山崎豊子のレビュー一覧
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矢島嘉蔵の遺言書が発表された後で妾が妊娠していることがわかる。
三人娘はそれぞれが自分の取り分を多くしたいと考え、大番頭も私服を肥やそうとする。
登場人物それぞれが、それぞれの欲を持つ。
果たして矢島家の遺産相続はどうなるのか。
老舗の後継者であれば、一般的には大きな顔で暮らしていけるものを、女系家族であるために妻や娘よりも低い立場に甘んじていなければならない男。
後継者であっても自分の裁量で行えることは殆どなく、長く勤めてきた大番頭にも軽く扱われる。
だから愛人を作っても良いとは言わないが、心安らぐ場が欲しかっただろうことは想像出来る。
遺産の相続分を多くしたいがために特に長女藤代は手段 -
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久しぶりに山崎豊子さん。
社会派で重厚な作品の多い山崎さんだが、この作品はちょっと違う角度かもしれない。
大阪の老舗矢島家は、代々跡継ぎに婿養子を迎える女系家族。
その四代目である嘉蔵が亡くなり、莫大な遺産を巡る三人の美しい娘たちと大番頭、嘉蔵の妾、娘たちを取り巻く人々の愛憎劇。
簡単に書くとこんな感じで、遺産を巡る諍いが繰り広げられる。
美しい娘や大阪の富裕な家庭という一見「細雪」みたいな華やかで美しい物語の設定ではあるけれど、繰り広げられるのは遺産を巡る争いなので、華やかではあるが美しくはない。生々しくいやらしい。
また、莫大な遺産を巡る争いではあるが、「犬神家の一族」のような血で血を -
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長編作家、山崎豊子氏による短編集。長編はずっしりと重いテーマの作品が多いが、短編はどんな小説になるか、興味深かった。収録されている5編はどれも昭和33年ごろに書かれ、文藝春秋などに掲載されたもの。
短編はすべて大阪が舞台となっている。関西出身でないと書けないであろうという、かなりディープな大阪弁で語られている。『船場狂い』では、船場という戦前栄えた商家が並ぶ地域の慣わしなど、面白かった。また、『遺留品』には、二十年後に彼女が手掛けることになる大作『沈まぬ太陽』を予想させる箇所があり、驚いた。読後、ほのぼのと感じる人もいるだろうが、私は強烈に胸が痛んだ。
どの作品も、読み始めると先が気になって本 -
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あらららー。
鉄平やばいねー。窮地に陥ったねぇー。
でも、何か自業自得な気もしないでもないけど。。。
どこの銀行からどれだけ融資してもらうかも分からないのに、高炉建設始めちゃったり、大口の取り引きがキャンセルになるようなマズイ事態をも考慮せず、あまりの情熱に突っ走り、資金調達も出来ず、銀行が建設一時中止した方が良いと言っても聞かず、突貫工事に踏み切っちゃう。
ちょーっと勝手すぎな感じがするのは私だけ?
こーんなどん底にはまりこんでしまって、下巻では巻き返せるのかなぁ。
私としては、阪神銀行が他の銀行に乗っ取られ大介が落ちぶれ、鉄平に頑張ってもらいたい。
二子にも幸せになってもらいたいし、 -
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流郷の書斎とロシアのバイオリニスト招致の仕事ぶり、あとがきが印象に残った。音楽に情熱を傾けて、組織力を存分に活かす努力で仕事を成功させる。菊村姉弟が静かに流郷や斉子を尊敬してる思いが美しい。流郷が斉子と菊村姉のふたりを可哀想に思う気持ちがリアル。カップルができるわけでもなく誰の仕事もハッピーエンドでない不思議な物語。比較的リベラルと思った作者が労音や共産党、赤旗にこんな違和感を持っていた。党員たちのアジりっぷりが、短絡思考が、適切に描写されていると思う。自分で一生懸命党の意向を解釈しようとして党に従う愚かしさ。もう一人くらい政党色に辟易するごく普通の職員もしくは会員がいたらさらに感情移入出来た
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あくまでも三木昭子を庇い続ける弓成に対し、自分の汚名挽回か弓形への復讐で弓形を貶め続ける三木昭子の行動、それに乗じる政府の画策で追い詰められていく弓形。せめて嫁には真実を語り詫びるのが筋と思うが…そこにどんな矜持があるのか。
作者の描く主人公はやり手でありながら、一貫して筋を通す潔癖な傾向があり、作者の理想の男性像なんだろうなと考える。
文面については、裁判の場面であるが故、表現がとてもまどろっこしい。
最高裁での上告棄却はどのような経緯だったのか、おそらく政府の画策があったはずだか多く語られず…、4巻で出てくるのかな。もしそうなら三権分立のげんそくが覆る大事件なのだけど。4巻を引き続き読みま