【感想・ネタバレ】君たちのための自由論 ゲリラ的な学びのすすめのレビュー

あらすじ

かたや哲学者であり武道家、かたやアフリカ・マリ出身の元大学学長。2人の個性派教育者による、自由すぎるアドバイスとメッセージ。曰く、「管理から逃れて創造的であるために、もっと“だらだら”しよう」「“ゲリラ的”な仕掛けで、異質なもの同士の化学反応を生み出そう」「将来は“なんとなく”決めるべし」「“なんでやねん!”とツッコミを入れて、自らの中に問を立てよ」等々。若い人たちが「大化け」するためのアドバイスとメッセージを、コロナ禍の教育現場から発信。かくも窮屈で不自由な世界を、君たちはどう生くべきか? 京都精華大学で行われた人気講義「自由論」をもとに、新規に語り下ろした対談などを加えて構成。

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Posted by ブクログ

自由と平等を取り持つ第三項としての「友愛(博愛)」について、「友愛」の成立に不可欠であるとされる、共同体と個人には深い共通性と繋がりがあるという身体的実感が、宋明理学でいうところの「万物一体」論と相似形ではないかと疑問に思った。

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2024年02月11日

Posted by ブクログ

もう少しリラックスして物事を考えませんか?そして世間の事象に問いを投げかけよう。窮屈で定型化された日本社会に生きる人には刺さる部分が多い。
新参者をニワカと揶揄したり、学力という一つのベクトルで評価したり、当たり前に行われている窮屈な物事に問いを投げかけて考え、自分なりの柔和な考え方を身につけるのは大事だ。

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2023年11月17日

Posted by ブクログ

P171自分の居場所の見つけ方という部分が非常に良かった。内田老師のよく言っていることではあるが、ポワンカレを引いて「知性の働きは違うところにあるものを同じものだと気づくことにある」というメッセージは自分自身の好みにも合致する。「これってあれだよね?」という直感はなんとも表現しがたい恍惚感と快感がある。常に抽象と具体を高速で行き来し、一見全く別のものに見える概念の共通点やフラクタル性に気づくことは何にも代えがたい感覚だ。さらに、内田老師のようにレヴィナスと合気道という一見全く異なる分野になんらかの共通点を直感し、その両者を極めることで、唯一無二の存在になることができるという点も含蓄がある。1つの分野を極めることも素晴らしいが、その中でトップで存在し続けることは難しい。しかし、2つ目、3つ目の線を立てていった場合、その交差点を極める人々が急激に少なくなる。自分自身、福利厚生保険という領域は、人事領域と保険領域の結節点であり、さらにはそこに西洋中世史で学んだコミュニティ論やギルド論の時間軸の掛け合わせや中高で学んだ仏教の考え方も参考になる。さらには人事領域も結局のところ、「人間がいかに能力を最大化できるか」という部分ととらえれば、深い人間理解という意味で哲学が重要になってくる。哲学で言えば、内田老師もそうであるが、私はサルトルも好きなので、近年のエンゲージメントという言葉について考えるとき、サルトルの重要な哲学概念であるアンガージュマン(英仏での発音が違うだけ)を想起してしまう。近年注目されつつあるが、人類学的な分野で贈与論は、ビジネス領域でも示唆があると考えられ、本も出ている。無数の「これってあれのことだよね?」という結節点が浮かぶ中で、非常に今満足しているし、その分、「あれ」を増やすための物語や概念を渇望し、貪るように本を読んでいるということもある。

また、最後にP184 で内田老師の以下の発言がある。
「日本はたしかにもう泥船です。それは事実です。もう沈みかけている。でも、その時に泥船を捨てて逃げろというスマートでエゴイスティックな解とは別に、なんとかもたせて沈むまでの時間を先送りに資、その間にできるだけ多くのモノを救い出すという泥臭い仕事も誰かが担うべきだと思うんです。それこそが市民の役割であり、責任だと思う。船底に空いた穴をふさいだり、いらない荷物を海に捨てたりして浮力を稼いで、この国を少しでも長く生き永らえさせようとすること。それも大切な市民の仕事だと思います。」

