あらすじ
上司の不始末の責めを負って同心の職を辞し、きっぱりと刀を捨てた喜八郎は、長屋住まいの庶民相手に鍋釜や小銭を貸す<損料屋>に身をやつした。といってもただの損料屋ではない。与力の秋山や深川のいなせな仲間たちと力を合わせ、巨利を貪る礼差たちと渡り合う。田沼バブルのはじけた江戸で繰り広げられる、息詰まる頭脳戦。時代小説に新風を吹き込んだ、直木賞作家・山本一力の輝かしいデビュー作。人情味と後味の爽快さは一作目から群を抜いてます。
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『損料屋喜八郎始末控え』シリーズ第1作。深川で小さな損料屋を営む喜八郎が、真っ当に生きる人たちの暮らしを守る姿を描く経済時代小説。4編からなる連作。再読。
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田沼バブル経済と定信緊縮財政。真逆の政治体制に翻弄される江戸が舞台です。
そして主人公は、深川で損料屋を営む元同心の喜八郎という男。この喜八郎が実に魅力的。
損料屋の規模は小さいものの、優れた洞察力と抜群の経営センスで大店の札差たちと互角以上に渡り合い、真っ当に生きる江戸の庶民たちの暮らしを守ろうとする喜八郎が、なんとも粋でカッコイイんです。
やはり何度読んでもおもしろい! シリーズ化が納得できるほどの出来栄えで、一力節の本領が存分に発揮された名作です。
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主人公の喜八郎を始め脇を固める登場人物たちが兎に角カッコイイ。敵役の伊勢屋ですら実にカッコイイ。巨利を貪る札差達との頭脳戦、も楽しいんだが、とにかく人物たちのカッコ良さを骨の髄まで楽しめる傑作。
そして深川八幡祭のクライマックスへの昇り方がまた呼吸を忘れさせてしまうほど。神輿の『差し上げ』なんて今まで見たことも無いし、当然挿絵なんかもついてないのに、脳内再生されたその粋っぷりに思わず涙腺崩壊。
続編もあるらしい。実に嬉しい。早く読まねば。
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巨利をむさぼる札差、借金にあえぐ御家人。これをたすける為に幕府は借金棒引き令を出すが…どこまでも強かな札差相手に損料屋が知恵を絞る短編集。最初は強欲な札差をやっつけるのが痛快だが、札差にも札差の立場があり、そちらからの視点も入ってくるのが公平だと感心する。何しろ元はといえば借金踏み倒す幕府の方が泥棒なのだ(笑)札差の逆襲などもまた読んでいて面白い。いつの世も金とは争いの種である☆
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自分にとっての初の山本一力作品。他の作品と通ずる深川を中心とした鯔背なオトコたちと彼らを支えるオンナたちの世界にハマりました。剣の腕に頼らず頭脳戦で繰り広げられる話は今まで自分が読んできた時代小説とは一線を画すもので、この部分だけでも読み応えがあります。また池波正太郎的に劇中の食に関する部分もリアルにそそられる点も良いです。
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山本一力のあかね空の前の作品。
損料屋、札差という初めて聞く職業とともに江戸時代の町人文化に触れられる快作!
喜八郎のかっこよさとともに、秋山、奉行という見守り、そして責任を引き受けるという上司のカッコヨサ・・・。
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喜八郎がカッコいい。
危なっかしい米屋政八を手助けする為、大手の札差たち(主に伊勢屋)と息詰まる頭脳戦を繰り広げるのですが、いつも冷静で隙がないクセに、江戸屋の女将に対してはなかなかグイグイいけないところがまた良いです。
そして、ラストの富岡八幡宮本祭で、驟雨の中で神輿に紛れての捕縛(?)シーンは圧巻。思わず頭の中でスローモーションで映像化してしまいました。
当時の江戸っ子たちの粋な姿も魅力です。
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必殺仕置人のような展開で、札差の悪事を主人公の損料屋になりをひそめた喜八郎が主人の旧知の与力 秋山と仲間とともに密かに解決していくという話で、江戸下町の粋な姿と絡みあって、とても面白かったです!
続編もあるようなので、喜八郎と江戸屋女将の秀弥との恋模様も気になるところです。
でも、江戸屋女将の秀弥は、初期の山本一力の作品には欠かさず登場する定番人物のようです。
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棄捐令の功罪は重く問われるなぁ
現代の日本とも見まごう不景気を
もたらした政策
多分2度目に読んだのですが、前回は
どことどこが敵対しているのか分かり
づらかった
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面白い。江戸の話だが、莫大な金を持ち、時代を謳歌していた札差屋が、幕府の政策で没落して行く栄枯盛衰の物語。ただ、借金を棒引きされて、一時は喜ぶ武家も、借金せざるを得ない構造で借金が難しくなると途端に借金を棒引きした担当者を恨んでしまうのが、現代と同じかも。主役は頭が切れてかっこいいのだが、悪役かと思うと別の顔もありそうな伊勢屋が気になります。続編を期待。
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鬼平犯科帳と同じ時代・地域が舞台だけに、読みながら色々とリンクしてくるのが面白い。どちらも表組織の奉行所から少し隠れた組織や人が活躍するのだけど、こちらはチャンバラが無い分、現代サスペンスに近い感じで読みやすいかも。富岡の周りを散策したくなった。
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これがシリーズ1作目か。2作目先に読んじゃった(笑)
こっちのほうがずっとおもしろかった♪
悪をたくらむ相手をスコーンとやっつけたり(でもちゃんと逃げ場は残しておいてやる)
なかなか爽快でした。
テレビの時代劇にしたら面白そうな感じ〜
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この、一筋縄でいかない人間関係、面白い! 一筋縄でいかない感は続編の「赤絵の桜」でも更に楽しめる。あー、オール讀物でどんどんこのシリーズを書いてください!
