山崎豊子のレビュー一覧
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山崎豊子さんの短編集。
短編は、はじめて読んだけど、やっぱこの人の作品は、短編じゃないほうがいい。長編のほうが彼女ならではの取材力や力作感があって、読み応えがある。
◆船場狂い
船場育ちに憧れ、船場にこだわり、娘をつかってでも船場住まいを手に入れた久女の話。船場の地図があって、地形がわかりやすかった。
◆死亡記事
豊子さん自身の私小説だとか。新聞社の学芸部員として勤めた「私」が、死亡記事を通して、空襲でも冷静に正義を徹した大畑氏を偲ぶ話。
◆しぶちん
大阪では、ケチン坊のことをしぶちんと言うが、ケチを蔑みながらもどこか評価するような、笑いにかえるような、開放的な言い方らしい。
そんなしぶち -
Posted by ブクログ
1959年に発表された作品なので、もう50年以上前のものになるから驚き。「暖簾」「花のれん」に継ぐ、大阪ものの第三作。前二作はまだ未読だが(たぶん…)、船場や花街のしきたりについて精緻に描かれている。
そもそも船場とは、今の大阪市中央区あたりにある、四方を川と堀で囲まれた四角い町で、江戸時代に大阪城の築城にあたって、大勢の家臣や武家が移り住むことになったことから、武器・武具をはじめ大量の生活必需品を集めるべく、商業者を半強制的に移住させたのが、商人街として栄えた船場の発端らしい。
物語は、そんな船場の老舗足袋問屋の一人息子として産まれ、暖簾をささえる喜久治を主人公とし、彼を取り巻く五人の女たち -
Posted by ブクログ
本巻は一貫して裁判の経過を追ったもの。本作品前半では脂の乗り切ったビジネスパーソンとして描かれていた弓成だが、本作品では向かい風吹き荒れる中に佇んでいるようである。外務省における取材協力者であった元事務官の三木が完全に反旗を翻してきている点が最も痛いだろう。そのため、地裁にて無罪を勝ち取ったものの、三木の手記が週刊誌に報道されるや世論はアンチ弓成に…。そして高裁では懲役四ヶ月。最高裁は棄却…。
今年の冬に放映されたTBSドラマで、最高裁の口頭弁論が開かれず文書だけで棄却の通知が来ていたのを素人としては不思議に思ったが、本書を読み、原判決を破棄する場合のみ弁論の通知が来るという傾向があるというの -
Posted by ブクログ
ネタバレ逮捕,起訴,証人尋問と裁判がクローズアップ。『白い巨塔』もそうだったけど山崎豊子の小説って法廷シーンがよくあるな。『不毛地帯』でも東京裁判の場面があったっけ。
ドラマとの違い。
・由里子の兄が登場。大手電気メーカーの技術者。
・ぎばちゃんがやってた大野木弁護士は,奥さんも弁護士で同期。由里子が離婚訴訟する場合に「私が不適格なら家内に担当させましょう」と言ってる。
・弓成が取り調べで受けた屈辱,ドラマより生々しい。現場検証(引き当り)で腰縄をつけられたまま,密会をしたホテルの部屋で,機密文書の受け渡しの様子を細かく言わされる場面。「機密文書を見せてほしいと哀願したのは、あの布団の中で