あらすじ
夜更けの留置場に現れた、その不思議な老人は六尺四方にしか聞こえないという夜盗の声音(こわね)「闇がたり」で、遥かな昔を物語り始めた――。時は大正ロマン華やかなりし頃、帝都に名を馳せた義賊「目細の安吉」一家。盗られて困らぬ天下のお宝だけを狙い、貧しい人々には救いの手をさしのべる。義理と人情に命を賭けた、粋でいなせな怪盗たちの胸のすく大活躍を描く傑作悪漢小説(ピカレスク・ロマン)シリーズ第一弾。
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時代背景のある作品を初めて読んだかもしれない。勝手に苦手意識があったが、面白すぎる。言葉遣いも魅力的すぎる。そして何より登場人物達の人情が素敵すぎる。今日日にもあれば良いのに。私の近くにも居てくれればいいのに。
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全シリーズ無我夢中で読み終えて
涙あり笑いあり
こころの中に
新たなヒーローとヒロイン
が刻み込まれた感じです
40代、50代、60代
70代と読み返して
歳を重ねた自分が込み上げる感情に
出会ってみようと思います
Posted by ブクログ
痛快と言うわけではないが、苦しき中で粋に生きる人の強さと言うものを感じさせてくれる小説。
今の時代の価値観や世界観、人生観とは違う何か大切なものの見方を教えてくれている様な気がする。
ただの人情噺で哀れというのではなく、強く生きる力を感じさせてくれる。それは、解説で言われる、振り返って自己解釈する物語ではなく、過去から現在を照射する未来を照らす選び取る視点で描いた物語だからということなのかもしれない。
前者の視点は勝者の視点で、その視点から描くのが歴史。後者の視点は消えゆく者や敗者の視点で、その視点から描くのが物語。そう言う解説で、この物語の視点と、『童の神』や水滸伝などの敗者を描いた物語に心惹かれる理由に思い当たる。
この本のメッセージや価値をまだまだ、十分には味わい尽くせていない自分が居る。もっともっと、人生修行が必要な様だ。
浅田次郎の作品は楽しい
浅田次郎氏の作品は、どの作品も読むに連れてぐいぐいと引き込まれる。
さすがは「ストーリーメーカー」と言われるだけあり、魅力いっぱいである。
この作品も、単なる一人(天切り松)の身の上話の様ではあるが、
本人と本人を取り巻くスペシャルな人々の生き様を鮮明に表現した一級作品である。
必ずや第2巻以降も読みたくなる事間違いなし。
Posted by ブクログ
始まりからワクワクする。
粋とはなにか分かるし、
それぞれのキャラクターが最高。
これがシリーズであと5倍楽しめるなんて。
俺の浅田次郎好きになったキッカケ本
Posted by ブクログ
解説降旗康男氏。
昔中村勘三郎さんの演じるドラマを観たことがあるのだが。
年をとったせいか
5つの短編のうち、前述の『白縫華魁』『衣紋坂から』も勿論惹きこまれるが
『百万石の甍』が妙に心に残った。
子が親を選べないって、、、と悲しくなるが
シリーズ化しているようなので松の今後を楽しみたい。
Posted by ブクログ
「闇の花道」
安吉の新しくも古い、筋を通す生き方にしびれる。
「槍の小輔」
おこん姐さんは男より男らしい。
山形有朋を前にして切って見せた啖呵には胸がすっとすく思いがした。
その後の山形との恋愛は、気恥ずかしくも切ない。
「百万石の甍」
弱きを助け、強きを挫くとはこのことだ……!
三日月を背に屋根の上にすっくとたつ栄治の姿が脳裏に浮かぶ。
「白縫花魁」
吉原という粋で華やかな世界が、大正までは生きていたんだと驚いた。
江戸っ子に任侠に花魁に、粋でいなせな人々が活躍していた時代。
寅弥の人の好さが素敵。
「衣紋坂から」
泣いた。
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江戸弁で語られる痛快な話!
かっこいい大人たちがいい!
分かっていても泣いてしまう、人情話!
天切り松シリーズの大ファンです!
全巻一気に読めます。最高!
