内田樹のレビュー一覧
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面白かった。
本人も書いておられるように「ずいぶん力んで書いている」力作であります。
消費者として全てを同時性の中で生き、世の中を等価交換で見る体質。
こういったことが学びを馬鹿にし、労働を無意味なものと見る価値観に結びつくと見る。
解明していく際の気押される程の勢いある文章に引き込まれて行く。
学校内の状況は改善はされてきているのだろうか。
ニートの数は減少しているのだろうか。
外からは見えない隠れた部分。実態を知る術が無いが、良くなってきていることを望む。
対談部分は文庫化に際して削っても良かった気がする。何か著者にもしがらみがあるのかも知れないが… -
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ネタバレ内田樹自身による自分の著作物紹介。
リストアップされた自著の解説、というよりそれを契機に思いついた話を展開するというウチダ先生のいつもの流れ。ともあれ1冊で何冊分ものウチダ節を聴けるお得なものとなっている。
1.ためらいの倫理学
著者のデビュー作。フェミニストなどの「正しさ」に欠けている「倫理」の考察。
2.先生はえらい
中高生向けに初めて書かれた師弟論、教育論。教師に勇気を与える内容。内容が大学入試に多く採用されることで有名。
3.レヴィナス序説
コリン・デイヴィスによるレヴィナスの解説書を和訳したもの。
フランソワ・ポワリエ「暴力と聖性」は読みやすい。
サロモン・マルカ「レヴィナ -
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本書は現代社会に蔓延する「生きづらさ」を緩和するために、政治や教育における最善の選択肢を提示し、想定されうる暗い未来について思考が停止する日本の国民性については批判的に書かれている。本書では「生きづらさ」を、自分の機嫌が損なわれる場所にいることで起こる心身の不一致と定義している。本書では「生きやすさ」について直接語られることはない。なぜなら文中で列挙されていた「生きづらさ」やその要因を再考し、解消していくことで、心身のズレが修正され、自由度が増し、その結果生きやすくなるという筆者のメッセージだからである。そして我々は後の世代へ「生きづらさ」を残してはいけない。
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『健全な身体に狂気は宿る』
日系大企業から外資系企業に転職し、まず聞かれたことが「あなたのDifferentiatorは何か?」ということだった。そして、海外から来た上司や英語話者によって、Differentiatorと強みは同義ということにも衝撃を受けた。差異がそのまま強みになる。あなたにとって何が人と違うところなのかという問いを突き付けられ、あなたにしかできないことはなんですかと聴かれることは初めてであり、爽快だった。本書でも、自分のミッションを考えるときは、自分が他の人とどう違うかということを考えると言う点があり、先述の考えに非常に近いなと感じた。さらに、もう一歩踏み込んで、自分自身の -
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ネタバレめちゃめちゃ面白かった。
時事系のエッセイを読むのは初めてな上、トピックは2018年ごろのものが多く若干古かったが、どの章も楽しんで読むことができた。
筆者の語り口がとてもロジカルで冷静であることが特に印象的だった。全体的に内容は暗く、日本に対する警鐘を鳴らすものが多かったが、特に筆者が悲観的な見方をしてるわけではなかったので、日本の将来に正しく危機感が持てたと思う。
他の著作も読んでみたいととても思った!