非常に共感するし、内田老師を左翼と批判する面々も世の中にいるが、(そもそも右翼とか左翼という物言いにも辟易しているが)やっぱり内田老師の日本という国への愛と感じるのである。いや、日本という国への愛というより、結局は想像の共同体であるというクールな国家観をベースとした中で、その中で日本と言う国にいる集団の能力を最大化するには、そして一人でも多くの人を幸福な暮らしのうちで生きてもらうにはどのような物語が必要であるか、そこに彼自身の興味と、やはり日本と言う国への矜持があるのではないかと思う。私は、今外資系企業に勤めているが、内田老師と同じように、仮に泥船だとしても、日本と言う国を活かし続けるために何ができるかという課題意識はずっとあるし、私自身は社会保障が先細りする中で企業がセーフティネットの一部を代替するをいうカルチャーの醸成を民間サイドで担うとともに、一市民として、それではあぶれてしまう子供の貧困やそれに基づく教育格差について政治的な是正の必要性を訴える政党に投票したいと考えている。そして、日本を活かしていきたいと思うからこそ、海外に行きたいと思うし、国籍の違う人々の考え方を吸収するために、外資系の多国籍企業に在籍している。

また、ゲゼルシャフト、ゲマインシャフトの中間のような形で、アメリカのアソシエーションのような非常に親密でありながら個人の意思で自由に参加できるゲノッセンシャフトというものがあることを知った。そして、そうした共同体を立ち上げ、維持するためには、明確な組織のミッションとそれを先人から贈与されたものであると言う物語が必要であると記載がある。企業におけるパーパスという部分にもつながる話ではないだろうか。私自身、福利厚生保険をやる中で企業と言うものが、もちろんゲマインシャフトではないが、完全なるゲゼルシャフトでもないように思えていた。そのため、ゲノッセンシャフトというある種の2つのコミュニティの形のアウフハーベンした形のこの概念には惹かれるものがあった。

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2023年02月26日

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丁々発止 ではなく
まったり のんびり ともちがう
なんと申しましょうか

(関西言葉での)ええ かげん
が ちょうど当てはまる気がします
お二人の対談

肩の力の抜け方
腹の座り方
とても 心地よい座談に感じました

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2025年06月06日

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自由とは何か、自ら問いを立てるところから始まるという話だった。目から鱗だった。「国際共通性のある話をする」というのは、コロナ禍のオンライン授業では必要になるコミュニケーションスキルかなと思う。自分ごととして、これからの日本社会の在り方をはじめとした未来のことや物事をとらえることが大事だと思った。

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2024年11月04日

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内田樹の本を読んできて思うのは、また同じこと言ってる、ってことだ。でも何度でも読みたい。社会制度や人としての生き方についての内容が多いが大上段から構えるんじゃなく読んでる人の腑に落ちることを言う。
”日本人として”ではなく”人として”普通はそう考えるよね、ってことを言う。そういう目線で今の日本を眺めるといろんな問題の根っこは「その当事者が利己的に振る舞っている」ことなんじゃないかと思えてくる。

面白かった。

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2023年11月30日

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バックグラウンドが違う学生同士で研究を進めることは、空気を読むだけではできず、良い「共感と理解」以外で付き合う練習になると思う。

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2023年06月26日

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この本は、ウスビ・サコ先生と内田先生の対談をベースに構成されている。

異色の経歴を経て学長を務めるサコ先生のグローバルな視点から、自由、人生論や今の日本の教育体制への不満、ひいては日本人への熱烈なバッシング。

対談がベースとなっているため、話が長くなりすぎたり、小難しい話を有識者同士で語り合う場面もあった、しかし最終章は主張がとても分かりやすく、読者に目掛けたメッセージがとても熱かった。

日々を漫然と過ごしている僕と同じような学生諸君、必見である。

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2023年05月28日

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相変わらず学びがあり、相変わらず溜飲が下がり、相変わらず少しだけ希望が湧いた。日本や世界の、現状が現状だけに少しだけだが(笑)

【親切】
帚木蓬生の「ネガティヴケイパビリティ」で、「親切」ということがこれからのキーワードだと思ったが、内田樹もまた、親切という美徳をアカデミアの世界でも重んじるべきだと言う。「正直」「親切」「愉快」!