Posted by ブクログ
浅田次郎さんの
語り口に すっかり乗せられてしまうことほど
心地よいことは そうありません
天切りの松蔵爺さんの語り口に
思わず 魅せられてしまう
留置場内の聞き手の一人になってしまう
物語の面白さがここにある
Posted by ブクログ
最近本を読むようになったと言ったら、義母が貸してくれました。浅田次郎さんの作品は初めてで、最初は昔の語り口調や文章に慣れなかったです。この内容なのかな?って推測しながら読んだ箇所もありました。
でも段々と天切り松の話にのめり込み、最後の姉弟の話なんて感動して泣けました。
現代にはなかなかない義理人情の話でした。その姿が盗っ人だけど、とてもかっこ良かった。ただのお金目的ではなくて、人助けにもなる盗っ人もあるんだと思いました。
義母が貸してくれなかったらきっと出会わなかった作品。他のシリーズもお借りしているので、ゆっくり読んでみようと思います
Posted by ブクログ
夜を照らす赤提灯の下で行われる花魁道中の描写の辺りが本当に大好きです。ラストは不憫で不憫でたまらなくなってしまい、涙なしでは読めませんでした。
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浅田次郎のエンタメ炸裂! 中国史大河小説からバカエンタメまでなんでもこなす器用な作家だが、このくらいの笑いあり涙ありのエンタメが一番好きだ。
ときは大正、江戸の香りを色濃く湛える東京に、所狭しと大活躍した義賊達を、一味の小僧だった男が老いてのちに物語る、五夜四編の物語。シェハラザードも腹を抱えて笑い出す、天切り松の闇がたりシリーズの巻一。続きも読む。
Posted by ブクログ
良いですね。格好いい。
出てくる泥棒たちは、貧者には手を出さない義賊たち。どこか粋で人情があって、矜持を持っている。
盗みに当たっては殺しや脅迫も無く、鮮やかな技術のみを頼りに、周りの鼻を明かす。現実の世界ではそんなことは無いでしょうが、物語だもの、良いじゃないですか。
ピカレスクロマンの王道を行く作品です。
Posted by ブクログ
連作短編。
【闇の花道】
プロローグといったところか。松の語り口の小気味の良さ。カリスマ抜群らしい親分さんと、キャラの立った子分たち・・・・。物語に、ぐんと引き込まれた。
【槍の小輔】
まさかの展開、超年の差大恋愛(?)。「おこん」姐さんが、とても魅力的。
別邸からの別れの場面が、ほんの少しデ・ジャ・ヴュな気がするのは気のせいか??
【百万石の甍】
目細の安、格好良し。
前読の「シューシャインボーイ」もそうだったし、(原作は未読だが映画を視聴)「地下鉄に乗って」でもそう……。浅田さんの描く“父子”の話は、泣かせるねぇ。
【白縫花魁】
・・・「続きを聞きてえか。」
………『はい、とても。』(笑)。
白縫花魁……きっと、哀しい最期を遂げるのだろう予感が。
【衣紋坂から】
・・・やはり、やっぱり、哀しい最期。
やりきれないけれど……想像していた“悲しさ”とはならなかったのが、せめてもの救いか。
★4つ、9ポイント。
2016.11.11.古。
シリーズものだとのこと。
当然、続刊も読むべし。
昔……漫画雑誌にこのタイトルの作品が連載されていた。ヤングジャンプか?ビジネスジャンプか?
当時は特に興味も牽かれず読みもしなかったけれど、タイトルにはありありと覚えがある。機会があれば、読み比べたいものだ。
Posted by ブクログ
この作品を読むと、人間にとって大切なのは、義理人情と信頼だって思う!
小説の登場人物たちは、いずれも脛に傷を持つ連中で、男の生きざま、女の心意気とは、ほど遠い人生を歩んでいる。久しぶりに私利私欲よりも義理人情を重んじる世界を覗いた感じだった。
博奕にはまった父は、妻を医者にも見せることすらできず、姉を吉原に売り、松蔵は義賊に売られた。老いた松蔵は、冬の留置場に現れ、拘留されている男たちと刑務官に、安吉親分の下で経験した話を語る。松蔵の話には、現代人が忘れてしまった。男の生きざまと女の心意気があった。
舞台は、現代の留置場と大正時代を行き来し、男と女の生き様を描いているが、その実、私たちが心の底であこがれるのは、人情であることを示しているのではないかと思った。人は、どんな境遇にあっても、人を思いやることができることが幸せなんだろうなぁ~と感じた。
粋でいなせな生き方とは、どのようなものなのか、語り継ぎたい人物とは、どのような人なのか、著者の意図したものではないかもしれないが、考えさせられる闇がたりであった。
Posted by ブクログ
「心意気の熱い男たち」の物語。
問わず語りに語る松蔵の口調がドンピシャで、子供のころに先生に『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』と言われた、浅田次郎の本領発揮ともいうべき傑作。
Posted by ブクログ
最初は、独特の語り口調に違和感を感じたのですが、途中から読み入ってしまいました。人情味あふれる物語。「衣紋坂から」がすごく泣けます。続きも読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
”天切り”とは家屋の屋根を切り破り忍び入る強盗の事。時は大正時代、警察の独居房にふらりと現れた一人の老人。そして誘われて自分の周囲にしか聞こえない野盗の声音”闇語り”にて自分の半生を語る。老人は伝説の泥棒”天切り松”。松が語るのは、関わりのあった忘れられぬ人の話。洒落と酔狂の極み安吉一家、幼き頃離れ離れになった優しい姉。古き良き時代の裏稼業の世相を愛と涙の人情絵巻でシットリと短編連作にて綴る。シリーズ本。ドラマにもなっているようだが、やはり浅田文学の美しきしらべを堪能しながら秋の夜長にしっぽり読むのがオススメかな~。
Posted by ブクログ
大正ロマン溢れる、任侠一家の活躍を描いた小説。いきなり衝撃の展開でしたが、やはりそれでも筋を通す所がこの時代の漢なんやろな。男はかくありたいものやね。
Posted by ブクログ
バブル期の留置場、1人の老人が"闇の声音"で語り出す昔話。
華やかな大正ロマンの時代を駆け抜けた、義侠心溢れる盗賊「目細の寅吉」一家の活躍譚。
人情味溢れる盗っ人達に胸を躍らされ、最終話で白縫花魁の話に号泣。
愉快痛快、それでいてどこか切ないとっておきの娯楽小説。
天切り松の"闇がたり"に留置人や看守達同様、夢中になってしまう物語。
寅吉一家、かっこよすぎ!!
