浅田次郎のレビュー一覧

  • 歩兵の本領

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    1970年代ですから、随分世情も違います。自衛隊もそうでしょう。ここで描かれた旧帝国陸軍的世界が今も残っているとは思えません。
    旧帝国陸軍と書きましたが、決して悪い意味で書いたのではありません。確かに暴力的です。理由の無い制裁も多くあります。しかし、どこかカラリとして陰湿さはありません。世間の常識からみれば、そこは異常な世界でしょう。しかし、別の論理で動いているというだけで、一旦中に入り込んでしまえば、それはそれなりに居心地の良い世界なのでしょう。私は耐えられそうにもありませんが(笑)。
    作者自身の経験を元に書かれた作品ですが、余りくどくない笑いと人情が随所に組み込まれた佳品と思います。

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    2017年11月08日
  • 活動寫眞の女

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    私は浅田次郎のことを"泣かせの作家"と言っていました。でも最近、特にこの作品を読んで、少し変わって来ました。
    浅田次郎は色々な顔を持っています。「壬生義士伝」の泣かせ、「きんぴか」の哄笑、その他にも有りそうです。しかしどれについても言えそうなのは"濃い"という事です。
    この作品でもそうです。特に終章の僕と早苗先輩の別れのシーン。これでもかとと攻めてきます。どうやったら読者を感動させられるか?それだけを考えて、渾身の力を込めて文章にして行く。そんな感じがします。
    どの作家でもそういう思いは有るのでしょう。しかし、例えば藤沢周平などは、そうした思いが文

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    2017年11月08日
  • 王妃の館 上

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    裏表紙のあらすじを見て、やったー。
    これはプリズン・ホテル、キンピカに続く浅田次郎お得意の爆笑物だあって。
    でも、少し期待はずれ。面白いことは充分に面白いのだけど、ハチャメチャ度合いがちょっと少ない。浅田さんのこの手の作品は、徹底的にカリカチュアされた主人公達のドタバタが魅力なのだけど、カリカチュア度もドタバタ度も、キンピカなどに比べるとちょっと不足。
    王妃の館のエピソードとしてルイ14世の物語が随所に挿入されるのだが、それが悪影響を及ぼしているようだ。
    とはいえ、涙有り、笑い有りの、なかなか良い作品でした。

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    2017年11月08日
  • 憑神

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    最初から怒涛の展開でありながらも、
    人情交えて江戸後期の江戸の様子を見させてくれる話。
    貧乏神・疫病神・死神がなんとも良いんだな。
    人物の書き分けも素晴らしいんだな。
    でも、彦四郎の最後って
    “ラスト・サムライ”なんだよなーと考えながらも、
    武士って本当は悲しいもので、
    武士でない自分にゃわからない生き方だよなーと、
    ヘンに納得してしまいました。

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    2017年11月07日
  • ブラック オア ホワイト(新潮文庫)

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    ちょっと欲しいぞ、白いヤツ。

    でも白だけ連続させても・・・。むむ。

    しかしながら、毎朝起床時には枕から頭が落下しているワタクシでは効き目は薄そうだな。

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    2017年11月06日
  • 月のしずく

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    ネタバレ

    一筋縄でいかない恋愛短編集。
    月のしずく:不器用な仕事人の主人公が報われる話は、読んでてうれしいし、この作者に書かせると上手い。
    聖夜の肖像:チャコさんはしあわせな女だと思うし、周りの人が素晴らしい。
    銀色の雨:恋した女性を追ったばかりに、別の世界に踏み込みかけたカタギの少年の話。
    瑠璃想:中国に故郷を持ち、過去に家族をそこに置いてきた社長の話。
    花や今宵:出てくる男女が意地っ張り。最後数行のスピード感が笑える。
    ふくちゃんのジャックナイフ:最後の映画のワンシーンのような描写のために、書かれたような話。
    ピエタ:大人の女とその母の話。「聖夜の肖像」「瑠璃想」とこの話は過去と折り合いをつける話。

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    2017年11月04日
  • 天切り松 闇がたり 第三巻 初湯千両

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    シリーズ3巻目ですね。ひょっとしたら一番の出来かな。
    もはや語ることが無いですね。
    大正ロマン、ピカレスクロマン、男伊達、気風、義理人情、そんな言葉に惹かれる人は是非どうぞ。

