あらすじ
新選組局長・芹沢鴨はなぜ殺されたのか? 近藤勇ら試衛館派と芹沢鴨ら水戸派の間で対立が深まっていた、新選組と呼ばれる前の壬生浪士組。京都・島原の置屋「輪違屋(わちがいや)」の芸妓・糸里は、姉のような存在の音羽太夫を芹沢に無礼討ちにされ、浪士達の抗争に巻き込まれていく…。土方歳三を慕う糸里、芹沢の愛人・お梅ら新選組に関わる運命を背負った女たちの視点から、激動の時代のうねりを描く。大ベストセラー『壬生義士伝』に続く“浅田版”新選組、第二弾!
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Posted by ブクログ
何故か今まで手を付けていなかったけど、さすがの浅田次郎さん、昨夏、角屋と輪違屋の前を通って壬生まで歩いたけど、また改めたい。
2024-045
巻末に思わぬ蔵書印、その後すぐ本人からLINEで驚いた
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なんとも胸が苦しくなる話で、人物の心情がひしひしと伝わってくる。
新選組に巻き込まれた女達の話し、島原に生きる女性の辛さがいたたまれない。改めて新選組ってめちゃくちゃな集団だなと。
新選組を外から見た視点で書かれていて、素直に面白い、一気読みでした。
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非常に面白かった。てっきり史実に基づいた話かと思ってしまったが、基本的に虚構のようらしい。浅田次郎の幕末ものは、思った以上に生き生きと登場人物が描かれており、面白く読める。早く先を読みたいと思う。
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何を守ろうとしているのか分からない時代があったのだな。
土方は捉えようもない男。
非情でもあり、情け深くもあり、鳥瞰的に物事を考えて最善の道をとる者でもあり…。
土方は「侍」になりきれなかった「百姓」だったのかな。
いや、「百姓」になりきれなかった「侍」だったのかも。
一方で
世の中という化け物に向かっていく男を、戒め慰め包む女たちが仏のよう。
糸里天神が小浜という海の町から買われた芸妓であることが象徴的。
海は母性そして波は運命に流される当時の女性の象徴。
京都弁のしとやかできっぱりした口調を楽しめた。
文字が芸妓の奏でる琵琶や三味線に成り代わり響く。
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切ない。この時代の男も女も。女はやっぱり強いなぁと思いました。土方はむごいことをするけれど、嫌いになれなくて、むしろ好きです(笑)一番切なかったのは吉栄と平山でした。本当に読んでいてたまらなかったです。糸里には土方と幸せになってほしかったです。
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糸里が主人公なのか芹沢鴨が主人公なのかよくわからないが、とても面白い。
芹沢鴨は島原の芸妓と吉原の花魁の違いがよくわかっていないで遊んでいましたが、自分の違いを知らなかったので、色々奥深いんだねえ、と感心しながら読み進めました。
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女性たちから見た新撰組の芹沢鴨暗殺にまつわるストーリー。江戸時代末期の京で一生懸命に生きる女性たちの心の揺れ動きが描かれている。とにかく悪く書かれることが多い芹沢鴨に対して理解を示す描写が多いのも新鮮であった。
一般公開期間は限られるが、京都・島原の角屋は内部を見学することができ、新撰組の隊士たちが残した柱の刀傷も見ることができる。この小説を読む前後で見学をすると、この小説で描かれている糸里の世界はどこか遠い場所の話ではなく、時間を隔てただけの「ここ」なのだと実感できる。
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新選組がまだその名を与えられる前からの様子を島原と芹沢鴨を中心に描いている。
初期に退場した芹沢鴨は新選組を取り上げた作品にもあまり登場することがないので、改めてじっくり向き合ってみると興味深い。
単なる酒乱の無法者か、それとも策士でもある真のリーダーだったのか、本当はどっちだったのでしょうね。
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京都島原の芸妓糸里を取りまく新撰組を題材にした小説家。新撰組は色々な切り口があって面白い。特にこの話は芹沢鴨の事がよく書かれていて、そんな解釈もあるのかぁ、なんて思いながら読み進めた。
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「壬生義士伝」と「一刀斎夢録」、浅田次郎の新選組三部作のひとつ。
