小池真理子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
7つの短編集です。2021年〜2023年の作品集。
良いわあ〜! やっぱり良いのですよ、小池真理子さん。絶品です!
生きること、老いること、心と性、人との縁、そういう…人として生きていたら避けられない、ほんの些細なことも。こんなに美しい言葉で紡いでくれる。
なんだか、切なくもウットリと読んでしまうのです。
印象に残ったところ少し。
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今日のことしか考えない。明日を思い患わない。目の前に流れる時間だけを見つめて生きる。もらった給料分だけの生活をもくもくと続ける。欲を捨てる。未来を思い描かない。
何もかもどうすることもできない、もうすべて、遅いのだ、遅すぎるのだ、と感じた。
この人 -
Posted by ブクログ
ホラーアンソロジー。これもまた最強の布陣ですよねえ。
やはり一番怖いのは三津田信三「湯の中の顔」。タイトルから連想した通り田中貢太郎「竈の中の顔」がモチーフなのですが、私としてはこっちの方が怖い! 下がっていく生首が想像するだけでぞぞっとしました。
宮部みゆき「あなたを連れてゆく」、良いなあ。これ、この後の物語もぜひとも読みたいと思います。
小池真理子「オンリー・ユー」、これは怖いというよりも切なくて、だけど素敵な物語だと感じました。孤独な主人公が幸せな家庭に惹かれるところが「夜顔」と似ているな、と思ったけど。「夜顔」ほど怖くなく、そして寂しく切ない結末です。
内藤了「函」、芦花公園「月は空洞 -
Posted by ブクログ
映画監督の夫が振るう暴力に耐えかね行方をくらませた泉と、仕事の過程で罠に嵌められて麻薬所持の容疑者となり、警察の追跡から逃れてきたライターの鉄治。取材絡みで過去に一度だけ接点のあったふたりが、流れ着いた場末の街で偶然にも顔を合わせ、いつしか刹那的恋愛関係へと至る様子を描いた本作の展開は、小池真理子流ハードボイルドの様相を呈し、その完成度の高さは私がこれまで目を通してきた彼女の著作のなかでも三本の指に入るマスターピースと言っていい。後半は頁を繰る手が止まらず、一気読みに近かった
訳アリの泉と鉄治。余計な詮索抜きに前者を住み込みの家政婦として雇う老画家の八重子、後者を従業員として雇うゲイバーの主 -
Posted by ブクログ
映画がよかったので原作に興味を持った。
尾行をめぐる一連の流れは映画とほぼ同じだが原作には桃子という女優が登場する。彼女と卓也の関係を疑う主人公の姿は、尾行対象者である石坂と妻、恋人の三角関係と二重写しになる。他人の秘密を覗き見るうちに自分の周囲の秘密に意識的になっていく。映画だと意味がわからなかったタイトルの意味はこれか、と合点がいった。
一方で、主人公が第二の対象者として教授を尾行するのは映画オリジナル。このエピソードのおかげで彼の孤独が浮き彫りになったと思う。原作、映画、どちらにもそれぞれのよさがある。
終盤、見る側にいた主人公が見られる側に回る、という展開はどちらも同じ。原作は恋人 -
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#月夜の森の梟
#小池真理子 さん
少々言葉をまとめるのに時間がかかる。
ただひたすらに嘘偽りのない言葉たちが
心の奥深い部分に届くのが分かった。
喪失、絶望、そしてその先、
繰り返しの生活。
喪失を抱え、傷ついている人にこそ
届いて欲しいと思える一冊。
小池さんが直向きに向き合い続け
見つめ続けてきた言葉たち、
多くの人の胸に響いたんだろうと分かる。
本屋さんでたまたま目に入って購入したのだけど、
このタイミングでこの一冊に会えてよかった。
本との出会いも、人やものごとと同じように
タイミングがあるんだと思う。
その点で今この本に会えたこと、きっと意味がある。
心の深いとこ -
Posted by ブクログ
長年連れ添った伴侶を亡くした小池真理子さんの喪失の日々を綴ったエッセイ。全50話、1話3ページほどの短いもの。軽井沢での静かな日々、夫婦喧嘩や2人で笑い合ったこと、自身の幼い頃の思い出、様々なことが書かれているが、それは全て失った寂しさにつながっていく。
時間は癒してくれないし、誰かと昔のように笑うフリはできても、昔と同じように笑うことはできない。
日常のどこを切り取っても、思い出と寂しさが詰まっている。
美しい文章で、時に豊かな自然の風景を描きながら、言葉にしない寂しさが切々と伝わってくる。
自分もいつかこんな思いをするのか、またはさせるのか。
まだ経験したことのない寂しさが怖くもあり、