬ太陽(四) -会長室篇・上-

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    2018/11/6-11/18
    この話って本当にあったの?!って読みながら何回も思う。早くJALについて詳しく調べたい衝動に駆られているが、全て読んでからにしようかと。
    今のようにコンプライアンスもなければ、アナログでの処理が当たり前の世界では抜け道だらけだったんだろうなと思う。関係会社にもいるけど、上の人しか見ない体質、気持ちが悪い。彼らの仕事に対する意欲などは本当にあるのかと聞いてみたくなる。単なる自己満足、ステータスが上がればいいのかなぁ??
    訳の分からないスジだったり、交友関係など、本当に邪魔なだけ。今思えば、今の働き方ってだいぶ良くなったってことなんだよね。今も意味分からないことは多いけど、この時代に比べればマシ。

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    2018年11月19日
  • 華麗なる一族(中)

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    ネタバレ

    自分の銀行のためなら、長男の会社でさえ見放す冷徹な銀行家、万俵大介の態度は、そら恐ろしい。
    仕事に対する暑い想いを通そうとする長男の鉄平を心のなかで応援しつつ、ハラハラしながら読み終えた。

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    2018年11月18日