内田樹のレビュー一覧
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告白すると、10年ほど前まで自分は、たとえば「日本は世界に誇れる国になるべきだ」なんてことを考える人間だった。
保守とか革新とかイデオロギーといったものに深く興味を持ったことはないけれど、位置的にはかなり保守で、今もそれはさして変わらないのだけれど、ぐらぐらしたのは内田樹先生の本と出会ったから。
「『日本は世界に誇れる国になるべきだ』なんて偉そうに言うけれど、そもそも国って何かなんて考えたことある?」
内田先生はいつも物事を根本に立ち返って考える。だから容易に結論が出ないのだけれど、その思考の過程、有り体に言えば、「のらりくらり」とした感じが癖になる。
そこから、それまで考えもしなかった結論が -
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数ある(著者の)著作の中でも、わりに好きな主題(「呪詛」と「贈与」)であったため、面白く読めた。ものすごく大雑把になるが、他者や外部に対する敬意がそこに底流しているからこそ、なかなか気持ちよく読めるのだと思う。最近普通に生活をしていて、どのように他者に対して敬意を払えるかということが、自分の中で自覚的になっている。敬意を払うというのは、何も相手の言うことを何でも尊重するとか、争いごとを避けるためのマナーとして(だけ)の行為の話ではない。お互いの”知的パフォーマンスを活性化"させたいがために、敬意を払いたいのだと思う。それは最終的に「正解」を求めたいからとか言うよりも、単純にお互いのパ
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ネタバレ「呪詛」と「贈与」を主題にした『新潮45』での不定期連載の内容と、 東日本大震災で露呈したグローバル資本主義と日本的システムの問題点に対する考察をまとめた一冊。
以下、印象に残ったところ。
◇子供たちに「身の程を知らせる」という学校教育の重要機能
一方で本の後半では、有事に対応出来る"フツーじゃない"人材を育てる重要性を 説いている。
あれ?矛盾してね?と思った瞬間、ハッとした。「身の程を知る」事と、「フツーの人間になる」事を混同していた・・ 。
「身の程を知る」とは「出来る事と出来ない事を認識する事」であって、別に
「出来る事を抑制してフツーになる事」ではない。 -
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本の中で象徴的な「ギルティフリー商品※」をこう説明してくれている。
「誰もが「私は存在することそれ自体によって、何か罪を犯しているのではないか」という有責感を、
程度の差こそあれ抱いている。その心の隅にある「疚しさ」を標的にして「この商品を買うとその疚しさが緩和されますよ」とささやきかける」
ことによって商品を売り付ける新手の商法だということ
行き詰った今の市場経済で、消費行動の動機づけにはもってこいだ。。
そりゃ近所のスーパーに行けば、こぞってみんなエコバッグ使ってるわ。
「商品購入を通じて自分が趣味がいいとか、
知的であるとか、成熟しているとか、
政治的に正しいとか、さらには「地球に優 -
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挑発的でキャッチーなタイトルに騙されてはいけない。
これは超高度なフェミニズム論、哲学論である。
哲学に馴染みがない人(=俺)には敷居が高いが、
これほど哲学を噛み砕いて書ける学者はいないと思う。
こういう人は哲学界では本当に貴重。
あとがきから読み始めれば
作者のイイタイコトがつかみやすいかも。
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「『女だから』という理由で、その社会的能力を軽んじてはならない」という主張に私は同意する。けれども、それを「社会的能力は性差に優先する」と読み替えることには同意しない。
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この作者の価値観が
本書の根底に流れる思想であり、
自分のもっとも共感した部分 -
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あぁ‥かっこいい。
『街場の文体論』も読みたい。
私には難しいかなと探るように読み始めだけれど、とても読みやすかった。(理解したかどうかはともかく)
知らない書名、知らない人のオンパレードだった「文芸棚」「人文棚」「ウチダ本棚」の章からとにかく楽しかった。
そして「教育棚」「著作権棚」「表現とリテラシー」には比較的身近に感じる話題について、目から鱗な話がハッキリキッパリ書かれていた。格好良かった。
「卒論の書き方」なんて、学生の時に読んでいたら‥!と、どうしようもないことを考えてしまう。
一番興味深かったのは著作権についての考え方。
そして人とともに「死ぬ」言葉のこと。
人通りの多い場所で