【余談】『トップガン』を見て、(1986年、戦後40年しか経ってない時期によくこの映画が日本で流行ったな…)と思ったことがあるが、この本のあとがきを読んで、その理由が分かった。 -
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ネタバレ武田鉄矢さんのラジオを聞いていると、内田先生の話がしばしば。ずっと気になっていた人だけど、やっと一冊手に取ることになりました。民主主義とは何か、株式会社と民主主義、アメリカとの関係と護憲の問題、リバタリアニズム、それと大学の話。自分の考え方がいかに薄っぺらな表面的なものなのか、改めて考えさせられる一冊でした。先生は「皆が言っていないようなことを言う」と本人がおっしゃっているけど、確かに。根っこにこういうもんだいがあって、そこから考えると見える姿も変わる。もう少し色々勉強したいと思わされる深い内容でした。そして、株式会社と民主主義を改めて考える機会を持てたのは、自分にとってとても良いタイミングだ
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『変調 日本の古典講義』 内田樹×安田登
本書のあとがきで、安田登さんが内田樹の本について、読み終わったあとに何も覚えていないということをお話されていたが、全く同じことを私も正直なところ、思っていた。おそらく大学1年生から約10年間で70冊程度の内田樹の著作を読み漁ってきたが、この本について何が語られていたのかを話すのは至難の業である。ただ、全く覚えていないのであるが、読んでいる途中の自分、読んだ後の自分は不可逆的に何か違うものになっていることはわかる。
特に、読んでいる最中には、どこかで思考のスイッチが入り、今自分の身の回りで起きていることや仕事等で悩んでいたことへの打開策が見えてくるとい -
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学生時代、政治社会学やガバナンス、政治思想哲学だとかに関心があって、内田先生の『ためらいの倫理学』を読んだ。
その本が面白かったのと、本書の帯の紹介文にそそられて買った一冊。
自己啓発本は苦手だけど、「風」なタイトルなだけで、実際の内容は現代政治思想史に近いかなと思った。
雑誌や新聞への寄稿を集めて一冊の本にしているもので、明確な起承転結があるわけではない。
気に入った文をまとめておく。
P222-223
〈生き延びる方途は皆さんが自分で見つけるか、創り出すなりするしかない。
(中略)
そして、その選択の成否については自分で責任を取るしかない。誰も皆さんに代わって「人生の選択を誤った」こと -
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当たりの本でした。
大人とは、幅のある人。本音と建前とか。矛盾を理解。
今は一様、幅がない。
・学びの意味、価値は事後的に知る。消費者マインドは受入れ不可。
・個性とは他者から与えられるもの。探すものではない。
・対話:両義的。善し悪しを理解して変わらないと成果ではない。
・周りの大人の価値観はずれてた方がいい。両親の価値観一致は有害な条件。心のひだ(人としての幅)ができる。
・SNS 投稿は呪い。だから匿名が有効。ネットのでのいじめ自殺は呪殺。言論の自由は呪詛を許容するわけではない。誤解。
言論の自由とは、何でも言って良いのではなく、その価値、扱いを世間に決めてもらうことに同意すること。
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現在のシステムの潮流でのカタストロフィの生じる前の方向転換を撤退論としている。
コモンの再生と撤退ということで、斎藤幸平が、『資本主義から撤退して里山に行くだけでは不十分。何故ならそのままでは、資本主義が里山を含めた環境を破壊するから。』と言っていたところに納得。彼はだからこそ資本主義は止めなければならないという。当方はまだ、サステナビリティは社会という形での対応が必要と思っている。戦争、技術進化などに対応する上で、経済を止め切ることはできないと思うため。
撤退とは、単に行くか戻るかの二者択一を意味しない。そのような二者択一を自分に迫っている世界観とは、全く異なる世界観へのパラダイムシフトを -
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夜明け前が一番暗い
以下、引用
未来予測をするのは当たった場合に自分の治世の順調な機能を言祝ぐためではない。外れたときに自分がどんなデータを見落としたのか、どんな情報を過剰評価したのか、主観的願望が状況判断にどれほどバイアスとかけたのか点検するためである。 P18
私たちは自分の利口さを誇示するのと同じ程度の努力を、自分の馬鹿さを適切に開示するためにも向けるべきなのだ。 P19
無作法と批評性は相関しない。 (中略)。依頼、人の文章を読むときには、「批評的でありながら礼儀正しい言葉遣いができる」かどうかを読む基準としている。P33
己の人生が須臾であることを、生涯をかけて踏破しうる空 -
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ネタバレふわっとしていた結婚や結婚生活についての捉え方が非常に明確になるだけでなく、葛藤や人間的成熟など哲学的な視点も豊富で、個人的には金言に溢れた一冊となった。
見方によっては、硬派で時代錯誤的な結婚観と捉える人もいるかなとは思ったが。
「祝辞」も示唆に富み、読み応えがあった。
以下、気になった内容の要約。
■結婚
・結婚というのは、
①「病めるとき」や「貧しいとき」といった人生の危機を生き延びるための安全保障契約
②配偶者双方にとって市民的成熟のためにきわめて有意義な訓練の場
・配偶者を選ぶときに絶対見ておくべきは、「健康で、お金があって、万事うまくいってるときに、どれくらいハッピーになれるか」