数年前、ふらりと冬の京都に行った際に、新選組の屯所であった壬生の八木邸に入ってみたことがある。
ここで芹沢鴨らが土方の策謀によって実際に惨殺されたんだ、と思うと感慨深いものがあったねぇ。当日は物音が聞こえないくらいの土砂降りの夜だったと言うが、そんな雨をぬってずぶ濡れの沖田や原田が庭からふすまを蹴破って突入してきた様が目に見えるようだった。
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下巻に記載。
(ちょうど京都幕末維新をテーマにしたロゲイニングのチェックポイントを探しに京都(島原)を探訪していたところ、ふと輪違屋の文字を発見し、現存するその建物の歴史と風格を肌で感じ、あらためて本書を読むことにした。
壬生の浪士組から新撰組へと成長する中で、八木・前川家と新撰組の関係、芹沢や近藤・土方の目指す理想像の違いとそれに伴う内紛(暗殺)なども興味深いが、本書の真髄はなにより島原という花街に生きる女性のプライド。いろいろ幅広い分野で面白い浅田次郎再評価の一冊でした。)
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司馬遼太郎さんの「燃えよ、剣」も面白かったけど、浅田次郎版新撰組も面白かった。
時期としては、短く、新撰組の上京後から、芹沢鴨暗殺まであたりを描く。
芹沢鴨の恋人お梅、眇目の隊士平山五郎の恋人吉栄、土方と微妙な仲の糸里、そして新撰組の屯所となる貧乏くじを引いた八木家の妻から見た新撰組。その一方、隊士本人の心情も、1つ1つのエピソードの主役にもってきて、細かく描く。
鉄道屋や獅子吼が好きでなく、浅田さんの短編集は好きではないが、こうやって、長編の中にエピソードをちりばめた今回の1冊や、同じ形態の椿山課長~はあっているのかお上手だと思う。
糸里が主人公なのだろうけれど、私はピュアなカップルの五郎と吉栄が大好き。五郎はんは、眇目で見た目は誰よりも怖いけれど、その心は優しく、温かい。吉栄と一緒に、優しい五郎はんに惚れちゃいました。引用したのも、土方に胸が締め付けられる程のひどいことをされて、落ち込み気味の糸里を察して、声をかけてくれた五郎はんの言葉。
一方、糸里はと土方は計算で動く、人間味の薄い人物で、あまり興味は持てなかった。
お梅は妾上がりで、苦労をする悩める人。愛する夫に裏切られ、同じくはぐれ身の芹沢鴨に救いを求める。
作家の本領発揮された作品だと思う。なるほど、思ってもみなかったけど、新撰組の隊士たちはこういう気持ちだったのかもと思えて来ると、誰も憎めない。
日本は、ドロップアウトすると、いわゆるエリートと呼ばれる路線にはなかなか戻れず、休みも少なく、給料も安くといった生活に陥りやすい。新撰組もそこから這い上がりたくて、何かのきっかけを求めて必死にあがいたと思うと、哀れを感じてしまう。
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途中中だるみしそうになったけれど
読み進みにつれてあぁそうゆうことか~と
新選組と京都、島原に住んでいる女性達を取り巻く話ではあるけど
基本的に女性中心の話。
そんなこんなで芹沢鴨!!
他の新選組が出てくる小説では、しょーもない酒と暴力
そして暗殺された負のイメージしかないけど
この小説は全然違うのね。
とにかくやはり女性目線なので色っぽい描写が多いなと思う
あとなんか奥ゆかしい恋模様とか。
身分違えど男も女もいろいろあります。
そうゆう時代だったと言ってしまえばそれまでだけど
you言っちゃいなよ!告っちまえよ!ってゆうのではなく
胸の中に秘めた恋というかなんというか
芹沢鴨もまぁ裏を返せば純粋無垢
土方歳三は謎。という感じか
激動の時代ですからなーそりゃそうだわなー
ということで下巻に続く。
Posted by ブクログ
登場人物に例の団体が出てくるので、ああまた変にカッコイイよう持ち上げて人気取りしようとしてるタイプの作品かもしれないなあ……と長く手に取らずにおりました。が、島原について調べたいことがあり、一端として読むことに。
浅田次郎の感性はすごいなあ。
地元の人? というくらい、微妙な空気感をうまく表現してる。京都の者が例の団体をいかに嫌っていたかというのも淡々と描いている(実際金になるほど美化されるまで、口の端にのぼることも稀だった)。それに言葉遣い。
今となっては80代・90代のおじいちゃんおばあちゃんしか使わなくなった言葉を正しく書いている。ちゃんとチェックしてくれる人物がいるのだろうが、それにしてもうまい。
距離感もいい。河原町から壬生まで。壬生から烏丸・御所まで、千本まで。歩き慣れたものの自然な距離の表現は、他地方出身だとなかなか書けないというのに、正確だ。
どこまで調べ上げているんだろう。しかし調べたことを切り貼りしている感はまったくない。であるので時代物を読んでいてしばしばおこる立ち止まり・つまづき感がない。
でもまあとりあえず一言でいうなら
某団体、16のおんなのこいじめるなばかー!