「学校教育で1番大事なことは『歓待する』ということだと思います。教室に入ってきた人たちに対して『ようこそ、あなたの席はここにあります。あなたの存在は固有名において承認されています。あなたはここに座って学ぶ権利があります。私はあなたがここで学ぶことを望んでいます。』そう告げることだと思います。歓待すること、承認すること、祝福すること。教育の本務はそれに尽くされると思います。」p97
強く同意。


【人口減】
人口減は全世界的な現象だが、キャリング・キャパシティ(環境収容力)を考えたらこれ以上人口が無限に増え続けることは無理。この自然の摂理をどう受け入れるか。
中国政府が親たち教師たちに「宿題を出すな、塾に行かせるな、家庭教師を雇うな、予備校のオンライン講義を受けさせるな」という圧力は、受験戦争の「勝ち組」にリソースを集中させて、階層が固定化される社会では危機の時代に対応できないと指導部が気づいているせいだと言う。本当に中国政府が気づいているかどうかは別として、この内田の指摘は、なるほどと思った。
それに反して日本の人口減対策は都市一極集中シナリオと地方の過疎化・無住地化政策をりだらだらと続けている。内田樹はこの選択は必ず失敗すると言う。
 

【ホスピタリティ】
この人口減から今後、日本、韓国、中国で生産年齢人口の移民労働者の争奪戦が起きるだろう。

「賃金が安い日本へアジアの若い人たちに来てもらうとしたら、日本にはもうホスピタリティしか売り物がないと思うんです。ご飯が美味しくて、治安がよくて、気候が温和で、風景の美しい国であることは世界中が知ってますから、あとは人心が穏やかで、海外からの人を常に歓迎しますというオープンマインドな気持ちさせ示せれば、それてわ十分に日本より高い賃金が出せる韓国や中国とも渡り合えると思うんです。けれども、それをしようとしない。それどころか、レイシストがネットで暴言を吐き散らし、外国人技能実習生が差別され、入管では非人道的な暴力がふるわれている。」p202

 人種も言語も宗教も生活文化も異なる人たちと生活空間を共有するには
「隣人同士できちんとした社会契約を結び、それを守ること。『それは契約違反である』というかたちでクレームをつけることはできますけれど、『理解できない』とか『共感できない』と言うことを理由に他者を排除すべきでなはない」「もうひとつは歓待の気持ちです。人口減・高齢化で危機に瀕した日本を助けにきてくれて『ありがとう』という気持ちをもって海外から来る人に接することです」p206
これもまたキーワードは「親切」だ。


【「自由」と「平等」そして「親切」】
「今世界で最も裕福な8人の個人資産は、それ以外の36億人の資産と同額」であるのは、「自由の過剰」の帰結だが、どう考えても自由の方が見た目もいいし、勢いもある。「自由」と「平等」との匙加減が大事だが、民主主義はその拮抗する二つの原理を二枚看板として掲げている。なんとか折り合いをつけ続けなければならないという点で、優れている。
両立させるために必要なものは、「自由」を抑圧せずに中和させるもの。それが「友愛」=「親切」
「だから、「僕が集団に求めるのは『自由・平等・親切』なんです」
ここら辺は内田樹らしい論理展開だ。


