山本一力のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
家庭の中にはさまざまな喜びと悲しみ、悔しみ、争いがひしめいている。
幸せそうに見える家族でも苦しみがある。
それは事実で、当事者は大きな心労を抱える。
小説とはそういう苦しみ、そして人間の業のようなものを描きながら、それらを否定しては生きてはいけない人間を慈しむ物だと感じている。
本作品は上方からやってきた豆腐職人が良き伴侶を得て、周囲の人々に助けられ努力の末成功する、そんな「良い話」で進みながら、家族間の思いの行き違いで家庭崩壊の道を辿るが最終的には家族が力を合わせて新しい道を進んでいく、というなんともベタなストーリーに思えてしまう。
話の中盤からのみんなに好かれていたはずの働き者で心優しい女房の変わり様、甘やかされた長男の愚れ方、彼に対する男親の仕打ち等、非常に乱れていく。
しかし、後半になると今までは夫婦の視点からだった話が子供達の視点から展開され、読者は(私は)、話が違うと思い始める。
この後半部分は中盤の伏線回収になっている。
なぜ男親は長男にあれ程危機感を抱いたのか、なぜ長男は賭場に出入りして荒れた生活をしたのか、なぜ弟は長男に従順なのかなどの謎が溶けていく。
まるでミステリー小説のやり方みたい。
ネットでは最後には涙が止まらない人情話、というふうな感想が多いのだけど、どうなんだろう、下町人情時代劇のテレビドラマ風だなあ。 -
Posted by ブクログ
1人の青年が仕事と恋愛に葛藤する様子を描いた作品です。
愛する気持ちをいつの間にか知っても、その愛が続くとは限らない。そんな誰もが経験するリアルが描かれています。
恋愛は不誠実なのに仕事は誠実。
何に対しても一直線に一生懸命で、目の前のこと、目の前にいる人を大切にする主人公健吾の生き方は、不思議となんだか憎めません。
物語ではワシントンハイツとの出会いが、後の健吾の人生に大きな影響を与えています。
私達も誰かや何かとの出会いが旋風となり、一瞬先の未来の自分と、遠い知らない誰かまで届いているのかもしれない。そう思うと、人生が少し愛おしく感じる気がしました。
社会に出たばかりの青年時代を懐かしく思う、そんな世代の方も面白く読める作品だと思います。 -
Posted by ブクログ
東京の下町にあるその名も『深川江戸資料館』のなかで一日を過ごしているような小説。
『深川江戸資料館』とはは知る人ぞ知る、江戸の町並を等身大で再現してあり歩けるスペース。あたかも江戸時代にタイムスリップしたような感じ。裏だなあり、火の見やぐらあり、白壁の土蔵あり、掘割、船宿、屋台、長屋の部屋、お店の造り、店先の品物など芸が細かい。吹き抜けになっていて上からのぞくと江戸時代の上空から見たよう。
登場人物の生きた時代を宝暦12年からと、かっきりと切り取って、背景の歴史的事実も調べて書き込んである、真実味が増すではないか。
まして、テーマは家族愛。実に身につまされること、穴があったら入りたくなる。
京風のとうふを江戸で売ることになった職人の二代にわたる物語。何てことない題材をこれだけ読ませるのはたいしたもの。夢中になり、読み急いでしまった。