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新選組中心とした周りの話
壬生義士伝のように、心情に訴えてくる内容で好きだった。糸里や吉栄、お勝やお梅など女の生き様がよく伝わってくる。男女差別などと言うが、この時代から女もしっかり強かったではないか。いや、いつの世も男は剛力はあっても内面が女より弱い。
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新選組の話だと知ってたら借りなかったなぁ。新選組に理想を求める人たちが多すぎて、言いにくいけれど、あれは武士に成りたいだけの暴力暴走集団としか思えない。
Posted by ブクログ
新撰組は悲運の武士たちみたいなロマンチックなイメージだけど、町人の立場から書くとただただ迷惑な存在で、しかも廓の中から見た彼らはひたすら陰惨な内ゲバを繰り広げる不気味な存在となる。彼らの悲劇は時代の波に乗れずに翻弄された末の破滅にあるためだと思う。時代を動かそうとしていた武士たちと関わりのない街場の地べたから見ると、人を斬っちゃあ拷問しているくせに当時の武士の本質である行政完了の地位も持たない訳の分からないいわば半グレのような存在でしかない。百姓だったり脱藩者だったりといった隊士のコンプレックスに焦点を当てることができたのは、女性に対してそれを語らせるという手法を採ったことの功績だと思う。他方で新撰組はほんとに陰惨な内ゲバや略奪行為しかしていないので全く爽快感がなく読後感が重苦しい。
Posted by ブクログ
糸里だけでなく複数の女性視点からの初期の新撰組。なるほど、こういう見方もあるのかとは思わせるが、ちょっと鬱陶しい話でもある。後半に期待。
そう云えば、最近(18年12月)に映画化されたんだ。溝端淳平の土方ってイメージないなあ・・・
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芹沢や近藤をはじめとする、後に新選組となる壬生浪士組の男性たちと、彼らに関わる女性たちの物語です。
壬生浪士組は、押し借りや刃傷沙汰、焼打ちなどの悪行をしますが、ひとりひとりが如才ない若者で、憎むことができません。彼らはそれぞれ努力精進やら向上心やらがあり、“なまじ剣の腕が立ち学問もあるからこそ、生まれ故郷に身の置き場をなくしたのであろう。(p168)”とありますが、それが本当ならば、悲しいことだと思いました。
しかし、土方が糸里の、片恋の娘心を逆手に取るのはまさしく鬼の仕業でした。“おなごにとって一番大切なものは、好いたこの人にもろうてほしいと、糸里は切実に希った。(p189)”と言っているのに、さだめのように平間に抱かれることを受け入れる糸里を見て、苦しくなりました。
また、“島原の妓たちの間で、身請け話は禁忌である。女としての幸せを手にすることは悲願であり、また成らぬ悲願であるからこそ、冗談にも口にしてはならなかった。(p285)”とあり、島原の厳しさを感じました。それでも、糸里や吉栄に幸せになってほしいと、願わずにはいられませんでした。
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新撰組を周囲の女性(芸妓、商家の女将、壬生村の女房)の視点から描いた作品。上巻は壬生に拠ったあたりから、蛤御門の変まで。
芹沢派も含めて、単純な悪役を置かない感じが良い。
Posted by ブクログ
『壬生義士伝』に次ぐ浅田次郎の新選組を扱った第2弾の小説。壬生浪士組が新選組となる前、近藤勇、土方歳三、そして芹沢鴨などの人間関係が描かれている。輪違屋の芸妓=糸里が、本書のタイトル。
冒頭、いきなり輪違屋の音羽太夫が芹沢に惨殺されるところから、ストーリーは展開していく。酒乱で荒くれ者として描かれている芹沢。土方を慕う音羽太夫の妹芸妓:糸里太夫。
下巻は、どのように展開していくのか、作者:浅田次郎なりの仕掛けがあるはず・・・。
Posted by ブクログ
新撰組の好きな私に・・・といただいた本でした。
「糸里」という題名の割には、糸里はあまり出てきません。
新撰組の主に芹沢の事が書かれていました。どこまでが本当なのか?と思う部分もたくさんあったり、新撰組の周りの女性達の新撰組に対する想い等がつづられていて、面白いです。
