内田樹のレビュー一覧
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あの世からこの世、彼岸と此岸、hereとthere、これら遠く離れたところを行き来して、物事を見つめようというのが宗教性なんですな、と理解。客観視の究極の形か。
また、善業を積み重ねることで浄土にいけるという考え方は子供的な浄土観であり、人間中心主義に過ぎないというのが、なるほどー。念仏をたくさん唱えて善業ポイントを稼げば天国にいける権利を得られる、つまり自分の力でなんとかできるのだと考えることこそが甘い、そもそも人間の考える善悪の判断など移り変わるもので、あなたの善悪判断基準は、こことは違うあの世や彼岸で通じるという保証など何もない、だから「他力本願」なのだというのが親鸞なのかなと思った。 -
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ネタバレテレビ、出版、新聞、音楽…。
そういったマスメディアが衰退していっている昨今、
その意味をときあかしていくのが本書です。
大学のメディア論の講義をまとめたものなので、
語りかける感じで進んでいきます。
第一回の「キャリア教育」では、
これこそ、メディアの世界で生きていこうとしている大学生を対象に、
まず、その前段階である、仕事というもの、適性というもの、の説明から入ります。
仕事が適性に合っていない、自分の能力がここでは発揮できないというようなことで
仕事を変えていくのは間違っている、仕事とはそういうものではないと著者は述べます。
そしてびしっと彼なりの答えと理路を教えてくれます。
そん -
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実に刺激的で面白い。身を乗り出したくなるような話題が次々登場するので、一気に読んでしまった。
・「尊師は空を飛ぶんです」と言うオウム信者の若者に対してどう応ずるのがいいのか。
・「創世記」の「イサク奉献」は何を意味するのか。
・この世の成り立ちについて「何も知らない。わからない」という自覚がニヒリズムに結びつかないためには何が必要か。
・「オカルト」と科学の境界線とは何か。
もちろん、これらについて述べられていることがぜーんぶわかった!というわけではない。最後の対談でお二人がおっしゃっているように十年くらいかけて繰り返し読んでいきたい。 -
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合気道の道場で神棚を拝み、大学では賛美歌を歌い、いずれ菩提寺で戒名をいただく「シンクレティスト」内田先生と、浄土真宗の僧侶である釈先生による、丁々発止の往復書簡。いやあ面白かった。
宗教的な態度とは「世界と存在を超えるもの」に対する謙虚な構えであるという内田先生の言葉に、まずはうんうんと納得する。
「喩えて言えば、『どういうルールで行われているのかわからないゲームに、気がついたらもうプレイヤーとして参加していた』というのが人間の立ち位置だと思います。
このときに、『私には分からないけれどもこのゲームを始めたものがあり、そうである以上、このゲームにはルールがあるはずだ』というふうに推論する -
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これ実は単行本で別の名前ででていて、あとがきに内田さんが注意しているのに、また、文庫本で買ってしまった。
なんか、宗教の本に惹かれるところに自分の弱さや疲れが感じされるが、あまり自分を責めないでおこう。
内田さんが浄土真宗のお坊さんである釈さんんにいろいろ厳しい質問をして、釈さんが答えるという手紙文のやりとり形式。
内田さんの最後の「釈先生の話をきいていると、本当に日本の仏教っていいなあって気がしてきます。宗教がもたらす美徳があるとしたら、その最大のものは寛容だと思うんですよ。」(p163)
これにつきるな。自分の宗教の中での寛容さだけでなく、その外、他の宗教や無宗教的な人へ -
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(以下引用)
このような条項が入っているのは独立戦争のときにアメリカには正規軍が整備されていなかったことが理由にあります。国家的独立を守るためには市民全員が武装しなければ間に合わないという状況的要請があって、市民の武装はむしろ国家の側から懇請されたのです。その結果、アメリカでは二億二千二百万の銃が民間に存在し、毎年二万人が銃で殺されるという銃大国になっていますが、それはまた別の話です。(P.156)
訴訟に至らないまでも、大学にクレームをつけてくる親の数は年々急増しています。これは大学人としての言い分ですが、それほどに大学の教育サービスの質が落ちたとは思いません。むしろ、トラブルが起きた時に -
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日本人の「嘘みたいな本当の話」を集めることで、日本とは何かを見出そうとした、日本版ナショナル・ストーリープロジェクト。
収録されているそれぞれのストーリーももちろん面白いのだけれども、それ以上に内田樹氏の解説と、最後の批評的対談が面白い。
ポール・オースターのナショナル・ストーリー・プロジェクトでは、その人独自の社会・文化的背景を持つ個人が、それぞれのストーリーの中から浮かび上がってきたのに対し、本書の中で紹介されている日本人たちのストーリーは、ほとんど同じ形式を持ち、他の人にも共感してもらえること=「あるある!」と共感を持って読んでもらえるようなストーリー。
このことは、本書に収録されてい -
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街場の中国論からアメリカ論を続けて読みました。数年前のアメリカ論ですが、今でも読んで損はない内容でした。
アメリカンドリーム
This is America
アメリカのイメージっていつも強気で夢が叶うようで、自由で・・・そんなイメージのアメリカと、その中に囚われたアメリカ病が凄く納得できました。
「アメリカは初めから夢の国である」という考えがまさに全てだと感じました。アメリカに対する期待はアメリカが出来てからずーーっと、(アメリカ人だってもそうじゃない人も)変わらないんだね。
現状、覇権国家として、先進国として今までのアメリカのイメージが崩れてきた今だからこそ、この本の内容がすっとはいり -
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キャリア教育の抱える問題点は、
著者がいろんなとこに書いているけれど、
教育現場は実学を教える場所ではない、
というのは一貫した主張であるし、わたしもそう思う。
キャリア教育や教育ビジネスが間違っているのは、
教育が本来担っている「社会の成員を育成する」
ということをまったく勘定に入れずに、
個人主義や市場原理主義のアポリアに陥っているところである。
そもそも市場原理は、
ある条件のもと個人の利益を最大化するように市場に参加する人々が振る舞えば、
結果的に公共の利益にもなる、
という考えである(たぶん)。
しかし現在は「長期的に見る」という点がすっぽり抜け落ちてい -
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例によって、なるほどと納得する快感を味わった。線を引いた箇所の抜き書きだけ読み返すと、普通のことしか言っていないみたいですが、そこにもっていく展開に説得力があり、エンタメ的サービス精神にもあふれています。以下、ページ数はすべてバジリコ刊の単行本のページ数。
「格差社会」というのは、格差が拡大し、固定化した社会というよりはむしろ、金の全能性が過大評価されたせいで人間を序列化する基準として金以外のものさしがなくなった社会のことではないのか。(111ページ)
法規と現実のあいだに齟齬があるときには、「事情のわかった大人」が弾力的に法規を解釈することは決して悪いことではない(中略)
だが、