内田樹のレビュー一覧

  • 街場の親子論 父と娘の困難なものがたり

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    離婚はしていないけど、ひとり娘を持つ父という意味では立場が同じなので、どうしても感情移入が強くなってしまう。かの内田樹だからこその部分もあろうけど、娘から父親に向けられた感謝・敬意の念に、思わずほろりとさせられてしまった。

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    2020年06月29日
  • 一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教

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    イスラム、ユダヤ教に関する討議はもちろんとても勉強になったし面白かったのだけど、現在のアメリカ主導のグローバリズムに関する話が特に面白かった。
    今の英語教育、グローバル化というのは結局日本が繁栄する手段というよりアメリカ主導の資本主義の中で個人プレーでどう成功するかの手段にすぎない。わたしもなんとなくグローバル人材という耳触りの良さで英語を勉強したりや海外勤務を希望したりしていたのだけど、自分が目指していたものは一体何なんだ??と考えさせられた。
    もう少し自分の働き方というか、行動の軸を詰めて考えたい、と思わせられた本だった。内田樹の本ってだいたいそうなるんだけど。

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    2020年06月21日
  • 橋本治と内田樹

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    ネタバレ

    橋本治と内田樹の2004~2005年の対談本。「私的なところがなく」「自分のことなんかどうでもいいと思っている」(ただし自己犠牲的な意味では全くなくて)とにかく天才としかいいようのない橋本治の魅力が浮き上がる内容になっている。早世といってもいい年齢での逝去が惜しい。

    興味深い対話がたくさんあったが、今読んで特筆だなぁと思うのは、能力を必要とする「参考にする」という行為がだんだんできなくなり「参加」するしかなくなってきて、「全員参加型社会になる」という兆しを指摘している点。15年後のいま、まさに参加する/しないの二択しかないかのような世の中になっているが、中間である縁側を設けてそこに身を置き、

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    2020年05月10日
  • 街場の五輪論

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    久しぶりの内田本(といっても対談集)。結果的に、誰も予想し得なかった形で五輪はポシャッた(あ、まだ延期か)訳だけど、このタイミングだからこそ読みたい一冊。皆がいったん、五輪どころではなくなり、そっちの方面に関しては冷静になれている今だからこそ、本当に、どうしてもやる価値があるものなのかどうか、改めて見つめ直すべきではないか。もう、あらかたの設備投資金は積み上がりきってしまっているのかもしれないけど、それを更に積み増して、来年開催という博打に打って出るのが正しい判断なのか。昨今のこれだけ大きな有事に及んでなお、きな臭さが漂いまくる現政権が、一部の熱狂を背景に推し進めてきた事業、という側面を忘れて

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    2020年05月08日
  • 日本辺境論

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    日本には根底に流れる「美意識」がない事が西欧との違いである。ここに立脚して、太平洋戦争や日本の右翼左翼の矛盾や国際社会での日本人の問題点を炙り出す。メッセージの中身よりメタメッセージを重視するとか。それを地政学的辺境性に起因して論じているところが面白い。

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    2020年05月05日
  • 先生はえらい

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    売れっ子作家が中高生向けに書いた学習論。最近学生に聞いたら「内田樹は入試頻出作家なんですよ」とのこと。オススメ!

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    2020年05月04日
  • しょぼい生活革命

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    おもしろかったな~
    P91
    「完全な仕組みを求めることは、人間が道徳的にふるまう義務を免ずるという副作用をもたらすことに無自覚すぎるような気がします。」
    ハッとした。そうか! これまで気づかなかった視点。
    P94の貨幣を呼び込むコツは贈与すること、にも納得。これも大事な視点だなぁ。

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    2020年04月14日
  • 日本戦後史論

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    強烈な本であった。知的に刺激を受ける。
    特にアメリカで、木材産業の自立に向けた話をした後では。
    補助金のことをたくさん言われたけれど、その歴史性などを明らかにする必要があるなぁ。
    林業が自立できない背景には、日本社会の構造的な課題があるように思えて仕方がない。