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    2017年10月30日
  • 見知らぬ妻へ

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    何度か浅田次郎だったよなと思い起こしながら読みました。何となく、重松さんを思い起こさせる作品が多かったので。
    どちらかといえば「泣かせ」に組する作品群ですが、その中では淡々と描かれている方でしょう。あまり"これでもか!"という書き込みは有りません。そこらが重松さんに似てると思ったところかもしれません。
    前々からタイトルは見ていたものの、何故か手が出なかった作品でしたが、予想以上の出来でした。

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    2017年10月30日
  • 輪違屋糸里(下)

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    輪違屋糸里の下巻。
    待ったなしで芹沢鴨の暗殺があって、なんか幕末ってやっぱり暗いな~と思ってしまった。
    百姓や町民だった新選組の各々が本当の武士である芹沢を殺すのに震えるわけですよ
    時代の流れといえばあれだけど、なんか悲しい。
    あと芹沢鴨めっちゃいい人。(だけどそれをうまく表現できない)
    んで、おと女の人はやっぱ強いなーという印象。
    もう惚れた腫れたを通り越している感じ、愛だの恋だの通り越してる
    次元が違うというか、なんというか。
    糸里は強い!土方成すすべなし!
    そいで極めつけはお殿様への物申す場面とかもそう。
    糸里や吉栄や音羽はもちろんのこと
    おまささん・お勝さん・お梅さん等女性陣は
    世の男

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    2017年09月14日
  • 薔薇盗人

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    浅田次郎好きの会社の先輩に薦められて手にとってみた。

    浅田次郎の短編集は、これまでに『鉄道員』(集英社文庫)と『姫椿』(文春文庫)を読んでいるが、それらに比べてこれは結構毒のきいた大人の話が多い。

    先輩が絶賛していた「あじさい心中」は、独白内容が想像を絶し、「これは悲しすぎてダメかも」と思ったが、それでも立ち上がって生きていける強さが人間にはあるのかな、と感じられるラストで持ち直した。

    「薔薇盗人」はかなりパンチの効いたブラックユーモアに満ちていて、でも端々ではちょっと笑えて、よくこんな構成でこんな話が書けるなーと感動。タイトルも秀逸だと思う。ラストも素敵。

    私が好きなのは「あじさい心

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    2017年09月01日
  • 憑神

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    こんな神に取り憑かれてはたまらない。
    取り憑かれるのがお役目に真面目であろうとする武士なら、取り憑く方も役目を怠けたりはせぬ神であった。
    とはいえ、ゆるさも見えれば情に揺らぎもする。
    両者人間同士だったなら、ひょっとしたらいい飲み友達になったかもしれぬ。

    小文吾がいい。また、いい加減であかんたれな兄様にはちょっと同情。
    宿替えなんて、この立場に立ったらどうする!?

    ほんわりとした温かさが残った。
    決して出逢いたくはないけれど、見てはみたい神々だった。

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    2017年09月22日
  • 輪違屋糸里(上)

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    途中中だるみしそうになったけれど
    読み進みにつれてあぁそうゆうことか~と
    新選組と京都、島原に住んでいる女性達を取り巻く話ではあるけど
    基本的に女性中心の話。
    そんなこんなで芹沢鴨!!
    他の新選組が出てくる小説では、しょーもない酒と暴力
    そして暗殺された負のイメージしかないけど
    この小説は全然違うのね。
    とにかくやはり女性目線なので色っぽい描写が多いなと思う
    あとなんか奥ゆかしい恋模様とか。
    身分違えど男も女もいろいろあります。
    そうゆう時代だったと言ってしまえばそれまでだけど
    you言っちゃいなよ!告っちまえよ!ってゆうのではなく
    胸の中に秘めた恋というかなんというか
    芹沢鴨もまぁ裏を返せば

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    2017年08月18日
  • かわいい自分には旅をさせよ

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    『つばさよつばさ』に続けて著者のエッセイを読む。タイトルから旅に関するものだけかと思ったが、各紙誌に掲載されたエッセイの集積。興味深いのはアサヒ芸能に掲載された「○○の不在」シリーズだ。男に関する考え方に素直に肯けないが、年齢の8掛け論はなかなか面白い。

