あらすじ
近藤勇と土方歳三らによる「芹沢鴨一派暗殺計画」は着々と進んでいた。芹沢暗殺は、いわば百姓が真の武士を殺すという凶事。音羽太夫を殺されて芹沢を恨んでいる糸里と土方の心の絆が強まる中で、計画を聞いた糸里は、ある決意をかためる。決行の日──予想外の展開が待ち構えていた! 黎明期の新選組の不器用な生きざまと、彼らに翻弄されながらも自らの道を誇り高く生きようとする女たち。運命の糸に操られた男と女の哀しみが滲み出る、浅田次郎ならではの感動傑作!
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なるほど。
後世に知られた近藤勇を局長とする新選組の成り立ちを、壬生郷士の妻たちと島原の芸妓たちの視点から語るということか。
新選組についてはいろんな角度から描いた作品を読んだけれど、最初の頃は決して純粋な義士ではなかった彼らが時代と権力者たちの思惑に呑み込まれて、他の道を選びようもなく使い捨てられた集団だということは一致している。
かっこいい逸話がありながらも、そのもの悲しさが語り継がれる本質の一つのように感じます。
それに加えて大部分が創作でしょうが歴史の表舞台に出てこない女性たちの強さを描いた点も本書の大きな特徴です。
壬生義士伝に負けず劣らずの素晴らしい作品でした。
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上巻を読み終わって下巻の表紙を見た時、髪も服も乱れた芸妓のイラスト、これだけでもう胸が締め付けられた。
新選組と関わりを持った女性達の悲しく儚く強く生きたお話。新選組が脇役になってしまうくらいの女性の書き方で、とにかく感動、涙無しには読めなかった。
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芹沢鴨が暗殺されるあの事件を島原大夫や前川家、八木家の女房、芹沢鴨と一緒に命を落とした梅といった女たちの視点で書かれている。
糸里天神と土方の別れのシーンは切ない。
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物語の縦糸に新撰組があり、話はそれに横から幾重にも幾条にも絡まる女性たちと共に流れていく。 女性は心底惚れた男のためなら、あんなにも強くなれるものなのだろうか・・・。 浅田さんは、「女というのは、剣を持たずに斬り合いができるらしい。」と結んだ。 親の愛を知らずに島原で育った女の、剣にも勝る強さを描く浅田さんの筆にまたホロリとさせられた。 これも再読本の棚に入れる。
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浅田次郎の新選組モノの女性目線版。
いやはや面白かった。一気に読んでしまいました。
物語としては文久三年の夏から芹沢鴨が暗殺される9月16日までの短い間の新選組とその周囲の女性達の物語。
一部沖田総司を語り部とする部分はあるが九割方は女性目線のお話。
この物語の面白いところは、史実上は我侭、酒乱、癇癪持ちの芹沢鴨を実に人間味豊かな本物の武士として描いている。
その反面、近藤勇は少し頼りなく、土方歳三は頭の切れる冷血漢として描かれています。
ペンの力の凄さを感じるこの作品は、題材が史実なだけに「大和屋の焼き討ち」「禁門の政変」最後のクライマックス「芹沢鴨暗殺」等の出来事は実際に起こったことですが、その史実に浅田次郎の推察(創作を含)で面白く味付けしてあり、史実を冷静に捉えないでこの小説だけ読むとまるで事実かと思ってしまう人が出るのでは?
もちろん浅田流の泣かせる部分もしっかりありました。
浅田次郎恐るべし!
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非常に面白かった。てっきり史実に基づいた話かと思ってしまったが、基本的に虚構のようらしい。浅田次郎の幕末ものは、思った以上に生き生きと登場人物が描かれており、面白く読める。巻末の現輪違屋の主人との対談で、輪違屋のご主人が肯定的にこの小説を評価していたのが印象的だった。
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面白かった!!新撰組が好きな人、そう思わない人も私はオススメ!
燃えよ剣で土方が好きです。がこの本で鬼の副長に出会えます!