Posted by ブクログ
悪党一味とも捉えらるが、粋で芯のある一味で市井も認める存在の武勇伝を生き残りが語るといった話かな。
よくよく考えると現代の特殊詐欺グループやホストに溺れた女の子を風俗に流すみたいなことの昔版の話みたいだなとも思った。
Posted by ブクログ
面白かった
一話完結型の短編連作
天切り松が語る盗賊の一家の物語
■闇の花道
■槍の小輔
■百万石の甍
■白縫花魁
■衣紋坂から
の5作。
盗賊一家のそれぞれのキャラを中心に義理・人情のエピソードが語られていきます。
この中で、一番印象に残った話は、「白縫花魁」と「衣紋坂から」
これは、二つで一つの物語。
花魁の身請け、姉弟の物語
とても哀しい結末でした。
シリーズ物で続きがあるようです。
ちょっと楽しみ
お勧め
Posted by ブクログ
粋な人達の、粋なお話。
面白かったし、登場人物は魅力的で、語られるお話も切なく気持ちの良いものだった。
ただ、まだ読書歴も浅く知識も乏しい私には、少々読みにくい部分もあった。
普段あまり見かけない漢字が多く、風景描写も知らない為に想像できないことが多々あり、雰囲気のみで読んでいた感は否めない。
母の勧めで読んだのだが、続きのシリーズは、もう少し色々な本を読んで修行をつんでから読みたいと思った。
Posted by ブクログ
「天切り」というのは、屋根の瓦をはずして侵入する泥棒のことをいうらしい。
この、天切りで名高い盗っ人の松蔵が、留置場で周りのチンピラや看守に向かって、若かりし頃の昔語りをするという設定になっている。
もう70歳を越えた松蔵が思いを馳せて語るのは、古き良き大正浪漫が残る東京下町の出来事で、それを、シェラザードのように一夜に一話ずつ語って聞かせる。
その話しのテーマになっているのは、義賊ともいうべき、松蔵の師匠や兄貴分たちの物語で、いずれも盗みにかけては天下一品の腕利きの、「粋」を絵に描いたような連中で、やたらとカッコいい。
山県有朋や永井荷風のような、歴史上の人物が登場して物語に絡んでくるところも面白い。
語り手である松蔵は生粋の江戸っ子で、その江戸言葉がとにかく歯切れがよくて、テンポが良い。とてもよく出来た講談を、ベテランの講談師から聞かされているような気分になる。この絶妙なリズムを、母国語で味わうことが出来るというのは幸せなことだと思った。
無益だって?ふん、いいかい閣下。世の中にゃ銭金より大事なもんが、いくらだってあるんだ。てめえのような長州の芋侍にゃわかるまい。どうりで薄ぼんやりと花火を見てやがると思ったら、ハハッ、どんと上がって消えちまう無益なもんの有難味を、てめえは知らなかったんだねえ。(p.77)
おまえは、わしを長州の芋侍と呼んでくれた。わしにとって、それにまさる誉れはない。一介の武弁で死ぬるは本望じゃ。このような気持ちになれたのも、みなおまえのおかげじゃよ。さあ、去ね。槍は、忘れずに持って行け。(p.95)
まああの一本気てえのァ、形はちがうにせえ根岸の棟梁ゆずりの職人気質さ。人に媚びねえ、へつらわねえ。口数はむっつりと少ねえが、嘘は決してつかねえ。それともうひとつ、シャツの袖口や足袋の裏が、いつもふしぎなぐれえ真白だった。あれァ、男の中の男だ。(p.137)
「住んじゃおりやせんが、盆と正月の炊き出しにァ、一家を上げてめえりやす」
「あの、洒落者がか」
「なにをおっしゃいます、閣下、それが本当の洒落者のすることでござんすよ」(p.148)
「おいら、銭がねえんだけど」
「そんなものは要らない。もし坊さんに尋ねられたら、永井荷風の知り合いだと言いなさい」
「そこ、投げ込み寺なんか」
「そんなことはどうでもいいじゃないか。生まれては苦界、死しては浄閑寺。べつにお女郎ではなくとも、人はみな似たようなものだよ。」(p.264)