山本一力のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『だいこん』、『つばき』に続くシリーズ三作目。
棄捐令の発令により、かつてない不景気の江戸の町。
ご多分に漏れず、仕事が減っていた大工の安治は、ある日薬種問屋〈蓬莱屋〉が看板の思案を募集している事を知り、“巨大提灯”というアイデアで応募しようと乗り出しますが・・・。
前二作は、つばきと彼女が営む一膳飯屋〈だいこん〉の話でしたが、今回はつばきの父親・安治がメインの物語です。
因みに、つばきは〈だいこん〉を知人のおてるに譲り、商いから身を引いて両親と同居している状況なので、今作では脇役という感じです。
さて、薬種問屋の看板コンペに安治と共に挑むのは、旧知の渡世人・弐蔵親分と、講釈師で絵心のある三太郎。
そして彼らをバックアップする大店の提灯屋〈ひさもと〉の協力を得て計画が進んでいきます。
マムシの絵がインパクト大の巨大提灯の案を思いついた安治は、一作目の『だいこん』の中でも仕入れの食材を運ぶ“桃太郎車”の発案をしたりと、何気にアイデアマンなんですよね。
そのマムシの元絵を担当する三太郎と、提灯屋〈ひさもと〉の職人頭・真之介の奇跡のような関係性のエピソードを絡めたりして話は進みます。
そして、山本作品ではお馴染みの“江戸のを粋”へのこだわりが本書でも随所に描かれていて、勿論それは良いのですがちょっとでも無粋な振舞いをするとすぐにピりつくのは、さすがに何だか面倒だな・・と、正直思ってしまいました。
とはいえ、安治たちが一丸となって挑む姿にはエールを送りたくなりましたし、コンペの競争相手の姑息な根回しにハラハラもしながら楽しく読ませて頂きました。
それだけに、ラストの展開には思わず愕然となりましたね。
話の中盤で、安治が弐蔵に“娘(つばき)の行く末を引き受けてくれ”と語った時に弐蔵に“言い遺しみてえなことを言うんじゃねえ”と返されている場面があったのですが、まさかこれがフラグとなるとは・・という感じです。
今作で意外とファザコンだったことが判明したつばきですが、彼女の今後と弐蔵との関係が変化するのか・・もし続きがあるなら、その辺気になるので読んでみたいですね。 -
Posted by ブクログ
『だいこん』の続編。
浅草から深川に移転し、新たに一膳飯屋〈だいこん〉(二代目)をオープンしたつばき。
習慣や仕来たりもわからない新しい町で、旧知の渡世人・“閻魔堂の弐蔵”に何かと教えてもらいつつ、深川に馴染もうと奮闘する日々です。
そんなつばきに、深川でも名の通った廻漕問屋から大口の注文が舞い込みますが・・・。
相変わらず、料理やお弁当のメニューに関してのアイディアは冴えているつばきですが、まだ年齢が若いということもあってか、経営者としての未熟さが目立った印象です。
気っ風が良くてストレートなのが、つばきの長所ではあるのですが、今回はそれが裏目に出て自身の思い込みで突っ走ってしまい、大切な事を見落としがちになる場面がありました。
大口注文を受けた時、大店からの依頼ということで前金をもらわなかったつばきに、弐蔵親分が「そんだけの仕入れをするてえのに、前金ももらわねえのはよう。太っ腹というよりも、素人の振舞いだぜ」と注意したのに対して、つばきは「素人で結構です」と切り口上で言い返す始末・・・“ちょ、つばき、前金は基本でしょうが?”と心配になりながら読み進めると、案の定大変な事になってしまっていました。
(で、結局騙りを仕掛けたのはどこのどいつだったのでしょうね・・?)
後半の場面でも、弐蔵親分が「棄捐令」に繋がる公儀の動きをつかんで(今後の景気に影響がでるので)、つばきに忠告しているのに棟梁・与五郎への恋に浮かれてスルーしていましたしねぇ。
で、この与五郎への想いも、急に恋に落ちて唐突に冷めるという変貌ぶりでしたが、今度は弐蔵親分を意識し始めた様子で、どうなることやら・・という感じです。
とはいえ、持ち前の“引き立てられ運”で、困難をチャンスに変えていくところは流石で、その辺の展開は面白く読ませて頂きました。
ラストは前述の「棄捐令」が発令されたことにより、今後の不景気突入を覚悟するところで終わっていましたが、これからのつばきの運命はどうなるのでしょうかね・・。
三作目も出ているようなので、是非読んでみたいです~。 -
Posted by ブクログ
久々の山本一力さん。
飯炊きの技と抜きん出た商才を持ったつばきが、若くして一膳飯屋〈だいこん〉を切り盛りする、成長と家族の物語です。
主人公・つばきは、三姉妹の長女。腕のいい大工の父・安治が博打で多額の借金を負ってしまい、一家は苦しい生活を強いられます。
ある時、炊き出しの手伝いをしたのを機に、飯炊きの才能を見出されたつばきは、9歳にして火の見番小屋の賄い係を担当することになります。
同じく賄いをしていた、つばきの母・みのぶは娘の飯炊きだけではない商才にも気づき、ゆくゆくはつばきに飯屋を開かせたいと思うようになりますが・・・。
結構なヴォリュームで、読み応えガッツリの人情噺でした。
序章では深川に新たに店を構えようとするつばきの様子が描かれていたので、ここから物語がスタートするかと思いきや、本書の内容はこの冒頭に至るまでの、所謂“回顧談”となっております。
第一部は、安治の借金で一家がひたすら苦労する内容で、特に安治が番所に連れていかれる下りは、不憫すぎてしんどかったですね。
それだけに、第二部でつばきが18歳で飯屋〈だいこん〉を浅草に開店し、持ち前の才覚で軌道に乗せていく展開は、読んでいてワクワクしました。
ご飯を美味しく炊けるだけではなく、経済感覚もあり、常に商いのアンテナを張っているつばきの商才には感心するものがあります。
そして、山本さんの小説ではお約束の“江戸っ子の心意気”がここでも描かれていて、その情緒を感じることができるのも良いですね。
才覚があって頑張り屋のつばきですが、ちょっと負けん気が強すぎる傾向にあり、せっかく浅草でうまくいっていた〈だいこん〉を、とある大店の店主の挑発に乗ってしまう形で(所謂“売り言葉に買い言葉”的なノリ)、店を閉めてしまうというのが、博打好きの安治の血を引いているからなのか、“そこは冷静&堅実にいくべきなのでは・・?”とさすがに思ってしまう私でした。
という流れで、浅草の店を閉めて新たに深川にオープンしますよ(そう、ここで冒頭に繋がる)。と、いうところで本書は終了します。
つばきの深川での奮闘を描いた続編も手元にあるので、これから取り掛かりたいと思います~。 -
Posted by ブクログ
古伊万里の里と、江戸を結んで陰謀がひそかに進んでいく、それぞれ江戸の日本橋のお店と佐賀の有田、皿山の町とそれぞれで進んでいく事件?出来事が大きくつながっていく。
ものすごく描写が細かい。江戸の町や、景色、人々の暮らしなどがとても細かく描写され、目の前に映像が浮かぶようです。
一方で、そちらに割かれ過ぎて、物語に入りづらいところも感じていました。
やがて隠密が入ってくるんですが、長く織り上げてきた物語が、意外に終わりがお粗末というか。。。え。。。って感じでした。
用意周到に準備している感じの隠密だったのになんかお粗末な終わりだな。。という正直消化不良っぽい終わり方でしたね。。。