内田樹のレビュー一覧
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内田樹本はほとんど読んでいる。日垣隆さんの『つながる読書術』で紹介されていた、この内田本は、読んでいなかったので、購入。
最近のうちだ本より少し難解。内田さんが、売れっ子になる前い大学の紀要などに投稿したものも含まれているためだろう。
(1)(フェミニズムに対して)、もし性差のもたらす弊害を実質的に廃絶することを人々がほんとうに望んでいるのなら、「性差については語らない」というのが、一番効果的な方法だろうと思う。(p219)
(2)(ラカンを例にして)読者が「テクストに意味がわからない」のは、ほとんどの場合、それが読者に理解されないように書かれているからである。(p260)
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もう、内田樹さんの本をどれだけの数読んだだろう。相変わらず、視点が独特で、かつ、その話しの展開が論理的で面白い。著者独自のこの書き方にも、だんだんと慣れてきて、初めて出会った時ほどの衝撃はないけれども、文体が体に馴染んで、内容がスッと入ってくる心地よさも感じられるようになってきた。
よく「ポストが人を作る」と言いますけど、ほんとうにそうなんです。「ポスト」というのは言い換えれば「他者からの期待」ということです。こういう能力を持つ人が、こういうクオリティの仕事を完遂してくれたら「ありがたいな」という周囲の人々の期待がポストに就いた人の潜在能力を賦活する。(p.25)
「患者さま」という呼称を -
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内田さんは、武道家で哲学者、名越さんは精神科医、橋口さんは小説家。
三人が、原発事故のあとに鼎談。
なんとなく、もやもやした国の雰囲気を、三人とも感じている。
①内田:僕、原発の事故が起きてから今日まで、とにかく自分が変わらなきゃいけないと思ってきた。発想も変えなければいけないし、生き方も変えなければいけないし、身体組成も変えなければいけないって。そうしないと状況に対処できないじゃない。(p95)
②橋口:何かにむかって、他の人のことを祈っているのだけど、自分と自分のまわりの世界がわーとみえてくる。私利私欲だけを見つめているときには得られない感覚なんですね。(p66)
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本書の一番面白いところは、「あとがき」なのではないかと思う。筆者である内田樹氏は本書の「あとがき」で、文庫化される以前に書かれたテキスト(『狼少年のパラドクス――ウチダ式教育再生論』収録のテキスト)と現在の考えに乖離があることを率直に述べている。
その乖離は、大学の自己評価に対する考え方の変化の中で生じている。本書に収録されたエッセイの中で、内田氏は大学および大学教員の自己評価を積極的に推進しようとしている。しかしそうして自己評価が始められるようになってすぐに、「評価コスト」の問題――大学の自己評価は、コストに比してパフォーマンスが低くならざるを得ないこと――に気づく。そうした気づきのあとに行 -
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ネタバレまいど、内田先生には刺激をうけますね。間違いない。
本書は大学論ということもあり、一般的な、社会的なというよりは非常に限られた世界のお話になっている。
ただ、教育論という視点からもずばっとぐいっという話もあるのでそういう意味では、自己マネジメントやコーチングにも役立つ。
以下、引用
長年、武道の稽古をしてきてわかったことの一つは、技術上のブレークスルーは「そんなことができると思ってもいなかったことができてしまった」という経験だということです。それを目指して稽古していたわけではないのに、ある日不意に「そのような身体の使い方があるとは思いもしなかった身体の使い方」ができるようになる。できたあ -
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ネタバレなにかを学び始めてすぐは、「見えなかった」ものがすこしでも「見えた」、ということに興奮して、
じつはまだ「見えてないものもある」ってことには文字通り目を向けなくなりがちです。
ですから、別の視点を切り開くために、
内田樹の意見は定期的にチェックするようにしています。
この本でも、脳科学の発達とともに、否定されたわけじゃないけどなんとなく目を向けられなくなってしまった「脳以外の身体の感覚」に着目しています。
そのうち話はしぜんと人間の歴史や文化にとび、
ふるくなったものにもかわらず真理がある、ということを感じさせられます。
論理的にはっきりわかるものとおなじくらい、あいまいなものも大切にすべ -
