山崎豊子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
大学病院の教授選をめぐり、賄賂や駆け引きが当たり前の世界、利害関係に結ばれた濁った人間関係が描かれる。登場人物は、頭のキレる人たちばかり。読んでいるだけで、心の弱さや狡さを見透かされているような居心地の悪さを感じるほど。
物語に出てくる人たちは優秀な医師ばかりで、もちろん信念や良心を持っている。それでも、名誉や地位を前にすると、人間が持つ良心は心許ない。権力は人を狂わせてしまう怪物のよう。
名誉欲に溺れる財前、学問と真実に向き合う里見、この2人が見事に対比する。封建的な人間関係が渦巻く白い巨塔の中で、純粋で正直な生き方を貫くのは難しく、だからこそ美しい。 -
Posted by ブクログ
久しぶりに読み返していますが、何度読んでも主人公の「強さ」と「人間としての弱さ」、そして「圧倒的な社会・現実の残酷さ」を感じさせる小説で、色あせることのない魅力を感じます。
シベリアでの過酷な抑留生活は、決して忘れてはならない戦争の被害の一つだと思いますし、「旧軍人(大本営の参謀という中枢にいた人間であるからこそ)としての戦後の苦労」も、ただの「自業自得」とは言い切れないあたりに、著者の戦争へのまなざしがあるように思います。
確かに、戦争を主導した軍部にいた壹岐に責任が全くないわけではないでしょうが、彼一人がその責を負わなければならないわけではありませんし、かつての軍歴を活かして防衛庁に就職 -
Posted by ブクログ
戦後の沖縄密約を通して国家権力とジャーナリズムの戦いを描く全4巻中の第2巻。
本巻は、記者逮捕から公判までを描く。冒頭にもある通り、事実を取材し小説的に構築したものなので、裁判の展開などは専門用語も多くやや難解。だが、臨場感に溢れ、証人などの表情がありありと伺うことができる。
沖縄返還というと、歴史の教科書では割と美化されているように感じるが、裏でこのような密約があったことは伏せられている。本書を読むと、すっきりせず、結局何のための返還だったのかなと思ってしまう。日米両政府の体裁のためか?とも思えてしまう。政府のいいように利用されたのではないかとさえ、思えてしまう。それだけに歴史を知る上 -
Posted by ブクログ
平成21年、第63回毎日出版文化賞特別賞を受賞した巨編小説。文庫では全4巻。
戦後の沖縄返還を巡る密約の内実について描かれている。
ジャーナリストにとって、如何にしてスクープをモノにできるかは人生を左右する大きなことである。しかし、そのスクープがあまりに大きすぎる場合は、どう公にするのかの判断が問われる。公開すると基本である情報源の秘匿が守り通せない。しかし、公開しないと国民に真実を知らしめることができない。
そしてそれがどのような形であれ公開されてしまうと、一気に歯車が動き出す。今回はそれが政府にとって不都合なものであった。その情報源について政府は記者の逮捕に踏み切り、全力で潰しにか