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    2020年04月03日
  • 街場のメディア論

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    本を書くことは、贈り物をすること。
    本を読むことは、贈り物を受け取ること。

    その交換を円滑化するために、貨幣が発明された。

    上記は、コミュニケーション全般に当てはまる。

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    2020年04月03日
  • しょぼい生活革命

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     責任は俺がとる、と言ったらその仕事はうまくいく(「失敗したらお前らのせいだ」と言ったら絶対にうまくいかない)。貨幣を呼び込むコツは贈与。中小企業の経営者は実はプロレタリアート。税金や年金などの社会保障に関する支払いは共同体を維持するための持ち出し(自分に積み立てるものではない)。戦争が嫌いな理由はバカが威張るから。知性は思いもかけないところから生まれる。
     ただ、韓国映画や韓国文学はエンタメでありながら自国を相対化できていて素晴らしいと思いますが、政治体制はどうでしょうか…

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    2020年03月16日
  • 聖地巡礼 ライジング  熊野紀行

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    世界遺産の熊野を歩いて、これを読むと最高に面白い。

    聖地に足を運び、「この世ならざるもの」を感じ取ること、とある。

    熊野に触れると本当に圧倒される。

    「場」の神道と「語り」の仏教、神仏習合がある。でもシンプルにそれだけでなく、仏教から新道的な要素を削いだり、廃仏毀釈があった。

    聖地の中枢へ熊野古道をめぐるとなんとも山深い。
    あの空間で登ったり下ったりしてると、歩行瞑想になる。

    熊野本宮大社と大斎原、熊野川には圧倒される。
    こちらは瞑想から目覚めて、全てから解放される感じ。

    これに源氏と平氏が出てくる。
    馬と船の戦い、確かに馬と船が周辺の神社にある。
    色々まざるまざる。

    そして一編

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    2020年02月22日
  • 大人のいない国

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    小気味良い対談の終章はとくに面白かった。「オメオメ」とか「ノコノコ」といったオノマトペがなぜ伝わるのかだとか、定型に万感をこめて余白をのこすことだとか、「利」でなく「理」で動く政治家がいないことだとか。
    知性あるお二人のやりとりは、行間たっぷりであるのにまとまっている。

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    2020年01月31日
  • 先生はえらい

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    内田さんらしい一冊です。タイトルの意味が読み終わるまでわかりません。いやきっと私は誤解していると思いますが...。コミュニケーションと言うもの、学ぶと言うこと、それらについて考えることができます。「誤解の幅」「訂正の扉」、これらは自動車のハンドルの遊びとかで例える場合もありますが、確かに必要です。なぜ必要かと言うと、コミュニケーション継続のため、そしてなぜコミュニケーションが必要かと言うと?この辺は書くと長くなるので、ぜひお読みください。

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    2020年01月27日
  • 街場のアメリカ論

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    こんなアメリカ論を、大学の授業で聞いてみたかった。様々な視点から、アメリカがなぜこのような国になったのかを論じていて面白い。
    「日本人は従者の呪いにかけられており、アメリカ人に対して倫理的になることができない。」という病識を持つことが、未熟から成熟へ移行していく上で欠かせないことを気づかせてくれる。
    さすが、内田樹先生である。

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    2020年01月07日
  • 先生はえらい

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    自分が先入観にとらわれている事に気付かせられた。一冊かけて筆者は「先生」「コミュニケーション」についての凝り固まった考え方を解いてくれた気がする。
    謎に対する考え方は十人十色で皆違っていいと思えた。

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    2019年12月22日
  • 日本の覚醒のために

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    氏から学んだことは、知を自分なりにマッピングする能力だ。自分が知っていることよりも、何を知らないかの重要性を学んだ。なぜならこの能力があれば、困難な今の時代を、生き残ることが出来るからだ。