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    2017年08月14日
  • 月のしずく

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    ネタバレ

    酒好きの中年おっさん向け良質短篇集。
    どの話を気に入るか、人によって好みが分かれそうですね。
    個人的には「瑠璃想」がお気に入り。

    ★4
    月のしずく、聖夜の肖像、銀色の雨、瑠璃想

    ★3
    花や今宵、ふくちゃんのジャック・ナイフ、ピエタ

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    2017年09月01日
  • 一刀斎夢録 下

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    「壬生義士伝」、「輪違屋糸里」に続く新撰組三部作の完結編
    新選組三番隊長、斎藤一こと一刀斎による独白で、幕末維新から西南戦争までの歴史が物語られます。

    そしていよいよ下巻です。
    下巻では会津戦争、鉄之助との別れ、そして西南戦争が語られていきます。
    新撰組のメンバはどんどん死んで散り散りに..

    斎藤一も死に場所を求めて、戦闘に赴き、結果死にきれず生きながらえ、結局警察官として生きることとなります。
    そして、西南戦争で薩摩兵を追い詰めるために出動。そこで出会ったが、敵方として自分自身の剣と瓜二つの鉄之助。どうなる、どうなるのクライマックスです!

    二人相対して、鉄之助に自分を斬らせようと思い図

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    2017年07月30日
  • 一刀斎夢録 上

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    「壬生義士伝」、「輪違屋糸里」に続く新撰組三部作の完結編。
    新選組三番隊長、斎藤一こと一刀斎による独白で、幕末維新から西南戦争までの歴史が語られます。
    (一刀斎は斎藤一の逆読み)

    しかし、以外におしゃべりですね。斎藤一(笑)
    人斬りとして、多くの人の命を奪うその人間観は独特で、そのような人が、年老いたとして、ここまで饒舌に語るとはちょっと違和感あります。
    しかし語らないことには物語りになりませんから。
    自身の生き様を語ることで、奥義を授けたかったと読み解きました。

    上巻では坂本竜馬暗殺、市村鉄之助との出会い、自身の生い立ち、などが語られていきます。
    とりわけ、斎藤一の人間観、人生観、剣術に

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    2017年07月30日
  • 天切り松 闇がたり 第五巻 ライムライト

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    天切り松 闇がたり シリーズ第5巻。
    江戸っ子の粋と、伝説の怪盗 目細の安吉一家の男気を、老人が語ります。
    登場人物がそれぞれかっこいい。

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    2017年07月07日
  • 蒼穹の昴(4)

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    全4巻の最終巻で、1898年#戊辰の政変を描きます。春児と文秀は、架空の人物でモデルはそれぞれ溥儀 に仕えた宦官小徳張 と清王朝 末期の政治家梁啓超 となっています。しかし、私は、春児のモデルについて、西太后の寵臣でありながら命をかけて諌め処刑された寇連材ではないかと思いました。高潔な男たちの物語で、浅田次郎の最高傑作という評判は、本当でした!

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    2025年12月21日
  • 蒼穹の昴(3)

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    全4巻の第3巻で、1895年の日清戦争 での敗北による袁世凱 の頭角と、清王朝の体制改革を望む康有為ら変法派の台頭を描きます。第3巻の見せ場は、老将李鴻章がイギリスと香港租借のための交渉に臨む場面でした。斜陽の清王朝 を背負い孤軍奮闘する李鴻章が格好良いです。なお、李鴻章の腹心王逸は、架空の人物だそうです。

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    2025年12月21日
  • 天切り松 闇がたり 第五巻 ライムライト

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    いやー、久々の天切り松 闇がたり・・・
    シリーズ5作目・・・
    6話の短中篇を集めたもので・・・
    シリーズものの定めで新鮮味はないけれども・・・
    安定感のある面白さである・・・
    今作1番は表題作のライムライトより、第五夜の琥珀色の涙・・・
    チャップリンより根岸の棟梁!
    涙そそられる、間違いなし・・・

    大正・昭和の戦前期の帝都東京を舞台に、いわゆる義賊の目細の安吉一家の面々が・・・
    その心意気や侠気、鮮やかな業や立ち振る舞いで、ままならぬ娑婆世界のモヤモヤしたモノをスカッと晴らしてくれる・・・
    台詞回しもキレキレなもんだから、読んでると江戸言葉が使いたくなっちゃう・・・
    単純過ぎだけど、形から真

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    2017年06月27日