浅田次郎のレビュー一覧

  • 中原の虹(4)

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    辛亥革命がおこり、中華民国が建国されるが、統率力のある人物に恵まれず、政局は大混乱。
    その中で宋教仁が現れ、救世主とも仰がれるが、暗殺されてしまう。
    (アメリカ人ジャーナリストのトム・バートンはこの時、宋を助けようとして命を落とす。)
    清朝の復活したかと思えば、袁世凱が皇帝になる。
    本当に目まぐるしい。

    この巻では、いよいよ「東北王」、張作霖が長城を越えることを決意して終わる。
    愛新覚羅の将軍たちが、反対派を殺すしてまで北京入城を果たした建国の物語と重ね合わせながら。

    「浅田史観」では、西太后が中国を中国人のものであらせるために、自ら憎まれ役となって、革命を起こさせ、新しい中国の王が現れるのを期した、となる。
    袁世凱は俗物だけど、清朝を滅ぼすという器に余る天命を懸命に果たしたのだ、と。

    たしかに、自分は安全な所にいながら、当時の人をあれこれ偉そうに評価するべきではないと感じる。
    当時も、(そして今も)人は自分の境遇を、ただ必死で生きているのだから。
    その意味では、浅田さんの見方にも共感する。

    でも、今までいろいろ読んできたものから、自分なりに考えてみて、どうしても西太后を「生き仏」のように慈悲深い人とは思えなくて…。

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    2018年09月25日
  • 中原の虹(3)

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    時は宣統帝即位から、辛亥革命に至る、激動の時期。
    だから、この小説の主人公は、いったい誰なんだろう?と思うほど、たくさんの人物が入り乱れる。

    主人公は一人ではない小説なのだろうけれど、この巻の主人公は袁世凱なのではないか、と思うほど。
    革命軍と清朝遺臣の官僚たち、そして軍閥の三つどもえの状況で、駆け引き、謀略がうずまき、目まぐるしく変わっていく。
    ここに明末清初の戦乱、天命と、それを具現化した龍玉を巡る物語も重ねられていくから、読むほうも大変だ。
    もう一回、丁寧に読み直さないといけないかな。

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    2018年09月23日
  • 中原の虹(2)

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    いよいよ西太后が最期を迎える。
    そして光緒帝も。
    大変な山場。

    と同時に、日本に亡命した梁文秀と玲玲のこと、マダム・チャンやら、トム・バートンらも出てくる。
    もちろん、春児も。
    李家のきょうだいたちの再会もありそうな雰囲気。

    中国語を学んだことがある身としては、アル化の話が面白かった。
    北京語でよく聞かれる、語末にrがつく現象のことだが、春児が「チュンル」もそのひとつ。
    ただ、「チュンル」でなく、「チュナル」と発音されるのが上品だ、とあったのが、ほう、そういうもんか、と興味が惹かれた。
    私の中国語の先生は、大連出身だったが、魯迅の「故郷」を読んだとき、「宏児」を、日本語訳のように「ホンル」ではなく、「ホナール」と発音していたのも思い出した。

    あと、この時期の中国の、いろいろな国から人が吹き寄せられている状況を、様々な言語を取り込むことで表現しているところもおもしろいのだけれど、一つだけ気になることが。
    「対」の使い方だ。
    「対」は、「はい」と訳せるが、日本語の「はい」と全く同じにはならない。
    「その通りです」「正しいです」の意味の「はい」だったと記憶する。
    だから、この巻のどこだったか思い出せないけれど、「~があるか?」と聞かれて「対」と答えることはないと思うのだけれど…。
    たぶんそれなりに調べて書いているのだろうし、もしかするとネイティブのインフォーマントを持っているのかもしれない。
    実際にはそういう使い方もあるのかなあ?

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    2018年09月22日
  • 中原の虹(1)

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    『珍妃の井戸』まで読んで、もう続きは読まないのかな、と思っていたが、結局読むことにした。

    李春児・玲玲きょうだいの兄、春雷が、東北の覇者、張作霖の「五当家」になる。
    実力随一の「総攬把」である張作霖が、皇帝のしるし、龍玉を手に入れるところから物語が大きく動いていく。

    張作霖というと、満州事変で日本軍に爆殺されてしまった人、ということくらいしか知らない。
    張作霖と息子、学良が清朝滅亡後の中国を率いていくはずだった、というのが浅田さんの認識でいいのかな?
    あのあたりの歴史は本当にいろいろな勢力が錯綜してわかりにくい。

    それにしても、この巻は、また語りが多彩なこと。
    『蒼穹の昴』にも出てきた、占いの老婆の語り、康熙帝から乾隆帝に至る三代の帝に仕えた兆恵将軍、秀芳馬占山など。
    乾隆帝が登場することはもうないけれど、今回はヌルハチの後継者選びの頃から、登場人物たちの過去まで、時間もあちこち遡る。
    うっかりしていると、目がくらみそう。
    面白いけれど、物語を追っかけるのもなかなか大変だ。