複雑な思いもありますが…
新選組に翻弄されながらも悲しくも、強く生きた女たちの物語。
最後の方の女たちの思いは泣けてきます。
剣を持たない、女性の戦に感動しました。
また、芹沢の印象が変わった本でもある。
沖田、永倉の語りは良かった。そして斉藤はどんな本でも同じなのがファンにとっては嬉しです。
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なんか糸里は登場人物のひとりに過ぎないような扱いだが、悪役のイメージでしかなかった芹沢鴨のイメージが一新したのが新鮮だった。
女性心理を描こうとしているのだと思うけど、どうなんだろう… 女性からすればちょっと違うと感じるかもしれない。これはもう壬生義士伝へと続く新撰組本と割り切って読んだ方がのめり込めて面白いと思う。
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お梅も吉栄も糸里もおまさもお勝もみんな強い。
上巻では京言葉に慣れなくてなかなか物語の中に立てなかったけど、上巻のラストが衝撃だったからか、下巻は集中できた。
浅田次郎さんは、その時どう思ったかなど、良い意味で細かく描いてくれるからしっかり読むと読んだ甲斐があるのがいい。
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芹沢一派が悪者に描かれていないので、近藤一派がほかの新撰組物と違ってちょっと無愛想に描かれているのが新鮮。島原の花魁をはじめ、女たちの生きざまと矜持が胸に迫る。
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新選組隊士たちの姿を彼らに近い女性たちの視点を中心に語らせながら(特に壬生の八木家のおまさ、前川家のお勝が多い)芹沢鴨暗殺の騒動を描く。
上巻で隊士のルーツや背景などを永倉に語らせているのだが、新選組初心者がいちいち躓き調べながら読んだのでめちゃくちゃ時間がかかってしまい。しかも史実と比べたりしてしまったのでとてもドラマティックなのにのめり込むようには読めなかったのが残念。
八木家のおまさがけっこう好きなキャラクターだった。糸里をタイトルにしている割には出番が少ないような…芹沢はどうにかならんのか(良い方に)?ばかり考えながら読んでいた。
シラフ時は侍然としているが酒が入れば乱暴者の姿。人斬りに躊躇わずも子どもに好かれるようなところがあったり。ほんまはええ人なんちゃうん?と思いきや史実を辿るとまぁまぁな狼藉を働いていたり女遊びは当たり前だったり、なんだか捉えきれなくてモヤモヤ。一人の人間の中には整合性が取れない両極をはらんでいるものだなぁと。
武士の世の終わり、京都守護職と新選組の関係、尊皇攘夷…新選組とはなんだったのか、と考えずにいられなくなる。
幕末から維新はとっても複雑だ。
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ちょうど京都幕末維新をテーマにしたロゲイニングのチェックポイントを探しに京都(島原)を探訪していたところ、ふと輪違屋の文字を発見し、現存するその建物の歴史と風格を肌で感じ、あらためて本書を読むことにした。
壬生の浪士組から新撰組へと成長する中で、八木・前川家と新撰組の関係、芹沢や近藤・土方の目指す理想像の違いとそれに伴う内紛(暗殺)なども興味深いが、本書の真髄はなにより島原という花街に生きる女性のプライド。いろいろ幅広い分野で面白い浅田次郎再評価の一冊でした。
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新選組の近藤たちは、芹沢たちの暗殺を命じられます。“足軽と百姓が、真の武士を殺す(p266)”、斬ってはならぬ人間を斬るのです。
芹沢は酒乱で悪行も働いてきたように見えましたが、実は考えたうえでの行動で、やさしくて、どうしても嫌いになれませんでした。
また、戦場には刀を持たぬ四人の女(糸里、吉栄、お梅、おまさ)もいますが、“女というのは、剣を持たずに斬り合いができるらしい(p263)”のです。女たちの強さを思い知らされました。
特に糸里が、男たちに立ち向かい、はっきりと思いを伝えるところや、女としての幸せを吉栄にめぐんでしまうところに、惚れました。本の題名のとおり、主役は糸里だと思いました。
吉栄の子どもを立派に育てるという決意も、母としての強さを感じて好きです。
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輪違屋糸里の下巻。
待ったなしで芹沢鴨の暗殺があって、なんか幕末ってやっぱり暗いな~と思ってしまった。
百姓や町民だった新選組の各々が本当の武士である芹沢を殺すのに震えるわけですよ
時代の流れといえばあれだけど、なんか悲しい。
あと芹沢鴨めっちゃいい人。(だけどそれをうまく表現できない)
んで、おと女の人はやっぱ強いなーという印象。
もう惚れた腫れたを通り越している感じ、愛だの恋だの通り越してる
次元が違うというか、なんというか。
糸里は強い!土方成すすべなし!