    沢山本を読めば良いというわけでない。
    自分で自分自身に対して、問題提起をしなくてはならない。その過程で、他者がどう考えたかを知ることは、伝統的な知の技術で、これ以外の方法で現状を打破することは、難しい。

    氏の語り口は、非常にわかりやすい。
    しかし氏の問題提起は、非常に厳しく、
    また深い。稀代のマッピング能力を持っているなと、確信して言える。日本では、数少ないインテリだと思う。

    わかりやすい本を読んでも

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    2019年12月14日
  • 一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教

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    非常に面白い。イスラーム学の第一人者、中田考と内田樹の一神教問答。イスラム教とキリスト教、ユダヤ教の共通点と違いがわかるとともに、イスラム、西洋諸国、日本などの国の成り立ち、文化、歴史、政治、関係性等々が見えてくる。

    P48で中田氏が「日本では「ケチ」と言う時、強欲と吝嗇を分けませんが、イスラームにおいてはまったく違う概念なのです。強欲なのは構わない。しかし吝嗇は最大の悪口なのです」と発言したのに対し、「内田氏は嫌煙という発想は本質的に吝嗇の文化」と話を展開する。
    なるほど、日本も煙草を分け合うような文化から西洋風に変化してしまったけれど(領域国民国家)、イスラムは今も共有の文化なのだ。

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    2019年12月11日
  • 先生はえらい

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    ネタバレ

    よかった。多くの人に向けて文章を書きたいと思っていたので、見事にささった。

    おもしろい、読みたいと思われる文や物語には、解釈がないのだと思った。今さらなのかもしれないけども。そこを混同していた。解釈は読む人がくわえるもの、書く人は描写をするか、誤解を生むような解釈の文章を書かなければいけない。

    文章だけでなく、ビジネスやマーケティングへの示唆にも富んでると感じた。買いたいと思ってもらえるものは、きっぱりと分かるものではなく「なんかよくわからないもの」である。

    そのわからなさに人は惹かれる。さらに話は広がって「経済」や「貨幣」についても言及。貨幣の価値や役割を学びたかったので勉強になった。

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    2020年05月15日
  • ためらいの倫理学 戦争・性・物語

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    カミュについて語ったタイトルになってる論考を読みたくて買う。

    反抗、を、ためらい、と読み替えるとこにやっと納得。
    カミュとかそのことを読んでていつも違和感のある、反抗とかの厳しい言葉と内容のあいまいさ。

    ためらい、だ。

    感情を失った理念を批判するペストはまさにこれだろう。人間らしいためらいを忘れた人間の恐ろしさ。

    SNSには、ためらいを感じるための「顔」がない。
    ムルソーの状態だ。
    そうではなく、顔と顔を向き合わせて発言すること。
    そのときにためらいがうまれるだろう。
    それは弱さではない、抗いだ。
    自分の中にある正義への抗いだ。

    スピノザは、道徳的な絶対的な善悪を否定し、倫理的なよい

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    2019年10月28日
  • 疲れすぎて眠れぬ夜のために

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    世界の解像度が上がる本。
    例えば、社会制度についての是非だけでなく、是と非が変遷する過程や、変遷する方法を考える一節があった。
    なるほど、知識人とは思考法が違うのかと思った。つまり、知識の量という軸に加えて、視点の置き方という軸が他人よりもきめ細かく、二次元的に解像度が高い印象を受けた。

    それから、題名の通り、疲れて眠れぬ夜に読むことが多かったが、内容が頭に入ってきた。
    本当に頭の良い人は、難しいことを簡単に言う。
    これは入門書の極意だろうか。読んでいるうちに、著者内田樹の頭の中の論理展開を支える理論を知りたくなった。

    文章は各所で、小難しい理論や現行制度に対して、「そもそもニンゲンは、、

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    2019年10月18日