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    2018年09月18日
  • 憑神

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    幕末の動乱の中、御徒士で、代々将軍の影武者約となる役を仰せつかる別所家の出戻り婿である主人公、彦四郎が3人の憑神に取り憑かれる話だが、根底は江戸の時代とともに滅ぶ武士の潔さがテーマで、最後は死神が死地に追いやるのだが、勝安房守海舟も無駄な死と評している主人公の酔狂に元妻の八重も含め、賛同しているところに納得がいかない。
    3人の憑神のキャラクターや榎本武揚など実在の人物との絡みなど見どころもあり飽きずに読めました。
    個人的には明治の世に乗り遅れたラストサムライよりは時代を読み行動できる主人公を求めたいところです。

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    2018年09月16日
  • 中原の虹(4)

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    蒼穹の昴シリーズ第3弾。前作から引き続きの登場人物が織りなす清王朝末期の話。このシリーズの魅力は西太后や袁世凱など一般的には歴史の悪役になりそうな人たちの心の動きにスポットを当てていること。小説だと分かっていながらも、本当の事実もこうだったのでは、なんて想像してしまう。個人的には小説が大好きなので春雲という1人の主人公を軸に描かれていた前作の方が入り込みやすかったので、時系列、国をまたぎさらに壮大になった今作に置いていかれないように必死に読みました。最近続編も執筆中らしいので、期待!

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    2018年09月15日
  • 勝負の極意

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    1番なるほど、と思ったのは競馬の話よりも二足のわらじで小説家として成功したところ。競馬はやったことないのであれなんですが、機会あればやってみます。

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    2018年09月05日
  • 椿山課長の七日間

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    おじいちゃんは勝手にミッキーカーチスと思い込んで読んでいたので、映画は桂小金治、ドラマは津川雅彦が祖父役というのを見て、小説だけで留めておこうと思いました。泣いてしまいました。

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    2018年08月31日
  • 姫椿

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    気楽に読めて面白かった。
    ちょっと不思議なのが良い。

    話してはならぬ、言葉は穢れている とはなるほどだ。
    沈黙は金。

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    2018年08月30日
  • 椿山課長の七日間

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    仕事、子育て、家のローン、介護、いろんな重荷を背負った働き盛りの主人公がある日突然仕事中に倒れてそのままこの世を去る。うーん、他人事ではないな。

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    2018年08月24日
  • 姫椿

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    短編集。「シエ」「姫椿」「再会」「マダムの喉仏」「トラブル・メーカー」「オリンポスの聖女」「零下の災厄」「永遠の緑」
    個人的には「シエ」「再会」が好み。

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    2018年07月30日
  • 月島慕情

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    浅田次郎の短編集。個人的には、浅田次郎作品は長編より短編の方が好み。
    「月島慕情」「供物」「雪鰻」「インセクト」「冬の星座」「めぐりあい」「シューシャインボーイ」そして「自作解説」も収録。

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    2018年07月30日
  • 王妃の館 上

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    月末の手形決算を切り抜けたい旅行会社が、パリの高級ホテル「王妃の館」の一部屋を2組に利用させ、旅行代を二重取りという暴挙に出た話です。光(ポジ)ツアーの方は150万円で、影(ネガ)ツアーの方は20万円という料金でツアーを行います。そのからくりは、お見事といえます。こんなことを思いつくのが凄いです。ですが、両方のツアーに参加しているメンバーがまぁ、個性的で。果たしてこのツアーはうまくいくのでしょうか!?下巻に続きます。

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    2018年07月29日
  • 終わらざる夏 中

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     疎開先の小学生たちや教師、島で働く女子学生たち、そして敵兵であるソ連兵たちなど、自国の兵士だけでなく、それぞれの立場の苦悩と葛藤、戸惑いを描くことで浮かび上がる、戦争の不条理と非情さ。

     こうした様々な立ち位置からの悲劇を描けるだけでも、すごいと思うのですが、さらに浅田さんは物語の舞台となる占守島すらも、不条理と非情から生まれたことを描きます。

     国家の思惑に踊らされ、故郷を追い出された先住民たちの悲劇。単に物語の舞台でしかなかったと思っていた島すらも、不条理と非情から生まれていたということが、明らかにされるのです。

     個人と土地、それぞれの物語をあますことなく描ききり、小説は最終刊に向かいます。

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    2018年07月16日
  • 終わらざる夏 上

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     綺麗に書くなら戦争の悲劇が、汚く書くなら戦争のクソッぷりがよく分かる小説です。

     年齢や身体の状況などで、本来であれば招集されるはずのない人々に、赤紙が渡され否応なく戦争に巻き込まれていくのです。

     不意の招集に衝撃を受けるのは、兵士以上にその家族です。特にこれまで何度も招集に応じ、指を失っているにも関わらず、再び赤紙を渡された鬼熊とその年老いた母。二人のそれぞれを思う心情と、それに関わらず引き裂かれる場面は、戦争の理不尽さや不条理さを、改めて示していると思います。