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山本一力氏を初めて読んだけど、面白かったです。無駄な説明がないから最初から30ページくらいまでは話がよく分からんかったけど、一旦話に入れたら後はスムーズ。主人公喜八郎と伊勢屋との駆け引きがいい。勧善懲悪の流れも気持ちいい。
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山本一力初トライ。はじめは、損料屋という職業や色々な役職名など江戸時代独特の用語に慣れずになんどもいったりきたりしながら読み進めた。が慣れてくると、おもしろくてどんどんすすんだ。地名に我が江東区の細かい地名がたくさん出てきて楽しい。こういうのを読んではその辺りを歩く、ってことをその都度やってみたいな。
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『あかね空』の山本一力氏のデビュー作とのこと。江戸時代、同心を辞し、町人となった喜八郎が、札差の悪事を暴くお話。江戸時代の景色が目に浮かんでくる。シリーズ化されているので、次も読んでみよう。
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山本周五郎、藤沢周平に続く凛とした時代小説の作家だと思う。
「万両駕籠」「騙り御前」「いわし祝言」「吹かずとも」
と連作長編。
江戸時代にはいろいろな職業があった。損料屋とは庶民に鍋釜ふとんをわずかなお金で貸すなりわい。侍だった喜八郎の仮の姿、転職組み。このキャラクター、ストイック。紺木綿の薄着で素足、背筋が通っている。目に力、かすれ声、若い。
その喜八郎が奉行所を辞めて損料屋になるについてのいきさつからこ憎い面白さ。役人の保身はいつの時代でもあるのだなー。ってあたりまえかな。
田沼時代のバブル崩壊後、札差という金貸し業が上に取り入り陰であくどくかせぎ、のさばるのを彼がある方法で、あくまでも冷静に底深く抵抗しくいとどめる。それが痛快である、あこがれるのである。
また全編、風雪雨季節のかおりがただよっている。それがうるさくないほどに。
江戸時代の経済のしくみが分かるし、お金にまつわるバブル後の現代に通じる話になっている。剣劇はことさらない、浮いた話もないが文章がうまくて、構成が凝っていてなかなか面白い。
山本一力 1948年生まれ。「あかね空」で126回直木賞。
うーむ、はまるかもしれない。
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直木賞作家・山本一力さんのデビュー作。
以前この人についてのテレビを見た事があります。起こした会社が倒産し、借金返済のために作家になったという、変わった経歴の持ち主。そんな経歴に引かれて手にとる気になったのですが。。。
「時代小説に新風を吹き込んだ」がうたい文句です。確かに札差達による経済戦争を背景にしていることは目新しいのですが、「新風」とまでは言い難いですね。背景以外は通常の捕物帳仕立てです。
大きな破綻もない代わりに、特に作者らしさのような物も感じられない。色々な作品を読んで、その延長で書いたらこんな作品が出来た。そんな感じの作品です。
とはいえ、それなりの完成度で、そこそこ楽しめました。これがデビュー作ですから、その後を期待したいと思います。
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上司の不始末の責めを負って同心の職を辞し、
刀を捨てた喜八郎。
庶民相手に鍋釜や小銭を貸す損料屋に。
元上役やいなせな仲間たちと力を合わせ、
巨利を貪る札差と渡り合う。
田沼バブルのはじけた江戸で繰り広げられる
息詰まる頭脳戦。
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昔の金貸しのお話。
そういうところには人間の色んな面が見え隠れする。
簡単に善人悪人を決めつけることはできないが、
人を見極める能力に長けた人がお金を動かす商売には向いてるんだろうな。と思った。
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連作短編集というべきか、長編というべきか。
主人公は「損料屋」を生業にしているが、この商売についての場面はほぼありません。
札差さんたちの商売あれこれの駆け引きがメイン。
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山本一力単行本デビュー作。
御家人を救うために借金を踏み倒す「棄捐令」。その後の締め貸し(貸し渋り)による景気低迷が、この後の山本一力の殆どの連作作品の時代背景となっている。日本経済の長期低迷と重ねあわせていたのだろうか。
上司の不始末の責めを負って同心の職を辞し、庶民相手に鍋釜や小銭を貸す損料屋に身をやつした喜八郎が、金の力を笠に着て巨利を貪る「札差」に立ち向かう。
その後の一連の深川人情物とは少し色合いが違い、シリーズを意識した作品。
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内容(「BOOK」データベースより)
上司の不始末の責めを負って同心の職を辞し、刀を捨てた喜八郎。庶民相手に鍋釜や小銭を貸す損料屋に身をやつし、与力の秋山や深川のいなせな仲間たちと力を合わせ、巨利を貪る札差たちと渡り合う。田沼バブルのはじけた江戸で繰り広げられる息詰まる頭脳戦。時代小説に新風を吹き込んだデビュー作。
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うちの家族は私を除いて皆時代小説が好きなのですが自分はあまり読まないのです。なぜか?なぜだろう…。この本は父が購入した本です。
時代小説はあまり読まない私ですが山本一力氏の『あかね空』は読みました。面白かったです。描写がとても精密でわかりやすいからでしょうか?
と、言うわけでこの本も両親に面白いよ、と言われて読みました。面白かったです。損料屋と言う職業自体初めて知りました。短編が4本ほど収録されているのですがただの勧善懲悪物にならない様が見事です。是非興味がありましたら一読をお勧めします。
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損料屋ってなに?
江戸の昔は鍋釜などの日用品を僅かな銭で貸す商売があったそうな。それが損料屋だそうで、本来は年寄りの生業なのだけど、喜八郎はバリバリの現役男前。
札差の米屋・喜八郎Vs伊勢屋・笠倉屋の神経戦。