そいで極めつけはお殿様への物申す場面とかもそう。
糸里や吉栄や音羽はもちろんのこと
おまささん・お勝さん・お梅さん等女性陣は
世の男性よりもクッソ強い…
泣きはしないが、なんか違う意味での幕末時代小説だと思う。
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新撰組を取り巻く女性の立場から見た非常に人間くさい新撰組の物語。
現代人から見ればどうにも度し難い男達で、それがまたリアル。なかなか面白い作品でした。
京都の壬生寺と屯所のあたりは散策した事があるけど、これを読んで行けばまた感じるものがあるかもしれません。糸里という天神も実在したらしいですよ
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女を苦しませる男を屑と規定すると、このお話にでてくる殆どの男がクズ。
それゆえに女たちが輝く。
強さも、弱さも、誇りも全てが美しい。
そして読んでいる間、いまはほとんど消えかけている、懐かしい京都の町と京ことばに包まれ心地がよい。
翻弄された町が、新しい世を迎えるまであと少し。
その間も、ずっと女たちは強く凛と生きていくのだろう。
心のなかに誰にも見えぬ強靭なる芯を貫いて。
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本作で印象が変わるのは芹沢鴨、土方歳三。今まで私が思ってきた新選組隊士達とは違う描かれ方をしている。
芹沢さんには自分を理解し過ぎた故の弱さ、侍として選ばざるを得ない矜持があり、人間味を感じた。他の新選組作品で描かれる巨悪の権化「芹沢鴨」とガラリと違う。
歳さんには隊の強化だけ考えて行動をとってもらってかまわない、百姓になるなんて言わないでほしい。糸里に対して身勝手過ぎる。それを受け入れた糸里は島原の女だからなのか、時代の女だからなのか。最後の選択は強い女ではなく哀れな男として読まないと歳さんを嫌いになってしまいそう。
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壬生義士伝シリーズ 第2弾。
続きものではないが、新選組を描いた作品。
壬生義士伝では新選組内部にいた者達をメインに描かれていたが、こちらは周りの女性達目線をメインに据えた描かれ方をされている。
新選組という名前が付く以前の壬生浪士の時代から、芹沢鴨を暗殺するところまでがこの物語である。
壬生義士伝では沖田総司はほぼ登場しなかったが、こちらは沖田の人柄などが多分に描かれいる。
貧困のあまり京都島原に売られて来た女性である糸里と吉栄の壮絶な人生やお勝、おまさ、お梅といったそれぞれ新選組と関わった女性達を通しても新選組が描かれている。
感想として、新選組を全く肯定出来ない。
人を無闇に殺して行く事が人心を掴み、時代を切り開く事に繋がると思えなかった。
ただそうしなくてはならない立場に置かれた気持ちは理解できたが、共感は出来なかった。
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芹沢鴨暗殺までの新撰組ってほんとろくなことしてねえよな、という熱量の低い感想しか出てこない。鴨の暗殺もなんかアホらしいし。
著者は農民が侍を倒すという補助戦で芹沢暗殺解体してみせた。そして、一つの集団における農民と侍の対立を描くにはどちらにも肩入れしない平等さが必要であり、新撰組にとって究極の他者である女の視点が採用された。本作で著者が必要に何人かの女の視点で新撰組を眺めるのは、構図を鮮明に見せるためだろう。新撰組という異様な半グレ集団に対峙するとき、それぞれ出自や生活環境の異なる女たちは、連帯意識を持たざるを得ない。女たちは最初から、新撰組の人々が追い求めていた、農民としてのコンプレックスを克服する可能性や侍としての誇りからは疎外されているからだ。
そして、男同士主導権争いの内ゲバという鏡に映された女たちのシスターフッド的連帯、という図式のシスターフッドが成立しているのは、女たちが徹底して政治から隔離されているからでもある。
本作をこのようなフェミニズム的な観点から読んだのは自分以外にはいないようである。本作の自分の読み方に基づくと、個人的なことは政治的なことといい始めた瞬間に女たちは政治的な分断に巻き込まれるのではないか?という問題が立ち上がる。
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知ってる話を違う視点から見るとこうなるという話で、その目の付け方はなかなか興味深かったが、元々が愉快な話ではないので、イマイチ入り込めなかった。でもまあ浅田さんらしい話でしたわ。
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読み終わるのにものすごく時間がかかってしまったけれど、面白かった。
愛情深くて とても強い女性たち。
強くこころに決めたことや、強く想う人がいれば、女の人は強く生きられるのかな と思います。
Posted by ブクログ
関西弁が全編に出てくるのでちょっと感情移入はしずらいかも。
だが、女の立場からみた新選組ということで、壬生義士伝とセットというのはそうであろう。
百姓と武士というテーマも深い。
「京都花街の経営学」という本を同時期に読んでいたのが、運命的に感じた。
一度京都にいってみたいものです。