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Posted by ブクログ
長編作家、山崎豊子氏による短編集。長編はずっしりと重いテーマの作品が多いが、短編はどんな小説になるか、興味深かった。収録されている5編はどれも昭和33年ごろに書かれ、文藝春秋などに掲載されたもの。
短編はすべて大阪が舞台となっている。関西出身でないと書けないであろうという、かなりディープな大阪弁で語られている。『船場狂い』では、船場という戦前栄えた商家が並ぶ地域の慣わしなど、面白かった。また、『遺留品』には、二十年後に彼女が手掛けることになる大作『沈まぬ太陽』を予想させる箇所があり、驚いた。読後、ほのぼのと感じる人もいるだろうが、私は強烈に胸が痛んだ。
どの作品も、読み始めると先が気になって本を置けなくなる。
Posted by ブクログ
山崎豊子さんの短編集。
短編は、はじめて読んだけど、やっぱこの人の作品は、短編じゃないほうがいい。長編のほうが彼女ならではの取材力や力作感があって、読み応えがある。
◆船場狂い
船場育ちに憧れ、船場にこだわり、娘をつかってでも船場住まいを手に入れた久女の話。船場の地図があって、地形がわかりやすかった。
◆死亡記事
豊子さん自身の私小説だとか。新聞社の学芸部員として勤めた「私」が、死亡記事を通して、空襲でも冷静に正義を徹した大畑氏を偲ぶ話。
◆しぶちん
大阪では、ケチン坊のことをしぶちんと言うが、ケチを蔑みながらもどこか評価するような、笑いにかえるような、開放的な言い方らしい。
そんなしぶちんで財を築く山田万治郎の話。
◆持参金
紡績商の四男・民四郎が、家付き持参金付きで、船場の富豪の怪しい次女を嫁にもらうが、実は痘痕だらけで、ドウランでそれを隠していたという話。豊子さん自身は、「殺人のないスリラー」な小説と位置づけている。
◆遺留品
阪和紡績社長の樺山正資が、永年連れ添ってきた子のない妻のために、猫のプレゼントを企んだが、出張先からの帰りに飛行機事故で死んでしまう。遺留品から、ドライミルクの缶が見つかり、実は妾がいたんじゃないかと醜聞が出回る。新卒からずっと秘書として仕えてきた瑛子は、尊敬していた社長の疑いをはらすべく密かに調べていたが、最後に子猫のためのドライミルクだったことがわかる。
私は、この短編集の中では、この「遺留品」が一番好きな作品で、最後のほうの一文がすごい印象的だった。
「一人の人間の評価は、たまたま起こった一つの事柄や事件によって、そうたやすく塗りかえられるものではない」。
おそらく日航機墜落事件がモチーフになっているから、「沈まぬ太陽」の布石になっていたのかもしれない。
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