【公共の再構築】
これからの世界に必要なのは、「ゲノッセンシャフト」(英語の「アソシエーション」)
生まれた瞬間から縛られる地縁血縁結合共同体とは違い、非常に親密でありながら個人の自由で任意に参加できる共同体のことだ。
上下関係を先に明確にして組織を作る旧来のやり方ではなく、リーダーのよくわからない公共の場を「私」の側から作っていくこと。
日本の将来に不安を抱える若者に「日本を捨てなさい」と平然と言うリアリストぶった識者を内田樹は断罪する。そんな生き方はほとんどの日本人には不可能だと。例外的な「強者」以外の99%の日本人はこの泥船に乗り続けるしかない。なのにそういう生き方自体が「敗者の生き方」だと言い放つなんて、と。
そして、この泥船が沈むまでの時間を先送りにして、できるだけ多くのものを救い出すという泥臭い仕事を誰かが担うべきだと。
その公共の再構築のために、自分にできる範囲で自分に何ができるか、若者の中からすでにそういうことのできる人は出てきているとウスビ・サコと内田樹は言う。

そうなのか、とほんの少しの希望をもらう。



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2023年03月22日

Posted by ブクログ

内田樹と京都精華大元学長のウスビ・サコさんの対談集。サコさんの話は初めて聞いたけれど、マリから中国を経て日本に来て大学の学長にまでなられている日本では異色のキャリア。でもこういう外の視点を持った方が日本の中枢にもっと入ってこないと日本はいまの旧態依然とした価値観の中での椅子取りゲームに興じて、全体の椅子は減り続けるということになってしまうだろう。
内田さんもサコさんも極めて真っ当なことしか言っているとは思えないんだけれど、悲しいかなそれができないのがいまの日本で狭い価値観のなかで汲々としているという感じ。
いよいよ日本に働きに来てくれるような外国人がいなくなり、外国に出稼ぎに行かなきゃいけない日本人が増えてきたとき、ついに日本人も絶望して変わり始めるのかもしれないと思った。

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2023年02月19日

Posted by ブクログ

一万円選書で送られてきた一冊。
内田樹とサコさんの対談形式で進んでいく。
大学の教育現場にいる2人によるトークはとても面白かったし、そもそもマリ共和国出身のサコさんがどのようにして日本にたどり着いたのか経歴が面白かった。
もっと日本人はダラダラしても良い、という言葉が良かった。周りの評価が重要な日本ではもっと自由にしていこというメッセージを感じた。
また日本国民がちゃんと政治について興味を持って声を上げていかないと行けないということや
民主主義なのに監視し合うような日本社会はどちらかというと共産主義寄りということが頷けた。
内田樹は大学受験の塾で小論文のためによく読んでいたので懐かしい気持ちになった。
他の感想でも一万円選書で送られてきた〜という内容を読んでいると日々肩身狭く感じてしまっている人に向けて選ばれている本なのかなと思った。

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2025年11月01日

Posted by ブクログ

内田樹さんとウスビ・サコさんの対談本。 若い人たちに向けた啓蒙指南書。 自由について持論を紹介する。
内田さんの言葉は、読んでいる時は「なるほど」と思うことが多いのだが、読み終わると「何だっけ」と思うことがよくある。 でもこの本の中で、自由の対義語は平等だという話は印象に残った。自由は競争を生み、強者と弱者が発生する。その時点で平等という概念はない。だから対義語になる。なるほど。

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2023年06月09日

Posted by ブクログ

日本人もハイコンテクストだけでなくローコンテンクストで伝えることも重要。
相手を思うとはここまで考えないと。

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2023年03月21日

Posted by ブクログ

内田樹先生の本の読み方にはコツがある。
真面目に論を追わない
信じすぎない
楽しむ
である。

私が内田先生の本を数十年手に取っているのは、
いつも同じことを言っている
からである。
日本や世界でさまざまな出来事が起こっても新しいテクノロジーがでてきても
いつも同じことを言っている
のである。

まざまな出来事に揺さぶられ、新しいテクノロジーを持て余してしまう自分には、変わらぬ内田先生を確認することで、自分の頭をマッサージしているのである。

もっと自由に考えて行動していいんだよ
本書のメッセージはまさにいつも内田先生が繰り返していること。
今回の内田節はウスビ•サコ先生ともうまくマッチ(時々困らせて)していて、それもよかった。

読書術とかは駆使せず、メモも取らず、ゴロゴロだらだら読んでください。

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2023年02月12日

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