内田樹のレビュー一覧
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イスラム、ユダヤ教に関する討議はもちろんとても勉強になったし面白かったのだけど、現在のアメリカ主導のグローバリズムに関する話が特に面白かった。
今の英語教育、グローバル化というのは結局日本が繁栄する手段というよりアメリカ主導の資本主義の中で個人プレーでどう成功するかの手段にすぎない。わたしもなんとなくグローバル人材という耳触りの良さで英語を勉強したりや海外勤務を希望したりしていたのだけど、自分が目指していたものは一体何なんだ??と考えさせられた。
もう少し自分の働き方というか、行動の軸を詰めて考えたい、と思わせられた本だった。内田樹の本ってだいたいそうなるんだけど。 -
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ネタバレ橋本治と内田樹の2004~2005年の対談本。「私的なところがなく」「自分のことなんかどうでもいいと思っている」(ただし自己犠牲的な意味では全くなくて)とにかく天才としかいいようのない橋本治の魅力が浮き上がる内容になっている。早世といってもいい年齢での逝去が惜しい。
興味深い対話がたくさんあったが、今読んで特筆だなぁと思うのは、能力を必要とする「参考にする」という行為がだんだんできなくなり「参加」するしかなくなってきて、「全員参加型社会になる」という兆しを指摘している点。15年後のいま、まさに参加する/しないの二択しかないかのような世の中になっているが、中間である縁側を設けてそこに身を置き、 -
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久しぶりの内田本(といっても対談集)。結果的に、誰も予想し得なかった形で五輪はポシャッた(あ、まだ延期か)訳だけど、このタイミングだからこそ読みたい一冊。皆がいったん、五輪どころではなくなり、そっちの方面に関しては冷静になれている今だからこそ、本当に、どうしてもやる価値があるものなのかどうか、改めて見つめ直すべきではないか。もう、あらかたの設備投資金は積み上がりきってしまっているのかもしれないけど、それを更に積み増して、来年開催という博打に打って出るのが正しい判断なのか。昨今のこれだけ大きな有事に及んでなお、きな臭さが漂いまくる現政権が、一部の熱狂を背景に推し進めてきた事業、という側面を忘れて
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世界遺産の熊野を歩いて、これを読むと最高に面白い。
聖地に足を運び、「この世ならざるもの」を感じ取ること、とある。
熊野に触れると本当に圧倒される。
「場」の神道と「語り」の仏教、神仏習合がある。でもシンプルにそれだけでなく、仏教から新道的な要素を削いだり、廃仏毀釈があった。
聖地の中枢へ熊野古道をめぐるとなんとも山深い。
あの空間で登ったり下ったりしてると、歩行瞑想になる。
熊野本宮大社と大斎原、熊野川には圧倒される。
こちらは瞑想から目覚めて、全てから解放される感じ。
これに源氏と平氏が出てくる。
馬と船の戦い、確かに馬と船が周辺の神社にある。
色々まざるまざる。
そして一編 -
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氏から学んだことは、知を自分なりにマッピングする能力だ。自分が知っていることよりも、何を知らないかの重要性を学んだ。なぜならこの能力があれば、困難な今の時代を、生き残ることが出来るからだ。
沢山本を読めば良いというわけでない。
自分で自分自身に対して、問題提起をしなくてはならない。その過程で、他者がどう考えたかを知ることは、伝統的な知の技術で、これ以外の方法で現状を打破することは、難しい。
氏の語り口は、非常にわかりやすい。
しかし氏の問題提起は、非常に厳しく、
また深い。稀代のマッピング能力を持っているなと、確信して言える。日本では、数少ないインテリだと思う。
わかりやすい本を読んでも -
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非常に面白い。イスラーム学の第一人者、中田考と内田樹の一神教問答。イスラム教とキリスト教、ユダヤ教の共通点と違いがわかるとともに、イスラム、西洋諸国、日本などの国の成り立ち、文化、歴史、政治、関係性等々が見えてくる。
P48で中田氏が「日本では「ケチ」と言う時、強欲と吝嗇を分けませんが、イスラームにおいてはまったく違う概念なのです。強欲なのは構わない。しかし吝嗇は最大の悪口なのです」と発言したのに対し、「内田氏は嫌煙という発想は本質的に吝嗇の文化」と話を展開する。
なるほど、日本も煙草を分け合うような文化から西洋風に変化してしまったけれど(領域国民国家)、イスラムは今も共有の文化なのだ。
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ネタバレよかった。多くの人に向けて文章を書きたいと思っていたので、見事にささった。
おもしろい、読みたいと思われる文や物語には、解釈がないのだと思った。今さらなのかもしれないけども。そこを混同していた。解釈は読む人がくわえるもの、書く人は描写をするか、誤解を生むような解釈の文章を書かなければいけない。
文章だけでなく、ビジネスやマーケティングへの示唆にも富んでると感じた。買いたいと思ってもらえるものは、きっぱりと分かるものではなく「なんかよくわからないもの」である。
そのわからなさに人は惹かれる。さらに話は広がって「経済」や「貨幣」についても言及。貨幣の価値や役割を学びたかったので勉強になった。 -
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カミュについて語ったタイトルになってる論考を読みたくて買う。
反抗、を、ためらい、と読み替えるとこにやっと納得。
カミュとかそのことを読んでていつも違和感のある、反抗とかの厳しい言葉と内容のあいまいさ。
ためらい、だ。
感情を失った理念を批判するペストはまさにこれだろう。人間らしいためらいを忘れた人間の恐ろしさ。
SNSには、ためらいを感じるための「顔」がない。
ムルソーの状態だ。
そうではなく、顔と顔を向き合わせて発言すること。
そのときにためらいがうまれるだろう。
それは弱さではない、抗いだ。
自分の中にある正義への抗いだ。
スピノザは、道徳的な絶対的な善悪を否定し、倫理的なよい -
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世界の解像度が上がる本。
例えば、社会制度についての是非だけでなく、是と非が変遷する過程や、変遷する方法を考える一節があった。
なるほど、知識人とは思考法が違うのかと思った。つまり、知識の量という軸に加えて、視点の置き方という軸が他人よりもきめ細かく、二次元的に解像度が高い印象を受けた。
それから、題名の通り、疲れて眠れぬ夜に読むことが多かったが、内容が頭に入ってきた。
本当に頭の良い人は、難しいことを簡単に言う。
これは入門書の極意だろうか。読んでいるうちに、著者内田樹の頭の中の論理展開を支える理論を知りたくなった。
文章は各所で、小難しい理論や現行制度に対して、「そもそもニンゲンは、、