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    2018年07月16日
  • 月のしずく

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    ネタバレ

    幸せな結末ではないけど、読んでホッとするようないい感じの短編集。
    さすがに文章がうまいので、サラサラ読める。

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    2018年07月12日
  • ブラック オア ホワイト(新潮文庫)

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    夢を語るうちに見た話か語っているうちに創った話かわからなくなる。理屈に合わせようとすると無理がでるからだ。一方、現実の世界で白日夢を経験することがある。しばらく醒めるまで時を要する。夢を題材に小説を作るのは難しいと思う。本書でも読み始めてしばらくはかったるかった。が、そこは一流の著者である。終盤は人生について考えさせられてしまった。2018.7.11

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    2018年07月11日
  • 姫椿

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    8つの短編を集めた作品集。
    ベタな浅田ワールド全開のケモノ偏に解って書く「しえ」ってお話が良かったです。

    やっぱり我が家は動物好きだからさぁ~。
    しかもノラ猫ちゃんや捨て犬ちゃんを育ててきたから、こういったお話に特に弱いんだよねぇ~。

    「浅田さんのお話を読むと、やっぱり(ストレートな)男性は女性が好きだし、精神的なプラトニック・ラブを重宝しがちな女性作家さんと違って、愛し合うならカラダごとってところが素直だな~って思います。」by太郎

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    2018年07月09日
  • 歩兵の本領

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    ネタバレ

    目次
    ・若鷲の歌
    ・小村二等兵の憂鬱
    ・バトル・ライン
    ・門前金融
    ・入営
    ・シンデレラ・リバティー
    ・脱柵者
    ・越年歩哨
    ・歩兵の本領

    1970年頃の自衛官たちの物語。
    ゲバ棒を持った大学生も、ラブ&ピースのTシャツを着た若者も、それなりに就職していい暮らしをしているときに、それぞれの事情で自衛隊に入らざるを得なかった若き自衛官たち。
    理不尽なしごきやいじめに涙を流し、戦争に行くことのない軍隊生活を嗤う。

    自由がなくて、安月給で、慢性的人員不足のせいで、やらねばならないことだけはいくらでもある。

    けれど自衛隊にいるのは彼ら若者たちだけではない。
    もう何年もこの生活を続けている先輩兵。
    旧陸軍の生き残りの古兵。

    著者はきっと、自衛官だったときは自衛隊を好きではなかったのではないだろうか。
    痛いし、苦しいし、理不尽だし。

    青春の苦しさだけではなく、生きていかねばならない大人の苦さ。
    それに気づいた時、作者のまなざしは優しいものになったのではないのかな。

    存在の是非ではなく、現実にそこにある存在として、生き延びるための術がある。
    自衛隊には落第生がいないのだとか。
    ひとりの落第生のために全滅することもあるから。
    “だから軍隊というのはどこの国でもそうだけど、優秀な兵隊を作るんじゃなくて、クズのいない部隊を作ろうとするんだ”
    なるほど。それは気付かなかった。
    けれど行き過ぎたそれが、往々にして全体主義になっちゃうんだよね。

    「若鷲の歌」に出てくる川原准尉。
    昭和20年8月15日の日付が入った、自分の位牌を持つ。
    「日輪の遺産」に出てくる真柴少佐のモデルなのかと思ったり。

    “川原准尉の小さな体は、少年飛行兵のまま成長を止めたのだと思った。その夜、私はこの世で最も気の毒な、最も救いがたい、どんな念仏にも祈りの言葉にも成仏することのできない幽霊を、この目で見た。それは、勝手に戦をして、勝手に負けて、その理不尽なツケを私たちの世代にそっくり押しかぶせた軍人のなれの果てには違いなかった”

    こーゆー書きぶりが、ほんと、上手いんだよな。

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    2018年06月27日
  • 神坐す山の物語

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    ネタバレ

    2018年、24冊目です。

    山の神という言葉は、最近、箱根駅伝のランナー紹介の時によく耳にしますね。
    山岳信仰が、日本古来の神道に結びついて形作られていると思いますが、
    そういった説を待たずとも、少しばかり山の奥深い場所に、一人で足を踏み入れると、なんとなく「畏れ」を感じる。人は山の神を畏敬の念を持って受け入れている。

    魂魄というものに出逢ったことはないですが、存在を寛容に受け入れる精神世界が私の直ぐそばにあることは確かだと思えます。
    八百万の神々がいるとすれば、私のそばに存在し、私の暮らしの、いや行動の一つ一つにその存在の力が影響しているのかもしれません。
    運がいいとか悪いとか、、、。

    いくつかの短編で構成されていますが、それぞれが繋がっていて、読み手が全くストレスを感じずに、次々に新しい物語に入っていけました。

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    2018年07月08日