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“しぶちん”とは大阪弁でケチン坊のことだが、ケチが陰にこもらない開放的な言い方である。19歳で伊勢の沢庵売りから大阪の材木問屋に奉公して財をなした山田万治郎は、“しぶまん”と呼ばれながらも、昭和初年に、商工会議所の議員に推薦される。大阪商人の金銭への執念を捉えた表題作の他、大阪富商の町、船場に憧れと執念をもやした女の一生を描く『船場狂い』など、全5編を収録する。
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Posted by ブクログ
長編が注目される山崎豊子作品。でも短編は、そのあまりの短さに(長編が本当に長い反動もあって)一気に読める。 船場のごりょんさんを目指す女の生き方、婚約に大金が動くわけ、倹約とは、商売とは何か。人生の生き方の一例がちりばめられた一冊。
長編作家、山崎豊子氏による短編集。長編はずっしりと重いテーマの作品が多いが、短編はどんな小説になるか、興味深かった。収録されている5編はどれも昭和33年ごろに書かれ、文藝春秋などに掲載されたもの。 短編はすべて大阪が舞台となっている。関西出身でないと書けないであろうという、かなりディープな大阪弁で語...続きを読むられている。『船場狂い』では、船場という戦前栄えた商家が並ぶ地域の慣わしなど、面白かった。また、『遺留品』には、二十年後に彼女が手掛けることになる大作『沈まぬ太陽』を予想させる箇所があり、驚いた。読後、ほのぼのと感じる人もいるだろうが、私は強烈に胸が痛んだ。 どの作品も、読み始めると先が気になって本を置けなくなる。
5作の短編集。5作とも全く異なる時代やテーマが描かれていました。 個人的には遺留品が1番のお気に入りです。
山崎豊子さんの短編集。 短編は、はじめて読んだけど、やっぱこの人の作品は、短編じゃないほうがいい。長編のほうが彼女ならではの取材力や力作感があって、読み応えがある。 ◆船場狂い 船場育ちに憧れ、船場にこだわり、娘をつかってでも船場住まいを手に入れた久女の話。船場の地図があって、地形がわかりやすかった...続きを読む。 ◆死亡記事 豊子さん自身の私小説だとか。新聞社の学芸部員として勤めた「私」が、死亡記事を通して、空襲でも冷静に正義を徹した大畑氏を偲ぶ話。 ◆しぶちん 大阪では、ケチン坊のことをしぶちんと言うが、ケチを蔑みながらもどこか評価するような、笑いにかえるような、開放的な言い方らしい。 そんなしぶちんで財を築く山田万治郎の話。 ◆持参金 紡績商の四男・民四郎が、家付き持参金付きで、船場の富豪の怪しい次女を嫁にもらうが、実は痘痕だらけで、ドウランでそれを隠していたという話。豊子さん自身は、「殺人のないスリラー」な小説と位置づけている。 ◆遺留品 阪和紡績社長の樺山正資が、永年連れ添ってきた子のない妻のために、猫のプレゼントを企んだが、出張先からの帰りに飛行機事故で死んでしまう。遺留品から、ドライミルクの缶が見つかり、実は妾がいたんじゃないかと醜聞が出回る。新卒からずっと秘書として仕えてきた瑛子は、尊敬していた社長の疑いをはらすべく密かに調べていたが、最後に子猫のためのドライミルクだったことがわかる。 私は、この短編集の中では、この「遺留品」が一番好きな作品で、最後のほうの一文がすごい印象的だった。 「一人の人間の評価は、たまたま起こった一つの事柄や事件によって、そうたやすく塗りかえられるものではない」。 おそらく日航機墜落事件がモチーフになっているから、「沈まぬ太陽」の布石になっていたのかもしれない。
短編集.船場の商家をめぐる「船場狂い」と「しぶちん」が面白い.谷崎潤一郎の「細雪」が江戸人から見た船場なら,これらの話はその内側からの視線になる.そこに東京と大阪の気質の違いも際立って感じられる.
【キーアイデア】 臨場感 【目的】 社会派の巨匠が描く短編をどのような構成で作り出しているのかを知りたかったため。 【引用】 ・民四郎は咽喉の奥から奇妙な乾いた声を出した。 一千万円の招待は痘痕を埋める肉色ドーランの豆粒であった。 【感じたこと】 ・初めに何を書くのかあらすじが決まっており、そ...続きを読むれに肉付けしている感じが判る。というよりもまずラストをどうするかを決めているようだ。 ・文章が上手い。人物描写が巧みで躍動感がある。 【学んだこと】 ・構成をしっかり捉えること。 ・書いてみること。
山崎豊子の短編集。どれも主人公がケチ(→しぶちん)な話。 といっても、ただケチなだけではなくて、夢や希望をかなえるために徹底的にしぶちんになっている、むしろ根性の物語集。 特に、「船場狂い」と「しぶちん」は秀逸で、本書の面白さはこの二編に凝縮されていると言っても過言ではない。 このほか、「死...続きを読む亡記事」と「遺留品」には著者ならではの女心の繊細な描写が見られ、また違った楽しみを読者に与えてくれる。 それにしてもこれだけ昔の作品でありながら、文体や表記が現代に生きる我々にもまったく違和感なく、読める文に仕上げらている点には驚く。
「しぶちん」とは大阪弁でケチン坊のこと。19歳で伊勢の沢庵売りから大阪の材木問屋に奉公して十数年、お金を貯めに貯めて財をなした山田万治郎は、「しぶまん」と囁かれながらも、ついには商工会議所の議員に推薦される。大阪商人の金銭への執念は、哲学と呼べるほど深い。 表題作の他 4編 『白い巨塔』『大地の...続きを読む子』『沈まぬ太陽』など、社会派小説にて知られる筆者の、初めての短編集。
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