内田樹のレビュー一覧
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フェミニズムはマルクシズムと同様、「理論の過剰適用」によって人びとの支持を失うことになったと著者は考えます。「フェミニズム言語論」と題された本書の第1部では、ショシャナ・フェルマンというフェミニズム文学批評の研究者の仕事などを参照しながら、フェミニズムの観点からテクストを裁く態度は、テクストという場において他者との出会いを待ち受ける姿勢からは程遠いものだということを論じています。
「フェミニズム映画論」と題された第2部は、著者の十八番ともいうべき『エイリアン』分析が展開されています。『エイリアン』の中に込められた性的メタファーを読み解きつつ、ジェンダーにまつわる人びとの無意識の反映を「発見」していく著者の批評的実践は、「検閲」に終始する態度とは異なる、フェミニズム批評の豊穣性を受け継いでいくためのヒントを提供してくれているように思います。 -
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ともに柔軟な哲学的思考の実践者として有名な、内田樹と鷲田清一の対談と、二人の論考を収録している本です。
内田も鷲田も、身体感覚と他者感覚を重視する点では同じような立場に立っていると言えるでしょうが、内田に比べると鷲田の議論には制度論的な視角が目立たないような気がします。その意味では、「大人のいない国」という表題は、どちらかと言えば内田がこれまであつかってきたテーマに寄っている印象を受けます。
ただそのことは、内田の立場の優れているところであると同時に、他者感覚の重視が共同体論へとスムーズにつながってしまう彼の議論の危うさを含んでいるのではないかという気がしないでもありません。 -
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日本のナショナル・アイデンティティは、「アメリカにとって自分は何者であるのか」という問いをめぐって構築されてきたという観点から、日米関係について考察をおこなっています。さらに、ファスト・フードや戦争、児童虐待、訴訟社会、キリスト教といったテーマを取り上げ、アメリカという国家のあり方を解き明かそうとしています。
いつから内田樹は岸田秀になってしまったのか、と言いたくなるような、精神分析的な観点からのアメリカ社会の考察が展開されています。個々の議論ではおもしろいところも多々あったのですが、全体の枠組みについていけないところもあります。これまで著者に対して共感するところも多かっただけに、ちょっと残念です。 -
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2014年6月、テロ組織ISILの指導者がイスラム教の指導者であるカリフに就任して、カリフ制を復活させることを宣言した。この事件より前からイスラム学者の中田考氏がカリフ制の再興を訴えていたと知り、本書を手に取ってみた。
本書はユダヤ哲学の研究者でもある内田樹氏との対談をまとめたものであるが、前半は内田氏の視点からの比較文化論やグローバリゼーションへの警鐘が中心で、中田氏の視点からの中東情勢分析、イスラム的世界観は後半に述べられている。興味深いのはやはり後半の方で、現代にカリフ制を再興させる意義については、なるほどと考えさせられるところはある。しかし、この本の内容だけで何かを判断できるほどでもないというのが正直な感想。
中東やイスラムは地理的にも、感情的にも遠い世界で、あまり縁のない話というのが多くの日本人の感覚だったと思うが、もう他人ごとでは済まされない状況になりつつある。まずは様々な視点から現代を見ることから始めたいと思う。 -
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下の弟に薦められ読んでみる。
思想家、内田樹氏とイスラーム学者中田氏との対談。
殆どイスラームの事を知らなかったので勉強になる。
アメリカの世界戦略は、すでに国家を形成している非イスラーム圏に対してはグローバル化を進め、国民国家を解体する方向で圧力をかける、元々遊牧民で国、自分の領土と言う概念が薄いイスラーム圏に対しては逆に国民国家を強化し規制しやすい体制に持っていこうとしている。と言う意見は面白いが、イスラームの中でも利権に目が眩みまた宗派の違い、自己利益の為に資本主義に同調するものもいる。現在の混乱をアメリカのせいにしているように聞こえるが、イスラームの中でも団結して資本主義にNOと言えればこんな混乱にはならないのではとも思う。
イスラームの国々でもこれからますます豊かになっていくと思うが、その中で「富を分け合う」文化を成熟させていけるか、資本主義の欲に負け、シフトして行ってしまうのかは、イスラームの人達の心の問題ではないだろうか。
【学】
イスラーム
礼拝を日に5度
豚と酒禁止
男性の服装は膝からお臍までを隠せ
偶像崇拝禁止
ラマダン、施しの文化、食べ物、水が少ない土地で皆で分け合う、共有の文化
・イスラームの宗教感
イスラームこそが、アダム以来の予言者たちの宗教、オリジナルであり、キリスト教はイエスの福音を直弟子の後に続く世代が謝って解釈し歪曲して作り上げたもの。ユダヤ教はモーセの律法をイスラエルの民が歪曲、改編を重ねたものをラビ達が集大成したもの。
ユダヤ教、キリスト教、イスラームの3つの宗教の共通理解として、人類の太祖アダムこそが神から教えを授かった最初の人間です。
アダム、ノア、アブラハム等はすべてイスラームを説いた予言者であり、モーセ、タビィデ、ソロモン、イエス、ムハンマドは、このイスラームを説く予言者の系列に属するとイスラームは考える
・ハラール
イスラームが食べてよいものを許可する「ハラール」だが、むしろイスラームの教養に反する大罪だと思っている。本来ならば、個々の食べ物については、一人一人が神に聞き、自分で決めるものが、権威を装ってハラールを決めている。イスラームには聖職者はいない。
昔は国境何てものは無かった。帝国主義列強の国とり合戦で切り取られた領域が元となり、それが後に独立して国家になった。 -
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内田樹と春日武彦の対談です。おおむね内田のほうが春日の専門領域にアクセスを図りつつみずからの思想を語っているという印象です。
精神の病に逃げ込むことで「低値安定」してしまう人びとが増えていることへの危惧が語られ、身体に基づく知の衰えを嘆くなど、かなり思いきった発言が飛び交っていて、刺激的な議論でした。
春日の著書にはかなり「とんがった」言葉が散見されるのですが、本書ではむしろ内田のラディカルさがストレートに出ている印象です。内田にしてはややバランスを欠いているような気もするのですが、こういう思いきった言葉が聞けるのも、対談本の醍醐味かもしれません。