浅田次郎のレビュー一覧
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試し読み
Posted by ブクログ
戦後の混乱の最中に財をなした父に反目して家を出た『真次』は、兄の命日の夜地下鉄から階段を上って出て行くと、そこには懐かしい風景が広がっていた。ちょうど兄の死んだ日に辿りついた彼は、兄の自殺を止めるべく行動したのだが戻った先は変わっていなかった。
その日を境に、どんどん古い時代へと地下鉄は彼を運んでいく。その先で出会ったのは、若かりし日の父の姿だった。
メトロというの言葉は、なんとなく哀愁のある響きをしている。
そしてこの物語で紡がれる時代も、直に知ってはいないけれど何故か郷愁を感じさせてくれる。貧しく苦しい時代だったはずなのに、活気というか生そのものが息づいているような、今は失われてしまった -
Posted by ブクログ
記憶しておきたい言葉
力を蓄え、技を身につけるために最も肝要なるものとは何じゃ。そう訊ぬれば百人が百人、努力精進にほかならぬと答えるであろう。しかし、わしはそうとは思わぬ。
努力精進よりも肝要なるものがある。それは、渇えじゃ。いつかかくありたしと願いながらも、努力精進すらままならぬ貧乏人はひたすら飢え渇するほかはあるまい。その拠るところも捉むものもない飢渇こそが、やがて実力となり技となる。
持たざる者ほど、持っておるのだ。
水も肥も与えられずに、それでも咲かんと欲する花は、雨を力とし、風すらも肥とする。そうしてついに咲いた花は美しい。
人殺しの剣すらも、舞うがごとく見ゆるほどにの。
わしは鉄 -
Posted by ブクログ
本屋で目にした「ドラマ化」の文字につられ
まだ読んでない浅田次郎作品だったので、買ってみた。
元自衛官と、元財務官僚の二人が「新任」となった天下り先。
そこにいた、年齢不詳の美しい女。
ことのほか、息が合ってしまった二人の男は
失うものは、もう何もないという共通点。
3人が自ら「仕事」として働き出した内容。
それこそが、プロローグで著書本人が、この二人の男からの訪問があったことを挙げているのが
なんとも、浅田次郎っぽい。
ところどころ、浮世離れした視点からの描写も
これぞ浅田次郎!
初めて読む人には、意味不明かも。
で????
答えは、自分だけが知っている。
なんでしょうね。
これま -
Posted by ブクログ
武田鉄矢は新選組が嫌いだということですが、それは龍馬を軸に見てのことだと思います。
薩長の史観教育によれば、幕府側の新選組は悪ということになりますが、その理論で言えば、国に戦いを挑んだ西郷も悪となるところ、そうではないところに何かが潜んでいるということでしょう。
本書を読み終え、西南戦争を教科書的に理解していた自分を恥ずかしく思いました。
西南戦争となるまでの名称の変化や西郷復権の経緯を見ると、確かに、西郷と大久保企てだ一大計画であっとすれば腑に落ちます。
西南戦争における各所の戦いばかりを追いかけ、西郷軍の愚策に疑問を抱かなかった現代人のボクでも、完全に西郷と大久保の術中にはまっていたと -
Posted by ブクログ
残侠―天切り松 闇がたり〈第2巻〉 >> 気に入った台詞、先ず、おこん姉さん「好いた惚れたは人間を正直者にさせちまうのさ」
『残侠』をようやく読み終えることができた。『闇の花道』に比べると、クラッシック?な文章と、描かれている世界観に慣れたのか『闇の花道』よりも読みやすく、よりダイナミックな展開に、物語に引きずり込まれ、いつの間にか、松蔵の気持になって他の登場人物に接している自分を発見しました。リアリティは後退するが、これまでの話の中で設定された舞台の上で、生き生きと描かれたキャラクターが動き出し、後半に向かって物語が盛り上がって行く。
闇語りを仕切る天切り松も、絵に描いたよ -
Posted by ブクログ
この作品を読むと、人間にとって大切なのは、義理人情と信頼だって思う!
小説の登場人物たちは、いずれも脛に傷を持つ連中で、男の生きざま、女の心意気とは、ほど遠い人生を歩んでいる。久しぶりに私利私欲よりも義理人情を重んじる世界を覗いた感じだった。
博奕にはまった父は、妻を医者にも見せることすらできず、姉を吉原に売り、松蔵は義賊に売られた。老いた松蔵は、冬の留置場に現れ、拘留されている男たちと刑務官に、安吉親分の下で経験した話を語る。松蔵の話には、現代人が忘れてしまった。男の生きざまと女の心意気があった。
舞台は、現代の留置場と大正時代を行き来し、男と女の生き様を描いているが、その実、私た