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内田樹さんは、哲学者、武道家。
最近、文庫になったこの本を購入。
先週は、今をつめる本が多かったので、休日の今日は軽い本から登場。
①判断が誤りであることが事後的に明らかになったら、その責任をとって、粛然と制裁を受ける覚悟がある人間だけが、「マニュアルがない」状況で判断をくだすことができる。(p138)
②少数派というのはつねに必要だと思うのです。政治的な機能としても、少数派は集団のバランスをとる役割を果たすものだと思います。
③僕が毎日たくさんものを書くのは、基本的に理解したいからなんです。(中略)じつは書き出す前は何もわかっていなくて、最後まで書いてみてやっとわか -
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「14歳」という、とてもセンシティブで微妙な精神状態にある現代っ子の「心の中」を、大人であっても覗き見ることができる画期的良書。
現代の環境(社会的、家庭的)が・・つまり「氏と育ち」で子どもたちの教育を論ずるのは当たり前すぎるくらい当然の考察ではあるが、この二人の切り口はちょっと違う。抽象的になりがちな「精神論」をこれほど納得できる言説ができるのは二人が現代でも卓越した「日本人」だからである。
一番印象的に残った一文は「トラウマ」が話題になったところで
人間は記憶を改ざんしたり、忘れたりすることが前提なのに過去のある一点の出来事・・つまり「トラウマ」が今のこういう自分を作り上げているという -
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ネタバレMBSラジオ「朝からてんコモリ」に季節ごとに登場される内田 樹氏。
いつもとてもいい話が聞ける。
その内田氏の本を本屋さんで見つけたので即購入。
その「「おじさん」的思考」を読みました。
内田氏の生き方、考え方について書かれたとても面白い本でした。
特に第一章の「「おじさん」の正しい思想的態度」では教育やエロスについて、第4章の「「大人」になることー漱石の場合」では人間として大人とは?について、とても興味深く書かれていました。
この本は一つの生き方のテキストとして、手元において何度も読みた本です。
内田氏の他の本と夏目漱石の「虞美人草」、「こころ」も見つけて読みたいと思います。 -
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内田先生の本は、これで3冊目。
今回は、日本の教育現場(特に大学)が、どのような状況になっているか、というスタート地点から、なぜ今の学生の知力が落ちてしまったか、大学の質が落ちてしまっているのか、等々のテーマについて、いつものように歯に衣着せぬ物言いで、持論を展開している。
いくつも印象的なフレーズがある。
「学校というのは、子どもに「自分は何を知らないのか」を学ばせる場である。一方、受験勉強は、「自分が何を知っているか」を誇示することである。
「世の中には自分の知らないことがたくさんあるんだ、と思うことが出来れば、それだけで学校に行った甲斐がある。
「日本の子ども達の学力が落ちてい -
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村上春樹作品をめぐるエッセイのような。
著者さんの日常も楽しく読むことができつつ、
村上文学の秘密を次々に教えてもらえるお得な本。
ひとつの本質的なことがらについても視点やたとえを少しずつ変えて
ぐるりと書かれている感じが面白くってわかりやすい。
これまで村上春樹さんの作品を、
読んで気持ちがよくて、「読みたい何か」が書いてあるような・・
くらいの理由で楽しんでいたけれど、教えてもらうと改めて
おお・・そうだったのか~、と感動、たくさん付箋がついた。
言葉の使い方から倍音的な要素、「雪かき」や共同体の捉え方など。。
でも、そんな村上作品の秘密も探せばまだまだありそうな気が、
著者さんの力の抜 -
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内田樹の街場のアメリカ論を読みました。現在の日本はアメリカの大きな影響下にあるので、現在の日本を考えるためにはアメリカについて考える必要がある。そのために素人の立場からアメリカ論を書いてみよう、というエッセイでした。歴史を振り返るときに、歴史の転換点でなぜこうなったのか、という視点だけでなく、他の可能性もあったのに、なぜそれらの可能性は実現しなかったのか、という視点でも考えてみようという質問の立て方で議論されています。アメリカの影響下にあって、日本人が利益を得ている部分は大きいけれど、アメリカ自体でも問題が顕在化しているような事柄まで取り込んでしまう傾向があるのはいかがなものか、と感じました。
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