私の描いている新撰組とはまた違う感じでしたが、芹沢さんの他の一面がわかった気がしました。
下巻も期待です。
Posted by ブクログ
芹沢派がこんなに持ち上げられてる新撰組小説は、初めて読みました。タイトルの割には、芸妓・糸里の話は多くなく、新撰組に、異なる立場で関わる、数人の女性からみた新撰組の話。
芹沢派がこんなに詳しく書かれているのも初めてなので、平山五郎や、平間重助の人となりなど、興味深々で面白かった。
でも、芹沢鴨による大和屋焼き討ちは、会津藩の指図だったとか、相撲の興行費は試衛館に送っちゃったとか、本当?って言いたくなる。
あと、気になるのは、永倉新八の話し方。いや、細かいけど、永倉も土方も「僕」って言ってるけど、他の小説では、「俺」とか「私」と言ってるし、「僕」は、長州の言い方だと書いてあったので、違和感あります。小説において、話し方は、人格に直結すると思うので。
糸里と土方には、本当にこういう経緯があったのかな?ありそうな話ではあるけど、糸里の気持ちが報われなくて切ない。
「一刀斎 夢録」は、下巻での展開大いに不満だったので、この話も、読み終わるまで油断できないな。過度にドラマチックに、いい話風にまとまってないといいけど。
Posted by ブクログ
映画化された『壬生義士伝』はわたしが好きな小説のひとつであるが、今回取り上げるこの小説もまた、新選組の活躍を描いた3部作のひとつである。とはいっても、主人公は書名にもあるように、「輪違屋」という置屋に勤める「糸里」という遊女。『壬生義士伝』では、吉村貫一郎というマイナーな隊士にスポットライトを当てた著者が、今度は遊女という視点から新選組を描いており、まずこの着想がおもしろいと思った。ただ、内容としてはそこまで評価できるかどうか疑問である。たしかになかなかおもしろみはあるのだが、島原という「ムラ」の論理をひたすら振りかざされたところで、いかに立派な人物であったとしても、そこまで肩入れすることはできない。男たちが熱く剣を交えて戦うウラで、こういったもうひとつの戦いがあったということには特別な感情も湧くが、それでもそこまで絶讃するようなこととも思えなかった。おなじ新選組について触れるなら、やはりもうすこし熱いドラマを読みたい。
Posted by ブクログ
芹沢暗殺までの顛末を輪違屋の芸妓・糸里、八木家、前川家の妻女、菱屋のお梅など女たちの視点から描いている。だからかもしれないけれども(作為的に?)、おなじみの試衛館の面々もちょっとイメージが違うように思う。
本作でも『壬生義士伝』で用いられた独り語りの技巧が使われているのだが、地の文(オーソドックスな三人称の語り)が突然途切れて、長々と人物の長広舌が始まっていたりして実に収まりが悪い。映画に例えて云うなら、やたら長いフラッシュバックが突然始まって、本筋に戻ったときにはすでに話の流れを忘れている、というような居心地の悪さを覚える。
『壬生義士伝』では「巧い」と思わせた技巧も、まるで自分の作品を模倣(パスティーシュ)するかのように再利用されると、ものすご〜く狡智が鼻につく感じ。才に溺る。
Posted by ブクログ
「壬生義士伝」の姉妹編というべき作品です。
さすがというか、読ませます。読者を如何に引き込むかの全力投球。浅田次郎らしい作品でしょう。
「壬生義士伝」は女性に人気でしたが、これはどうでしょう。女性を主人公に置いた分、むしろ女性には嫌われるかもしれません。
面白いのですが、やはり浅田次郎の歴史長編で気になるのは人物造形の振れです。場面場面で登場人物がまるで違う人物に見える言動をします。どこかに芯が有って「こんな風に見えるのだが、実は・・・」という書き方なら良いのですが。どうもプロット重視で、全体の流れからはみ出してしまってます。
その最たるものが最後の糸里に対する土方の言動です。(以下ネタバレ)
土方は芹沢暗殺の手引きをした糸里を口封じのため殺そうとします。一方その後、(予定の行動として)武士を捨て一緒に田舎に引きこもりたいと糸里を口説きます。最初からそうするつもりだったのなら、糸里を殺そうは考えなかったはずです。
まあ、そんな矛盾(しかも一番のシーンですからね)も含みながらでも読ませるのが浅田さんの力なのですが。