小池真理子のレビュー一覧
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「東京郊外に暮らす美術大学の講師、川久保悟郎。その娘でララという名の猫にだけ心を開く孤独な少女、桃子。そして、家庭教師として川久保家にやってきた画家志望の雅代。微妙な緊張を抱きながらもバランスのとれた三人の生活はそれなりに平穏だった。そう、あの日、あの女が現れるまでは…丹念に描かれた心の襞と悲劇的なツイスト、直木賞作家の隠れた名作」――どうでもいいですが、うちのおばあちゃんは凄い読書家で、押入れに入りきらないほど膨大な数の本があります。というのも、うちのおばあちゃんは軽い不眠症で、それを紛らわす為に夜いつも本を読んでたんです。それが積み重なって、渡辺淳一、平岩弓枝、曽野綾子、小池真理子、三浦綾子、夏樹静子、山村美紗、松本清張などの作家の小説が山のように並んでいます。私はいつも小説を買って読みますが、最近お金が追いつかなくなってきたのと、うちの宝の山が気になってきたのとで、初めておばあちゃんの蔵書を手に取ることになりました。この小説を選んだのは、単にタイトルに惹かれたからです。軽い気持ちで読み始めましたが、最初から傑作の匂いはプンプンしてました。心理の描き出し方が凄く上手い。小池真理子さんが人間心理描写の名手だということは後で知りました。納得です。全体的に奇妙です。特に際立ってるのが、っていうかもうそのものなのが、桃子という名の少女。この子はなんだか江國香織さんの小説に出てきそうな雰囲気があります。ひとつ気付いたんですが、今まで読んできた、といっても数少ない女流作家さんの小説には、不思議で、つかみ所の無い重要な脇役が常に出てくるように思えます。この桃子はその最たるもので、愛猫にしか心を開かない、それでいて華やかな雰囲気を併せ持つ少女です。この少女を巡って物語は進みますが、読み終わって思ったのが、恐い、という事。ホラー小説だと、映像的に人を恐がらせるけど、これは人の深層心理に語りかけてくる。少女であるからこその純粋さ。それが逆の方向に向かうと、大人でもなしえないような恐ろしいことが、何のためらいもなくできてしまう。そして、それがとんでもない結末を導く。衝撃です。小池真理子さんの作風に惚れました。こういうのが読みたかった。この人独自の世界観を、もっと観てみたいです――
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二つの殺意、少女の繊細な心と殺人、すれ違い。 さまざまな複雑な背景を持った登場人物たちがお互いに、淡い恋心を抱いてはいるもののすれ違う。そのすれ違いはとても丁寧に構成されていて、これこそ芸術の領域に達しているといえるだろう。サガンや綿矢りさを思い出させる繊細な心理風景が、ララ(途中ママと関連付けられる)という猫や、殺人の舞台となる雪の麦畠と古井戸、そして、主人公たちが生活する過度にアメリカ的な雰囲気の住居などを舞台に展開される。小説には二つの殺害があり、そのどちらも怪しいまでに人間の心の真相に迫っている。幼い孤独な少女に芽生えた殺意を美しく描写した物語としては、世界文学のレベルに達しているだろう。
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「怖がらせるホラー」というより、現実のすぐ隣にある異界を描いた幻想怪奇小説集。
『面』
般若の面をつけた女が現れるものの、怖さよりも不思議さが残る作品。
何が起きているのかはっきり説明されないまま、現実と異界の境目が曖昧になっていく。
「これのどこがホラー?」と思いつつも、じわりと残る奇妙な読後感。
『森の奥の家』
森の奥にある家をめぐる、不思議でどこか切ない物語。
怖さよりも、登場人物の抱える寂しさや、最後に訪れる安堵感が印象に残った。
静かで幻想的な雰囲気の中に、ほんのり哀しさが漂う一編。
『ゾフィーの手袋』
ここからは霊の存在がはっきり感じられ、じわじわとした怖さがある。
ゾクゾクするほどではないものの、この後どうなってしまうのかという不安が残る。
すべてを説明しきらないラストが、読後にも不穏な余韻を残す。
『日影歯科医院』
歯科医院という身近な場所が舞台だからこそ、霊の存在がより不気味に感じられる。
あの兄弟はなぜ主人公を治療したのか、少女や家族との関係も気になるところ。
説明されない部分が多く、「結局あれは何だったの?」という怖さが残る。
『山荘奇譚』
これは一番「ホラー小説らしい!」と感じた作品。
山荘の地下に潜む得体の知れないものが、じわじわと恐怖を煽ってくる。
これまでの作品とは違い、異形のものそのものの怖さをストレートに味わえる一編。
『緋色の窓』
現在と過去、現実と異界の境目が曖昧になっていく、不思議でノスタルジックなホラー。
夕暮れや湿った家の空気が、どこか懐かしくも不穏な世界を作り出している。
読み終えて「異形のものたち」というタイトルの意味が、ようやく腑に落ちた。 -
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ネタバレ久々の小池真理子作品。相変わらずのなめらかな文体で、描かれているのはドロドロの人間模様だ。
舞台は鎌倉。後妻という立場でどこか孤立感を抱える眼科医師の主人公と、娘の友人である若者との恋。
登場人物はみな身勝手。亭主は秘書と浮気三昧だし、娘も私生活むちゃくちゃだし。
そんな中で、常識人として、また良き妻・良き母であろうとしながら、少しずつ壊れていく主人公。本当はやりたいようにやるしかないのだろうけど、そう単純にはいかないのが人生というものなの?
とはいえ、この主人公自身も、よくよく見ればけっこう身勝手。
若者が東京で働くロックバーの名は「アンジー」。
ストーンズ、ビートルズ、ニール・ヤング、さらにはトッド・ラングレンまで登場。タイトルの「ストロベリー・フィールズ」はもちろんビートルズの曲からとられているが、その歌詞に込められた意味こそが、この物語全体の背景。
中公文庫 650ページ -
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辻堂環の死をきっかけに彼との蜜月を思い返す6人の女性の短編集
各編がそれぞれの女性からの視点で環との出会いからその終わりまでが語られ、流れは似たよっているけど、時系列に沿った構成になっており、環の年齢が徐々に上がっていくので彼の画家人生の横顔を見るような感触を味わうことができた。
小池真理子作品の中でも、終わった恋を中年期以降の年齢になり振り返る構成のものが大好きで、この本は全てそれに準じているので自分好みだった。
恋愛作品はあまり好みではないけど、小池作品のライト層向けの恋愛ものとは異なり、官能味や心理描写が濃厚でとても味わい深いものが多く、これからも読みたいと思う。